6 間ノ瀬巡査部長は,平成11年10月8日に小野寺立会いの実況見分調書を
作成,同年10月12日に玖珠警察署で小野寺の供述調書を作成した。
7 玖珠警察署は,本件事故発生から事故捜査を一時保留した平成12年2月1
0日迄の4ヶ月間,なし得る捜査を行ったのであるから,要すれば,検察官に
指揮をもとめ(相談して),小野寺を業務上過失致傷等事件の被疑者として,
事件を送致しなければならない。
8 玖珠警察署は,平成11年10月7日に実況見分を行ったが,その作成を平
成13年9月27日まで放置した。
特段の事情もなく,検察官に相談もせず,事件の処理を保留(そのままの状
態でおさえとどめておくこと・大辞林 第二版),または放置(ほうったまま
にしておくこと・大辞林 第二版)した玖珠警察署の捜査手続きは違法である。
9 原判決の事実認定及び法的判断には誤りがある。
10 なお,小野寺には,時速約40kmの速度で本件道路の自衛隊車進行車線を進
行して本件事故現場手前の右カーブに入った時点で,控訴人の過失の有無にか
かわらず,他人に危害を及ぼさないような速度と方法で運転しなければならな
い義務を怠った過失が発生する。
第4点 控訴人が従前提起した3件の訴訟
1 原判決は,「原告の請求は,その内容において,すでに提起された3件の蒸
し返しにすぎないといわざるを得ない。このことは,原告が提出する甲号証は,
今回新たに作成された陳述書(甲74)を除き,その大部分が,作成日,体裁
から見て,従前の3件の訴訟に提出されたものと認めることができることから
もいうことができる。」と判示した。(原判決9頁)
2 上記3件の訴訟の控訴審は,各事案の概要(要旨)を下記のとおり判示した。
(1) 第1訴訟(甲50・控訴審判決1頁)
センターラインが引かれた対向1車線の道路におけるヘアピンカーブの坂
道において,下り車線を走行してきた控訴人運転の自動二輪車(被害車両)
11/16
と登り坂を対向走行してきた自衛隊員小野寺秀和運転の自衛隊車両(加害車
両)と接触し,被害車両が転倒した本件事故により,控訴人が受傷した。
本件は,控訴人が,被控訴人(国)に対し,国家賠償法1条及び自動車損
害賠償保障法3条に基づき,本件事故による損害賠償金2557万8457
円及びこれに対する本件事故の日である平成11年10月7日から支払済み
に至るまで民法所定の年5分の遅延損害金を求めた事案である。
(2) 第2訴訟(甲56・控訴審判決2~3頁)
本件は,被控訴人(神奈川県公安委員会)が,平成16年4月20日に道
路交通法101条の規定に基づき控訴人の運転免許証の有効期間の更新をす
るに当たり,控訴人に過去5年以内に法70条(安全運転の義務)違反行為
があり,一般運転者(法92条の2の表の備考一の3)に該当すると認定し
てその免許証の有効期間の更新をした(以下「本件更新」という。)のに対
しに控訴人は,控訴人には安全運転義務違反の事実がないと主張して,本件
更新処分のうち,控訴人か「優良運転者」(法92条の2の表の備考一の2,
道路交涌法施行令(以下「施行令」という。)33条の7)ではなく一般運
転者に該当すると認定した部分(以下「本件認定部分」という。)は違法であ
ると主張,本件更新処分のうちの本件認定部分の取消しを求める事案である。
(3) 第3訴訟(甲59・控訴審判決1~2頁)
本件は,控訴人が,平成11年10月7日午前10時55分ころ,控訴人
所有の普通自動二輪車(以下「控訴人車」という。)を運転中,大分県玖珠
郡九重町大字湯坪県道別府一の宮線水分起点34.9キロメートル先付近路
上(以下「本件道路」という。)において,自衛隊車両と接触事故を起こし,
これにより受傷したとして,国に対し,損害賠償請求訴訟(横浜地方裁判所
