平成21年(ネ)第3294号
控訴人(原告) 出羽やるか
被控訴人(被告) 大分県
控 訴 理 由 書
平成21年6月30日
東京高等裁判所 御中
控訴人 出羽やるか
上記当事者間の横浜地方裁判所平成20年(ワ)3371号国家賠償請求事件
について,平成21年5月14日に言渡された判決は不服であるから,平成21
年5月26日に控訴したがその理由は下記の通りである。
略称等は,「別件訴訟」を(第1訴訟),「別件行政訴訟」を(第2訴訟),
「別件国賠訴訟」を(第3訴訟)というほかは,原審の例によるものとする。
目 次
第1 事案の概要・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・2頁
第2 控訴理由
第1点 実況見分調書(甲7)の作成の放置・・・・・・・・・・・・・3頁
実況見分は,居住者,管理者その他関係者の立会いを得ておこない,
その結果を実況見分調書に正確に記載しておかなければならない。
第2点 実況見分調書(甲7)の記載の不真正・・・・・・・・・・・・6頁
確定判決は,主文に包含するものに限り,既判力を有する。
第3点 小野寺の業務上過失致傷事件・・・・・・・・・・・・・・・9頁
司法警察員は,犯罪の捜査をしたときは,速やかに書類及び証拠物
とともに事件を検察官に送致しなければならない。
第4点 控訴人が従前提起した3件の訴訟・・・・・・・・・・・・11頁
既判力は,本案判決の場合,訴訟物である権利関係の存否について
生じ,判決に当事者と記載された当事者に及ぶ。
1/16
第5点 証人尋問および証人の陳述書・・・・・・・・・・・・・・13頁
証人能力を制限した規定はなく,当事者またはその法定代理人以外
ものは,年齢や知能・精神状態などに関係がなく,証人能力を有する。
第3 控訴理由(まとめ)・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・15頁
第1 事案の概要
1 本件は,大分県玖珠郡で交通事故に遭った控訴人が,大分県警玖珠警察署の
警察官には交通事件の捜査に当たり実況見分調書の作成を放置するなどの違法
行為があったと主張して,被控訴人に対し,国家賠償法1条1項に基づき,交
通事故による損害等合計3000万円の損害のうちの一部である10万円の損
害賠償及びこれに対する訴状送達の日の翌日からの遅延損害金の支払を求めた
事案である。(原判決1頁)
2 控訴人の請求原因(原判決3~4頁)
(1) 玖珠警察署警察官の違法行為
ア 玖珠警察署の警察官は,平成11年10月7日に実況見分を行ったが,
その作成を平成13年9月27日まで放置した。
イ 玖珠警察署の警察官は,実況見分調書に真実でない記載をした。
すなわち,堀部警部補や間ノ瀬巡査部長は実況見分を行っていないにも
かかわらず,見分官,補助者と記載し,実況見分の時間も不実である。
ウ 玖珠警察署の警察官は,実況見分調書に実況見分時に撮影したものでな
い写真を添付した。
荷台から外されたはずの控訴人の荷物が荷台にあること,控訴人車でな
い自動二輪車が写っていること,当時なかった徐行の道路標示があること,
道路に停まっていたはずの自衛隊車が草地に移動されていること,当時な
かった里程標があること,実況見分調書にはタイヤ痕,擦過痕があると記
載されているが写真には写っていないことなどから,実況見分調書に添付
された写真が実況見分時に撮影されていないことが判明する。
2/16
エ 小野寺は,フルトレーラーを牽引した自衛隊車を運転して,雑草等があ
り双方からの見通しが不良な半径25mのカーブを通過する場合,カーブ
の手前でスピードを落とし他人に危害を及ぼさないような速度と方法で運
転しなければならない義務があったのに,最高速度と指定された毎時40
kmのまま本件道路のヘヤピンカーブに進入した過失があった。この結果本
件事故が生じたのであり,控訴人は約3か月の加療を要する傷害を負った
のであるから,小野寺は人身事故の加害者である。
しかるに,玖珠警察署の警察官は,小野寺を業務上過失致傷等事件の被
疑者として検察官に送致しなかった。
第2 控訴理由
第1点 実況見分調書(甲7)の作成の放置
1 原判決は,控訴人の請求原因(1)アについて,下記のとおり判断した。
(1) 証拠(甲59)によれば,第3訴訟の控訴審裁判所は,実況見分調書が
作成されるに至る経過について,次のとおり認定したことが認められる。すな
わち,堀部警部補らは,平成11年10月7日午後0時34分から午後1時
20分まで本件事故現場の実況見分を実施し,本件道路に残された痕跡等か
ら,加害者は本件道路の中央線を越えた控訴人であり,被害者は小野寺である
と判断した,堀部警部補らは,控訴人立会いの下で本件事故の実況見分を実施
しようとしたが,控訴人は,退院後には玖珠警察署に出頭して実況見分に立ち
会う旨約していたにもかかわらず,退院後神奈川県の自宅に帰ってしまい,堀
部警部補らは控訴人に対し郵便で玖珠警察署に出頭するよう要請したが,控訴
