はぐくみ幸房@山いこら♪

「森を育み、人を育み、幸せ育む」がコンセプト。株式会社はぐくみ幸房のブログです。色々な森の楽しさ共有してます♪

イノシシによる林業被害

2021年06月23日 | 樹木の病気・森林被害のお話

 前回のぬた場に関連して。

 身体についたダニや寄生虫などを落として、身体をキレイにするぬた場。

 そのあと、身体を立木に擦りつけるわけですが、その時に、牙(犬歯)が当たって、幹に傷付くことがあります。

 シカやクマに比べると、大きな被害とは言えませんが、買い手が多い元玉(根元側の丸太)にキズが付くって、イヤですね。

 

 イノシシは、シカやウサギのように苗を食べるといった直接的な被害を与えませんが、鼻先で地面を掘り返したりするので、造林地に設置した防護柵を壊すことがあります。

 防護柵のネットは、地面とアンカー杭で固定しているんですが、イノシシは、ネットと地面の隙間に鼻先を突っ込んで、ネットと地面に隙間を作り、防護柵の中に侵入します。

 その後、イノシシが作った侵入口を利用して、シカやウサギも侵入するため、イノシシは、防護柵を破壊するという被害に関与しています。

 

 さらに、地面を掘り返す行動が、植えた苗木(植栽木)をひっくり返すという被害も起こします。

 苗木を食べるという直接的な被害ではなく、苗木ごと地面を掘り起こす間接的な被害を与えることがあります。

 

 イノシシが地面を掘り起こしている動画です。

 ちなみに、仕掛けたくくりワナが、イノシシに掘り起こされてしまった動画なので、じっくり見ていただくと、くくりワナのワイヤーが見えると思います。

 

イノシシ穴を掘る

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カイガラムシの除去

2021年02月10日 | 樹木の病気・森林被害のお話

 ヤマザクラの若木にカイガラムシが付着し、樹勢が衰退していたので、カイガラムシを除去したよ。というお話です。

 結果から見てもらうと、下の写真が、カイガラムシがびっしりと付着した幹です。

 次の写真は、カイガラムシを除去した後の幹です。

 

 あれだけ、カイガラムシがびっしりと付着してたら、弱りますよね(^_^;)。

 

 幹から分岐した枝を見てみると、幹ほどではないけど、カイガラムシが・・・。

 冬芽あたりにもカイガラムシが付着・・・。

 サクラの皮目に紛れているので、写真ではカイガラムシの場所が分かりにくいと思います。

 下の写真中央に見えるオレンジ色っぽいものがカイガラムシです。

 

 カイガラムシは、放置すると、ドンドン増殖し、樹木を弱らせてしまいます。

 今回、若いヤマザクラに付着したカイガラムシは、幹を傷つけないよう、丁寧にブラシで除去しました。

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マツ枯れ被害の見分け方

2020年10月14日 | 樹木の病気・森林被害のお話

 マツが枯れていたら、全てが「マツ枯れ」というわけではありません。

 マツ枯れと呼ばれる森林被害は、”マツノマダラカミキリ”がマツの新梢を食害することで、枯れる原因となる”マツノザイセンチュウ”がマツの樹体内に侵入し、増殖することで発生します。

 

 次の写真は、マツノマダラカミキリムシが、マツの新梢を囓った痕(食痕)です。

 分かりにくくて、申し訳ないですが、写真中央に囓った痕跡があります(>_<)。

 マツノマダラカミキリの囓った傷痕から、マツノザイセンチュウがマツの樹体内に侵入します。

 ちなみに、マツノザイセンチュウによって枯れたマツからは、ヤニ(樹液)が出ません。

 

 この枯れたマツに、マツノマダラカミキリが産卵します。

 産卵された枯れマツを駆除しないと、来年の春、マツノマダラカミキリが飛び立ってしまいます。

 そして、飛び立つマツノマダラカミキリの体内には、マツ枯れの原因となる”マツノザイセンチュウ”が侵入しています。

 新たな春を迎えたマツが、新しい枝を伸ばし、新しい葉を出すと、それをマツノマダラカミキリが囓り、そこからマツノザイセンチュウがマツの樹体内に侵入し、増殖し、マツを枯らす。

