2024年01月19日
北海道機船漁業協同組合連合会内 一般社団法人北洋開発協会 原口聖二
[洋上風力発電と漁業 海外の経験#72 英国 漁業者の57%が漁獲量と収益性の低下を意識している]
日本での先行する欧米の洋上風力発電の漁業分野との共栄、相乗効果等の成功体験は、ほとんどが開発事業者による切り抜き発信で、実際に漁業分野の情報にアクセスしていくと様々な問題が報告されている。
世界中の漁業者は共通に、洋上風力発電プロジェクトについて、自らが知らない間に選定地が決まって唐突に説明会が始まり、漁業当局に十分なヒアリングを行うことなく、他の部局が主導する地方自治体の前傾姿勢による拙速な取り組みが行われ、事業開発者から漁業分野の科学的知見を理解しようとしない姿勢を感じていると指摘している。
一方、新型コロナウイルスのパンデミックを発端とするサプライチェーンの混乱は、ウクライナ紛争で一段と深刻化しており、輸送コストや原材料費の高騰、金利の上昇、そして、インフレにより、風力発電事業者の利益が圧迫され、内容が悪化しており、このような環境で、漁業分野を含め満足な補償等に対応がなされるのか、はなはだ疑問な状況が伝えられている。
英国プリマス海洋研究所の最新の調査の中間とりまとめによると、洋上風力発電の影響で、調査対象の57%の漁業者が漁獲量と収益性の低下を意識していると、否定的な結果を示し、肯定的回答はわずか1%だった。
当該調査は2024年1月21日まで続けられている。
同研究所生態系科学者クレア・ゾステックは、現在稼働中または建設中の洋上風力発電所43基のうち80%が漁業活動に影響を与えていると分析している。
多数の漁業者は洋上風力発電プロジェクトの影響で別の漁場を使わざるを得なくなり、漁法の転換や廃業を余技なくされる漁業者も出てきている。
英国の漁業者が洋上風力発電プロジェクトでどのような経験をしたかというストーリーは、米国の漁業者の今後の対応に大きな影響を与えるものと見られている。
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