少し(かなり?)前、林業界では、低コスト造林が話題になってました(なってます。?)
戦後に拡大造林した木が利用期を迎えたことに加え、木材利用が進み、皆伐が増えたので、再造林が必要になったいうわけです。
しかし、材価も下がり、再造林の費用を賄うのも難しい。
だから再造林の費用を抑える、低コスト造林という考えが広まりました。
従来の造林は、皆伐してから、地拵えを行って植栽、だったので、皆伐と植栽は別々の施業でした。
低コスト造林では、皆伐から植栽まで一貫して行う施業として見直します。
皆伐後、直ちに植栽することで、地拵えが省略できます。
状況次第では、1年目、2年目の下刈りが不要になることも。
こうしてコストを抑える。
ただし1つ問題が…
通常、植栽は春(3〜4月)、秋(10〜11月)と決まっています。
植栽は、植物の生理現象に合わせ、植物の根や芽が動き出す前(春)、根や芽が休んだ後(秋)に行うので、もし、皆伐が真夏に終わったら植栽ができない(活着が悪い)という事態もあり得ます。
そこで、「年中植栽できる苗木」が求められ、コンテナ苗が注目されるようになりました。
(コンテナ苗については☞ https://www.ffpri.affrc.go.jp/labs/zoki/planting/Endo_rep2.html )
なので、コンテナ苗は、低コスト造林の中でも重要なキーポイントです。
しかし、ここでも問題が…
コンテナ苗は通常の苗よりも高価…(その差は1.5~2倍程度…かな)
そこで、植栽本数を減らし、苗木代を抑えます。
従来の植栽本数は、3000本/ha。
これは地域によりますが、和歌山県だと4000〜6000本/ha、奈良県の吉野では7000〜12000本/ha。
低コスト造林では、2000〜2500本/ha。
コンテナ苗だと1日で1,000本植栽できるというデータがあるので、上の本数で言うと、作業員1人で2~3日で終わってしまいますね・・・
低コスト造林のポイントを簡単に分けると…
1.皆伐と植栽を一貫作業で行う。
2.植栽時期を問わない苗木を使う。
3.植栽本数(植栽密度)を抑える。
と、なります。
でも、個人的には、昔の拡大造林のように植えるのではなく、現地の状況と条件を考えたうえで植栽することが重要だと考えています。
造林は投資です。
林業という長い1サイクルを考えると、投資した資本の価値が下がるリスクは避けたい。
風が良く当たる場所では、伸長成長に悪影響を与えたり、もめが発生するかもしれません。
材を搬出するためのインフラ整備が不十分だったら、生産コストが嵩んでしまいます。
地質が悪いと成長に悪影響を与え、収穫(主伐)までの期間が延長したり、材の色が悪くなる可能性もあります。
言うは易しですが、事前に避けられるリスクは避けるべきだと思います。
造林コストを抑えることが目的であれば、「植栽本数を減らす」で、いいと思います。
しかし、木材の安定供給、エンドユーザーが求める材質など出口面を考えると・・・、
植栽本数を減らした造林(投資)。
従来の植栽本数とした造林(投資)。
どちらが正しいかは分かりません。
これまで植栽の時点で、どんな材を生産したいか出口を見据えて、植栽してないのが現状でしょうから。
まぁ、単純に「コストを抑えて植える」だけではダメだと思いますよ・・・。