はぐくみ幸房@山いこら♪

「森を育み、人を育み、幸せ育む」がコンセプト。株式会社はぐくみ幸房のブログです。色々な森の楽しさ共有してます♪

スギノアカネトラカミキリ(アカネ材) 天敵防除

2017年01月29日 | 樹木の病気・森林被害のお話

 林業木材産業業界では、長年、問題になっている「スギノアカネトラカミキリ(アカネ材)」にも、天敵生物が存在します。

 関係者が見ると、「おっ!」と思うかもしれませんが、天敵防除の研究も行われていました。

スギノアカネトラカミキリ

アカネ材(スギ) ←アカネ材(ヒノキ)

 

 本題に入る前に、まず、スギノアカネトラカミキリについて、簡単に紹介を(詳細は、いずれ別の機会に。)。

 成虫は、スギやヒノキの幹に付いている枯れ枝に産卵します。

 孵化した幼虫は、枯れ枝内部を喰い進み、やがて、幹内部に潜り込みます。

 幹内部では(一般的に)2~3年間、棲み付き、幹内部の材を食べます。

 そして、再び、枯れ枝に戻り、蛹室を作り、枯れ枝に脱出孔を作って、羽化します。

 

 上の写真で言うと、青い矢印が初期幼虫の孔道、赤い矢印が終期幼虫の孔道となります。

 幼虫が喰い進んだ穴は、きなこのような虫糞が詰まっています。

 

 これを製材(柱や板)にしたとき・・・

 

 幼虫の孔道や虫糞が表面に出てきます(ちなみに、上写真のアカネ材は、我が家の書斎に使用しています。)。

 右写真の矢印は、黄色い矢印が孔道&虫糞、青い矢印がカミキリが侵入した影響により発生した青変菌(せいへんきん)です。

 このようにスギノアカネトラカミキリが侵入した木材を「アカネ材」、「アリクイ材」などと呼びます。

 

 同一樹種間におけるアカネ材の強度と一般木材の強度は、大きな差はなく、アカネ材は見た目上の問題だけで、材としての強度は問題ありません。

 

 上の写真はアカネ材が使われた柱で、強度は問題ありません。

 とはいえ、「見た目上の問題」が一番の大きな問題になるわけですが・・・ 

 山主にとって、アカネ材は木材価格を下げられる要因になります。

 売り手にとって、アカネ材はユーザーから苦情を言われる要因になります。

 

 アカネ材を防ぐ方法は、枝打ちです。

 それも磨き丸太や良質材(無節や四方無節など)を生み出すような枝打ちではなく、産卵場所となる枯れ枝を除去する枝打ちです。

 枯れてすぐの枝ではなく、枯れてから約2年経過した枯れ枝に産卵すると言われているので、下枝が枯れてきそうになったら枝打ちをするだけで、被害を抑えることができます。

 残念ながら、材価の低迷と枝打ちのコストから実践している方は、かなりの少数派だと思います。

 

 タイトルの通り、スギノアカネトラカミキリにも天敵はいます。

 1つは「アシブトクロトガリヒメバチ」や「クロアリガタバチ」などの寄生バチ。

 幼虫に卵を産み付ける寄生バチ。

 もう1つは「キツツキ」。

 

 今回は後者について。

 

 上写真2枚とも枯れ枝の下部付近をキツツキが突いたものです。

 右写真の赤い矢印が、それです。(左写真だけだと分かりにくいかもしれないので。)

 材を割ると・・・

 材内に幼虫はいません。

 ヤニで固まっているところが、キツツキが突いた箇所で、そこから幼虫が食べられたと思います。

 

 スギノアカネトラカミキリの天敵「キツツキ」。

 残念ながら、カミキリの生息密度低下に貢献できても、業界が望む防除は期待できそうにありません。

 キツツキはある程度成長した幼虫を狙うので、結果、材内に孔道や虫糞が作られているので製材するとアカネ材に。

 さらに生きた幹の部分を突くので、ヤニが出て、変色などを起こすかもしれません。

 アカネ材に鳥害が加わった木材に悪化するかもしれません。

 

