山いこら♪

山に森、生き物、林業、樹木、木材などに関する色々な知識や楽しさを共有したいです!みんな、山いこら~

鹿皮なめし 毛なし

2019年02月21日 | 狩猟・獣害に関するお話

 前回に引き続き、今回もシカ皮鞣しのお話で、毛なしバージョンのなめし方です。

 なめし方としては、基本、前回ご紹介した方法と同じですので、毛の取り除き方をメインにご紹介させていただきます。

 

用意するもの

 シカ皮1枚、バケツ、石灰、塩(食塩でも可)、毛を入れるゴミ袋

 

毛抜き作業

 バケツに石灰と塩をそれぞれ500gずつ入れます。

 この量は・・・ホント適当です。すみません。

 これが多いのか、少ないのか、も分からないんですが、この量で毛は抜けるので・・・。

 その後、水を2リットルほど入れて、石灰が底にたまらないよう、しっかりと混ぜます。

 

 シカ皮を入れます。

 シカ皮全体がしっかり浸かるようにして下さい。

 しっかり浸からないようなら、水を足して下さい。

 上の写真は、皮が浮いてきてるので、浸かっていないように見えますが、だいたいこんなこんな感じで大丈夫ですが、しっかりと染み込むように混ぜて下さい。

 冷凍したシカ皮の場合は、冷凍のまま放りこんでも大丈夫です。

 

 そして1~2日間、石灰に浸けておきます。冷凍の場合は解凍具合もあるので、冬だと2~4日間くらいかな?

 浸けるときは、毛の根元(人で言えば頭皮?)まで、染み込むように浸けて下さい。

 バケツの中で、皮をしっかり混ぜたり、底に溜まった石灰をかき回したり、時々、混ぜ混ぜして下さい。

 

 浸け終わったら、皮を取り出し、毛を取り除きます。

 取り除くとき、僕は自作した木ベラを使ってます。

 石灰がしっかりと染み込んだところは、簡単に取り除けます。

 

 どんどん、取り除きます。

 

 完了~

 作業時間は1時間半~2時間。結構かかりました。

 白い部分が石灰がしっかり染み込んではズルって簡単に取れた箇所。

 茶色い部分は、しっかりと染み込んでおらず、手こずった箇所。

 

 この後、肉を取り除く作業になります。

 これ以降の作業は、前回の記事「シカ皮なめし 毛付き」をご確認ください。

 なお、個人的には、肉を取ってから、毛を抜く作業に入ることをお勧めします。

 と言うのは、毛があった方が肉を削ぎ落としやすいからです。

 あくまで、僕個人の所感なので、先に肉か、先に毛か、それはお好みで。

 

 なめした後は、こんな感じ。

 しわの部分を引っ張りながら、両面をサンダーで磨きます。

  シカ皮は、丈夫な上、薄いので、簡単に引っ張れます。

 なお、サンダーを使う場合、破かないように気をつけて下さい。

※ちなみに写真のシカ皮は、仕上げが完全に終わっていないものを載せています。

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鹿皮なめし 毛付き

2019年02月17日 | 狩猟・獣害に関するお話

 前回、シカ毛皮のランドセルカバーをご紹介したので、今回はシカ毛皮のなめし方をご紹介させていただきます。

 なめし方を紹介したホームページはたくさんあって、僕もそれらを参考にして始めました。

 罠を使って、時々、少しシカを捕る程度で、頻繁になめす訳ではありませんが、素人の僕の経験でも、これから始めたいという方の参考になれば幸いです。

※このブログをご覧になるツールによって、文章の説明と写真にズレが生じる場合があります。その点は、ご容赦下さい。

 

「シカ皮の保存」

 捕獲したシカを解体し、皮を採取した後、そのまま、なめし作業に入ります。

 解体後、すぐになめし作業が出来ない時は、皮だけ採取して、冷凍保存して下さい。

 なめすときは、シカ皮を解凍するだけです。

 