人はこれに応じなかった,この間,自衛隊等が,自衛隊車等に実質的な損害が
ないことなどから,控訴人の処罰を望まない旨申し立てたので,堀部警部補ら
は,平成12年2月10日,後日紛議が生じた場合には,捜査を再開して送致
することを条件に本件事故捜査を一時保留処分とすることとした,堀部警部補
らは,平成13年8月,控訴人が国に対して第1訴訟を提起したことが判明し
3/16
たので,上記保留処分を解除し,送致準備を進めることとしたが,控訴人は,
高齢と経済的な問題を理由に玖珠警察署への出頭に応じることができない旨主
張し続けた,堀部警部補らは,日田区検察庁の指示を受け,堀部警部補が,本
件事故当時に作成していた現場メモに基づいて同年9月27日付けて実況見分
調書を作成し,神奈川県まで赴き,控訴人の取調べを実施し,上記実況見分調
書を示しながら被疑者供述調書を作成し,同年11月20日,控訴人を被疑者
として日田区検察庁に送致した。
上記の第3訴訟の控訴審裁判所の認定を覆すに足りる証拠はなく,証拠(甲
10の1・2,59)によれば,上記のとおり認定することができる。
これによれば,玖珠警察署の警察官が実況見分後直ちに実況見分調書の作
成をしなかったことには,合理的理由があるというべきであり,実況見分調
書の作成を放置していたということはできない。(原判決6~7頁)
2 犯罪捜査規範第104条(実況見分)は,「1犯罪の現場その他の場所,身
体又は物について事実発見のため必要があるときは,実況見分を行わなければ
ならない。2実況見分は,居住者,管理者その他関係者の立会を得て行い,そ
の結果を実況見分調書に正確に記載しておかなければならない。」と規定する。
3 実況見分調書(甲7)には,実況見分の立会人は小野寺,見分官は間ノ瀬巡査
部長,補助者は堀部警部補及び早水巡査長と記載されている。
4 見分官として本件事故の実況見分を行った間ノ瀬巡査部長は,その結果を実
況見分調書に正確に記載しておかなければならない。
5 間ノ瀬巡査部長が実況見分後に実況見分調書の作成をできなかった特段の事
情,作成しなかった合理的理由はない。
6 そもそも,小野寺立会いの実況見分調書を作成するにあたり,控訴人立会の
実況見分の有無は関係がない。
7 控訴人は,平成11年10月29日玖珠警察署に間ノ瀬巡査部長を訪ね本件
事故について話を聞き(甲3),約3ヵ月の加療を必要とする見込みとの内容
4/16
の診断書(甲23)を提出し,被害を届け出た。
8 本件事故は交通切符では処理できない事案である。間ノ瀬巡査部長は,基本
書式で,小野寺立会いの実況見分調書を作成しておかねばならない。
9 調査嘱託書に対する平成19年3月26日付け玖珠警察署長の回答(甲10)
は,「当該実況見分調書の作成日時が実施日時と異なった理由は,本件を一旦
保留処分としていたところ,出羽から民事提訴がなされ,送致する必要性が生
じたため,検事の指揮を受けた上で,事故当日の現場メモを基に実況見分調書
を作成したという経緯による。」,「作成に際し用いた資料等は,堀部警部補
が事故当日自ら記録した現場メモ」である。
10 調査嘱託書に対する平成19年8月17日付け玖珠警察署長の回答(甲11)
は,「(1) 実況見分調書に添付されている写真の撮影年月日,撮影場所及び撮
影者:平成11年10月7日,事故現場にて撮影,撮影者:堀部警部補,(2)
上記(1) の写真のネガの現存の有無:有,(3) 堀部警部補の現場メモの現存の
有無:無,(4) 上記(1)の写真及び(3)の現場メモの他に,同調書作成の基とな
った資料等の存在の有無:無」である。
11 被控訴人は,原審の平成20年11月12日付け準備書面で下記のとおり陳
述して,堀部警部補自身の現場メモの他に,間ノ瀬巡査部長が平成11年10
月8日に作成していた交通切符様式の実況見分調書の存在を認めている。
「平成11年10月8日,間ノ瀬巡査部長は,交通切符様式の実況見分調書
を作成するとともに,小野寺に電話連絡をして10月12日に玖珠警察署に出
頭するように要請した。平成11年10月12日,間ノ瀬巡査部長は,玖珠警
察署において任意出頭した小野寺の事情聴取に当たった。(同書面8頁6~1
0行目)」。「本来であれば実況見分調書の作成は,見分官である間ノ瀬巡査
部長が行うべきところ,間ノ瀬巡査部長は,平成13年5月1日付けで九州管
区警察局高速道路福岡管理室に異動となっていたことから,当該実況見分に補
助者として立会った堀部警部補が,基本書式で実況見分調書を作成することと
5/16
し,間ノ瀬巡査部長が平成11年10月8日に作成していた交通切符様式の実
況見分調書及び堀部警部補自身が作成していた現場メモ(図面)並びに事故当
日に撮影した車両の損傷状況・道路状況の写真に基づき,平成13年9月27
日付けの基本書式の実況見分調書を作成した。(同書面13頁1~10行目)」。
12 原判決は「堀部警部補らは,日田区検察庁の指示を受け,堀部警部補が本件
