弊社の業務の中で、「皆伐後の再造林」に関する色々なご質問や相談事を受けることがあります。
内容は実に様々で、植栽する樹種の種類、疎植がいいのか密植が良いのか、ヒノキの表裏は重要か、など技術的なことも含めて多岐にわたります
今回は、「どうすれば、皆伐後の再造林を進めることが出来るのか?」という質問に対して
なお、回答に関して、ここでの回答が「正しい」というわけではないので、ご了承ください。
さて、「どうすれば、皆伐後の再造林を進めることが出来るのか?」に対する回答です。
弊社の回答は、「皆伐後に再造林をやりたいと思えるようになれるか否か」
実は、皆伐後の再造林をやらないといけない。と理解していても、再造林が進まない背景は、「やりたい」という想い・気持ちがないからです。
これは、森林所有者、森林組合、林業事業体、そして再造林を最前線で行っている現場作業員など、それぞれの立場の方たちが「再造林をやりたい」という想い・気持ちがあるか否かです。
再造林が進まない理由として、一般的に「原木価格の安さ」や「獣害」が指摘されます。
しかし、本当に原木価格が上がると本当に再造林を進むと言えるのでしょうか。
そして、獣害が無くなると本当に再造林が進むと言えるのでしょうか。
原木価格が上がることで、お金に余裕が出来た分、やらないといけない再造林は進むかもしれません。
しかし、再造林後に続く、下刈りなどはどうでしょうか。
そもそも、皆伐再造林に関わらず、「やりたくないけど、やらないといけない」というモチベーションは、業務・事業の継続性から考えると非常にリスクです。
働く人たちのモチベーションが低いことは、クオリティが下がる、離職する人が増える、クライアントからの信頼を損なうなどのリスクに繋がります。
所有している山林が皆伐されることになりました。
所有山林は1haで、伐採業者さんが500万円で購入してくれました。
銀行口座に500万円が振り込まれています。
皆伐後の再造林に100万円の費用が必要で、3年間の下刈りで合計50万円の費用が必要です。
造林と保育の経費を差し引くと、手元に350万円が残ります。
あなたが森林所有者なら「再造林を行いますか?」
補助金を使えば、自己負担が0円になります。
この場合なら、「再造林を行いますか?」
あなたが森林組合または林業事業体なら、森林所有者から負担金をもらうことなく、補助金内で「事業として再造林を行いたいですか?」
あなたがそこの従業員なら、補助金内で仕上げろと言われて、「その会社で再造林という仕事を続けていきたいですか?」
あなたが森林所有者なら、立木を1ha500万円で業者さんに売りますか?
それとも、土地込みで1ha400万円で業者さんに売りますか?
弊社では、「どうすれば、皆伐後の再造林を進めることが出来るのか」という質問には、「再造林をやりたいと思えるか否か」と回答しています。
つまり、再造林をやりたいと自ら思えるように導くことが再造林へと繋がります。
林業は自然相手の仕事ではありません。
林業は自然を通じた人間相手の仕事です。
森林所有者が「造林してほしい」と思うようになるには、どうすればいいのか。
森林組合や事業体が「造林を事業にしたい」と思うようになるには、どうすればいいのか。
現場で働く人たちが「造林で働きたい」と思うようになるには、どうすればいいのか。
造林の補助金を補助率100%超えにしても、「やりたい」という気持ちが弱ければ、モチベーションが下がるため、造林は進みません。
「どうすれば、皆伐後の再造林が進むのか」ではなく、「どうすれば、再造林をやりたいと思えるようになるのか」に思考のフォーカスを変えてみて下さい。
再造林の背景には、山の中、重たい苗木を背負って、苗木を植えている現場で働く人がいることを忘れてはいけません。
現場の最前線で働く人たちのモチベーションはとても大切です。
その人たちを雇用する組織は、そのモチベーションを上げるための仕組みを整えることが必要です。
その山の所有者は、この先も固定資産税を支払い続け、中には相続税で悩む人がいることを自分事として考えることが必要です。
ちなみに、再造林に従事する人たちが嫌々であろうと、モチベーションが低かろうと、クオリティが低下しようと、その後の下刈りをやらなくても、結果的に皆伐後に再造林が行われるなら何でもOKであれば、「どうすれば、皆伐後の再造林を進むのか」という思考のまま、フォーカスを変更する必要はありません。
弊社では、「どうすれば、再造林をやりたいと思えるようになるのか」という視点で、林業という業種と関わっています。