 期待させるようなタイトルで、大変申し訳ありませんm(_ _)m。

 ですが、何もせず、アカネ材を防除できる方法は、あまり期待できないと思います。

 昔、寄生バチの研究もされていましたが、ある研究では寄生率は最大で約36%、最低で0%と言われています。

 スギノアカネトラカミキリの生息密度を0にしないと被害は0になりません。

 しかし、一気に0ではなく、少しずつ減少して、0になるので、やはり、アカネ材は発生します。

 無理難題だと承知の上ですが、やはり、産卵場所となる枯れ枝の枝打ちが最適かと思います。 

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山中の危険な積雪

2017年01月24日 | 現場技術・安全管理・道具のお話

 雪がたくさん降ったのと、前回につづき、雪に関するお話を。

 先日、仕事で山に行ったら・・・

 

 雪が積もっていたわけですが、こういう所に危険が潜んでいます。

 どこかに穴がある・・・かもしれないからです。

 サクサクと雪の上を歩くと、くるぶしまでの穴があれば、脚を取られてしまいます。

 穴だけでなく、伐倒木と伐倒木の間なんかもあぶないです。

 もし、腰までつかってしまうと、自力で脱出することは困難です。

 

 奈良県の吉野で仕事をいていた頃、積雪した林道を終点まで歩いたことがあります(もちろん仕事で)。

 普段こんな感じの林道が、真っ白に。

 

 実際に、どう歩いたか、全く覚えていませんが、雪の中をサクサク歩きました。

 

 そして、その1~2カ月後。

 雪がなくなり、前回同様、林道を終点まで歩いたら・・・

 林道が谷まで崩壊していました。

 

 積雪時に歩いた時は、この崩壊があったのか、なかったのかは分かりません。

 もしかしたら・・・

 崩壊していた林道の上を歩いていたかもしれません。

 そして、運良く、落ちなかっただけなのかもしれません。

 もし、運が悪かったら・・・・。

 

 あと、枝葉に積った雪。

 新雪はやわらかいんですが、固まった雪が頭に落ちると大ケガを負います。

 雪景色は本当に美しいです。

 でも、命に関わるような危険も潜んでいます。

 

 それでも、山と雪の組み合わせは、美しくて好きなんですけどね。

 あと、滝が凍る”氷瀑”

2_2

 ”樹氷”

23

 あと、どうなってできたのかわかりませんが、大きなつらら(?)

Photo 

 ↑これはこれで面白いのですが、不用意に近づかない方がいいです。

  近づくと、滝が割れたとき、ナイフのように鋭く尖った氷でケガをすることもあります。

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気象害 雪の被害

2017年01月15日 | 樹木の病気・森林被害のお話

 雪害は、積雪・雨氷・雪崩などによる「機械的雪害」と積雪の期間が長く生育を妨げる「生理的雪害」の2つに区分されます。

 雪害の種類は冠雪害・雪圧害・雪崩害・雨氷害があります。

 今回は、それぞれの雪害について紹介しますが、前回の「寒さの被害」同様、文字ばかりの説明となり、申し訳ございません・・・。

 

「冠雪害」

 雪が樹木の枝葉に付着し、枝や幹が折損したり、湾曲したりする被害を言います。

 冠雪害が発生する気象条件として、

  1.気温が+から-へ移行する」

  2.気温は-3℃以下で、降雪中の風速は3m/秒以下

  3.降雪後に強風が吹く

 等が指摘されています。

 被害程度は、樹形、樹冠の偏在、胸高直径、形状比などによって変化します(形状比など専門用語の説明は別の機会で・・・今回は省略しますm(_ _)m。)

 林業の場合、これに立木密度が加わり、間伐が遅れている高密度の人工林では、甚大な被害を受けやすくなります。

 林業における冠雪害対策は、

  冠雪害に弱いとされる品種の造林と密植を避け、三角植え・並木植えなど傾斜方向の林木間の距離を長くとる。

  間伐は、傾斜方向の間隔をあけるように選木し、枝打ちは谷側の枝を山側の枝よりも高く打ち上げて、樹冠のバランスをとる。

 と言われています。

 