事故当時に作成していた現場メモに基づいて平成13年9月27日付けで実況
見分調書を作成し,・・・」と認定した。(原判決7頁7~9行目)
13 原判決は,間ノ瀬巡査部長が平成11年10月8日作成したという交通切符
様式の実況見分調書の存在を否定(看過)している。
14 間ノ瀬巡査部長には,実況見分後速やかに基本書式で実況見分調書を作成す
る義務があり,作成しなかった合理的理由はない。
15 原判決の事実認定及び法的判断には誤りがある。
16 なお,堀部警部補らは,平成11年10月7日本件事故現場の実況見分を実
施し,本件道路に残された痕跡等から,加害者は本件道路の中央線を越えた控
訴人であり,被害者は小野寺であると判断したという。(原判決6頁)
17 ちなみに,当事者は,その事故についてもつとも責任の重い者から順に第1
当事者,第2当事者と呼ぶ。ただし,その責任の度合いが同程度または判定が
困難なときは,被害の少ない者から順に第1当事者,第2当事者と呼ぶ。
加害者とは,事故により他人の生命,身体または物に損害を与えた者をいい,
被害者とは,事故により生命,身体または物に損害を受けた者をいう。
本件事故の加害者は小野寺,被害者は控訴人とするのが正しい。
第2点 実況見分調書(甲7)の記載の不真正
1 原判決は,控訴人の請求原因(1)イ,ウについて,下記のとおり判断した。
(2) 証拠(甲50,55,58,59)によれば,第1訴訟の控訴審裁判所
は,実況見分調書の作成について,道路の車道幅員は,現場の状況において自
動車が走行可能な最大幅を計測した結果として誤りはない,自衛隊車は,いっ
6/16
たん,本件事故地点付近の道路外の草地に移動され,警察官の到着後に開始さ
れた実況見分に際して,道路上に移動されたなどと認定した上で,実況見分調
書の内容に不自然不合理なところはなく,本件事故当日に警察官により実施さ
れた実況見分の内容を記載したものと認定し,現場事故写真についても,本件
事故当時の里程標の存在を認めたこと,第2訴訟の第1審裁判所は,間ノ瀬巡
査部長を見分官,堀部警部補及び早水巡査長を補助者として平成11年10月
7日午後0時34分から午後1時20分まで本件事故現場の実況見分が実施さ
れたと認め,間ノ瀬巡査部長らが当日実況見分を行わなかったのではないかと
疑うべき事情は存在しないと判断し,実況見分調書添付の写真についても,同
一機会に撮影された一連のもので,本件事故直後の状況を撮影したものと理解
するのが自然であるとし,「控訴人の荷物」,「徐行」の道路標示,「里程標」
が実況見分当時存在したことを疑うべき事情はないと判断したこと,第3訴訟
の第1審裁判所は,第2訴訟の第1審裁判所と同様に間ノ瀬巡査部長らが上記
日時に実況見分を実施したと認め,添付の写真も実況見分の際に撮影されたと
認めたこと,とりわけ,「控訴人の荷物」,「里程標」にねつ造・改ざんはないと
判断したこと,第3訴訟の控訴審裁判所も,(1)のとおり,間ノ瀬巡査部長らが
上記日時に実況見分を実施したと認め,実況見分調書に添付された写真につい
ても,本件全証拠によっても,この写真がねつ造・改ざんされたと認めること
はできないと判断したこと(第3訴訟の第1審裁判所は,当該訴訟において,
控訴人が実況見分調書に添付された写真が本件事故当日に撮影されたものでな
くねつ造・改ざんされたものであると主張し,それに沿う証拠を提出しだのに
対し,控訴人が挙げる種々の事情の大半は写真画面上の単なるコントラストの
問題や個人の主観に基づいて不自然と論難しているにすぎず,ねつ造・改ざん
があったことを疑わせるような客観的な根拠となるものはないとも判示してい
ること。)が認められる。
これらの度重なる裁判所の認定,判断の事実及び当裁判所に提出された乙
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2の写真のネガによれば,実況見分調書には実況見分当時の状況が偽りなく
記載され,実況見分時に撮影された写真が添付されたものと認めることがで
き,本件訴訟においても,これを疑わせるに足りる客観的証拠はない。(原判
決7~8頁)
2 民事訴訟法第114条1項は,訴訟物たる権利・請求権の存否を判断した過
程である判決理由中の事実判断および法適用には既判力が生じないことを明ら
かにしている。
3 原判決のいう「これらの度重なる裁判所の認定,判断」は,別件訴訟の判決
理由中の事実判断および法適用で,既判力が生じないことは明らかである。
4 控訴人は,別件訴訟の判決理由中の認定,判断を疑い,本件訴訟において,
平成20年10月27日付け準備書面(2),平成20年10月27日付け準備書
面(3),平成21年1月7日付け準備書面(5)を提出し,実況見分調書(甲7)の
見分者,見分時間,調書添付の写真等の不真正につき弁論した。
5 控訴人は,実況見分調書添付の写真(甲8)はすべて,平成11年10月7
日午後0時34から午後1時20分までの間には撮影されていないと主張し,
争点として下記の10点をあげた。(上記準備書面(5)8頁)
