モグモグ隊名古屋遠征 最終話

　これで遅ればせながら３人となったモグモグ隊。
　次の攻撃目標は、新たなる名古屋名物になるのではないかと僕はひそかに思っている、大須の商店街のなかに突如現れるブラジル料理店「オッソ・ブラジル」のローストチキンだ。
　ここのローストチキン、鶏丸ごと１羽をこんがりと専用のロースターで焼いて、ハサミで豪快にブツ切りにしてくれたものに、サルサソースをかけて、野生児のごとくムシャムシャ頬張るという、ワイルドな料理なのだ。そして値段は、１羽丸ごとで1000円ポッキリ。商店街の道にはみだして並べられた机と椅子に陣取って、ビールを瓶のまま飲み、肉のみをしゃぶり続ける。
　蒸し暑い外で熱々のチキンを食べるため、当然滝のような汗とは切っても切れない縁なわけで、復活したをきな氏、ハンドタオルが絞れるほどの滝汗をかいてもなお、チキンをほおばり続けていた。サルサソースのビリリリリとした辛さがたまらなく気に入ってくれたようだ。やはぎ氏も途中参戦とは思えないほどのテンションでガブガブビールを飲み、チキンを己の肉に同化させていく。すばらしい、さすがモグモグ特攻隊長だ。
　しかし、のちにやはぎ氏が途中降板して帰宅ハメになることは、このときのやはぎ氏は知る由もない。このとき飲んだビールの酔いが、服用している薬と思い切り組み合わせが悪かったらしく、気持ち悪くなってしまったのだった。合掌。


　３人になったらテンションも違う。チキン１羽をロベルト・カルロスのフリーキック並みの速さであっというまにたいらげた我々は、「つーぎ、つーぎ」という、をきな＆やはぎ氏のコールのなか、味噌煮込みうどんの名店「たから」に入った。　今は夏でも、やはり最後は「味噌煮込みうどん」。そう、じつはこの味噌煮込みうどんで、予定していた名古屋グルメ絨毯爆撃遠征は幕を閉じるのだった。よく食べた２日間だった。感慨もひとしおに、店に入り注文をする。この店は「どっちの料理ショー」にも登場したことがあるらしく、たぶん関口チームだったんだろうな、とくだらない想像を働かせながら、そういえば『ミソニコフ・クイタビッチ』っていうロシア人がいたなあ、なんて思っていたりもした（このロシア人の名前、名古屋人なら大半は知っているはず！）。

　そして運ばれてきた、熱々の土鍋。なかには八丁味噌でしっかりと煮込まれたうどんがグツグツと食べて食べてとラブコールを送ってくれていた。
「いただきます！」
　とくに揃えたわけではないのだが、自然にコールが揃う我らモグモグ隊。
　生めんのまま土鍋で煮込まれたうどんは、しっかりとコシがあり、味噌も甘すぎず辛すぎず、かといってクドいわけでもなく、しっかりと調和して、これ以上も以下もないという、まさにナゴヤンテイストを醸し出していた。
「ま、まいう～」
　そう、これはまいう～だ。白いご飯があったら、もっとまいう～だ。夏に食べてもまいう～だ。名古屋に生まれて、モグモグ隊員たちにこの逸品を薦められたことに、僕は本当に感謝する。ありがとう名古屋。ビバ名古屋。グラッチェ名古屋。シャチホコ万歳。モリゾー万歳。キッコロ万歳！

　味噌煮込みうどんを食べ終えた新婚のをきな氏。嫁のうまい手料理を食べ過ぎてポッテリとし始めている腹を満足そうにさすっている。途中参加のやはぎ氏。たった２食ではあったけれど、怪我をおしてのその心意気、しかと見せていただきましたぞ。次回は完全体での参加を熱烈希望する。

「今回のなかでベスト３ってなんでした？」
　僕の問いに、をきな氏は散々悩みに悩んで、
　　３位　ローストチキン
　　２位　ひつまぶし
　　１位　味噌煮込みうどん
　と答えてくれた。
　あれだけ心酔していたひつまぶしが２位とは？と聞くも、
「ひつまぶしはおいしかったけれど、庶民の味じゃないやろ。モグモグ隊は庶民の愛する、庶民の口で磨かれた食べ物を愛するのだよ」
　と深いお言葉。さすがリーダー。あんた、かっこよすぎるよ！
「よし、次はどこ行こう？　にいや、任せるわ！　また集合かけてくれ！」
「では、リーダー、閉めのお言葉を」
「え～、家に着くまでがモグモグ遠征です（笑）。また来週！歯磨けよ！」

　こうして、再会を約束し、今回の遠征は幕を閉じたのだった。

　我々モグモグ隊は、そこにうまいものがある限り、行かねばならぬ。食べねばならぬ。胃袋が破れようと、エンゲル係数がうなぎ上りに上がろうと…。
次の攻撃目標は……。

（モグモグ隊名古屋遠征　完）




追記：僕のベスト３
　　　３位　天むす
　　　２位　味噌煮込みうどん
　　　1位　あんかけスパ


　　そしてこの遠征だけで、体重３キロ増だった（マジで）。