 そして、枯れたマツに、マツノマダラカミキリが産卵し・・・・というサイクルの繰り返しで、マツ枯れ被害は拡大します。

 

 被害拡大を防ぐため、マツノマダラカミキリの幼虫が潜む枯れマツを処分することが重要になるわけです。

 

 枯れたマツを観察すると、次の写真の様に、枯れたマツの幹や枝の樹皮の下、枯れたマツの根元に粗い木の屑が確認できます。

 この木くずは、マツノマダラカミキリの幼虫が、マツの材部を食べた痕跡です。

 なので、写真のような木くずや痕跡が確認できる枯れたマツには、マツノマダラカミキリの幼虫が潜んでいます。

 

 一方、同じ枯れたマツでも、マツノマダラカミキリが産卵していない場合は、写真の様な粗い木屑は見当たりません。

 ゾウムシなど他の幼虫は、写真の様な粗い木屑ではなく、粉に近いような感じの木屑です。

 

 それと、マツ枯れの被害を受けた枯れ松を伐採すると、青変菌(せいへんきん)と呼ばれる菌が広がっています。

 

 それと、たま~に、キツツキがカミキリムシの幼虫を食べることもあり、駆除の一役を担ってくれています(^o^)。

 

 マツ枯れ被害が拡大すると、風景が損なわれるし、住宅付近だと生活環境の安全面も損なわれるおそれもあります。

 特に近年の大雨、豪雨、強風、台風は想定外や規格外の場合もあるので、そんな時、マツ枯れの様な枯れ木の存在は驚異かもしれません。。。

※2016年2月の記事を再編

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マツ枯れ マツノマダラカミキリ

2020年10月12日 | 樹木の病気・森林被害のお話

 海と松林。

 まさに白砂青松。

 そんな素晴らしい景色を阻害するマツ枯れが目立つ・・・

 

 マツ枯れとは、その名の通り、松林が枯れる森林被害をいいます。

 マツ枯れは「マツ材線虫病」ともいい、これに「ニレ立枯病」、「クリ胴枯病」、「五葉マツ類発疹さび病」という世界三大樹木病害を加えた、”世界四大樹木病害”の1つです。

 

 被害を受けたマツは、8月下旬から9月頃にかけて枯れ始めます。

 枯れる原因は、「マツノザイセンチュウ」という体長1mmにも満たない小さな線虫が、マツの樹体内で増殖し、マツを枯らします。

 そして、その病原体となる「マツノザイセンチュウ」を運び、被害を拡大させているのが「マツノマダラカミキリ」です。

 

 これがマツマダラカミキリ。

 オスは、体に対して触覚が長く、触覚の色も茶色一色。

 

 メス。体に対して触覚が短く、触覚が縞々模様。

 マツノマダラカミキリは、5月から7月にかけて、枯れたマツの幹から脱出して、動き出します。

 

 脱出したカミキリは、生きたマツの新葉を食べます。

 実は、マツの幹から出たばかりのマツノマダラカミキリは、体が未熟で、すぐに交尾・産卵することができません。

 マツの新葉を食べて、はじめて体が成熟し、交尾・産卵が出来るようになります。

 これを「後食(こうしょく)」といいます。

 この新葉を食べたときに出来た傷口から、センチュウが侵入し、マツの中で増殖し、マツを枯らします。

 そして、枯れたマツの幹にカミキリが産卵し、孵化→蛹化→羽化します。

 センチュウは、カミキリが羽化して飛び立つまでに、体内に侵入します。

 センチュウに侵入されても、カミキリは死にません。

 

 マツ枯れの流れをイラストにまとめましたので、ご参考ください。

 

 ちなみに、健康なマツであれば、カミキリに産卵されても、樹液を出して、対抗することができます。

 

 しかし、写真のようにマツの樹皮の下でたくさんの木屑に出ていたら、順調にカミキリが成長していると考えられます。

 

 マツノザイセンチュウによって枯れたマツからは、樹液が出てきません。

 なので、枯れたマツや衰弱したマツから樹液が出てきたら、それは別の原因で枯れたと考えられます。

 ただ、最近は、カミキリに後食されているにも関わらず、部分枯れしているマツに出会うことも。

 マツも、「いつまでも、やられっぱなしではない!」と、少しずつ抵抗しているのかな?