第1点 控訴人車の荷台に固縛された荷物(甲8①,②,③,④)
実況見分時には,控訴人車の荷台に固縛された荷物はない。
第2点 自動二輪車のスポーク(甲8⑩,甲25,甲26,甲27)
写真(甲8⑩)に写っている自動二輪車(バイク)は,控訴人車ではない。
第3点 間ノ瀬巡査部長に同行している自衛官(甲8①,⑦,⑩,⑪,⑫)
自衛隊が本件事故処理に関与している。
第4点 「徐行」の道路標示(甲8⑦,甲28)
この「徐行」の道路標示は事故当日には存在しない。
第5点 炊事車の衝突痕(甲8④,⑨,甲33⑩,⑪)
控訴人車の前輪右側ホークと炊事車の右輪のホイールナットが接触した。
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第6点 草地の上の自衛隊車(甲8⑤,⑥,⑦,⑧,⑨)
事故当日,本件自衛隊車が道路外に移動された事実はない。
第7点 KP34.9の里程標(甲8⑪,甲29)
この里程標は事故当日には存在しない。
第8点 KP34.9の警戒標識(甲8⑪,甲29・甲8⑩,甲27)」
この標識は北行きの車から真正面に見え,南行きの車からは見えない。
第9点 控訴人車のタイヤ痕及び擦過痕(甲8⑫,⑬,⑭,⑮,⑯)
道路面だけが写され,タイヤ痕,擦過痕及び測定基準が写っていない。
第10点 路面にかかれた「バイク」の文字及び記号(甲8⑮,⑯)
堀部警部補はこれらのマークについて言及していない。
6 原審は争点整理手続きをとらず,平成21年3月12日第4回口頭弁論期日
に,予告なしに弁論を終結した。
7 原判決の事実認定及び法的判断には誤りがあり,かつ,審理不尽,理由不備
の違法がある。
第3点 小野寺の業務上過失致傷事件
1 原判決は,控訴人の請求原因(1)エについて,下記のとおり判断した。
(3) 証拠(甲49,50,55,58)によれば,第1訴訟の第1審裁判所
は,本件事故につき,自衛隊車が毎時40kmの速度で進行車線をはみ出すこと
なく走行していたところ,控訴人車が急にコントロールを失って対向車線に入
り込み,小野寺がブレーキをかける間もなくフルトレーラーに衝突して発生し
たものと認定し,小野寺には,本件事故の原因となる速度違反や対向車線ヘ
のはみ出しその他何らの過失もなかったと認定したこと,第1訴訟の控訴審
裁判所も同様の認定をし,本件事故は控訴人の過失に基づく結果であり,小野
寺には何ら過失がないとの判断を示したこと,第2訴訟の第1審裁判所は,
本件事故につき,小野寺は時速約40kmの速度で本件道路を自衛隊車進行車
線を進行して本件事故現場手前の右カーブに入ったが,控訴人車がコントロー
9/16
ルを失って左右に大きく振れ,自衛隊車の運転席の横を通り過ぎてフルトレ
ーラーに衝突ないし接触したと認定したこと,第2訴訟の控訴審裁判所も,
控訴人は控訴人車のハンドル・ブレーキの操作を誤り,バランスを崩して中央
線を越え対向車線に進出させたためフルトレーラーに衝突したと認定したこ
と,第3訴訟の第1審裁判所は,本件事故の態様につき,第2訴訟の第1審
裁判所の上記認定と同様の認定をしたことが認められる。
上記の各裁判所の認定及び証拠(甲16 ,17,19 ,乙3)によれば,
本件事故の原因は,控訴人車のハンドル・ブレーキの的確な操作を怠った控訴
人の過失にあると認められるのであって,小野寺の過失は認めることができな
い。したがって,小野寺を業務上過失致傷等事件の被疑者として送致しない
ことは何ら違法ではない。(原判決8~9頁)
2 刑事訴訟法第246条(司法警察員から検察官への事件の送致)は,司法警
察員は,犯罪の捜査をしたときは,この法律に特別の定のある場合を除いては,
速やかに書類および証拠物とともに事件を検察官に送致しなければならない,
但し,検察官が指定した事件については,この限りではない,と規定する。
3 ひとたび司法警察員が捜査した事件であれば,必ずしも犯罪の嫌疑ある事件
に限らず,罪とならないことが明らかな事件でも,あるいは犯罪の嫌疑がない
ことが明らかになった事件であっても,これを検察官に送致しなければならな
いのであり,司法警察員は,本条による場合は,事件を送致するか否かを決め
る権限を与えられていない。(大コンメンタール刑事訴訟法第3巻810頁)
4 玖珠警察署は平成11年10月7日に「バイクと大型車による接触事故,バ
イクの転倒により男性1名が負傷した」との届出(甲21)を受けた時点で業
務上過失致傷等事件として捜査を行わなければならない。
5 控訴人は,平成11年10月29日玖珠警察署に間ノ瀬巡査部長を訪ね本件
事故について話を聞き(甲3),約3ヵ月の加療を必要とする見込みとの内容
の診断書(甲23)を提出し,被害を届け出た。
10/16
控訴人(原告) 出羽やるか
被控訴人(被告) 大分県
控 訴 理 由 書
平成21年6月30日
東京高等裁判所 御中
控訴人 出羽やるか
上記当事者間の横浜地方裁判所平成20年(ワ)3371号国家賠償請求事件
