はぐくみ幸房@山いこら♪

「森を育み、人を育み、幸せ育む」がコンセプト。株式会社はぐくみ幸房のブログです。色々な森の楽しさ共有してます♪

なぜ、春の葉っぱは赤いのか。

2024年04月23日 | 森林・樹木の基礎知識のお話

 春になると、樹木たちが新しい葉っぱを出し、新しい1年を迎える準備を進めています。

(サカキ)

 

 普通、樹木の葉って緑色。

 だけど、観察してみると、新しい葉っぱの色が赤色が多い。ということに気づきます。

(アラカシ)

 

 なぜ、春に出した新しい葉っぱが赤いのか

 

 樹木は光・二酸化炭素・水を使って、無機物から有機物を生み出す「光合成」を行っています。

 光合成に使われる光は、可視光(人が見える光)と言われる赤色光・青色光・緑色光の3種類。

 このうち、吸収する効率が最も悪い光が緑色光なので、緑色が反射し、葉が緑色に見える。と言われています。

 

 ということは、春の新しい葉っぱは、赤色光を吸収する効率が悪い?...というわけではありません (^_^;) 。

 

 光には、可視光以外に、人の目には見えない赤外線と紫外線が含まれています。

 このうち、紫外線は光合成を阻害し、葉の細胞(葉緑体/クロロフィル)に障害を与えます。

 障害を与える紫外線から葉の細胞を守るため、紫外線を吸収してくれるアントシアン(フラボノイド)を合成します。

 葉が赤色に見えるのは、合成されたアントシアン(フラボノイド)によるものです。

 

 紫外線から葉の細胞(葉緑体/クロロフィル)を守るクチクラ層などが作られると、葉の色は、赤色から緑色に変わっていきます。

 

 アラカシ、シイノキ、サカキ、カナメモチ、ウバメガシなど常緑広葉樹だけでなく、落葉広葉樹でも同じ現象が起こっています。

(タムシバ)

 

 紫外線は私たち人間のお肌にも良くないように、樹木にとっても障害を与えています。

 この季節(春)、葉が赤い樹木を見つけたら、紫外線と戦っているんだなー、と観察してみて下さい。

(タブノキ)

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葉痕

2023年12月19日 | 森林・樹木の基礎知識のお話

 冬になって、葉が落ちた痕跡のことを「葉痕(ようこん)」といいます。

 

 冬になると、ほとんどの生き物は冬眠をしたり、植物は落葉や地上部が枯れたりと、寂しい感じになります・・・・。

 そんな時、樹木の葉痕を観察すると、寂しい感じが一転して、楽しい気持ちに変わることがあります。

 

 今回は、そんな面白い葉痕の一例をご紹介します。

 

 葉痕は、枝に着いていた葉の柄が落ちた痕跡なので、葉が大きいほど、葉痕も大きくなります。

 そのため、葉痕の大きさや形は、樹種によって、大きく異なるので、それぞれの違いを観察しても面白いかなと思います。

 

 さて、枝に着いた葉は、枝と葉の間で水分・養分のやり取りを行っています。

 この水分・養分をやり取りする器官を「維管束(いかんそく)」といい、葉が落ちた後も、この維管束の痕が残ります。

 この痕跡は、点や線のような形で残るので、それが目や鼻、口に見えたりするので、動物の顔や笑っている顔に見える、そんな面白い葉痕に出会えます。

 

 ネジキの葉痕。

 飛行中のムササビを、真上から見下ろしたような葉痕。

 僕には、気持ちよさそうに滑空しているムササビの後ろ姿に見えてきます !(^^)! 。

 

 オニグルミの葉痕。

 オニグルミの葉痕は、「サルの顔」に似ているので、とても有名です。

 個人的には、この写真の葉痕は「ヒツジの顔」に見えます (^_^;) 。

 同じ樹種でも、縦に長い葉痕があったりするので、また表情が違ってきます。

 

 トゲトゲが多くて、林業の造林地でとても迷惑な樹木の1つカラスザンショウの葉痕。

 刺々しいのに、めっちゃ笑ってる (゚Д゚;)。。。

 

 こっちは、愛想笑い・・・か?

