この映画・本、よかったす-旅行記も!

最近上映されて良かった映画、以前見て心に残った映画、感銘をうけた本の自分流感想を。たまには旅行・山行記や愚痴も。

『人はなぜ人を殺したか-ポル・ポト派、語る』(イエン・サリ、キュー・サムファン他)-を読む

2013-04-25 23:13:15 | 最近読んだ本・感想


             【『人はなぜ人を殺したか-ポル・ポト派、語る』 舟越美夏著 2013年 毎日新聞社刊 】


 この本に登場する『ポル・ポト派の元重要幹部』であった人物は、「チオン・ヌア」、「イエン・サリ」、「キュー・サムファン」の3人で、あと数人の関係者が証言している。

 「ヌオン・チア」の名前だけは、この本で初めて知ったが、後の2人の名前は、もう30年以上前に、「シアヌーク」や「ヘン・サムリン」、「フン・セン」などの名前と共に、何度も聞いて記憶に残っている。しかし、アメリカ傀儡の「ロン・ノル」を破った『クメール・ルージュ』の《英雄》としてか、その後明らかになった『ポル・ポト政権』の《大虐殺の執行人》として、その名前を聞いたのか、よく覚えていない。

 初めて耳にする「ヌオン・チア」が「ポル・ポト」に次ぐ《ナンバー2》であったことも初めて知ったから、驚きである。

 「ポル・ポト」自身はこの本では登場してこない。というのも、1998年に死んでおり(心臓発作とも《毒殺》とも言われている)、インタビューが行われたのは、筆者である舟越が共同通信プノンペン支局に赴任した2001年以降だから不可能というものだ。


 1972年の『ニクソンの北爆再開』の緊張から、北ベトナム軍の攻勢をへて『ハノイ陥落』まで、自分らの大学生活の後半は、まさに『ベトナムに平和を』の声一色で、カンボジアの情勢など二の次だった。
 1975年に『ベトナムの南北統一』が実現し、インドシナにようやく平和が訪れとと思ったが、それと前後して成立したポルポトの『民主カンプチア』が、プノンペンから住民を追い出し、その後『とんでもない虐殺を繰り広げている』という報道が流されたのは、だいぶたってからである。

 ポルポト政権の《秘密主義》というか《鎖国政策》により、情報が全く外の世界に伝わってこなかったから、カンボジアがいったいどうなっているのか、長い間誰にもわからなかった。

 本田勝一の『検証カンボジア大虐殺』が出たのが1989年で、その頃ようやく、《カンボジアがえらいことになっている》と一般にも知られてきたのだ。

 だから、《プノンペンが空っぽになっている》とか《何百万の住民・知識人が殺戮されている》と言う断片的な情報はあっても、《ポル・ポトがどんな政策をとり》、その元にいる《キュー・サムファンやイエン・サリがどんな役回りをしていたのか》、また《どうして大虐殺を許す事態になってしまったのか》等々、皆目見当がつかなかった。


 本を手に取るなり、必死で読んでしまった。

 本を読んでも、上の疑問は解けなかった。

 すでに亡くなっている「ポル・ポト」は語れないが、「ヌオン・チア」も「イエン・サリ」も「キュー・サムファン」も一様に、自分らは《殺人》には関わっていないし、そのような命令はしていないという。自分らにはそのような権限もなかったし、逆にある意味《被害者》でもあったという。

 それならいったい、どうしてそんな悲劇が起こってしまったのか。ナチスの『ジェノサイト』あるいは『ホロコースト』-《ナチスによるユダヤ人抹殺・大虐殺》、ルワンダの『ジェノサイト』-《フツ族によるツチ族の民族浄化・大虐殺》と何が違うのか、どのようなメカニズムで大殺戮が起こってしまったのか、何もわからない。

   【《人ひとり殺せない善良な幹部》がいて、どうして暴走を止めることができなかったのか。】

   【 今、たまたま大虐殺が起こっていない社会では、何が機能していてそのような事態に至っていないのか。】

   【 どの《タガ》が外れれば、《大量虐殺》=《大暴走》してしまうのか。】


 その点がわからないと、ゆっくり休めないような気がした。


         ○        ○        ○


 以下のサイトは、この本に書かれている『ポル・ポト政権』がいかに誕生したか、当時カンボジアがどのような状況に置かれていたか、予備知識なしでわかりやすい文章で説明されたサイトです。参考にして下さい。(本にはない『ポル・ポトの写真』もあります。)

  『カンボジアの悪夢、ポルポト政権をわかりやすく説明』-したサイト





コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 『瀬戸内の島々とアートめぐ... | トップ | 4月27日(土)のつぶやき »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。

最近読んだ本・感想」カテゴリの最新記事