について,平成21年5月14日に言渡された判決は不服であるから,平成21
年5月26日に控訴したがその理由は下記の通りである。
略称等は,「別件訴訟」を(第1訴訟),「別件行政訴訟」を(第2訴訟),
「別件国賠訴訟」を(第3訴訟)というほかは,原審の例によるものとする。
目 次
第1 事案の概要・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・2頁
第2 控訴理由
第1点 実況見分調書(甲7)の作成の放置・・・・・・・・・・・・・3頁
実況見分は,居住者,管理者その他関係者の立会いを得ておこない,
その結果を実況見分調書に正確に記載しておかなければならない。
第2点 実況見分調書(甲7)の記載の不真正・・・・・・・・・・・・6頁
確定判決は,主文に包含するものに限り,既判力を有する。
第3点 小野寺の業務上過失致傷事件・・・・・・・・・・・・・・・9頁
司法警察員は,犯罪の捜査をしたときは,速やかに書類及び証拠物
とともに事件を検察官に送致しなければならない。
第4点 控訴人が従前提起した3件の訴訟・・・・・・・・・・・・11頁
既判力は,本案判決の場合,訴訟物である権利関係の存否について
生じ,判決に当事者と記載された当事者に及ぶ。
1/16
第5点 証人尋問および証人の陳述書・・・・・・・・・・・・・・13頁
証人能力を制限した規定はなく,当事者またはその法定代理人以外
ものは,年齢や知能・精神状態などに関係がなく,証人能力を有する。
第3 控訴理由(まとめ)・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・15頁
第1 事案の概要
1 本件は,大分県玖珠郡で交通事故に遭った控訴人が,大分県警玖珠警察署の
警察官には交通事件の捜査に当たり実況見分調書の作成を放置するなどの違法
行為があったと主張して,被控訴人に対し,国家賠償法1条1項に基づき,交
通事故による損害等合計3000万円の損害のうちの一部である10万円の損
害賠償及びこれに対する訴状送達の日の翌日からの遅延損害金の支払を求めた
事案である。(原判決1頁)
2 控訴人の請求原因(原判決3~4頁)
(1) 玖珠警察署警察官の違法行為
ア 玖珠警察署の警察官は,平成11年10月7日に実況見分を行ったが,
その作成を平成13年9月27日まで放置した。
イ 玖珠警察署の警察官は,実況見分調書に真実でない記載をした。
すなわち,堀部警部補や間ノ瀬巡査部長は実況見分を行っていないにも
かかわらず,見分官,補助者と記載し,実況見分の時間も不実である。
ウ 玖珠警察署の警察官は,実況見分調書に実況見分時に撮影したものでな
い写真を添付した。
荷台から外されたはずの控訴人の荷物が荷台にあること,控訴人車でな
い自動二輪車が写っていること,当時なかった徐行の道路標示があること,
道路に停まっていたはずの自衛隊車が草地に移動されていること,当時な
かった里程標があること,実況見分調書にはタイヤ痕,擦過痕があると記
載されているが写真には写っていないことなどから,実況見分調書に添付
された写真が実況見分時に撮影されていないことが判明する。
2/16
エ 小野寺は,フルトレーラーを牽引した自衛隊車を運転して,雑草等があ
り双方からの見通しが不良な半径25mのカーブを通過する場合,カーブ
の手前でスピードを落とし他人に危害を及ぼさないような速度と方法で運
転しなければならない義務があったのに,最高速度と指定された毎時40
kmのまま本件道路のヘヤピンカーブに進入した過失があった。この結果本
件事故が生じたのであり,控訴人は約3か月の加療を要する傷害を負った
のであるから,小野寺は人身事故の加害者である。
しかるに,玖珠警察署の警察官は,小野寺を業務上過失致傷等事件の被
疑者として検察官に送致しなかった。
第2 控訴理由
第1点 実況見分調書(甲7)の作成の放置
1 原判決は,控訴人の請求原因(1)アについて,下記のとおり判断した。
(1) 証拠(甲59)によれば,第3訴訟の控訴審裁判所は,実況見分調書が
作成されるに至る経過について,次のとおり認定したことが認められる。すな
わち,堀部警部補らは,平成11年10月7日午後0時34分から午後1時
20分まで本件事故現場の実況見分を実施し,本件道路に残された痕跡等か
ら,加害者は本件道路の中央線を越えた控訴人であり,被害者は小野寺である
と判断した,堀部警部補らは,控訴人立会いの下で本件事故の実況見分を実施
しようとしたが,控訴人は,退院後には玖珠警察署に出頭して実況見分に立ち
会う旨約していたにもかかわらず,退院後神奈川県の自宅に帰ってしまい,堀
部警部補らは控訴人に対し郵便で玖珠警察署に出頭するよう要請したが,控訴
人はこれに応じなかった,この間,自衛隊等が,自衛隊車等に実質的な損害が
ないことなどから,控訴人の処罰を望まない旨申し立てたので,堀部警部補ら
は,平成12年2月10日,後日紛議が生じた場合には,捜査を再開して送致