「用意するもの」

 シカ皮(1枚)、焼きミョウバン1kg、塩1kg

 普通のナイフもしくは皮剥ぎ用ナイフ(皮に残った肉を除去するため)、中性洗剤(何でも可)

 ビニール手袋、古新聞(10枚程度)、くし(毛並を整える)

 汚れても良い服(僕は長靴、雨合羽)、ボロ布(古タオル1枚分)、油(サラダ油でも可)

※この後の説明で、上記に書かれていないものも出てきますが、読んでいただきながら、必要に応じて、ご用意ください。 

 

「なめし方」

①シカの毛皮を水洗い。

 毛皮に付着した泥、ひっつきむし、ダニなどを水洗いにより取り除きます。

 ただ、ダニは水洗いで完全に除去できないので、目に付くダニを取りあえず除去するって感じで、メインは泥など。

 洗ったら、毛からボタボタ垂れる水を簡単に切り、干します。

 干すと言っても、完全に皮が乾くまで干すのではなく、水が切れる程度に干します。

 ※毛無しの場合は、古いタオルなどで拭き取る程度で。

 

②肉を除去する。

 皮を傷つけないように肉を除去します。

 普通のナイフだと、先端で皮を傷つけることもあるので、先端が尖っていない皮剥ぎ用のナイフを購入されてもよろしいかなと思います。(ちなみに僕は普通のナイフで除去しました。)

 こんな感じです。ある程度の妥協は必要かと思います。

 

③中性洗剤で洗う

 脂分を除去するため、中性洗剤で洗い、水ですすぎます。

 ①と同じ様に水切ります。

 

④ミョウバンに漬ける

 皮1枚につき、焼きミョウバン1kgと塩1kgを混ぜ、しっかりと塗り付けます。

 なお、塩は普通の食塩でもOKです。

 

 肉を除去した側の皮同士がくっついたりするので、そこを丁寧に剥がしながら、ミョウバンを塗りつけます。

 くっついたままだと、完成後、そこから破れる原因になります。

 下の写真のように、皮の端っこがクルッとなっている部分も丁寧に塗りつけます。

 僕は実践したことありませんが、生ミョウバンでも良いそうです。

 塩が含まれていると、後々に水分が出てくるので、それを考えると、生ミョウバンの方が良いとのことです。

 

⑤1週間から10日間ほど寝かす。

 上に新聞紙をかぶせ、クルクル回して、1週間から10日間ほど、日陰の場所でねかします。

 もしくは、毛皮側を下にして、段ボールの上に置き、新聞紙をかぶせ、その上に段ボールを置き、さらにその上にベニヤ板など重しになるものを置きます。

 新聞紙を被せただけでは、シカ皮の端がクルッと反ってくるので、それを防ぐために重しを置きます。

 

⑥ミョウバンを取り除く

 左下の写真がミョウバン除去前、右下の写真がミョウバン除去後。

 上の2つの写真は、上から重しを置いて、ねかしたものです。

 下の2つ写真は、くるくる巻いて、ねかしたたものです。

 左下が除去前、右下が除去後です。

 除去後の写真を見ると、所々に”しわ”があり、その部分は、きちんとミョウバンが塗りつけられていない部分です。

 こういうところから、皮が破けてしまいます。

 

⑦仕上げ

 軽石や紙ヤスリなどで磨きます。

 手で磨くと大変なので、僕は電動工具を使って磨きます。

 電動サンダーの場合、ヤスリは♯100、♯150の物を使っています。

 電動研磨機の場合、♯80の物で磨きますが、作業は楽になるものの、破けやすいので、作業には注意が必要です。

 磨き終わった状態です。(上の写真と下の写真は別の皮です)

 

⑧完成

 最後に油を塗って、日陰で干して、完成!

