2023年10月06日
北海道機船漁業協同組合連合会内 一般社団法人北洋開発協会 原口聖二
[洋上風力発電と漁業 海外の経験#60 ノルウエー 洋上風力発電と漁業の競争が激化する]
日本での先行する欧米の洋上風力発電の漁業分野との共栄、相乗効果等の成功体験は、ほとんどが開発事業者による切り抜き発信で、実際に漁業分野の情報にアクセスしていくと様々な問題が報告されている。
世界中の漁業者は共通に、洋上風力発電プロジェクトについて、自らが知らない間に選定地が決まって唐突に説明会が始まり、漁業当局に十分なヒアリングを行うことなく、他の部局が主導する地方自治体の前傾姿勢による拙速な取り組みが行われ、事業開発者から漁業分野の科学的知見を理解しようとしない姿勢を感じていると指摘している。
ノルウエー漁業協会“Pelagisk Forening”代表マリアン・フランツエンは、今後数十年間、漁業分野にとって洋上風力発電プロジェクトが最大の競争相手であると指摘している。
フランツエンは、漁業分野が食料供給に傾注している間、エネルギー関連団体はひたすら権力に向けてロビー活動を行っていたと語り、海図を出し、漁場が日に日に狭まっていること等を説明した。
漁業分野は、水棲生物資源の保全・管理、漁獲割当の配分、操業機会の確保等に忙殺されており、一方で、その成果として、年間250万トンを水揚げし、1時間あたり100万食の食料源を確保している。
水棲生物資源は、それぞれの魚種ごとに移動と分布のパターンがあり、漁業分野は近隣諸国との漁業協定に適応しなくてはならない。
一方、政治家や洋上風力発電事業者の会合において、漁業、産卵場、回遊を考慮する必要性があることは、話題として出るが、それは言葉だけで、脱炭素を大義に、プロジェクトの実施へ“一刻の猶予もない”として、彼らはこれを、ひたすら拙速に進めようとしている。
フランツエンは、科学的環境評価を行った後、開発プロジェクトを行うのが正常な順番だが、洋上風力発電は論理的根拠が転倒していると指摘、現状は、まず建設して、それがどうなるかを見るとの実態で、洋上風力発電事業者らは、すべての準備が整い、“漁業との共存の問題は解決した”という、まったく事実と違う発言をしていると付け加えた。
また、ノルウエー海洋漁業研究所が、洋上風力発電の漁業への影響については、まだ調査不足であり、長期にわたって、これを事前に行う必要があると指摘していることを説明し、プロジェクトが準備を整えているとの既成事実化に向けた主張は、開発を進める正当化にはならないと述べた。
更にフランツエンは、洋上風力発電プロジェクトが、水棲生物資源や将来の食料供給に及ぼす影響をより適切に管理できるようになるまでは、これを開始するべきではないと語り、政府の水棲生物資源を保護し、漁業との共存を図るとの方針と大いに矛盾していると批判した上で、重要な漁場が被害を受けないようにするという政府の目標をどうやって達成できるのかも全く理解できないと結んだ。
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