 

 

※2015年5月の記事を再編

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カシノナガキクイムシ サクラに穿孔

2020年08月14日 | 樹木の病気・森林被害のお話

 ナラ枯れ被害を引き起こす「カシノナガキクイムシ」(以下、カシナガ。)。

 コナラやクヌギ、ウバメガシ、アラカシなどのブナ科樹木に穿孔しますが、実は、間違って(なのか?)、ヤマモモやソメイヨシノなどに穿孔し、そのまま死んだりしています。

 

 ソメイヨシノに穿孔し、樹液に取り込まれてしまったカシナガ。

 

 フウに穿孔し、樹液で固められてしまったカシナガ。

 

 アラカシに穿孔したものの、やはり、樹液でガードされてしまったカシナガ。

 

 カシナガに穿孔されたコナラやウバメガシなどの近くにあるソメイヨシノは、間違って穿孔されていることも多々あります。

 ちなみに、穿孔されたソメイヨシノやフウは枯れません。

 

 もし、幹から樹液が流れているソメイヨシノを見つけたら、観察してみてください。

 きっと、樹液に埋もれたカシナガを見つけることが出来ると思います。

 でも、カシナガ以外の虫で、サクラに侵入する「コスカシバ」という虫もいます。

 その子は、サクラの害虫です(>_<)。

 カシナガは樹液が出るだけ、コスカシバは樹液と虫糞が出ているので、一目瞭然・・・だと思います(^_^;)

 

※2015年8月の記事を再編

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ナラ枯れ ブナ科樹木萎凋病

2020年08月13日 | 樹木の病気・森林被害のお話

 山を見ていると、ポツポツと枯れ木を見かけます。

 

 このような枯れ木に近づいて、幹に直径2ミリほどの小さな孔から、きな粉の様な木くずが、

 見つかったら、それは「ナラ枯れ」です。

 ナラ枯れの被害を受けるのは、ブナ科の樹木、つまり「ドングリの木」なので、ナラ枯れの正式名称は「ブナ科樹木萎凋病」と言います。

 そして、ナラ枯れの原因になるのは、「カシノナガキクイムシ」と言う非常に小さな昆虫です。

 拡大すると、こんな感じの昆虫です。

 

 幹の中に侵入したカシノナガキクイムシは、エサとなる酵母菌を増やします。

 メスの体に「菌のう」という菌を保有する器官があり、菌を繁殖できるのはメスなので、メスが侵入しない限り、ナラ枯れは発生しません。

 オスがメスを呼び込み、カップル成立!になると、夫婦共同作業で幹の中に孔道を掘り進み、幼虫を育てます。

 カシノナガキクイムシの体長は5ミリ程度なので、こんな小さな虫が、1匹、2匹、幹に侵入したくらいで、木は枯れたりしません。

 カシノナガキクイムシの恐ろしいところは「繁殖力」と「数」です。

 1カップルで100匹以上の幼虫を育て、環境が良ければ500匹以上もの幼虫を育てることもあります。

 

 地域差はありますが、5~6月頃、カシノナガキクイムシのオスが飛び立ち、集合フェロモンを出します。

 

 

 この集合フェロモンは、オスもメスも呼び集めます。

 7~8月あたりが、もっともカシノナガキクイムシの数が多くなる時期です。

 

 こうして、多くのカシノナガキクイムシが、幹の中に侵入し、孔道を掘り進みます。

 

 カシノナガキクイムシのメスが持ち込んだ酵母菌類が、幹の中で繁殖します。

 これに対し、樹木の防御機能が働き、水を運ぶ導管を自ら塞ぎます(チロース)。

 侵入したカシノナガキクイムシの数が多いほど、多くの導管を塞いでしまうため、水分を吸収できず、木が衰弱します。

 

 特にコナラやミズナラといった環孔材(導管が環状に配置される木材のこと)は、水分を運ぶ機能が高い年輪の最も外側の導管が、カシノナガキクイムシによって被害を受けやすいので、枯れるリスクも非常に高いです。

 

 9月、10月になるとカシノナガキクイムシの活動もだんだん鈍くなり、侵入した幹の中で、越冬します。

 