 油は普通の食用油を使っています。

 あとは必要に応じて、櫛などでブラッシングします。

 あと、塩の影響で水分がなにじみ出てくることもあるので、暗い場所で保管しながら、毛皮の様子を見る必要があります。

 特に夏場の保存には気を付けていただき、水分が出てきたら、古新聞などで拭き取ってください。

 1~2年、暗い場所で保存すれば、皮が落ち着いてくるかと思います。

 シカ解体のとき、皮から肉を除去するとき、ミョウバンがきちんと塗りつけられていなかったとき、電動サンダーで磨き過ぎたときなどが、破ける原因になります。

 毛の質は捕獲した個体によりますし、元々、毛が抜けている個体もいます。

 成獣はかたく、バンビはやわらかいので、僕はバンビの皮が好きですね。

 ただし、皮が薄く、破けやすいので、丁寧に処理する必要があります。

 

 全体を通して大変な作業は肉の除去で、それが終われば、あとは楽な作業・・・かな。

 

 ちなみに、肉を除去し、洗った後、皮をパリパリに干して保存することも出来ます。

 パリパリになった皮を、柔らかくなるまで水に漬けて、戻します。(大きさにもよると思いますが、2~3日くらいかな。)

 その後、「④ミョウバンに漬ける」から順に作業を行えば、同じようになめす事が出来ます。

 

 シカ皮を入手したが、すぐになめし作業ができない場合は、

 ・シカ皮をそのまま冷凍する(なめすときは解凍する。)

 ・シカ皮から肉を除去して乾燥させる(なめすときは水に漬ける)

 という方法で、保存することが可能です。

 

 毛皮をそのまま敷物に使っても構いませんが、毛が抜けてくるので、その点、ご注意ください。

 野外、特に山で使う場合、カバンのカバーにしたり、昔のマタギみたいに身に付けないようにしてください。

 シカと間違えて誤射される・・・というような事故になる可能性がありますので・・・。

 

 僕は素人ですが、シカの皮なめしを始めたい!という方の参考になれば幸いです。

 それなりの時間はかかりますが、それほど難しい作業ではないので、機会があれば、是非、挑戦してください。

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シカの毛皮

2019年02月14日 | 狩猟・獣害に関するお話

 以前、小学校に通う次男に、シカの毛皮でランドセルカバーを作ったら・・・

 「これ良いけど・・・、一人だけこんなんヤダ。」

 ガーン!

 

 みんなと違う。目立つ。

 それが嫌だったみたい・・・

 絶対に注目されるもんね・・・。

 カッコいいけどな~

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講座「林業施業と森林科学」を開催した・・・という報告

2019年02月12日 | 樹木医・森林インストなどの活動のお話

  個人的な考えですが、基本的にみんな森林づくりのビジョンを描く力を持っている。

 だけど、それがあまり鮮明ではなかったり、偏った視点になったり、しているんじゃないのかなと・・・

 その前に、そもそも森林づくりビジョンって何?って話ですよね・・・。

 これまで通り木材生産を目指したスギやヒノキの人工林整備、広葉樹の木材生産やシイタケ原木、薪生産などを目指した広葉樹林施業、減災効果を目指した森林整備、未整備森林の解消など多様なニーズに合わせたもしくは、組み合わせた森林づくりを目指すため、この施業をするとこうなるな、ここはこんなリスクがあるな・・・と言う風に、森林を見たとき、向き合ったときの想像力、創造力、イメージを、森林づくりビジョンと僕が勝手に言ってます。

 奈良県吉野地方にいた頃、間伐の選木作業中に師匠から「どんな山にしたいかイメージしながら選木しているか?、選木してきた木を振り返って見て、どんな山になるかイメージしながら、次を選木しているか?」とよく言われていました。

 何となくボヤーっとイメージできても、やはり、経験がなければ、明確なイメージは難しく、師匠に質問をしても、いつも答えは「木を見たら分かる」・・・。

 そんなある日、樹木医の資格を得る過程の二次試験で、樹木医の診断に必要な樹木の基礎知識や森林の基礎知識を理解したとき、師匠の言葉を理解することができ、今以上に森林づくりのビジョンを鮮明に描けるようになりました。