「雪圧害」

 樹体が埋雪され、積雪の荷重に耐えきれず損傷する被害を言います。

 最深積雪深の2~2.5倍以下の樹高の樹木は、積雪により湾曲し、樹体全体が埋雪しやすいと言われています。

 急傾斜では写真のように湾曲することもあります。

 雪圧に対する対抗力が弱い部分では幹折れ、枝抜け、樹皮剥皮などの被害が発生し、その損傷部が腐朽菌等の侵入口となり、別の被害が発生することもあります。

 雪圧害は被害は豪雪地で激しくあらわれます。

 林業における雪圧害対策は、

  下刈り、雪起こしを行い、早い段階で樹高と直径を大きくし、埋設・倒伏しない大きさに育てる。

  下刈りは、積雪の滑りを抑えるため、秋に全刈りするのが望ましい。

 と、されています。

 

「雪崩害」

 その名の通り雪崩の衝撃力によって樹体が損傷・変形する破壊力が最も高い雪害です。

 雪崩が広範囲に及ぶと大規模な森林災害になり、数十年生の森林が壊滅することも。

 

「雨氷害」

 気温が0℃に近いとき、過冷却水滴が枝葉に凍結し、その重量で樹体が破壊される(枝折れ・幹折れ)被害を言います。

 本州では海抜1000m付近に発生することが多いそうです。

 

 林業関係の専門用語がチラホラ出ていたので、詳しい説明もなしで、続けてしまい、申し訳ございません。

 以上、雪害4種類についてのご紹介でした。

 雪圧害で湾曲した材は、材価を低下させる要因になります。

 しかし、湾曲した材は、意匠性のある床柱的なものになったり、階段の手すりになったり、需要があれば、値が吊り上がる場合もあります。

 ←この材も需要があったので、ヘリで搬出され、確か、1本数万円で売れたと思います。

 被害を受けたことで、普通は売り物にならないはずの商品が、ちょっとした需要で高価な商品に変わる。

 林業に関わると、こういう面白い一面に出会えるのも楽しみの1つです。

 

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気象害 寒さの被害

2017年01月10日 | 樹木の病気・森林被害のお話

 冬、樹木は、気温の低下による寒さの被害を受けることがあります。

 和歌山県は温暖な地域なので、寒さの被害は一部の地域に限られます。

 文字ばかりで申し訳ないですが、今回は、寒さの被害の種類を紹介します。

 

冷温障害

 熱帯・亜熱帯産の樹木は、15℃以下の気温で生理的障害を受けます。

 これは、低温状態における生理機能の低下が原因で発生します。

 身近なもので例えると、野菜や果物を5℃以下の冷蔵庫に入れると変色する現象と似ています。

 

寒害

 0℃以下の低温により樹体の一部が凍結することで、水分不足を引き起こして発生する被害を言います。

 

凍害

 植物が低温に耐えられる温度以下に冷やされると、細胞内で凍結が起こり、細胞の生理機能を損傷する被害を言います。

 この被害は、季節と樹種毎の耐凍性と密接な関係を持っています。

 カラマツのように耐凍性が高い樹種ほど凍害にかかりにくく、スギのように耐凍性が低い樹種は凍害にかかりやすい・・・ということです。

 細胞が凍結しているため、材内で変色が起こり、その傷を「凍傷痕」といい、材木の価値を低下させる原因にもなります。

 

早霜害・晩霜害

 晩秋の成長休止前(休眠前)に起こった突然の寒さで生じる被害を早霜害といい、春の成長開始後の寒さで展葉直後の枝先に生じる被害を晩霜害といいます。

 いずれも細胞の凍害が原因で発生します。

 