平成13(ワ)第2714号,以下「別件訴訟」という。)を提起したが敗訴
し,その後その判決が確定したが,同訴訟において,国の指定代理人浅香幹
子(以下「浅香」という。)らが証拠資料を隠ぺい又は破棄して提出せず,
12/16
証拠資料の捏造又は改ざんを行い,又は不法に作成された証拠を弁論に使用
した違法があると主張して,被控訴人(国)に対し,国家賠償法第1条に基
づき,上記訴訟に敗訴したことによる損害と慰謝料の合計3000万円及び
これに対する上記不法行為後である平成17年11月9日から支払済みま
で民法所定年5分の割合による遅延損害金の支払を求めた事案である。
3 本件は,大分県玖珠郡で交通事故に遭った控訴人が,大分県警玖珠警察署の
警察官には交通事件の捜査に当たり実況見分調書の作成を放置するなどの違法
行為があったと主張して,被控訴人(大分県)に対し,国家賠償法1条1項に基
づき,交通事故による損害等合計3000万円の損害のうちの一部である10
万円の損害賠償及びこれに対する訴状送達の日の翌日からの遅延損害金の支払
を求めた事案である。(原判決1頁)
4 既判力は,本案判決の場合,訴訟物である権利関係の存否について生じ,判
決に当事者と記載された当事者に及ぶ。(民事訴訟法第115条)
5 第1訴訟,第2訴訟及び第3訴訟の3件の紛争の相手方は,国(自衛隊),
神奈川県公安委員会及び国(国の指定代理人)であり,本件の訴訟の相手方は
大分県(玖珠警察署)である。
6 原判決の事実認定及び法的判断には誤りがある。
第5点 証人尋問の申出及び証人の陳述書の提出
1 本件実況見分調書(甲7)について,その見分の補助者で調書を作成者した
堀部警部補,見分官の間ノ瀬巡査部長及び見分補助者の早水巡査長が証人とし
て過去に刑事及び民事裁判で証人尋問を受けたことはない。
2 被控訴人は,平成20年11月13日第2回口頭弁論期日に「次回期日まで
に堀部警部補の証人申請をする,間ノ瀬巡査部長については,精神状態が不安
定で尋問に耐えうる状態ではないので申請しない」と口頭で陳述した。
当日の調書には「被告(被控訴人):次回期日までに書証(間ノ瀬及び堀部
の各陳述書)を提出する」と記載された。
13/16
3 被控訴人は,平成21年1月15日第3回口頭弁論期日に「堀部警部補の証
人申請をとりやめる」と口頭で陳述した。理由として当時の資料が残っていな
いことなどを挙げた。
当日の調書には「当事者双方:次回期日までにすべての書証及び証拠申出書
を提出する」と記載された。
4 控訴人は,平成21年2月16日,証拠申出書(証人・堀部警部補,間ノ瀬
巡査部長及び早水巡査長)を提出したが,原審は平成21年3月12日第4回
口頭弁論期日に不採用とした。
5 被控訴人が提出するとされた,上記書証(間ノ瀬及び堀部の各陳述書)は提
出されないまま,原審は平成21年3月12日第4回口頭弁論期日に,唐突に
弁論を終結した。
6 本件では,堀部警部補作成の実況見分調書(甲7)の「作成名義の真正」は
さておき,見分の経過及び結果等の「記載の真正」及び「その内容の真実性」
が重要な争点となっている。
7 実況見分調書の信憑性を判断するには,その作成者の尋問が不可欠である。
本件当事者が証人申請を行う理由は,本件事故解明のための重要な証拠である
実況見分調書及び同調書添付の写真の信憑性を証するために他ならない。
8 集中証拠調べは訴訟を迅速化するだけではなく,真実発見,適正な裁判とい
う点でも,効果が大きく民事裁判実務の標準的な審理方法として定着している。
9 陳述書は,集中証拠調べの不可欠のツールとして,ほとんどの訴訟で活用さ
れている。陳述書により,争点整理段階に事実が提示されることで,裁判所は
