鉄肝(tekkan)

お酒はよく噛んで呑みましょう

甲斐犬めぐ、保護犬生活スタート。

2019-09-30 19:09:30 | 保護犬めぐ
保護犬めぐの里親様募集は事情により中止しております、ご理解を賜りますようお願い申し上げます。


前回の記事からの続きです。

譲渡不可な甲斐犬めぐ、少なからず緊張と覚悟をしていた鉄肝家ですが、とても安心したのと複雑な想いとで、
預かりをスタートいたしました。

生活する上で、先ず大切な“入れる事と出す事”と“その場所です”。
床クロスの1マスが縦横20cm。
養成テープで軽く固定してあるのが、ホームセンターで切り売りしている透明でやや厚めのビニール。
白い皿がごはん、緑が水、共に100均の物、シリコンの薄いシートをひき、滑り止めにしています。
シリコンのトイレマットにシートを固定です。



眠る場所は、良くくつろいでいる場所に毛布をひいてあります。

食べ物(ごはん・オヤツ)を与える時に「待て」ってしますよね、「可哀そうだ」って方、分かります、
私も以前はそうでした、色々な機会に色々な方にご教授頂き、すっかり意識が変わりました。
生きるために重要な“食べる事”を「待て」と言われて待てる事は、シーンが変わるとワンコの
命を守る事が出来る重要なコントロールなのだと知りました。

預かりっ子には全員「待て」を教えて来ました、もちろんめぐにも行います。
次の動画ですが、8/23で預かり50時間経過しためぐの様子です。
「待て」を連呼しています、耳障りだと思います、めぐは待つ事を直ぐに理解しましたが、
よし」の指示を待てない事が多く、連呼して止めています、現在は1~2回で「よし」まで
しっかり待つ事が出来ます。事情ご理解いただきご容赦をお願いします。
事情があり、動画中に名前を「はな」と呼んでいますが、現在は「めぐ」に戻っています。

保護犬めぐ003


たった2日でここまで出来る子です、とても頭の良い子です。

ですが…。

預かり初日と翌日の夜は、私が休んでいる隣の部屋で大人しく寝てくれました(もしかすると眠ってはいなかったのかも)。
「待て」の動画を撮った深夜、遠吠えを始めてしまいました。
私達と密接な関わり方を始め、まだ小さな物だけど親近感が出て来たのか、「怖い、寂しい」と鳴いたのです、
流石に深夜帯で御近所の安眠を妨げます、声を掛けたりしましたが、一時止まっても再開してしまいます、
家族で話し合い、私の寝室で休ませる事にしました。
本人は大喜び、私のベッドに飛び乗り、はしゃいでシーツがグチャグチャ、ニコニコしてます。



これにはとても悩みました“一人で眠れる”って事は、人とも眠る事が出来るって事だけど“人が居ないと眠れない”って事は、
飼育環境に「枷が一つ嵌まる」という事です。

同時にもう一つ不安が浮かびました。この2日は誰かが家に居て、めぐに留守番をさせていなかったのです。
翌日10分間留守宅にし、カメラで動画を撮影しました、その結果…恐れていた通りの事が起きました。

分離不安症

以下↓は静止画に10分間で鳴いた吠えの内、1/4を編集し入れてあります、悲しく寂しい声です。

保護犬めぐ004


以前のめぐの生活環境は、高齢独居の飼い主、先輩犬(群れの順列で上位)が2頭、飼い主が所用で外出しても、先輩犬が居ました、
恐らく保健所収容で先輩犬が引き出された後、生まれて初めて1頭で過ごしたと思われます。

きっと保健所(夕方から朝まで無人)でも鳴いていたのでしょう、出掛けたきり(実際は死亡)で帰らない飼い主と、知らない内に
気配が無くなっていた先輩犬、「どこー、何処に居るのー、会いたいよぉー、寂しいよぉー」激変した環境、突然、恐怖の只中に
突き落とされた甲斐犬の女の子…そりゃあ、心に傷のひとつやふたつ出来たって、なにも不思議はありません。

この出来事の前に家族の手を舐めていて、半袖だったのでどんどん腕の方まで舐め、興奮し鼻鳴きが出て、前足で抱え込むように
一心不乱に何分も舐めた事がありました。
曰く「恐らくだけど親近感が出て来たのかな…そして、失いたくないんだと思うよ」手の舐めは短時間で辞めさせるようにしました、
どのような感情からでも興奮はコントロールする必要があります「もっと舐めさせて」って悲しそうな目を見ないように拒否します。

鉄肝家に親近感を持ち始めてくれたのが、分離不安→遠吠えになったとしたら、こんなに切ない事はありません。

夜間は私と一緒に眠り、昼間(私の帰宅後)は分離不安軽減のためのトレーニングを始めました、短時間の留守を作り、外出と帰宅を
イベント化しないようにしました、「いってきまーす」「良い子にしてるんだよ」「ただいまー」「大人しくしてた?」などの
声掛けを止めました。
ランダムに留守時間を長くしたり短くしたりするなど、チャレンジしています。現在の所、当初のような遠吠えは発生率は低くなりましたが、
思い切って30分留守宅を作った所、めぐの居る部屋から出て私達を探そうとしたのか、出入り口に爪や牙でアタックした痕跡がありました、
分離不安が高じると家具などの破壊行為が出たりするので、極端なトレーニングは控えた方が無良さそうです。
時間を掛けて「必ず人は、めぐの所へ帰って来る、酷く心配する必要は無い」って事を、体験的に教えてゆく必要があり、
この子と暮らす里親さんも努力が必要な部分です、年単位でのトレーニングになります。