 これって、とても重要だなーと、特にこれから森林や林業に関わる上で必要だなーと思ったわけです。

 前置きが非常に長くなってしまいましたが、これから森林や林業に関わる方が、森林づくりのビジョンをより鮮明に描けるように、何かできないかなと考え、「森林づくりビジョン開眼講座」の開講を計画した次第です。

 先日(2019.2.9)、和歌山県有田川町のマルカ林業株式会社様のご協力を得て、今回、「林業施業と森林科学」をテーマに体験講座を開催させていただきました。

 今回はその内容を簡単にご紹介します。

 座学2時間、現場2時間の構成です。

 はじめに植栽、下刈り、つる切り、除伐、枝打ち、間伐の6つの林業施業の適期を示す林業施業カレンダー作ってもらいました。

 これは正解を当てるのではなく、自分が思う適期を改めて考えていただくために行いました。

  

 

 その後、それぞれの施業の適期を解説。

 植栽の春植え・秋植えの根拠、コンテナ苗であっても考えておくべき夏植えのリスクとその根拠。

 下刈りを夏に行う理由と根拠。

 下刈りと同時に行うつる切りの対象となるつる、下刈り不要の林齢になった後もつる切りが必要となるつるの特徴。

 枝打ちは今回省略させていただき、間伐の適期とその根拠。

 間伐の効果、間伐の選木、林分発達段階を絡めた森林づくりのお話をさせていただきました。

 体験版と言うことで、情報が詰め込み過ぎだし、森林科学と言っておきながら樹木の生理学半分以上占めてたし、と、改善点が見えてきました。

 単なる学問の話で終えるのではなく、自分の現場経験を織り交ぜながら、現場の方が聞いても「なるほど」っと思ってもらえるように、初めての方が聞いたら「早く現場で活かしたい」って思ってもらえるように、講座のカリキュラムやテキストを作成していこうと思います。

 

 実際のところ、補助金の関係、山主の意向、法律などの制限があって、今回のお話のように行うことは難しいと思っています。

 でも、知る必要はあると思っていて、同じ様に知りたい!と思う方に向けて、今後も企画していこうと思います。

 

 なぜ、林業施業の適期を知る必要があるのか?

 それは、林業施業が投資だからです。

 投資したお金は、収穫した木材で回収し、再び、植栽という投資を行います。

 林業施業という投資を最大限の効果で発揮できる時期が適期なので、知る必要があると思っています。

 実際に実行できるのか?という問題点はありますが、知っておけば、次につなげられると思います。

 知識は誰からも奪われることのない1つの財産です。

 僕の知識という財産を、これから森林や林業に関わりたい方に提供し、共有できればなーと夢見てます。

 

 そして次回。

 これも体験版でクローズに行うんですが、自然観察の指導者育成向けの講座「樹木医学と自然観察」を行う予定です。

 これも間伐木の選木に繋がるようにしていきたいなーと思います。

 

 それと、本講座開講の前に、参加費の設定という悩ましく大きな問題も考えねば・・・

 

 

出来杉計画でも報告されているので、よろしければ、そちらも併せてご覧ください!

http://www.deki-sugi.com/up/2019/02/post-5d53.html

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倒伏から再生したヒノキ

2019年02月06日 | 樹木・花に関するお話

 ずっと昔、林道を作設されたときの切り土面?かな、そこに生えていた変わった樹形のヒノキ。

 一度、倒木したものの、再び、立ち上がったようです。

 よーく見てみると、地面に接している幹から根が出ています。

 倒木から再び立ち上がる時、地面に接した幹が樹体を支える基盤になって、上方に向かって、伸びたと思います。

 その内、地面に接した幹から根(不定根)が発生し、今では根として機能しているようです。

 ヒノキはスギよりも発根する力が弱いとされています。

 根を損傷した場合、スギは再生しやすく、ヒノキは再生しにくい。

 また、スギは挿し木しやすいが、ヒノキは挿し木がしにくい。

 そんなヒノキも、倒木した後も、再び立ち上がるように、しっかりと根を再生する。

 樹木の生命力はホントにスゴイなと、感心させられます。

 一般的に、木材としての価値はありませんが、とても魅力あるヒノキです。

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前生林の伐採株

2019年02月03日 | 森林・山に関するお話

 とある人工林を歩いていたら、今の人工林になる前に伐採された切り株を発見。

 切り株の高さは約1m、直径は・・・感覚的に60~70cm。

 比較できるものと一緒に撮影しなかったので、わかりにくいですね・・・。

 

