はぐくみ幸房@山いこら♪

「森を育み、人を育み、幸せ育む」がコンセプト。株式会社はぐくみ幸房のブログです。色々な森の楽しさ共有してます♪

不定根

2023年02月28日 | 森林・樹木の基礎知識のお話

 胚や根以外の部分から発生した根を「不定根(ふていこん)」といいます。

 もう少し丁寧にいうと、幼胚から発生した主根や側根、根から発生する細根ではなく、植物の茎や幹、枝、葉など他の器官から分化した根を不定根といい、機能的には、通常の根と同じ働きをしています。

 不定根の「不定」は、種子などの定位置でない場所から出た根という意味です。

 

 林業の現場で、よく見かける代表的な「不定根」と言えば、スギの幹から発生している「気根」ではないでしょうか。

 このように、幹から発生した気根も不定根で、挿し木で発生する根も不定根です。

 

 ちなみに、下の写真のように、倒木と幹が接触して、幹から発生した気根が、そのまま根になることもあります。

 もちろん、この根も「不定根」です。

 

 幹などが傷ついた部分、材が腐朽した部分、虫に穿孔された部分などに適度な湿気が加わると、不定根が発生する場合が多いです。

 

 不定根を観察したい場合は、林業だとスギ、街中や公園だとソメイヨシノが見つけやすいです。

 ソメイヨシノは、幹が腐朽した箇所に不定根が発生し、腐朽した部分の中に不定根が広がる姿をよく見かけます。

 

 不定根は、乾燥に弱いので、そのほとんどが枯れてしまいます。

 上の写真のように腐朽した部分は、一定の湿度があるため、発生した不定根がそのまま伸びることがあります。

 逆に、幹の材部を食べ散らかすカミキリムシが空けた大きな孔は、乾燥しやすい傾向にあるので、不定根の姿は、あまり見られません。 

 

 枯れることなく伸びつづける不定根が地中に到達すると、細根を発生させ、不定根そのものが肥大成長していきます。

 

 そして、養分を供給するようになり、衰弱した根の代用にもなるため、樹木の治療の1つとして、不定根を地面まで誘導し、樹勢を回復させるという方法もあります。

 

 この写真は、不定根を誘導させた治療の一例です。

 

 

 不定根は、むき出しの状態で発生することが多いため、不定根が乾燥で枯れないよう配慮しながら、虫による穿孔にも注意し、地面へと不定根を誘導します。

 不定根が多数発生している場合は、その中から最も勢いのある不定根を選別し、地面に誘導させる不定根を絞り込む必要があります。

 

 スギやソメイヨシノのように、不定根が出やすい樹木は、挿し木の発根率が高い傾向にあるように思います。

 データや科学的根拠はないのですが、スギとヒノキでは、スギの方が挿し木がしやすく、ヒノキで不定根を観察できることはほとんどありません。

 不定根が良く発生するソメイヨシノは、挿し木が容易ですが、不定根をあまり見ないヤマザクラの挿し木は、成功率が低いです。

 不定根が発生しやすいか否か、その樹種の特性に応じて、挿し木の成功率も関係しているのではないでしょうか。

 

 関係なさそうに思える「挿し木」と「不定根」を結び付けて観察する。

 これも樹木観察の一興だと思います。

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奈良県フォレスターアカデミー2022年度 ー施業提案プレゼン評価ー

2023年02月22日 | 株式会社はぐくみ幸房のお仕事

 本日は、奈良県フォレスターアカデミーにて、学生さん達が考えた森林施業提案の評価員としてのお仕事。

 奈良県フォレスターアカデミー最大の魅力は、「フォレスターとして進む学生さん」と「事業体へと進む学生さん」が、在学中に明確で、この時点で、横の繋がりが出来ているという点です。
 おそらく、この点は、どの林業大学校系にないところだと思います。
 
 在学中のこの関係が、やがて、フォレスターが描いたことを実現できる事業体との連携になって欲しいと思います。
 
 さて、今回、僕が重点的に評価した項目は主に3つ。
 
 ①プレゼンの作り方、見せ方、表現、説明の仕方。文字と背景色の使い分けなど細部のところまで。。(^-^;
 
 ②森林経営計画作成にあたってのアプローチ、制約と規制のデメリット、属人と属地(林班・地域)のポイントなど。
 
 ③資源調査。プロットデータの整理、取り扱い、形状比や樹冠長率の整理など
 
 あと補足で、自分だったらどういう路線計画を立てるのか、その根拠は。みたいなところ。
 
 
 プレゼン構成は、長期、中期、短期の3部構成。
 
 
 特に繰り返しお伝えしたことは、森林経営計画は、あくまで「資金確保の手段」であること。
 森林経営計画そのものに規制と制限がある限り、制度に基づいた施業を進める傾向になり、本当の目的を見失ってしまいます。
 
 例えば・・・
 仕事量を確保するために、計画面積を確保しないといけない。
 間伐要件をクリアするために、間伐計画を盛り込まないといけない。 など。。
 
 あと、施業提案した結果、例えば、作業道が崩壊し、何かしらの悪影響を与えてしまった場合、計画認定者に責任が及ぶことも考えて、提案しないといけないということも。
 クライアントに責任が及ぶのか、自分自身に責任が及ぶのか、という点も考えながら、施業提案をしないといけませんし、所有者に対して、出来ないものは出来ないと言えるようにならないといけません。
 
 まー、実際、仕事確保との板挟みで、悩む場面も出てきますが、教育として、この部分はきちんと伝えておきたい点ですね。
 
 今回の施業提案の演習は、補助金活用が前提なので、森林経営計画作成は外せません。
 だからこそ、森林経営計画の作成目的が、短期目標をクリアするための手段なのか、中期目標を達成するための基礎構築手段なのか、短中期含めての手段なのか、そこの整理は大切ですね。
 
 何が正しいのか、模範的な回答とは?
 施業提案は、まさに十人十色です。
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