陽出る処の書紀

忘れないこの気持ち、綴りたいあの感動──そんな想いをかたちに。葉を見て森を見ないひとの思想録。

漫画『コードネームはセーラーV』

2013-03-16 | テレビドラマ・アニメ
女の子の日(これを書いているのは3月3日)なので、唐突ですが、(当時の)女の子向けの漫画をレヴューします。
しかし、たぶん、これは(やはり当時の)男性ファンが多かったのだろうな。管理人としましては、最近の少女漫画の作家さんがたの絵柄は、デッサンうまいのでしょうが、なにかそそられるものがないのが、もどかしくあります。酸っぱい葡萄でしょうか。

漫画『コードネームはセーラーV』は、今さら言うまでもないですが、国民的大人気アニメ「美少女戦士セーラームーン」の原作者・武内直子女史が手がけたアナザーストーリー。1993年から97年まで雑誌『るんるん』で掲載されていたもの。私は講談社の旧版コミックス全三巻をもっていますが、現在は愛蔵版全二巻も刊行されているのですね。

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謎の人語を解する白猫に渡されたアイテムで、愛と正義のセーラ服美人戦士セーラーV(自分で「美人」と豪語するとか、どんだけ…)に変身しちゃった愛野美奈子、日々、悪と戦ってます!なストーリーです。ようは、美少女セーラームーンの毎回、敵さん退治のパターンとは変わってはないわけで、べつだん、ストーリー的にものすごいひねりがあるわけでもないのですが、とにかく、この主人公がまあ、なんとも豪放磊落な性格といいますか、コミカルといいますか。アニメ版でもミーハーで彼女が主人公の回だと主役を喰ってしまうようなエピソードもあったのですが、それでも深見梨伽さんのやや大人びた声に補正されていたものの、とにかくこの漫画版ではすごいです。喜劇に拍車がかかってて。「男の子」のようにガサツとは言われてますが、オシャレには余念がない当たりはやはり女の子なので。前向きで明るいのは、まあいいことだけど。原作のセーラーヴィーナス初登場シーンが神秘的だっただけに、このギャップには衝撃。アニメから性格を逆輸入されたような気がしないでもありません。そのぶん、「並木道の恋」のようなシリアス回が光るのですが。

しっかし、これ、絵柄はあきらかにきらびやかな少女漫画なのですが、チラリズムを惜しみなく導入したり、からだのラインがきわどい描き方だったり、一部、族漫画っぽい(ほとんどギャグになってますが)ストーリーがあったり、ゲームセンターやオタク少年という男の子アイテムを用意したりで、性別関係なく読者を楽しませる工夫は当時、新しかったと思われますが、いかがでしょうか。

ちなみに、ほんらいはこの「セーラーV」がアニメ化に至る予定だったのですが、却下された理由がまたおもしろい。セーラー万年筆によって商標登録されていたので、だそうで。それで、作中に万年筆が登場するのね。「セーラームーン」本編に合流させるためのラスボスも登場しますが、謎をひっぱったわりにはあっさりやられのがセオリー。最大のミステリーは、ボスの正体が明かされなかったことなのです(私的には、ルナじゃないか、と思ってました。中の人がクインベリル様だっただけに)

戦闘美少女の系譜的には金字塔といえる作品ですが、まさかまさか、二十年も経つと、魔法少女をサポートするはずのマスコット動物が腹黒かったり、美少女どうしでバトルロワイヤルになったり、首チョンパされたり、なんて展開になるとは、誰が思ったことでしょうね。美奈子ちゃんが変身ペンで、スチュワーデス(死語)だの、アイドル歌手だの、カメラマンだのに変身するたびに、そうそう、魔法少女の変身って、ほんらい「まだ何者にもなれない」女の子の望みをおおきく広げるためのドリームタイムだったはず、と再確認。なのに、いつのまにか、コスチュームはマニアックで何段階かあって、武器まで本格的になって、殺傷能力がすごい、みたいなことになったのかしら、と遠い目を過去に投げてしまわざるをえません。ついでに戦闘美少女には、かならず、友情を上回る感情のやりとりがサービスでついて回るとか。…と思っていたのですが、この要素、すでにセーラームーンが先導していたんですよね。とくに原作コミックのほう。

女性の社会進出がさかんに叫ばれたバブル期という、時代の波にまさしく乗った作品といえますが、ハイテンションでタフで、エネルギッシュな女の子ってじっさい、ほんとうに幸せなのか、とも思うわけです。

ちなみに原作本編では美奈子ちゃんって、レイちゃんと仲がよろしいのですよ。旧版コミックス13巻収録の受験戦争編がかなり笑えます。私が好きなキャラはせつなさんと、ほたるちゃんでしたけどね。

ところで、今年の夏に新作アニメという報道はいったいどうなってるんでしょう?


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