 ところで、高さ1mの位置で、こんな大きな木を伐ったとは考えにくい・・・。

 切り株は、天然ヒノキだと思うので、こんな位置で伐採するのはもったいない。

 おそらく、前生林の頃からより、土壌が流されて、見かけ上の切株高が高くなったのかな?

 根の位置から考えると、厚さ50cmくらいの土壌は流された・・・かな?

 きっと天然林だったので、落ち葉の層も厚い・・・はず。10cmくらい?

 

 と、色々考えたけど、いずれにしろ、伐り高は高い気がする・・・。受け口も高いし・・・。

 取りあえず、前生林の頃より土壌の層が薄くなっていることは確実かな。

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作業道 クラックと崩壊

2019年01月31日 | 林業・森林整備・現場技術に関するお話

 10年くらい前のお話で、どこの現場とは言えませんが、以前、僕が担当していた搬出間伐の現場であったお話です。

 ヒノキ林に設けられた作業道。

 上司に対し、つけ過ぎなので、これ以上の延長の中止を求めたものの、出材量が目標に届かず、聞き入れてもらえず、若さゆえに、怒り心頭、怒髪天を衝く!みたいな時がありました(笑)。

 

 で、そこの作業道が崩壊する!と気になって、搬出間伐の事業終了後も、定期的に観察をしてきました。

 事業終了から半年後、作業道の路面にクラックが発生。

←ラインはクラックが発生した部分

 

 嫌な予感が的中・・・と思った、その1年後に崩壊・・・。

 ヒノキ林で1伐2残という強度な間伐を行った上で、作業道を付け過ぎたので、崩壊しない方がおかしいです。

 かなり下の谷まで崩壊・・・

 崩壊したとき、ここの職場を辞めていたんですけど、受け持った現場には愛着があるので、気になって足を運び、この光景を目の当たりに・・・

 山が生み出す恩恵も弊害も、その山に、その地域に住む方たちに影響を与えます。

 だから、こんな無茶な施業をしてはいけないのになー

 

 ちなみに!

 出材量が目標に到達した途端、作業道を付け過ぎだ!どんな指導をしてたんだ!と怒られました。。。(*_*;

 いや~、現場監督の自分を通り越して、上司が業者に直接指導してたんでね・・・指導のしようが無かったんですけど・・・

 と言うわけで、辞めさせていただいた次第ですm(_ _)m

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風害 林業 完満材とうらごけ材

2019年01月27日 | 林業・森林整備・現場技術に関するお話

 今回は、「実は、林業で育てている立木は風に弱い傾向がある」というお話です。

 林業は木材生産を目的とした産業です。

 木材を生産する上で求める立木の形状は「完満材」。

 完満材は、末口と元口の直径差がほとんどない木材のことを言い、反対に末口と元口の直径差が大きい材を「うらごけ材」と言います。

 単純なイメージにすると、赤い点線が柱材となる部分、それ以外は端材になる部分で、左が理想とする完満材です。

 端材となる部分が少ない完満材は、歩留まりが良いので、木材生産は完満材を目指した施業を行います。 

 木材生産という観点で言うと、完満材はうらごけ材より優れていますが、うらごけ材は完満材より風の影響を受けにくいというメリットがあります。

 釣り竿は、先端がしなやかで曲がりやすいことに対し、手元はほとんど曲がりません。

 同様に立木も、先端が細く、根元が太い形状の場合、風が吹いた時、先端がしなやかに揺れるため、根元に曲げの力の影響はほとんどありません。

 一方、先端の直径と根元の直径の差がほとんどない立木の場合、風が吹いた時、”てこ”の原理が働いて、根元に曲げの力が及ぶため、幹が折れてしまう可能性が出てきます。

 感覚的な話をします。

 釣り竿を振り下ろすと先端部が激しく揺れますが、手元はあまり揺れないし、手首の負担はありません。

 もし、手元と先端が同じ太さの釣り竿があったとして、それを振り下ろすと、先端部はあまり揺れず、手元も支えきれず、手首の負担が大きくなる・・・という感じです。(この表現で、お分かり、納得いただけるでしょうか?)

