おもしろニュース拾遺

 BC級ニュースが織り成す可笑しくも愛しい『人間喜劇』。おもしろうてやがて悲しき・・・

自民政治家愛用料亭が店仕舞い

2006-02-25 17:07:40 | 迷言・妄言
 我ら民草には高根の花というより、別世界の赤坂の高級料亭。連想するのは与党政治家の、時代劇の定番の上の写真のようなやり取りだ。そしてそれが必ずしもそれほど的外れな連想でないというのは、この世界に「入門」したての新人の次のような言葉でも確認できる。:「料亭行ったこと事ないですよ!行きたいですよ!料亭!」。小泉チルドレン、デビューの第一声であった。

 しかしその小泉氏愛用の老舗料亭が店仕舞いという寂しいニュースである。「金龍:YKKの「拠点」が店じまい 料亭政治で一時代」(毎日新聞2.25)

 <東京・赤坂の老舗料亭「金龍」が今月末にも閉店する。かつては小泉純一郎首相、自民党の加藤紘一元幹事長、山崎拓前副総裁の「YKK」トリオが頻繁に会合を持ち、店先はそれを取材する記者であふれた。90年代のYKK全盛期を見続けた料亭の店じまいは、政界の時の流れを象徴しているようでもある。>と記事は書いている。

 すでにこのBlogでも紹介したように、あの日歯連事件のワイロ攻勢の記事によると、料亭での政治家との会合のあと、「同席した幹部が議員の背広のポケットに100万円を入れる」という手荒な「接待」をしたこともあるということなので、「料亭」に落ちるカネも大きそうだと素人は考えてしまうが、おいしいのは政治家だけでその舞台ではなさそうだ。

 自民党の大物政治家が利用するのは赤坂ではこの『金龍』のほか、『口悦』『鶴よし』『浅田』『外松』、向島では『ふたば』、銀座の『吉兆』などなどが有名という。いったいいくら使っているか政治資金収支報告では出てこないが、例えば上記日歯連の場合、02年に51回の「会合」で890万円だから、1回あたり17万円。豪勢さで有名だった亀井静香議員は『外松』だけで年間11回で330万払っていることが分かっている。タイゾー君の憧れは無理からぬことだが、すべての政治家がこの特典を享受できるわけではない。

 日本の政治の重要事は料亭で決められる。政界の大物は皆「料亭政治家」であった。国会での論議は形式に過ぎないというのは極論であろう。しかしこと人事に関しては、「その時歴史は料亭で動いた」という証言が数多くある。
 以下に紹介するのはあのナベツネ(本名知ってますか?渡邊恒雄ですよ)、の証言である。舞台はこの「金龍」だった。
「中曽根さんは大臣になりたい。僕もできることなら大臣にしてやりたい。親分の河野に頼んでも、斡旋してもらえないので、ここは僕が大野伴睦に頼むしかない、こうなったわけだ。」
 もちろん「大勲位」中曽根康弘である。この時にナベツネは読売新聞の政治部記者。中曽根とはすでに盟友であった。
 「大野伴睦と中曽根さんを向き合わせて、僕が角に座って議事進行したわけです。そしたら『きみは総裁の器だ。そうだな、よし、きみを入閣させる』ときた。それで中曽根さんは、科学技術庁長官になるんだよ。」(『渡邊恒雄回顧録』)
 年譜で見るとこれは1959年のことだ。「あの時、入閣していなければ、彼は総理大臣になっていなかったかもしれないよ。」とナベツネは語っている。まさに「金龍」から大勲位へと登り詰めたわけだ。ナベツネはこの時すでに政治記者というよりフィクサーだった。

 「料亭史観」で日本の戦後政治を語る人もある。ただ、国会の論戦と違い、正確な記録が残るはずもないので、「正史」にはなり難い。その日本政治の「本舞台」も、「往時100軒近くに及んだ赤坂の料亭も今は1ケタ台」という。不景気と政治資金の規制が厳しくなったことで、大先生の金回りが悪くなったのだろう。最も豪勢であった静香氏が自民党を追われたのも、「小泉改革」の結果だったから、小泉行きつけの「金龍」が廃業するのも時の流れだ。「今は政治家もイタリアンや焼き肉店で会合を持つ時代」(加藤紘一)というから、タイゾー君は時機を逸したのかもしれない。

 週刊誌の報道によると、早くも昨年の10月にタイゾー議員は「料亭」を初体験したという。しかしそれは日本料理屋で、しかも1万5000円のランチだったらしい。もう「金龍」には間に合わない。少なくとも「大勲位」への道は閉ざされたわけだ。


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