 

 なんか、悪いことを考えてそうな笑み・・・(^_^;)

 

 という感じで、同じ樹種でも葉痕に現れる表情が違います。

 

 葉が大きいと、葉痕も大きくなります。

 なので、葉が大きい樹木の葉痕を観察すると、面白い葉痕たちに出会えるかも・・・。

 

 ホオノキ、キリ、アカメガシワなども大きな葉をもっています。

 ちなみに、オニグルミやカラスザンショウなどのように「複葉」というタイプの樹木も、大きな葉痕をもつものが多いです。

 ウルシ、ネムノキ、センダンなども葉が複葉の樹木ですし、身近に生えていることも多いので、是非、どんな葉痕なのか、観察してみて下さい。

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不定根

2023年02月28日 | 森林・樹木の基礎知識のお話

 胚や根以外の部分から発生した根を「不定根(ふていこん)」といいます。

 もう少し丁寧にいうと、幼胚から発生した主根や側根、根から発生する細根ではなく、植物の茎や幹、枝、葉など他の器官から分化した根を不定根といい、機能的には、通常の根と同じ働きをしています。

 不定根の「不定」は、種子などの定位置でない場所から出た根という意味です。

 

 林業の現場で、よく見かける代表的な「不定根」と言えば、スギの幹から発生している「気根」ではないでしょうか。

 このように、幹から発生した気根も不定根で、挿し木で発生する根も不定根です。

 

 ちなみに、下の写真のように、倒木と幹が接触して、幹から発生した気根が、そのまま根になることもあります。

 もちろん、この根も「不定根」です。

 

 幹などが傷ついた部分、材が腐朽した部分、虫に穿孔された部分などに適度な湿気が加わると、不定根が発生する場合が多いです。

 

 不定根を観察したい場合は、林業だとスギ、街中や公園だとソメイヨシノが見つけやすいです。

 ソメイヨシノは、幹が腐朽した箇所に不定根が発生し、腐朽した部分の中に不定根が広がる姿をよく見かけます。

 

 不定根は、乾燥に弱いので、そのほとんどが枯れてしまいます。

 上の写真のように腐朽した部分は、一定の湿度があるため、発生した不定根がそのまま伸びることがあります。

 逆に、幹の材部を食べ散らかすカミキリムシが空けた大きな孔は、乾燥しやすい傾向にあるので、不定根の姿は、あまり見られません。 

 

 枯れることなく伸びつづける不定根が地中に到達すると、細根を発生させ、不定根そのものが肥大成長していきます。

 

 そして、養分を供給するようになり、衰弱した根の代用にもなるため、樹木の治療の1つとして、不定根を地面まで誘導し、樹勢を回復させるという方法もあります。

 

 この写真は、不定根を誘導させた治療の一例です。

 

 

 不定根は、むき出しの状態で発生することが多いため、不定根が乾燥で枯れないよう配慮しながら、虫による穿孔にも注意し、地面へと不定根を誘導します。

 不定根が多数発生している場合は、その中から最も勢いのある不定根を選別し、地面に誘導させる不定根を絞り込む必要があります。

 

 スギやソメイヨシノのように、不定根が出やすい樹木は、挿し木の発根率が高い傾向にあるように思います。

 データや科学的根拠はないのですが、スギとヒノキでは、スギの方が挿し木がしやすく、ヒノキで不定根を観察できることはほとんどありません。

 不定根が良く発生するソメイヨシノは、挿し木が容易ですが、不定根をあまり見ないヤマザクラの挿し木は、成功率が低いです。

 不定根が発生しやすいか否か、その樹種の特性に応じて、挿し木の成功率も関係しているのではないでしょうか。

 

 関係なさそうに思える「挿し木」と「不定根」を結び付けて観察する。

 これも樹木観察の一興だと思います。

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遷移

2022年08月01日 | 森林・樹木の基礎知識のお話

 Aという植物群落が、時間の経過とともにBという植物群落に変化していく現象を遷移(せんい)といいます。

 子供の頃、カブトムシがたくさん採れたクヌギの雑木林が、大人になって訪れると、クヌギが無くなり、シイやカシの林になっていた・・・というのも、遷移という現象です。

 畑の面倒が出来なくなって、作物を一切作らず、放置していたら、アカメガシワとかカラスザンショウとかが生えてきてしまった・・・・これも、遷移です。

 

 簡単に言えば、時間の経過によって、生えている植物の種類が変わったり、森の様子が変わったりする現象という感じです。

 