 

 一般的に、「幹や枝の形状が根元にいくほど太くなる円錐形になると曲げの力が均等化される」と言われています。

※長い矢印ほど曲げの影響を受けているというイメージです。

 なので、立木(樹幹・枝)の形状は、完満材よりも、うらごけ状の円錐形の方が曲げの力を均等化することができるというのが、うらごけ材のメリットです。

 

 さて、木材生産を目的とするスギやヒノキの人工林は、枝打ちをしたり、下枝が枯れたりするため、自ずと樹冠の位置が高くなります。(生きた下枝がびっしり生えているスギ・ヒノキ人工林って、ほとんどないと思います。)

 林内の立木(以下、林木)は、高い位置にある樹冠を支えるため、樹幹上部で盛んに肥大成長し、根元の肥大成長は小さくなり、結果、末口と元口の直径差が少ない完満材の生産につながります。

 樹木の成長に応じて、一定の密度を保ちつつ、樹冠をコントロールすることで完満材を生み出す、というのが林業です。

 一方、単木の場合、下枝が枯れないため、樹冠の位置が低く、一番下の枝も光合成を行うため、樹幹下部も盛んに肥大成長し、結果、末口と元口の直径差が大きいうらごけ材になります。

 単木はうらごけ材で、風が吹くと樹幹上部は激しく揺れますが、樹幹下部はほとんど揺れません。

 林木は完満材で、風が吹くと、はじめ樹幹上部が小さく揺れ、やがて樹幹下部で大きく揺れ出し、結果、立木全体が揺れます。

 さらに・・・

 単木は樹冠の位置が低いため、重心も低くなります。

 林木は樹冠の位置が高いため、重心も高くなります。

 音楽で使われるメトロノームの同じで、重心を高くすると大きく揺れ、重心を低くすると小さく揺れます。

 

 まとめると、

 単木は曲げの力を均等化させる「うらごけ材」で、樹冠(重心)の位置が低いため、風が吹いても大きく揺れにくい。

 林木は曲げの力を均等化させにくい「完満材」で、樹冠(重心)の位置が高いため、風が吹くと大きく揺れやすい。

 

 林木は周囲に他の樹木があるため、お互いに風を遮りあう関係にあるので、簡単には倒れません。

 しかし、強風が吹き続けると、大きく揺れ出し、写真のように樹冠が絡むこともあります。

 

 また、数十年に一度の大型台風など、林木同士が互いに風を遮りあっている力以上の風が吹くと、一気に倒木することもあります。

 さらに、林木は、間伐により立木密度が下がったり、周囲が皆伐されたりすると、簡単に倒れてしまう可能性も出てきます。

 

 単木の様な「うらごけ材」は、大きな節もあるため、林業では嫌われる木材です。

 しかし、樹木という観点では、下枝も光合成を盛んに行っている健康的な樹木と言えます。

 

 今回のお話で、理解して頂きたいのは、木材生産を目的とする林業で育てている樹木は、必然的に「風の影響を受けやすい樹木」に育つ傾向にあるということです。

 という風に考えると、強度間伐や皆伐を行うことで、林木に与える風の影響が大きく変化するということです。

 ただし、強度間伐や皆伐を否定しているわけでも、やってはいけないというわけではなく、その行為が、林木に与える風の影響を変えてしまうことを認識することが大切だと思っています。

 木材は山主にとって資産です。

 そして、その資産は、風の影響を受けやすい資産なので、林業施業は現場に応じて、適した時期にその現地に適した施業を行うのが理想で、一律に35%間伐すれば、良いというものではありません。