することを条件に本件事故捜査を一時保留処分とすることとした,堀部警部補
らは,平成13年8月,控訴人が国に対して第1訴訟を提起したことが判明し
3/16
たので,上記保留処分を解除し,送致準備を進めることとしたが,控訴人は,
高齢と経済的な問題を理由に玖珠警察署への出頭に応じることができない旨主
張し続けた,堀部警部補らは,日田区検察庁の指示を受け,堀部警部補が,本
件事故当時に作成していた現場メモに基づいて同年9月27日付けて実況見分
調書を作成し,神奈川県まで赴き,控訴人の取調べを実施し,上記実況見分調
書を示しながら被疑者供述調書を作成し,同年11月20日,控訴人を被疑者
として日田区検察庁に送致した。
上記の第3訴訟の控訴審裁判所の認定を覆すに足りる証拠はなく,証拠(甲
10の1・2,59)によれば,上記のとおり認定することができる。
これによれば,玖珠警察署の警察官が実況見分後直ちに実況見分調書の作
成をしなかったことには,合理的理由があるというべきであり,実況見分調
書の作成を放置していたということはできない。(原判決6~7頁)
2 犯罪捜査規範第104条(実況見分)は,「1犯罪の現場その他の場所,身
体又は物について事実発見のため必要があるときは,実況見分を行わなければ
ならない。2実況見分は,居住者,管理者その他関係者の立会を得て行い,そ
の結果を実況見分調書に正確に記載しておかなければならない。」と規定する。
3 実況見分調書(甲7)には,実況見分の立会人は小野寺,見分官は間ノ瀬巡査
部長,補助者は堀部警部補及び早水巡査長と記載されている。
4 見分官として本件事故の実況見分を行った間ノ瀬巡査部長は,その結果を実
況見分調書に正確に記載しておかなければならない。
5 間ノ瀬巡査部長が実況見分後に実況見分調書の作成をできなかった特段の事
情,作成しなかった合理的理由はない。
6 そもそも,小野寺立会いの実況見分調書を作成するにあたり,控訴人立会の
実況見分の有無は関係がない。
7 控訴人は,平成11年10月29日玖珠警察署に間ノ瀬巡査部長を訪ね本件
事故について話を聞き(甲3),約3ヵ月の加療を必要とする見込みとの内容
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の診断書(甲23)を提出し,被害を届け出た。
8 本件事故は交通切符では処理できない事案である。間ノ瀬巡査部長は,基本
書式で,小野寺立会いの実況見分調書を作成しておかねばならない。
9 調査嘱託書に対する平成19年3月26日付け玖珠警察署長の回答(甲10)
は,「当該実況見分調書の作成日時が実施日時と異なった理由は,本件を一旦
保留処分としていたところ,出羽から民事提訴がなされ,送致する必要性が生
じたため,検事の指揮を受けた上で,事故当日の現場メモを基に実況見分調書
を作成したという経緯による。」,「作成に際し用いた資料等は,堀部警部補
が事故当日自ら記録した現場メモ」である。
10 調査嘱託書に対する平成19年8月17日付け玖珠警察署長の回答(甲11)
は,「(1) 実況見分調書に添付されている写真の撮影年月日,撮影場所及び撮
影者:平成11年10月7日,事故現場にて撮影,撮影者:堀部警部補,(2)
上記(1) の写真のネガの現存の有無:有,(3) 堀部警部補の現場メモの現存の
有無:無,(4) 上記(1)の写真及び(3)の現場メモの他に,同調書作成の基とな
った資料等の存在の有無:無」である。
11 被控訴人は,原審の平成20年11月12日付け準備書面で下記のとおり陳
述して,堀部警部補自身の現場メモの他に,間ノ瀬巡査部長が平成11年10
月8日に作成していた交通切符様式の実況見分調書の存在を認めている。
「平成11年10月8日,間ノ瀬巡査部長は,交通切符様式の実況見分調書
を作成するとともに,小野寺に電話連絡をして10月12日に玖珠警察署に出
頭するように要請した。平成11年10月12日,間ノ瀬巡査部長は,玖珠警
察署において任意出頭した小野寺の事情聴取に当たった。(同書面8頁6~1
0行目)」。「本来であれば実況見分調書の作成は,見分官である間ノ瀬巡査
部長が行うべきところ,間ノ瀬巡査部長は,平成13年5月1日付けで九州管
区警察局高速道路福岡管理室に異動となっていたことから,当該実況見分に補
助者として立会った堀部警部補が,基本書式で実況見分調書を作成することと
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し,間ノ瀬巡査部長が平成11年10月8日に作成していた交通切符様式の実
況見分調書及び堀部警部補自身が作成していた現場メモ(図面)並びに事故当
日に撮影した車両の損傷状況・道路状況の写真に基づき,平成13年9月27
日付けの基本書式の実況見分調書を作成した。(同書面13頁1~10行目)」。
12 原判決は「堀部警部補らは,日田区検察庁の指示を受け,堀部警部補が本件
事故当時に作成していた現場メモに基づいて平成13年9月27日付けで実況
