畑の通路のど真ん中に威風堂々と育っているこぼれ種の「番椒」。
蕃は蕃国、つまり、海外。
椒は山椒・胡椒、〈香しい=いい匂い〉の意。
海外から日本に伝来した香辛料。
「ばんしょう」と読んでもよいが、当て読みで「とうがらし」。
写真のこぼれ種の「番椒」は鷹の爪。
これを粉にしたのが一味唐辛子。
いろんなものをトッピングしたのが七味唐辛子。
『 近世流行商人狂哥絵図』曲亭馬琴にある七味唐辛子売りの絵。
説明は手抜きして、科学者の寺田寅彦『物売りの声』から以下に引用。
七味唐辛子売り歩く男で、頭には高くとがった円錐形の帽子をかぶり、身にはまっかな唐人服をまとい、そうしてほとんど等身大の唐辛子の形をした張り抜きをひもで肩につるして小わきにかかえ、そうして「トーン、トーオン、トンガシノコー(休)、ヒリヒリカラィノガ、サンショノコー(休)、ゴマノコケシノコ、ショウガノコー(休)、トーントーントンガシノコ」と四拍子の簡単な旋律を少しぼやけた中空なバリトンで歌い歩くのがいた。その大きなまっかな張り抜きの唐辛子の横腹のふたをあけると中に七味唐辛子の倉庫があったのである。この異風な物売りはあるいは明治以後の産物であったかもしれない。
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スーパーで売っている唐辛子の実は乾燥させたものだが、畑で赤くなった唐辛子は実に鮮やか。
うつくしや野分のあとの唐辛子 /芭蕉
芭蕉にならって、七年前に畑で夕立に遭ったときの我が駄作。
仕事を辞めた年の作でちょっと意気込みすぎ。