けっして短くもなく、そしてまだ長いともいえない人生で、出会ったひとは数知れず。
しかし、その多くを悲しませたり、裏切ったり、あるいは憎んでしまったり。しかし、そんなひとでもいつかどこかで出会ってしまうことがあります。
私は10年ほど前に引越しをしたので、過去の職場の人とはもう会うことはないでしょうし、すでに亡くなった方もいます。しかし、嫌な別れかたをしてしまい、そのあとどこかで出会うかもしれない人もいるわけです。だからこそ、ひとの出会いは大切にせねばならないとうのは、痛いほど噛みしめたい教えでもあります。人あたりがいい人は良運に恵まれていますよね。
現実の人間関係をスピードと立体感をもって教えてくれるのには映画がうってつけ。
本日はこんな映画を。
「この感動の旋律に世界中が大絶賛」──1999年の映画「マグノリア」には、こんなコピー文があります。
一見ばらばらに進行する群像劇、その主人公たちがふしぎな巡り合わせで結びついていく。最後に意外な出来ごとで、ひとつになってしまうという壮大な構成。ただし、それに感動できるかどうかは、視聴者次第。
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L.A郊外のサンフェルナンドバレーに暮らす十数人の男女の人生模様が交錯する。
軟派の伝授をするカリスマ青年、フランク。彼には隠していた過去があった。
死の床にあって、息子を捜してほしいと看護士に頼むアール・パートリッジ。パートリッジの若き妻リンダは、嘆く振りをしているが…。
同じ頃、人気長寿クイズ番組に出演中の天才少年スタンリーは、失態を演じ父親の叱責を受ける。
かつて、その番組で天才クイズ少年として名を馳せたドニーは、勤め先を解雇され恋にも破れ…。
そのクイズ番組の司会者ジミー・ゲイターは末期ガンで死期が迫る中、娘クローディアに面会を求めるが拒まれる。
そのクローディアは薬物依存症だが、それと知らずに、お人好しの警官ジムは彼女にひと目惚れしてデートに誘い出す。
物語が進むにつれて、じわりじわりと接点がつながっていきますが、完全に彼らを結びつけるものがあります。
それは、観客の意表をつくものなのですが、ありえるといえばありうる話。ヒントは、黒人少年の歌ったラップと天気予報でしょうか。
その「奇跡」が、彼らにとって救済になるという結論なのですが、感動して泣けるという類のものではないです。こんなオチだったのかと、苦笑いするしか。
登場人物が歌い継ぐ場面は、感動を覚えるのですが、なんというのでしょうか、個々人の人生にあまりのめり込めない。ただ、映画にするほどドラマティックに脚色されていない人生だからこそいいのかもしれない。所詮、ひとの生きざまなんてそんなもの、ダイナミックなことがあるわけでもなし。
三時間を超す大作なのですが、一度観たら二度と観たいとは思わないです(笑)。悪い意味ではなく。
監督は、ポール・トーマス・アンダーソン。
女性の口説き技を教えるイケメン伝道師フランク役は、なんとトム・クルーズ。シリアスなイメージが壊れること請け合い。
(〇九年八月二十一日)
マグノリア(1999) - goo 映画