見分調書を作成し,・・・」と認定した。(原判決7頁7~9行目)
13 原判決は,間ノ瀬巡査部長が平成11年10月8日作成したという交通切符
様式の実況見分調書の存在を否定(看過)している。
14 間ノ瀬巡査部長には,実況見分後速やかに基本書式で実況見分調書を作成す
る義務があり,作成しなかった合理的理由はない。
15 原判決の事実認定及び法的判断には誤りがある。
16 なお,堀部警部補らは,平成11年10月7日本件事故現場の実況見分を実
施し,本件道路に残された痕跡等から,加害者は本件道路の中央線を越えた控
訴人であり,被害者は小野寺であると判断したという。(原判決6頁)
17 ちなみに,当事者は,その事故についてもつとも責任の重い者から順に第1
当事者,第2当事者と呼ぶ。ただし,その責任の度合いが同程度または判定が
困難なときは,被害の少ない者から順に第1当事者,第2当事者と呼ぶ。
加害者とは,事故により他人の生命,身体または物に損害を与えた者をいい,
被害者とは,事故により生命,身体または物に損害を受けた者をいう。
本件事故の加害者は小野寺,被害者は控訴人とするのが正しい。
第2点 実況見分調書(甲7)の記載の不真正
1 原判決は,控訴人の請求原因(1)イ,ウについて,下記のとおり判断した。
(2) 証拠(甲50,55,58,59)によれば,第1訴訟の控訴審裁判所
は,実況見分調書の作成について,道路の車道幅員は,現場の状況において自
動車が走行可能な最大幅を計測した結果として誤りはない,自衛隊車は,いっ
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たん,本件事故地点付近の道路外の草地に移動され,警察官の到着後に開始さ
れた実況見分に際して,道路上に移動されたなどと認定した上で,実況見分調
書の内容に不自然不合理なところはなく,本件事故当日に警察官により実施さ
れた実況見分の内容を記載したものと認定し,現場事故写真についても,本件
事故当時の里程標の存在を認めたこと,第2訴訟の第1審裁判所は,間ノ瀬巡
査部長を見分官,堀部警部補及び早水巡査長を補助者として平成11年10月
7日午後0時34分から午後1時20分まで本件事故現場の実況見分が実施さ
れたと認め,間ノ瀬巡査部長らが当日実況見分を行わなかったのではないかと
疑うべき事情は存在しないと判断し,実況見分調書添付の写真についても,同
一機会に撮影された一連のもので,本件事故直後の状況を撮影したものと理解
するのが自然であるとし,「控訴人の荷物」,「徐行」の道路標示,「里程標」
が実況見分当時存在したことを疑うべき事情はないと判断したこと,第3訴訟
の第1審裁判所は,第2訴訟の第1審裁判所と同様に間ノ瀬巡査部長らが上記
日時に実況見分を実施したと認め,添付の写真も実況見分の際に撮影されたと
認めたこと,とりわけ,「控訴人の荷物」,「里程標」にねつ造・改ざんはないと
判断したこと,第3訴訟の控訴審裁判所も,(1)のとおり,間ノ瀬巡査部長らが
上記日時に実況見分を実施したと認め,実況見分調書に添付された写真につい
ても,本件全証拠によっても,この写真がねつ造・改ざんされたと認めること
はできないと判断したこと(第3訴訟の第1審裁判所は,当該訴訟において,
控訴人が実況見分調書に添付された写真が本件事故当日に撮影されたものでな
くねつ造・改ざんされたものであると主張し,それに沿う証拠を提出しだのに
対し,控訴人が挙げる種々の事情の大半は写真画面上の単なるコントラストの
問題や個人の主観に基づいて不自然と論難しているにすぎず,ねつ造・改ざん
があったことを疑わせるような客観的な根拠となるものはないとも判示してい
ること。)が認められる。
これらの度重なる裁判所の認定,判断の事実及び当裁判所に提出された乙
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2の写真のネガによれば,実況見分調書には実況見分当時の状況が偽りなく
記載され,実況見分時に撮影された写真が添付されたものと認めることがで
き,本件訴訟においても,これを疑わせるに足りる客観的証拠はない。(原判
決7~8頁)
2 民事訴訟法第114条1項は,訴訟物たる権利・請求権の存否を判断した過
程である判決理由中の事実判断および法適用には既判力が生じないことを明ら
かにしている。
3 原判決のいう「これらの度重なる裁判所の認定,判断」は,別件訴訟の判決
理由中の事実判断および法適用で,既判力が生じないことは明らかである。
4 控訴人は,別件訴訟の判決理由中の認定,判断を疑い,本件訴訟において,
平成20年10月27日付け準備書面(2),平成20年10月27日付け準備書
面(3),平成21年1月7日付け準備書面(5)を提出し,実況見分調書(甲7)の
見分者,見分時間,調書添付の写真等の不真正につき弁論した。
5 控訴人は,実況見分調書添付の写真(甲8)はすべて,平成11年10月7
日午後0時34から午後1時20分までの間には撮影されていないと主張し,