事件の全体像や訴訟の見通しをつかむことができ,当事者間でも共通の認識を
もて,相手方の不意打ち防止になるなど,審理の適正かつ迅速・充実に役立つ。
10 原判決は,「控訴人(原告)が提出する甲号証は,今回新たに作成された陳
述書(甲74)を除き,その大部分が,作成日,体裁からみて,従前の3件の
訴訟に提出されたものと認めることができる(原判決9頁)」から,控訴人の
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請求は従前提起した3件の訴訟の蒸返しにすぎないといわざるを得ないという。
11 前訴の証拠と後訴の証拠が同一である場合に蒸返しとなるか否か別にして,
被控訴人が今回新たに乙号証として,証拠(証人・堀部警部補,間ノ瀬巡査部
長)及び書証(間ノ瀬及び堀部の各陳述書)を提出するよう釈明を求める。
12 控訴人が申出た証拠(人証)は,当事者がその主張事実を立証するため申し
出た唯一の証拠調であり,排斥することはゆるされない。
第3 控訴理由(まとめ)
1 原判決の不服の部分
(1) 玖珠警察署の警官が実況見分後直ちに実況見分調書の作成をしなかったこ
とには,合理的理由があるというべきであり,実況見分調書の作成を放置し
ていたということはできない。(原判決7頁)
(2) これらの度重なる裁判所の認定,判断の事実及び当裁判所に提出された乙
2の写真のネガによれば,実況見分調書には実況見分当時の状況が偽りなく
記載され,実況見分時に撮影された写真が添付されたものと認めることがで
きる。(原判決8頁)
(3) 本件事故の原因は,控訴人車のハンドル・ブレーキの的確な操作を怠った
控訴人の過失にあると認められるのであって,小野寺の過失は認めることが
できない。したがって,小野寺を業務上過失致傷等事件の被疑者として送致
しないことは何ら違法ではない。(原判決9頁)
(4) 以上のとおり,控訴人が主張する玖珠警察署の警察官の違法行為はいずれ
も認めることができない。(原判決9頁)
控訴人の請求は,その内容において,すでに提起された3件の訴訟の蒸し
返しにすぎないといわざるを得ない。(原判決9頁)
2 控訴人の主張
(1) 間ノ瀬巡査部長には,実況見分後速やかに基本書式で実況見分調書を作成
する義務があり,作成しなかった合理的理由はない。
15/16
(犯罪捜査規範104条)(控訴理由第1点14項)
(2) 原判決のいう「これらの度重なる裁判所の認定,判断」は,別件訴訟の判
決理由中の事実判断および法適用で,既判力が生じないことは明らかである。
(民事訴訟法114条1項)(控訴理由第2点3項)
(3) ひとたび司法警察員が捜査した事件であれば,必ずしも犯罪の嫌疑ある事
件に限らず,罪とならないことが明らかな事件でも,あるいは犯罪の嫌疑が
ないことが明らかになった事件であっても,これを検察官に送致しなければ
ならない。
(刑事訴訟法第246条)(控訴理由第3点3項)
(4) 以上のとおり,玖珠警察署の警察官の違法行為は明らかである。
既判力は,本案判決の場合,訴訟物である権利関係の存否について生じ,
判決に当事者と記載された当事者に及ぶ。控訴人の請求は,すでに提起され
た3件の訴訟の蒸しとはいえない。
(民事訴訟法第115条)(控訴理由第4点4項)
3 結語
原判決には,法令の解釈適用を誤った違法があり,かつ,十分な理由を付さ
ずして,控訴人の過失を認め,玖珠警察署の違法行為を認めず,控訴人の請求
を棄却した原判決には,審理不尽,理由不備の違法があり,当審で,証人尋問
を実施するなど,更に審理を尽されることを求める。
そのほか,必要に応じて準備書面を提出する。
以上
附属書類
1 控訴理由書 副本 1通