 さて、人が造成した場所や火山が噴火した跡地など地上の木も地中の種もなくなり、他所から種が運ばれ、それが芽吹いて始まる遷移を「一次遷移」といいます。

 

 また、伐採跡地のように地上に木はないが、切り株からの萌芽や地中にある種が芽吹いて始まる遷移を「二次遷移」といいます。

 

 動画でも解説していますので、よろしければ、ご覧下さい。

森の知識はぐくMOVIE「植生遷移」

 

 

 それでは、一次遷移に沿って、遷移の流れを説明します。

 地上に木もなければ、地中に種もない裸地があります。

 

 その裸地に、まずは、草が生えます。

 ちなみに、一番早く生えてくるので「草」。

 草かんむりに早いと書いて「草」です。

 ちなみに、岩盤などでは、着生したコケの上で草が育つので、草が育つための土台ということで感じで「苔」。

 

 次に、茨やつる性植物が生えます。


 草の次に生えるので「茨」。

 

 やがて陽あたりを好む樹木が生えます。

 陽あたりを好む樹木を「陽樹」と言います。

 裸地や伐採跡地に真っ先に生える樹木を「先駆性樹種(パイオニア)」と言います。

 代表的な先駆性樹種として、アカマツ、クロマツ、

 アカメガシワ、カラスザンショウ、クサギ、タラノキ、キリノキなど。

 

 こうして、陽樹が優占する森が出来ます。

 陽あたりが良かった環境が、陽樹に占有されて、林内が薄暗くなり、光を得ることが出来ない草は消失していきます。

 

 そこへ、鳥やリスなどの動物が林内に種子を運んできます。

 運ばれた種子の内、薄暗い環境でも発芽できる種子が発芽し、成長していきます。

 薄暗い環境を好む樹木を「陰樹」と言います。

 (ちなみに、薄暗い環境でも発芽するが、成長にはある程度の光を欲しがる・・・というような、陽樹と陰樹の間の樹木もあります。今回は、便宜上、陽樹と陰樹に分けて説明します。)

 

 陰樹はどんどん成長し、陽樹よりも大きくなります。

 大きくなった陰樹によって、被圧された陽樹は、陽あたりが悪い環境になってしまったことで、徐々に、その姿を消していきます。

 

 陰樹が優占する森になります。

 

 林内では、陰樹の稚樹が生え、長い年月をかけて成長していきます。

 最終的に陰樹主体の森林になり、樹種の入れ替わりもなくなり、安定した状態になります。

 安定した状態を「極相(きょくそう)」と言い、この状態の森を「極相林(きょくそうりん)」と言います。

 極相を作り上げる樹種を「極相種」といい、シイやカシ、ブナ、ツガなどがそれにあたります。

 まさに、最後に森林を支配する最強の樹木ですね(^_^;)。

 

 裸地 → 草 → 茨(つる性植物) → 陽樹 → 陰樹 → 極相 の順に移り変わります。

 ずーっと観察し続けることは出来ませんが、長い時間をかけて行われる森林の移り変わりの中で、光を奪い合うドラマがある!(>_<)

 

 しかし、極相林の安定は永続的に保障されたものではありません。

 台風などによって倒木が起こることで、一定の空間が崩壊することがあります。

 このように、台風などで一斉に倒木したり、干害などで一斉に枯死したり、森林内に空間ができる現象を「攪乱(かくらん)」といいます。

 

 人為的な伐採も攪乱の1つです。

 

 これまで鬱蒼としていた林内が、攪乱によって、局地的に光があたる明るい環境が出来ます。

 下から見上げると、こんな感じです。

 

 光があたるようになると、再び、草、茨、つる、陽樹が生えてきます。

 攪乱によって生まれた空間で、遷移が始まります。

 至る所で、小さな攪乱が起こり、遷移が始まることで、様々な林齢、様々な樹種、様々な樹高で構成された複雑な森林が出来上がります。

 こうした複雑な森林が、それぞれの環境に適した様々な生き物達を育むことで、多様な生態系が出来るということです。

 天然林も樹種・林齢・樹高が同一で単純な天然林よりも、多種多様で複雑な天然林が好ましいといえます。

 人間社会も少子高齢化で問題になっていますが、森林も同じで、子供から高齢者までバランス良く生えている方が良いというわけですね。

 