争点として下記の10点をあげた。(上記準備書面(5)8頁)
第1点 控訴人車の荷台に固縛された荷物(甲8①,②,③,④)
実況見分時には,控訴人車の荷台に固縛された荷物はない。
第2点 自動二輪車のスポーク(甲8⑩,甲25,甲26,甲27)
写真(甲8⑩)に写っている自動二輪車(バイク)は,控訴人車ではない。
第3点 間ノ瀬巡査部長に同行している自衛官(甲8①,⑦,⑩,⑪,⑫)
自衛隊が本件事故処理に関与している。
第4点 「徐行」の道路標示(甲8⑦,甲28)
この「徐行」の道路標示は事故当日には存在しない。
第5点 炊事車の衝突痕(甲8④,⑨,甲33⑩,⑪)
控訴人車の前輪右側ホークと炊事車の右輪のホイールナットが接触した。
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第6点 草地の上の自衛隊車(甲8⑤,⑥,⑦,⑧,⑨)
事故当日,本件自衛隊車が道路外に移動された事実はない。
第7点 KP34.9の里程標(甲8⑪,甲29)
この里程標は事故当日には存在しない。
第8点 KP34.9の警戒標識(甲8⑪,甲29・甲8⑩,甲27)」
この標識は北行きの車から真正面に見え,南行きの車からは見えない。
第9点 控訴人車のタイヤ痕及び擦過痕(甲8⑫,⑬,⑭,⑮,⑯)
道路面だけが写され,タイヤ痕,擦過痕及び測定基準が写っていない。
第10点 路面にかかれた「バイク」の文字及び記号(甲8⑮,⑯)
堀部警部補はこれらのマークについて言及していない。
6 原審は争点整理手続きをとらず,平成21年3月12日第4回口頭弁論期日
に,予告なしに弁論を終結した。
7 原判決の事実認定及び法的判断には誤りがあり,かつ,審理不尽,理由不備
の違法がある。
第3点 小野寺の業務上過失致傷事件
1 原判決は,控訴人の請求原因(1)エについて,下記のとおり判断した。
(3) 証拠(甲49,50,55,58)によれば,第1訴訟の第1審裁判所
は,本件事故につき,自衛隊車が毎時40kmの速度で進行車線をはみ出すこと
なく走行していたところ,控訴人車が急にコントロールを失って対向車線に入
り込み,小野寺がブレーキをかける間もなくフルトレーラーに衝突して発生し
たものと認定し,小野寺には,本件事故の原因となる速度違反や対向車線ヘ
のはみ出しその他何らの過失もなかったと認定したこと,第1訴訟の控訴審
裁判所も同様の認定をし,本件事故は控訴人の過失に基づく結果であり,小野
寺には何ら過失がないとの判断を示したこと,第2訴訟の第1審裁判所は,
本件事故につき,小野寺は時速約40kmの速度で本件道路を自衛隊車進行車
線を進行して本件事故現場手前の右カーブに入ったが,控訴人車がコントロー
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ルを失って左右に大きく振れ,自衛隊車の運転席の横を通り過ぎてフルトレ
ーラーに衝突ないし接触したと認定したこと,第2訴訟の控訴審裁判所も,
控訴人は控訴人車のハンドル・ブレーキの操作を誤り,バランスを崩して中央
線を越え対向車線に進出させたためフルトレーラーに衝突したと認定したこ
と,第3訴訟の第1審裁判所は,本件事故の態様につき,第2訴訟の第1審
裁判所の上記認定と同様の認定をしたことが認められる。
上記の各裁判所の認定及び証拠(甲16 ,17,19 ,乙3)によれば,
本件事故の原因は,控訴人車のハンドル・ブレーキの的確な操作を怠った控訴
人の過失にあると認められるのであって,小野寺の過失は認めることができな
い。したがって,小野寺を業務上過失致傷等事件の被疑者として送致しない
ことは何ら違法ではない。(原判決8~9頁)
2 刑事訴訟法第246条(司法警察員から検察官への事件の送致)は,司法警
察員は,犯罪の捜査をしたときは,この法律に特別の定のある場合を除いては,
速やかに書類および証拠物とともに事件を検察官に送致しなければならない,
但し,検察官が指定した事件については,この限りではない,と規定する。
3 ひとたび司法警察員が捜査した事件であれば,必ずしも犯罪の嫌疑ある事件
に限らず,罪とならないことが明らかな事件でも,あるいは犯罪の嫌疑がない
ことが明らかになった事件であっても,これを検察官に送致しなければならな
いのであり,司法警察員は,本条による場合は,事件を送致するか否かを決め
る権限を与えられていない。(大コンメンタール刑事訴訟法第3巻810頁)
4 玖珠警察署は平成11年10月7日に「バイクと大型車による接触事故,バ
イクの転倒により男性1名が負傷した」との届出(甲21)を受けた時点で業
務上過失致傷等事件として捜査を行わなければならない。
5 控訴人は,平成11年10月29日玖珠警察署に間ノ瀬巡査部長を訪ね本件
事故について話を聞き(甲3),約3ヵ月の加療を必要とする見込みとの内容
の診断書(甲23)を提出し,被害を届け出た。
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