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作成,同年10月12日に玖珠警察署で小野寺の供述調書を作成した。
7 玖珠警察署は,本件事故発生から事故捜査を一時保留した平成12年2月1
0日迄の4ヶ月間,なし得る捜査を行ったのであるから,要すれば,検察官に
指揮をもとめ(相談して),小野寺を業務上過失致傷等事件の被疑者として,
事件を送致しなければならない。
8 玖珠警察署は,平成11年10月7日に実況見分を行ったが,その作成を平
成13年9月27日まで放置した。
特段の事情もなく,検察官に相談もせず,事件の処理を保留(そのままの状
態でおさえとどめておくこと・大辞林 第二版),または放置(ほうったまま
にしておくこと・大辞林 第二版)した玖珠警察署の捜査手続きは違法である。
9 原判決の事実認定及び法的判断には誤りがある。
10 なお,小野寺には,時速約40kmの速度で本件道路の自衛隊車進行車線を進
行して本件事故現場手前の右カーブに入った時点で,控訴人の過失の有無にか
かわらず,他人に危害を及ぼさないような速度と方法で運転しなければならな
い義務を怠った過失が発生する。
第4点 控訴人が従前提起した3件の訴訟
1 原判決は,「原告の請求は,その内容において,すでに提起された3件の蒸
し返しにすぎないといわざるを得ない。このことは,原告が提出する甲号証は,
今回新たに作成された陳述書(甲74)を除き,その大部分が,作成日,体裁
から見て,従前の3件の訴訟に提出されたものと認めることができることから
もいうことができる。」と判示した。(原判決9頁)
2 上記3件の訴訟の控訴審は,各事案の概要(要旨)を下記のとおり判示した。
(1) 第1訴訟(甲50・控訴審判決1頁)
センターラインが引かれた対向1車線の道路におけるヘアピンカーブの坂
道において,下り車線を走行してきた控訴人運転の自動二輪車(被害車両)
11/16
と登り坂を対向走行してきた自衛隊員小野寺秀和運転の自衛隊車両(加害車
両)と接触し,被害車両が転倒した本件事故により,控訴人が受傷した。
本件は,控訴人が,被控訴人(国)に対し,国家賠償法1条及び自動車損
害賠償保障法3条に基づき,本件事故による損害賠償金2557万8457
円及びこれに対する本件事故の日である平成11年10月7日から支払済み
に至るまで民法所定の年5分の遅延損害金を求めた事案である。
(2) 第2訴訟(甲56・控訴審判決2~3頁)
本件は,被控訴人(神奈川県公安委員会)が,平成16年4月20日に道
路交通法101条の規定に基づき控訴人の運転免許証の有効期間の更新をす
るに当たり,控訴人に過去5年以内に法70条(安全運転の義務)違反行為
があり,一般運転者(法92条の2の表の備考一の3)に該当すると認定し
てその免許証の有効期間の更新をした(以下「本件更新」という。)のに対
しに控訴人は,控訴人には安全運転義務違反の事実がないと主張して,本件
更新処分のうち,控訴人か「優良運転者」(法92条の2の表の備考一の2,
道路交涌法施行令(以下「施行令」という。)33条の7)ではなく一般運
転者に該当すると認定した部分(以下「本件認定部分」という。)は違法であ
ると主張,本件更新処分のうちの本件認定部分の取消しを求める事案である。
(3) 第3訴訟(甲59・控訴審判決1~2頁)
本件は,控訴人が,平成11年10月7日午前10時55分ころ,控訴人
所有の普通自動二輪車(以下「控訴人車」という。)を運転中,大分県玖珠
郡九重町大字湯坪県道別府一の宮線水分起点34.9キロメートル先付近路
上(以下「本件道路」という。)において,自衛隊車両と接触事故を起こし,
これにより受傷したとして,国に対し,損害賠償請求訴訟(横浜地方裁判所
