元々は歌舞伎「戻駕色相肩(もどりかごいろにあいかた)」を題材にした沖縄舞踊があって、それを喜劇にしたのを俄にしたものです。ダンスの上手な演者が息を合わせて、踊るように駕籠を担げば、それだけで面白いと思います。ただし、台本中ではムーンウォークとしましたが、地車の上なので、前に進まずに前に進んでいるようなダンスです。
詳しくは「沖縄喜劇『戻り駕籠』」のユーチューブをご覧ください。駕籠は竹竿に段ボールで駕籠の絵を画くだけでOKです。
三人俄『もどり駕籠』
(次郎吉・藤四郎・車太夫)
下手から次郎吉が登場。
次郎吉 わいは、次郎吉という籠かきや。
上手から藤四郎が登場。
次郎吉 さあ、お客さん迎えに行くで。今日もよろしく頼むで、藤四郎。
藤四郎 こっちこそ頼むで、次郎吉。
後ろに段ボールで作ったぺらぺらの籠。二人でかつぐ。
次郎吉 ほな行くで。
藤四郎 えっさ。(これを合図に)
二人 えっさ、えっさ、えっさ、えっさ。(右を向き足踏み四回)
二人 えっさ、えっさ、えっさ、えっさ。(前を向き杖で地面をたたく四回)
二人 えっさ、えっさ、えっさ、えっさ。(右を向きムーンウォーク四回)
以下、どちらかが「えっさ」と言いながらムーンウォークしながら。
次郎吉 楽なにわかや。
二人 えっさ、えっさ、えっさ、えっさ。(右を向きムーンウォーク四回)
藤四郎 しかし、疲れるな。
二人 えっさ、えっさ、えっさ、えっさ。(右を向きムーンウォーク四回)
次郎吉 そこの地蔵さんのとこで待ったはるはずや。
二人 えっさ、えっさ、えっさ、えっさ。(右を向きムーンウォーク四回)
藤四郎 着いたことにしよ。
二人 えっさ、えっさ、えっさ、えっさ。(右を向きムーンウォーク四回)
次郎吉 そやな。よし着いた。
二人 えっさ、えっさ、えっさ、えっさ。(前を向き杖で地面をたたく四回)
(止まる)
次郎吉 ああ、えら。
藤四郎 ・・・・。
次郎吉 (怒って)なんかしゃべれ。
藤四郎 まだ、来たはれへんがな! 客はどんな人や?。
次郎吉 大阪の遊郭に揚がってて、おかんの病気の見舞いに帰ったはった車太夫という女の人や。
藤四郎 車太夫。さぞべっぴんさんやろな!
次郎吉 浜辺美波と広瀬すずを足して二で割ったみたいやろな。
藤四郎 そんなべっぴんさんが、わしをちらっと見て「まあ、粋でいなせなお兄さん」なんて言うて、すり寄ってきたらどないしょ。
次郎吉 そんなサルみたいな顔したのにほれるかい。わしの方見て、「まあ、りりしくて頼りがいがあるお方」やと、わしの方にすり寄って来るわい!
藤四郎 なんで、そんなイノシシみたいな顔したんにほれるねん。
次郎吉 (怒って)なんやと。
藤四郎 (怒って)何を!
二人がとっくみあいの喧嘩をする。
そこへ、期待を裏切らぬ、ど派手な化粧をした狸のような車太夫が上手から登場。たもとで顔を隠している。
二人は喧嘩をやめ、プロポーズする格好。車太夫が顔を現すと、恐怖で身震いをして、どうぞどうぞと相手に譲る仕草。
それを見た、車太夫が、ムッとして
車太夫 (藤四郎に) まあ、粋でいなせなお兄さん。
藤四郎 来るな。あっち行け。
車太夫 (次郎吉に) まあ、りりしくて頼りがいがあるお方。
次郎吉 あかん。藤四郎、おまえにやるわ!
藤四郎 わいもいやや、おまえがもっていけ!
次郎吉 おまえや。
藤四郎 おまえじゃ。
再び、喧嘩をし出す。
車太夫が、うちわとてぬぐいを取り出して男口調で、
車太夫 おいおいおいおい、喧嘩はこれで、やめとかんかい!
次郎吉 なんや、それ。(ひったくる) てぬぐいとうちわやないかい。これで、けんかするなとは。はて?
藤四郎 はて?
次郎吉 はて!わかったわい。内輪で木綿な じゃ。