寒風害・寒乾(干)害

 土壌凍結や幹の凍結で水分の供給ができないとき、樹体水分が低下して起きる被害を言います。

 寒風害は、冬の季節風にさらされた葉からの蒸散が原因で起こる被害をいい、寒乾(干)害は、日射による樹体温度の上昇による蒸散が原因で起こる被害を言います。

 簡単に言うと、水分が供給されない中で葉が蒸散するため、このような被害が発生するということです。

 水分が供給されない環境というのは、真夏のような暑さや乾燥だけでなく、凍結などもその要因になります。

 

凍裂

 厳冬期に幹の内部から樹皮部分まで、縦(放射)方向に割れる被害を言い、「蛇下がり」とも言います。

 ←スギで発生した凍裂。

 割れ目は1m~数mまでに及ぶ場合があり、材内の含水率が高い木ほど発生しやすいです。

 割れ目は癒合されますが、再発することもあり、何度も繰り返されると凍裂した部分が盛り上がる「霜腫れ」という傷が発生し、材質の低下と材価の低下を招きます(1度でも凍裂が発生すれば、材価は下がりますが。)。

 凍裂は、成長の良い樹木、肥沃な立地で発生しやすいとされています。

 

凍上害

 霜柱によって苗木の根が浮き上がり、苗木が倒伏枯死する被害を言います。 

 

凍土滞水害

 積雪が少なくて寒さが厳しい地域において、緩傾斜地、平坦地、凹地などの土壌が深さ数十cmにわたって凍結し、この凍結が春先に融けて、土壌中に停滞水として留まることで、根の過湿害や呼吸障害を起こす被害を言います。

 

 文字ばかりで分かりにくく、大変恐縮ですが、以上、寒さによる被害のご紹介でした。

 

 虫害や病害は、ある程度の事前・事後対策は可能ですが、気象害はいつ発生するのか分かりませんし、その規模も予測できません。

 収穫(主伐)まで50年以上要する林業において、寒さの害をはじめとする気象害は、一番の悩みどころではないかと思います。

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常緑樹と落葉樹 ~落葉広葉樹林と低木性常緑樹~

2017年01月04日 | 森林・樹木の基礎知識のお話

 前回、常緑樹と落葉樹についてお話をしました。

 今回は、落葉広葉樹林の下で生育する低木性常緑樹の生存戦略について。

 

 冬季の落葉広葉樹林は、林内が明るく、林床まで光が差し込みます。

 このような落葉広葉樹林で生育する代表的な常緑樹がシャクナゲやユキツバキなど低木性の常緑広葉樹です。

←シャクナゲ。

 低木は高木のような主幹(1つの大きな幹)を持たないので、積雪による枝や幹の折損リスクはかなり低くなります。(低木と高木の違いは別の機会に。)

 また、雪の中は外気温より暖かいので、積雪は寒さや乾燥から守る役目になります。

 上層の落葉樹が葉を着けている間は、林床に光が差し込まず、低木の常緑樹にとって光合成に適した環境とは言えません。

 

 しかし、上層の落葉樹が落葉すると、林内が明るくなり、林床に光が差し込み、光合成に適した環境になります。

 

 シャクナゲやユキツバキは、気温が高ければ、冬季の間でも光合成ができるため、上層木が着葉している春~秋の間は、わずかな光で光合成をしつつ、呼吸など葉の維持コストを抑制していると考えられます。

 また、低木だと、生きるために必要な養分や水分が高木よりも少なくてすみ、全体的に低コストに抑えることが出来ます。

 シャクナゲやユキツバキは、冬季の落葉広葉樹林という限定的な環境を狙った生存戦略を取っていると考えられます。

 普通に考えると、生育に不適切な環境なので避けたいように思いますが、不適切な環境ということは、それだけ競争相手が少ないということになります。

 シャクナゲやユキツバキは、落葉広葉樹林下という限定的な環境に適応した能力を備えることで、生存競争が激しくない環境で生育する生き方を選んだのではないかと思います。

 「生存競争に勝ち残る能力を備えた樹木」、「不適切な環境に適応した能力を備えた樹木」という風に、樹木の生き方は、実に色々存在しており、高木と低木、常緑と落葉も生存戦略の1つの能力だと思います。 

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