 そして、翌年の5~6月に、新しい成虫が飛び出し、次の樹木へと侵入します。

 ナラ枯れは、発生から5~6年後、もっとも被害が大きくなると思います。

 ピークを過ぎると、徐々に被害が収まっていきます。

 収まると言うより、枯れてしまったら、2度と侵入できないし、枯れなかった木に侵入しても、上手く繁殖できないので、被害が収まっていくという感じです。

 そして、繁殖に適した別の地域に徐々に移っていきます。

 

 ご神木や天然記念物など大切なドングリの木から、ナラ枯れ被害を防ぐ一番の方法は、カシノナガキクイムシの侵入そのものを防ぐことです。

←ただいま穿孔中

 カシナガブロック、カシナガホイホイなど侵入を物理的に防ぐ資材を使うことが一番です。

 人の手が届く範囲に限られてしまいますが、それでも、侵入を防ぐことが一番の対策です。

 ただ、悲しいことに、被害を受けてから対策をとることが多いので、後手にまわるというパターンが多いです。

 事前対策の重要性を訴えても、マジ相談は侵入された時が大半です。。。

 侵入されたら、枯れない様に祈りましょう・・・・。

 侵入された数が少なければ、まずは、これ以上の侵入を防ぐ様に努めましょう。

 

 森林のように広範囲で守りたい場合は、ナラ枯れが発生する前に、しっかりと計画を練って対策に望まないと、後手後手の非効率な手段に陥る可能性が・・・(^_^;)。

 ナラ枯れによって起こる問題は何か、何のためにナラ枯れ被害から守るのか。

 それを実行するための課題は何か。

 決して、ナラ枯れ被害を防ぐという行動そのものが目的にならない様に。

 

■関連記事

ナラ枯れ カシノナガキクイムシ

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スギノアカネトラカミキリ 防除方法

2018年05月13日 | 樹木の病気・森林被害のお話

 スギノアカネトラカミキリ(以下、アカネ)に関する今回のお話は、第3部「防除」・第4章「防除方法」について。

  防除方法について言えば「枝打ち」が必勝法です。

 しかし、木材価格の低迷から、行いたくても行えないという状況にあり、この必勝法が使えないというのが現状です。

 

 アカネの訪花行動を利用し、「誘引剤」で捕殺するという研究も行われ、誘引剤が商品化されましたが、今では農薬登録もされておらず、実質的には使えません。

 誘引剤も欠点があり、専用の捕殺するトラップを設置し、それを維持管理しないといけないので、広大な林地では現実的な対策とは言えません。

 また、枯れ枝に近いある程度の高さに設置しないと捕殺効率も悪くなります。

 何より、枯れ枝から脱出してすぐに交尾産卵ができるアカネにとって、真っ先に訪花するとは限らず、産卵後に捕殺される可能性もあります。

 被害をある程度抑制できるかもしれませんが、その効果は不明確ではないかと思われます。

 

 被害を受けにくい品種や樹幹注入など薬剤防除といった試験も取り組まれましたが、実用化まで至っていません。

  ※樹幹注入試験について → https://www.jstage.jst.go.jp/article/jfsc/127/0/127_579/_article/-char/ja/

 あと、天敵である「アシブトクロトガリヒメバチ」、「クロアリガタバチ」という幼虫に卵を産みつける寄生バチもいますが、これも決定的ではありません。

 

 やはり、産卵場所となる枯れ枝をなくす「枝打ち」が有効と言わざるを得ません。

 昔のような良質材生産を目的とした枝打ちではなく、被害を防ぐ「枯れ枝打ち」が望ましいと思います。

 

 そこで、アカネの被害を防ぐことを目的とした枝打ちのご提案です。

 アカネが産卵する枯れ枝は、枯れてから2年とされているので、枯れ枝の発生を確認してから2年以内に枝打ちを行います。

 そして、枝打ちの対象は、間伐対象外となる残存木のみとします。

 このときの枝打ちは、枯れ枝のみでも良いですし、生枝を枝打ちしても良いと思います。

 できれば、最初の枝打ちで、4~5m高までの実施を目標にします。

 少なくとも、アカネの被害がない、死節などの欠点も少ない元玉が確保できると思います。

 ちなみ5mとしたのは、シカの剥皮に備えて、地上高1mの部分を捨てる事も想定しています。

 初回間伐後に枝打ちを行うことで、被害を受けることなく、約4mの元玉を確保出来た事例もあります。

 枯れ枝の発生と初回間伐の時期が重なると、理想的かなと思います。

 ただ、枯れ枝が多い環境で、光環境が改善されると、アカネの好む環境になるので、間をあけずに取りかかることが望ましいと思います。

 