 森林づくりを進める中で、生育する樹種・生育させたい樹種が、先駆性樹種なのか、遷移前半に生える樹種なのか、遷移後半に生える樹種なのか、極相樹種なのかによって、その整備方法も変わってきます。

 また、残したい植物がある場合、その植物が好む環境を維持しないといけません。

 つまり、遷移が進まないようコントロールすることになります。

 林業においても、造林した後、下刈りを行う作業も、遷移をコントロールするための作業です。

 

 森林管理、森林整備、森林空間利用を進めていく中で、自ずと、遷移のコントロールに付き合うことになります。

 遷移を理解することで、森林の見方や付き合い方がより幅広くなると思いますので、これを機に、遷移を知っていただければと思います。

 

※2016年10月の記事を改編

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光合成に適した温度

2021年01月26日 | 森林・樹木の基礎知識のお話

 日本に自生する植物の多くは、気温5℃以上で光合成を開始します。

 そして、もっとも盛んに光合成を行う最適温度は「25℃前後」と言われています。

 25℃以上になると光合成速度の低下が始まり、40℃を超えると急激に光合成速度が遅くなる傾向にあります。

 気温が低温の場合、光合成速度は低くなり、気温が高温の場合は、光合成速度よりも呼吸速度の上昇の方が激しくなります。

 光合成速度よりも呼吸速度の方が早くなると、樹木は休眠します。

 光合成は生産、呼吸は消費。

 気温が高くなると、光合成による生産よりも呼吸による消費が上回ってしまい、収支勘定が割に合わないので、光合成をやめて、休眠に入るってイメージです。

 

 もっとも成長が旺盛な季節は夏。

 朝日が良くあたり、正午を超えると徐々に陽があたりにくくなる場所で、野菜や苗木を育てると、良く育ちます。(人間と同じく、西日がイヤです(>_<)。)

 朝の日の出とともに光合成を開始するので、前日の夕方に、水をたっぷり与えておくと、さらにイイですね。

 

 ちなみに、樹木も呼吸しています。

 光合成によって、光・二酸化炭素・水が糖類に合成されます。

 そして、合成された糖類は、幹や枝などに運ばれ、糖類を分解し、セルロースやリグニンに作り替えるときに呼吸を行います。

 動物と同様、酸素を吸収し、二酸化炭素を排出しています。

 樹木は、光合成によって二酸化炭素を吸収し、酸素を放出するとともに、合成した糖類を分解・吸収するために酸素を取り入れ、二酸化炭素を放出しています。

 会社経営で言うと、光合成は収入で、呼吸は支出・・・みたいなもんですね(^_^;)。

 

 今回は、光合成に最適な温度のお話をしたかったので、光合成と呼吸の詳しいお話は、別の機会に・・・(>_<)。

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休眠打破

2021年01月23日 | 森林・樹木の基礎知識のお話

 ソメイヨシノなどサクラの開花についてのお話です。

 

 

 次の写真は、ソメイヨシノの冬芽と花芽で、丸みのある手前の芽が「花芽」です

 冬の花芽は休眠し、冬を越します。

 この休眠から目覚めることを「休眠打破」といい、花芽の休眠打破には低温による刺激が必要です。

 そして、日本の多くの樹木では、休眠打破に必要な低温刺激の有効温度は5℃以下と言われています。

 なお、この休眠打破は低温刺激、つまり温度が関係するもので、日長などとは関係ありません。

 

 それでは、順を追って、説明します。

 1)花が咲き、やがて、夏になると、花芽を形成します。

 2)花芽は、次第に短くなる日照時間を感じ取ります。

 3)そして、葉が、冬芽の休眠を促す植物ホルモン「アブシシン酸」を作り、花芽に送り、翌春まで休眠させます。

 4)秋までに形成された花芽は一度休眠し、冬の気温が5℃以下になると、その低温刺激で休眠が解除(休眠打破)されます。

 5)春、気温上昇に伴い、花芽が成長して開花します。

 という感じです。

 簡単に言うと、「花芽は夏に作られ、冬になると休眠し、気温が5℃以下になると、低温刺激によって、休眠が解除され、気温が暖かくなると開花する」ということです。

 ちなみに、気温が高い日が続くと、サクラの花は早く散ってしまいます。

 

