それはあなたの思い違い

最初は女学生二人と思っていた。
その話っぷりがそう思わせたのだ。

しかし、耳に入ってくるのは片方の女性の声ばかり。
キャインキャイン　と自己主張の甲高い声だ。

時折、びっくりするほど声高になり、思わずちらっと見てしまった。
すると、女学生二人と思ったのは勘違いで、母と大学生と思わしき娘の二人だった。

どうらや、就職先について話ている模様。

なんで友達が多いところにいかんばとね。
別に死にはせんよ。
云々・・・

もちろんこれは娘のほうの声で、母親の声はほとんど聞き取れない。
けど、母親が何か言うたびに娘は声高に反論している。

ようするに、娘は東京に就職したいのだ。
母親は、なんかいろいろ言っているけど、なるべく近くに置きたいのだよね。

う～ん　これは…
きっと娘が寄り切るだろうな。

そして話はいつの間にか、新婚旅行の話になっていた。
お母さんなんか新婚旅行なんて昔のことで覚えてないよね～　と娘。

母親がなんといっているのかは聞き取れないけど、
娘さん、それはあなたの勘違い。

女性は、いやたぶん男性もかもしれないけど、
うん十年経っていても忘れことはない。
忘れた　なんて言っている人は、忘れたふりをしているだけでしょう。きっと。

結婚式や新婚旅行は人生の一大事なのだ。
それにどれだけの心を注いだかは、当事者しかわからないかもね。

娘さん、声高に人生論みたいなことを語っているけど、
人生は深く、理論的ではなく、意外なことだらけなのよ。

いつか、きっとわかるから。
だって、私もそうだったから。