 そして、アカネが好む立地条件(西向き・西南向き斜面、乾燥気味の劣悪な土壌、尾根筋)への植林を避けるのも1つの選択だと思います。

 そもそも、アカネが好む立地条件は、スギやヒノキの植林地として適しているのか、という点でも疑問があります。

 拡大造林時代は、劣悪な環境でもスギやヒノキを植えましたが、今の時代には合わないので。

 

 アカネの防除は、やはり枝打ちです。

 ただし、「良質材生産を目的とした枝打ち「ではなく、「アカネ被害の防止を目的とした枝打ち」という施業があってもいいのではないかと思います。

 施業時期も、「初回間伐と同時に行う」または、「初回間伐後、直ちに行う」。

 特に、まだ間に合う、若い林分では非常に重要な施業になると思います。

 採算が合わないことが多い林業で、目の前の課題に手一杯ですが、将来の資源となる若齢林の育林に取り掛かることも重要だと個人的には考えています・・・それは、きっと、将来の問題になるから・・・。

 その前に、「枝打ち」という施業ができる技術者が、果たしてどれくらいいるのか・・・、こっちの方が問題かも。

 下手な枝打ちは、材の変色を起こして、アカネの被害どころか、人害になってしまう。。。かもしれない。

 

 それと、キツツキがアカネの幼虫を食べてくれます。

 残念ながら防除になるとは言い難いんですが・・・。

 キツツキとアカネに関するお話は、こちら ☞ スギノアカネトラカミキリ(アカネ材) 天敵防除

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スギノアカネトラカミキリ 被害診断

2018年05月08日 | 樹木の病気・森林被害のお話

 今回は、スギノアカネトラカミキリ(以下、アカネ)第3部「防除」、第3章で被害診断について。

 被害を受けているか否か、その判断は立木のまま識別することは、とても困難で、伐倒したり、造材(玉切り)して、初めて分かるのが一般的です。

←被害を受けた丸太の木口。

 写真の木口、右側3時の方向にあるのが、アカネ被害の痕跡です。

 写真の木口、左側8時の方向にあるのは、皮が傷ついて、それを治した痕跡なので、アカネの被害ではありません。

 

 伐倒以外で診断する方法として、立木の枯れ枝を落として、枝の木口を見る。

 枝の木口からアカネが侵入または脱出した痕跡も分かります。

 

 あとは、林内に落ちている枯れ枝を調べて、脱出孔を探したり、枯れ枝を割って、幼虫の食害した痕跡を探すという方法もあります。

 ヒノキの場合、スギのように、枯れ枝がごそっと落ちることがほとんどないので、この診断方法はあまり使えないと思います。

 ただし、ヒノキはアカネの被害を受けると、その部分がこぶ状になったり、枯れ枝の付け根からヤニ(樹液)が流れ出たりする場合があるので、これで被害の有無を推定することも出来ます。

 ・・・・とは言え、地域差があるようで、和歌山県ではこの診断方法がそこそこ使えるようです。

 写真の左側10時の方向に、ヤニ壷が出来ているのが分かるかと思います。

 被害を受けたすべてのヒノキに、ヤニ壷が出来るというわけではありませんが・・・。

 これも診断の1つですが、見慣れないと分からないです。

 

 診断方法というタイトルにしたものの、やはり決め手は、実際に伐ることですね。

 外見で判断できれば、間伐の時に伐採することも出来るんですが・・・。

 ちなみに、間伐した木の枯れ枝にアカネがいたら、脱出します。

 被害木を間伐しても、林内に置いたままでは、アカネの駆除には繋がらない可能性が高いと思うので、防除は重要かなーと思います。

 

 というわけで、次回防除についてのお話です。

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スギノアカネトラカミキリ 被害と林況

2018年05月04日 | 樹木の病気・森林被害のお話

 今回はスギノアカネトラカミキリ(以下、アカネ)第3部の第2章「被害と林況」について。

 要は、アカネの被害を受けやすい林分の状況(山の状況)というお話です。

 前回の立地条件でもお話しましたが、枯れ枝のある林分なら良いというわけではありません。

 