 しかし、花芽が作られる8~9月頃に、台風やモンクロシャチホコなどの虫害等によって、葉に大きな障害を受けたり、秋に気温が急激に上昇するなどが起こった場合、花芽の休眠作用が狂ってしまい、休眠が解除されてしまうことがあります。

 そして、10月頃、一度、気温が低下し、その後、気温が暖かくなったりすると、春でもないのに間違って、開花することがあります。

 これが「狂い咲き」と呼ばれる現象です。

 

 だけど、ソメイヨシノは、外部の影響による障害を受け、それでも素直に自然な気温の変化に反応しているだけなので、「狂い咲き」という呼び方は、ちょっと失礼じゃないかなーと思ってしまう(-_-)・・・・。

 

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光阻害

2021年01月20日 | 森林・樹木の基礎知識のお話

 通常、樹木は、光合成を効率良く行うため、光の当たる方向に枝葉を広げ、成長していきます。

 一方で、強すぎる光は、樹木の成長にマイナスの影響を与えることがあります。

 

 光合成を行う樹木にとって、「太陽の光」はとても大切なエネルギーです。

 しかし、強すぎる太陽の光は、樹木にとって、決して、良いエネルギーとは言えません。

 

 強い太陽の光を受けた葉は、そのエネルギーを使い切れず、余分なエネルギーとして貯まってしまいます。

 そして、貯まった余分なエネルギーから活性酸素が作られ、葉緑体を分解し、結果、光合成能力を低下させてしまいます。

 これを「光阻害」といいます。

 

 この光阻害に対して、樹木は、強すぎる光の過剰なエネルギーを熱として放出(蒸散作用)したり、活性酸素を消去する抗酸化物質(スカベンジャー)を生産するなど、植物の種類によって異なりますが、光阻害を防御する仕組みを持っています。

 ちなみに、光阻害の防御能力は、明るい環境で生育できる陽樹の方が、薄暗い環境で生育できる陰樹よりも高いです。

 

 また、光阻害は、低温や乾燥など植物の生育に最適でない状況では促進されます。

 

 一番わかりやすい例で言うと、冬になると葉が赤くなるスギ。

 写真は、育成中のスギの苗木です。

 常緑樹は、冬でも光合成を行うことが出来ます。

 しかし、低温によって光合成能力が低下しているため、冬の強い光エネルギーを使い切れないので、強い光から葉緑体を守るため、アントシアンを生成し、このように葉が赤くなります。

 スギなどの常緑樹は、葉を赤くすることで、強い光から葉緑体を守り、光阻害を防止しています。

 

 冬になって、常緑樹の葉に、少しでも赤色っぽさを感じたら、「光阻害を防いでいるのかなー」と、思って、観察してみてください。

 日陰の葉は緑色で、陽当たりの良い葉は赤色っぽくなっている常緑樹にも出会えると思います。

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光屈性

2021年01月19日 | 森林・樹木の基礎知識のお話

 前回の水分屈性に続き、今回は光屈性について。

 

 光という刺激を受けて、成長方向を変える現象を「光屈性」といいます。

 光に向かって、枝葉が伸びる現象は、正の光屈性。

 光を避けるように、枝葉が伸びる現象は、負の光屈性。

 

 光合成に不可欠な光ですが、状況次第では、樹木も光を避けることがあります。

 

 樹木は、陽あたりの良い部分に「陽葉」、陽当たりの悪い部分に「陰葉」という2種類の葉を光環境に応じて、着葉します。

 陽葉は、強すぎる光に対する抵抗力を備え、陰葉は、弱い光を効率良く光合成できる能力を備えています。

 

 例えば、林内の薄暗い環境で生育しているモミ。

 ある日、上層木が伐採されて、突然、薄暗い環境から明るい環境に変わったら・・・・

 光を避けるような葉の付き方に変わります。

 太陽の光・直射日光を避けるように、枝葉の広がり方が変わっていきます。

 写真の避け方が、「負の光屈性」ということになります。

 

 ちなみに、本来は、弱い光を少しでも受け取れるよう、こんな感じに葉を付けています。

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水分屈性

2021年01月15日 | 森林・樹木の基礎知識のお話

 山の中を歩いていると、岩の隙間に根を伸ばす樹木をよく見かけます。

 よく見かけているのか、そこに注目するからよく見かけるのか、定かじゃないんですが、「樹木の根は岩の隙間がお好き。」という偏見をもって、観察しています(^_^;)