平成13(ワ)第2714号,以下「別件訴訟」という。)を提起したが敗訴
し,その後その判決が確定したが,同訴訟において,国の指定代理人浅香幹
子(以下「浅香」という。)らが証拠資料を隠ぺい又は破棄して提出せず,
12/16
証拠資料の捏造又は改ざんを行い,又は不法に作成された証拠を弁論に使用
した違法があると主張して,被控訴人(国)に対し,国家賠償法第1条に基
づき,上記訴訟に敗訴したことによる損害と慰謝料の合計3000万円及び
これに対する上記不法行為後である平成17年11月9日から支払済みま
で民法所定年5分の割合による遅延損害金の支払を求めた事案である。
3 本件は,大分県玖珠郡で交通事故に遭った控訴人が,大分県警玖珠警察署の
警察官には交通事件の捜査に当たり実況見分調書の作成を放置するなどの違法
行為があったと主張して,被控訴人(大分県)に対し,国家賠償法1条1項に基
づき,交通事故による損害等合計3000万円の損害のうちの一部である10
万円の損害賠償及びこれに対する訴状送達の日の翌日からの遅延損害金の支払
を求めた事案である。(原判決1頁)
4 既判力は,本案判決の場合,訴訟物である権利関係の存否について生じ,判
決に当事者と記載された当事者に及ぶ。(民事訴訟法第115条)
5 第1訴訟,第2訴訟及び第3訴訟の3件の紛争の相手方は,国(自衛隊),
神奈川県公安委員会及び国(国の指定代理人)であり,本件の訴訟の相手方は
大分県(玖珠警察署)である。
6 原判決の事実認定及び法的判断には誤りがある。
第5点 証人尋問の申出及び証人の陳述書の提出
1 本件実況見分調書(甲7)について,その見分の補助者で調書を作成者した
堀部警部補,見分官の間ノ瀬巡査部長及び見分補助者の早水巡査長が証人とし
て過去に刑事及び民事裁判で証人尋問を受けたことはない。
2 被控訴人は,平成20年11月13日第2回口頭弁論期日に「次回期日まで
に堀部警部補の証人申請をする,間ノ瀬巡査部長については,精神状態が不安
定で尋問に耐えうる状態ではないので申請しない」と口頭で陳述した。
当日の調書には「被告(被控訴人):次回期日までに書証(間ノ瀬及び堀部
の各陳述書)を提出する」と記載された。
13/16
3 被控訴人は,平成21年1月15日第3回口頭弁論期日に「堀部警部補の証
人申請をとりやめる」と口頭で陳述した。理由として当時の資料が残っていな
いことなどを挙げた。
当日の調書には「当事者双方:次回期日までにすべての書証及び証拠申出書
を提出する」と記載された。
4 控訴人は,平成21年2月16日,証拠申出書(証人・堀部警部補,間ノ瀬
巡査部長及び早水巡査長)を提出したが,原審は平成21年3月12日第4回
口頭弁論期日に不採用とした。
5 被控訴人が提出するとされた,上記書証(間ノ瀬及び堀部の各陳述書)は提
出されないまま,原審は平成21年3月12日第4回口頭弁論期日に,唐突に
弁論を終結した。
6 本件では,堀部警部補作成の実況見分調書(甲7)の「作成名義の真正」は
さておき,見分の経過及び結果等の「記載の真正」及び「その内容の真実性」
が重要な争点となっている。
7 実況見分調書の信憑性を判断するには,その作成者の尋問が不可欠である。
本件当事者が証人申請を行う理由は,本件事故解明のための重要な証拠である
実況見分調書及び同調書添付の写真の信憑性を証するために他ならない。
8 集中証拠調べは訴訟を迅速化するだけではなく,真実発見,適正な裁判とい
う点でも,効果が大きく民事裁判実務の標準的な審理方法として定着している。
9 陳述書は,集中証拠調べの不可欠のツールとして,ほとんどの訴訟で活用さ
れている。陳述書により,争点整理段階に事実が提示されることで,裁判所は