 適した間伐率を見極めるって難しいんですが、現地によって適した間伐率があるという事を知ることは大切だと思います。

 知っていれば、それを目指すことが出来ますし、技術向上にも繋がります。

 

 脱線しましたが、今回のお話をまとめると・・・

・「うらごけ材」は、木材の歩留まりは悪いけど、曲げの力を均等化させるというメリットがある。

・「完満材」は、木材の歩留まりは良いけど、曲げの力を均等化させにくいというデメリットがある。

・単木の形状は「うらごけ材」で、下枝が枯れず、樹冠(重心)の位置も低くなるため、風が吹いても大きく揺れにくい。

・林木の形状は「完満材」で、下枝が枯れており、樹冠(重心)の位置も高くなるため、風が吹くと大きく揺れやすい。

・林業は「完満材」を生産したいので、必然的に「風の影響を受けやすい樹木」に育つ傾向にある。

・林木は、風の影響を受けやすいという欠点を、密集(密度)で補っているため、間伐や皆伐によって、林木に与える風の影響が変化する。

 

 というところです。

 繰り返しますが、風の影響を受けやすくなるから、強度間伐や皆伐はダメという話ではありません。

 林業は、必然的に風の影響を受けやすい樹木を育てているので、その点を考慮した施業や整備が必要だということです。

 というのも、強度間伐や皆伐を否定してしまうと、施業の選択肢を狭めてしまう・・・というのが、僕個人の考えです。

 林業施業や森林整備の何らかの参考になれば、幸いです。

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風害 林業 もめ

2019年01月25日 | 林業・森林整備・現場技術に関するお話

 2018年の台風・・・。

 今も風倒木処理に追われている地域もあるかと思います。

 僕自身も、近所の方に「薪にしてエエで。」と・・・、裏を読めば「伐っといて。」ってことなんですが・・・。

 とにかく風倒木処理はおっかないので、出来ないモノのには手を出さないようにしています。

 

 と言うわけで、今回は風による林業被害「もめ」について。

 
 林業を営む上で、気象による自然災害、特に台風や豪雨の発生は、ホントに嫌なものです。
 台風が進行する中、現場の様子を思い浮かべながら、早く治まることを願わずにはいられません。
 木材を何十年と育てる林業にとって、風をはじめとする気象害は、避けては通れないものですが・・・。
 
 
 林業現場において、風による被害と言えば「もめ」。
 樹木が瞬間的に強くねじられたり、強く曲げられたりすると、木材の繊維が細かく断裂することを「もめ」と言います。
 もめは、部分的に発生することもあれば、幹全体に及ぶ場合もあります。
 
 盛り上がった部分が、断裂された箇所です。
 
 幹全体に及んでいると、いくつもの凸凹の盛り上がりができます。
 
 断裂された部分は損傷した部分なので、樹木はその傷を修復しますが、表面の凸凹は残ります。
 年月が経てば、表面上の変化は分かりにくくなるかもしれませんが、材部に受けたダメージは修復されないなので、木口面にはその傷痕がハッキリと残っています。
 また、断裂された部分から腐朽菌が侵入してしまうと、材部が腐朽する可能性もあります。
 
(上の写真は断裂した部分から樹液が漏出)
 
 断裂具合にもよりますが、伐採中に、断裂部分から幹が折れることあります。
 「もめ」がひどい現場では、作業中に幹折れが発生するリスクがあると知っておくことも重要です。
 また、表面上の修復が完了していても、内部の断裂がひどければ、強風が吹いた時、伐採の時に幹が折れる場合もあります。
 風害が激しいと、上の写真の様に、年輪に沿うように材が剥離されることがあります。
 
 断裂した部分は、修復されますが、それは、表面的な修復であって、樹幹内部の断裂までは修復されません。
 なので、樹幹内部の断裂が激しいと、上記の写真のように、幹が裂けることがあります。
 