 岩の隙間は、土壌よりも水が蒸発しにくくので、きっと水が溜まりやすいのでしょう。

 その上、草本類もなく、水の競争率が低いと思われるので、樹木の根は岩石の隙間に溜まる水を求めて、のばしているのではないのかなーと。

 

 植物がある刺激によって成長方向を変える現象を「屈性(くっせい)」といいます。

 屈性は2種類あって、ある刺激の方向に向かって成長する正の屈性、刺激の反対方向に向かって成長する負の屈性があります。

 水を求めて岩の隙間に根を伸ばすのは、正の屈性ですね。

 逆に、土壌水分が多すぎる場所に根を伸ばさないのは、負の屈性となります。

 

 このように、水(湿度)という刺激による屈性を「水分屈性」といいます。

 

 

 小さな岩の隙間に根を伸ばし、分岐した小さい根も、小さな岩の隙間に根を伸ばしています。

 ほぼ直角に右側の小さい隙間に向かって伸ばす姿は、まさに正の水分屈性ですね。

 

 岩の隙間にヒノキが根を伸ばしていますが、これも、正の水分屈性。

 

 ヒノキ人工林に囲まれたアカガシの巨木。

 アカガシの樹勢調査を行ったとき、根の広がりを調べてみると、大きな岩石や集水地になってる岩石の谷に向かって、根を伸ばしています。

 

 水を求めて、樹木が根を伸ばすのは、正の水分屈性。

 逆に、水分が多すぎる場所には、樹木が根を伸ばさないのは、負の水分屈性。

 

 樹木も、イヤな物はイヤ!と主張しています。

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アルカロイド

2021年01月03日 | 森林・樹木の基礎知識のお話

 アルカロイドの定義というか、線引きは明確になっていないようですが、天然由来の窒素成分を含む有機塩基類で、生物活性をもつ化合物をアルカロイドと言うそうです。

 植物毒はアルカロイド系が多く、アルカロイドと聞くと、薬よりも有害・有毒なイメージを強く持ってしまいます(^_^;)。

 だけど、アルカロイドは、植物だけでなく、微生物、真菌、魚類や両生類などの動物といった色々な生物が生産しています。

 

 例えば、動物が生産するアルカロイドで言うと・・・、

 フグやニホンイモリの「テトロドトキシン」。

 

 あと、有名な毒ガエル「ヤドクガエル類」がもつ毒の種類の1つである「バトラコトキシン」。

 実際は、まだまだ、あります。。。が、専門家ではないので・・・(^_^;)

 

 アルカロイドを生産する植物をあげると、キリがないし、専門家じゃないので、そんなにたくさん知っているわけではありませんが、代表的なものとしては・・・・

 

 じゃがいもの芽に含まれる「ソラニン」。

 

 トリカブトの「アコニチン」(写真はミヤマトリカブト。)

 

 針葉樹のイチイの種子に含まれる「タキシン」。

 赤い果肉の中にある黒い種子は有毒で、これにタキシンが含まれています。

 

 ヒガンバナの「リコリン」。

 

 このほか、チョウセンアサガオ、イヌサフラン、スズラン、スイセン、青梅など

 

 と、ここまでに上げた植物例は、強い毒性を示すアルカロイドです。

 

 一方で、カフェインなどのように嗜好品として使われるアルカロイドもあります

 (あと、僕は吸わないけど、タバコに含まれる「ニコチン」も・・・)。

 

 実は、ラベンダーの花の香り成分も、アルカロイドの一種。

 

 植物は、動物や昆虫などの外敵から葉や花を守るためにアルカロイドを生産していると言われています。

 それでも、葉を食べられたり、花の蜜を吸われたりしているし、タネを運んでもらうため、実を食べてもらう必要もあります。

 

 なので、外敵から身を守るためにアルカロイドを生産していると考えるよりも、「植物自身が描いている生存戦略を実現するため、アルカロイドを生産している」と考えた方が、面白いかも。

 植物にも好きな動物と嫌いな動物があって、嫌いな動物を寄せ付けないために効果的なアルカロイドを生産している。(あっ、それだと、外敵から身を守ると一緒か(^_^;))

 

 植物も好きな動物と嫌いな動物がいるって、考えると・・・、植物も人間みたいや (^_^;)。 

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