事件の全体像や訴訟の見通しをつかむことができ,当事者間でも共通の認識を
もて,相手方の不意打ち防止になるなど,審理の適正かつ迅速・充実に役立つ。
10 原判決は,「控訴人(原告)が提出する甲号証は,今回新たに作成された陳
述書(甲74)を除き,その大部分が,作成日,体裁からみて,従前の3件の
訴訟に提出されたものと認めることができる(原判決9頁)」から,控訴人の
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請求は従前提起した3件の訴訟の蒸返しにすぎないといわざるを得ないという。
11 前訴の証拠と後訴の証拠が同一である場合に蒸返しとなるか否か別にして,
被控訴人が今回新たに乙号証として,証拠(証人・堀部警部補,間ノ瀬巡査部
長)及び書証(間ノ瀬及び堀部の各陳述書)を提出するよう釈明を求める。
12 控訴人が申出た証拠(人証)は,当事者がその主張事実を立証するため申し
出た唯一の証拠調であり,排斥することはゆるされない。
第3 控訴理由(まとめ)
1 原判決の不服の部分
(1) 玖珠警察署の警官が実況見分後直ちに実況見分調書の作成をしなかったこ
とには,合理的理由があるというべきであり,実況見分調書の作成を放置し
ていたということはできない。(原判決7頁)
(2) これらの度重なる裁判所の認定,判断の事実及び当裁判所に提出された乙
2の写真のネガによれば,実況見分調書には実況見分当時の状況が偽りなく
記載され,実況見分時に撮影された写真が添付されたものと認めることがで
きる。(原判決8頁)
(3) 本件事故の原因は,控訴人車のハンドル・ブレーキの的確な操作を怠った
控訴人の過失にあると認められるのであって,小野寺の過失は認めることが
できない。したがって,小野寺を業務上過失致傷等事件の被疑者として送致
しないことは何ら違法ではない。(原判決9頁)
(4) 以上のとおり,控訴人が主張する玖珠警察署の警察官の違法行為はいずれ
も認めることができない。(原判決9頁)
控訴人の請求は,その内容において,すでに提起された3件の訴訟の蒸し
返しにすぎないといわざるを得ない。(原判決9頁)
2 控訴人の主張
(1) 間ノ瀬巡査部長には,実況見分後速やかに基本書式で実況見分調書を作成
する義務があり,作成しなかった合理的理由はない。
15/16
(犯罪捜査規範104条)(控訴理由第1点14項)
(2) 原判決のいう「これらの度重なる裁判所の認定,判断」は,別件訴訟の判
決理由中の事実判断および法適用で,既判力が生じないことは明らかである。
(民事訴訟法114条1項)(控訴理由第2点3項)
(3) ひとたび司法警察員が捜査した事件であれば,必ずしも犯罪の嫌疑ある事
件に限らず,罪とならないことが明らかな事件でも,あるいは犯罪の嫌疑が
ないことが明らかになった事件であっても,これを検察官に送致しなければ
ならない。
(刑事訴訟法第246条)(控訴理由第3点3項)
(4) 以上のとおり,玖珠警察署の警察官の違法行為は明らかである。
既判力は,本案判決の場合,訴訟物である権利関係の存否について生じ,
判決に当事者と記載された当事者に及ぶ。控訴人の請求は,すでに提起され
た3件の訴訟の蒸しとはいえない。
(民事訴訟法第115条)(控訴理由第4点4項)
3 結語
原判決には,法令の解釈適用を誤った違法があり,かつ,十分な理由を付さ
ずして,控訴人の過失を認め,玖珠警察署の違法行為を認めず,控訴人の請求
を棄却した原判決には,審理不尽,理由不備の違法があり,当審で,証人尋問
を実施するなど,更に審理を尽されることを求める。
そのほか,必要に応じて準備書面を提出する。
以上
附属書類
1 控訴理由書 副本 1通
16/16