 アカネの被害は、立木密度が高く、密生した林分よりも、開けた林分の方が被害を受けやすいと言われています。

 枯れ枝の多い林分は立木密度が高い「密生林」なので、イメージ的には、密生林の方が被害を受けやすいように思いますが、立木密度の低い開けた林分「疎開林」は、明るい環境なので、光を好むアカネにとって、生活環境は密生林よりも疎開林の方が適していると言えますね。

 しかし、立木密度が高く、めっちゃ暗いヒノキ林でも激しい被害が確認されているので、被害発生と明るさの関係が必ずしも一致しているとは言い切れません。

 

 被害と林況の関係を簡単にまとめると、こんな感じかなと。

 立木密度が高いと林内が暗くなり、下枝が枯れやすくなります。

 そして、枯れ枝が豊富な林況が整った段階で、間伐を行うと、林内が明るくなります。

 その明るい林内にアカネが引き寄せられると、産卵に適した枯れ枝がウハウハです。

 仮に間伐をせず、暗い林内のままでも激害になる場合もありますが、おそらく、かなりアカネの生息密度が高い現場ではないのかなと思います。

 

 こうした林況に加え、前回の立地条件「西向き・西南向き斜面」、「尾根筋」、「乾燥した土壌」という条件も加わります。

 単純に枯れ枝があればアカネがいるというわけではなく、アカネの生態・林況・立地条件が絡んできます。

 多いところは本当に多いし、少ないところは本当に少ない。

 そして、アカネがいそうな条件が十分に整っていても、いないこともあります。

 

 というわけで、次回はアカネの「被害診断」について。

 アカネの被害は、伐採してみないと分からない・・・だけど、診断する方法がないわけではない・・・というお話です。

 でも、診断方法自体は、あまり期待しないで下さいね。

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スギノアカネトラカミキリ 被害と立地条件

2018年05月02日 | 樹木の病気・森林被害のお話

 今回からは、第3部、スギノアカネトラカミキリ(以下、アカネ)の防除について。

 アカネの被害発生には、立地条件や林況も関係するため、単なる防除の話ではなく、被害と立地条件、被害と林況、被害の診断方法、防除方法、4つの構成でお話したいと思います。

 今回は、被害と立地条件について。

 枝打ちが行われず、枯れ枝が多いスギやヒノキの人工林であれば、必ずしも、アカネが存在し、被害も増える・・・というわけではありません。

 

 アカネは西向き、南西向きの斜面に多く、土壌が乾燥して、せき悪な林地に被害が集中するとされています。

 良好な土壌で成立している林分は、不良土壌成立している林分に比べ、一般的に被害は軽微とされています。

 そして、沢筋よりも尾根筋に被害が多いことも認められています。

 

 ここからは、アカネの生態から推測したお話です。

 まず、「西向きの斜面」と「南西向きの斜面」に多い。

 アカネは日中の温度が20℃くらいになると脱出し、日中は21℃~28℃の範囲内の温度で活動するとされているので、日当たりのいい斜面は、アカネの活動に最適な温度環境が整うからではないかなと思われます。

 次に土壌が乾燥したせき悪な林地。

 これは乾燥がポイントかなと。

 乾燥する環境と言うことは、枯れ枝の腐朽が進みにくく、アカネの産卵に適した枯れ枝が長く残るからではないかなと思います。

 また、乾燥場所は日当たりが良い場所も多いので、アカネの活動温度とも関わってきます。

 最後に「沢筋よりも尾根筋に多い」。

 これまでの説明通りで、沢筋は日当たりの悪い場所が多く、気温も低いし、湿気も多いので枯れ枝の腐朽が進みやすいので、アカネにとっては、生活しにくい環境。

 一方、尾根筋は、日当たりが良い場所も多くし、気温も高いし、乾燥しやすいから枯れ枝の腐朽も進みにくいので、アカネにとって生活しやすい環境。

 ではないかと思われます。

 いずれも活動温度と産卵に適した枯れ枝が関係するのかな~と思います。

 

 これらの条件に加えて、シイと隣接する人工林では、さらに被害が多いかも?

 アカネの訪花植物として、シイも確認されています。

  この話に関しては・・・こちら → スギノアカネトラカミキリ 訪花

 

 

 次回は、森林・山の状況と被害の関係について。

 

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