 図はシンプルに表現していますが、実際は、何か所でいくつも断裂していると思います。
 
 「もめ」は、幹が曲げられたとき、圧縮の力が働いて発生します。
 風によって、幹が左右に揺さぶられます。
 下の図で言うと、左に揺さぶられたときに圧縮されて、盛り上がります。
(圧縮されたイメージ)
 盛り上がった部分は、圧縮された部分の細胞が押しつぶされたり、切断されて生じたものです。
 風が吹いて、引っ張る力が働いて、ブチブチっと断裂したと、いうわけではありません。
 表面上、もめが発生していなくても、「ヤニ壺」や内部の材が剥離する「目回り」が発生している可能性もあります。
 
 「目回り」をイメージするとこんな感じで、赤いラインが損傷した部分になります。
 
 スギやヒノキを造林するとき、普段から風が通りやすい場所という情報も重要です。
 そういう場所に造林する場合は、長伐期施業は風害リスクが高まり、不利になる可能性が高いですし、風の影響で、あまり樹高が伸びず、材積の蓄積も望めない可能性も考えられます。
 元々、林縁部のスギやヒノキは、枝を残して、風から守る工夫もしていました。
 深根性の広葉樹を植えて、風の力を緩和するという方法もアリかなと思います。
 
 あと、個人的な考えになりますが、風の影響が受けやすい環境下では、獣害対策の単筒は、あまりオススメできません。
 高い可能性で、単筒が飛ばされたり、倒れると思います。
 
 過去の被害情報や気象情報をもとに、風の影響を受けやすい森林エリアを抽出する事が出来れば、風害リスクの高い/低いを加味した上で、どのような林業経営を目指すべきか、判断できるツールになるかもしれません。
 特に長伐期を目指す場合は、心強いツールになるなと思いますし、災害対策を視野に入れた森林整備の着手にも必要な情報だと思います。
 
 個人的な考えですが、過去の被害や気象情報を取り入れて、森林GISなどのシステムとマッチングさせ、林業経営の判断できるツールを作成できないかな~って妄想しています。
 
  って、どこかで実践してる事例ないですかね? 
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カニムシ

2019年01月24日 | 虫・その他生物のお話

 山の中には、サソリに似た小さな虫「カニムシ」という生物がいます。

 体長は5ミリ以下の小さな虫で、さらに小型の虫、ダニやトビムシなどを捕食します。

 落ち葉の下など土壌で生活するタイプ、スギやヒノキなどの樹皮下で生活するタイプがいるそうです。

 上記写真の本種は、ヒノキの樹皮で見つけたカニムシで、名前は分かりません。

 「トゲヤドリカニムシ」かな~と思っているところです。

 

 さて、2018年6月、国立研究開発法人 森林研究・整備機構 森林総合研究所が「マダニを捕食するカニムシ」を発見したと報告されました。

 マダニの新たな天敵とされるカニムシの名前は、「オオヤドカリカニムシ」。

 このカニムシは、アカネズミと共生し、主にコナダニなどを食べているとのことです。

 このオオヤドリカニムシに、マダニの幼虫を与えたところ、ハサミでガッと捕まえて食べたそうです。

 さらに同じサイズのマダニの成虫も捕食するとのことです。

 しかも、オオヤドリカニムシがマダニを捕食する、世界で初めて、天敵であることが示されたそうです

 ちなみに、アカネズミはオオヤドリカニムシを食べないのか?

 研究によると、カニムシが近寄ってきても、少しニオイをかぐだけで、カニムシが毛をつかんで、背中に乗っても、アカネズミは振り落とすようなことはしないそうです。

 ネズミを吸血するマダニを食べてもらうためではないか・・・と推測しており、ネズミとカニムシは共生関係にあるかもしれないということです。

 

 SFTSなどの感染症を媒介するマダニを食べてくれるカニムシ。

 体長5ミリととても小さい虫ですが、マダニの天敵、頼もしいですね。

 サソリに似た虫「カニムシ」。

 山や森に行ったとき、一度、探してみてください。

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