「きっと良くなる、大丈夫」

めぐが来て2週間たった時、避妊手術に連れて行きました。
その時に、分離不安以外の気になった事を獣医師に伝え、診察して貰いました。
この子はいくつ試練を乗り越えなければならないのか、嫌な予測は当たってしまっていました。





   
希望を胸にみんなで艱難辛苦を乗り越えよう。

さぁ、勇気を出して

2019-09-23 19:09:23 | 保護犬めぐ
保護犬めぐの里親様募集は事情により中止しております、ご理解を賜りますようお願い申し上げます。


前回の記事からの続きです。

行き場のない甲斐犬の女の子、その話が伝わってすぐに決まった事がありました、それは、「ワンニャンの会が保護する」って事です。
多頭飼い崩壊を次々にレスキューに入ったワンニャンの会さんですが、実は猫の保護を得意としている団体さんです、
現在携わっている甲斐犬繁殖場崩壊現場ですが、そこに連れて来るのには問題があります、24頭からスタートした現場も4頭となり、
落ち着いている所へ、見ず知らずの犬を入れる事は、日中・夜間を問わず騒ぎとなる可能性があり、のどかな場所にある現場ですが、
周囲には民家があります(周辺にお住いの方々が良い方ばかりで、現場にもご理解頂きボランティアに労いのお言葉を頂く事もあるそうです)
せっかくご理解頂いている皆さんも夜間に騒げば、現在居る4頭の居場所も危うくなるかも知れません「試しにやってみる」といった、
悠長な事は言えないのです。

現場がダメとなると、前述の通り猫を主な保護対象としている団体さんですから、仮としても居場所が無いのです。

鉄肝家縁者から「鉄肝家の出番」を告げるTELが入りました。元々当家の飼い犬は中型犬(外飼い)でした、
室内飼いは預かりボラの小型犬でノウハウはあります、件の甲斐犬は室内飼いだったとの事、「何とかなりそうだ」と家族で話し合い、
8/13に保健所に行ってきたから「小さいよ、小型犬テイストだ」と意味不明?な事前情報、、、、、しかし、

預かりを決めた直後、ある情報がもたらされました、鉄肝家はにわかに緊張します、その甲斐犬は、

譲渡不可の判定を受けていたのです。

保健所職員により行き場の無い動物を、何項目かチェックしたり、職員の判断により「譲渡する事に向かない、または躊躇がある」というのが、
譲渡不可の判定です、多くが人身が危険であったりする恐れです。

でもは言います「住み慣れた家(帰らぬ主人を待つべき家)から、無理やり連れ出そうとするのだから、唸ったり歯向かったりするのが当然、
俺だって必死に抵抗するさ、初対面で尻尾振ってくる子でなければ、譲渡不可な判定が出てしまう、保健所の立場もあるだろうが、
判定基準のような物が、地区によってバラバラなのも聞いている、他の地区だったら判定は違っていたかもしれない。」

確かにそうだと思いました、臨時家族会議で出た結論は、「犬は吠えるし、噛むのも仕事、全力で譲渡推奨犬にしよう」でした。

8/21、が保健所に引き出しに行きました。
十分に注意をし緊張をしないようリラックス(人の緊張が犬にとても良くないんです)保護区域に入り、首輪で体のあちこちを撫でる、
この時点では「大丈夫だ、何とかなる」って手ごたえがあったようです、でも油断と緊張は禁物、スリップリードを掛け、
少しづつケージから出してゆく、基本声はかけない、激しい抵抗があったらレッグガードを装着してリトライするつもりで、
時間を掛けて、時に背中を撫でながら、声に出さず「さぁ、君はいい子、勇気を出して、おじさんを信じて」って、心で話し掛けながら。

一度だけスリップリードから逃れようとしたものの、約30分強でケージから体を出す事に成功、革製の首輪(焼津の甲斐犬たちの
現オーナーのМさんがプレゼントしてくれた物)を、ゆっくりと装着、最後にワイヤーリードを連結し、バリケンの中に誘導し完了したのが約1時間近く。

「時間が掛かり過ぎで犬の負担が大きいのでは」って感じられた方も居られると思いますが、一回の抵抗以外、一度の唸りも吠えも、
ましてや噛む素振りも無く、背中を素手で撫でると、振り向いて穏やかな視線を向けて来たといいます、
色々な人に色々なやり方があると思います、これが流のやり方で、この子に合っていたって事だと思います。

引き出しに行く前には名前を考え居たそうです、仮の名前ですが、良い名前をと、、、結果「めぐ(恵)」としたそうです、
幸せに恵まれるようにとの思いです(最後にNから付け足しがあります)預かり途中で事情があり、名前が変わりますが、
現在は元の「めぐ」に戻っています。

保健所→動物病院、この車中でも色々あったそうです、大小のビビリ排泄、肛門腺からもドバッて来てる香りが漂って来て、
本人は車の振動ゃ音、バリケンでの拘束状態等、全部が怖い、必死にバリケンから出ようと爪や牙を使う、
ケガをしそうな音が車内に響く(実際、口の一部を切ってしまいます)。

付けたばかりの仮名を使い「めぐ、怖いよね、そうだよね、ケガをしない程度なら暴れても良いよ、でも早く諦めような」が話しかけると
少しの間だけ我慢が出来たそうです、悪い事に豪雨と雷、休憩も出来ないバイパス道、必死の犬とのドライブです。

動物病院で受診、フィラリアはマイナス!初診では特に問題は発見されず、フィラリア予防薬を貰って鉄肝家へ移動、
その車中でもバリケンvsめぐの戦いは第二ラウンドを迎えます。

鉄肝家へ到着直後からマーキングや、フードアグレッシブの有無の確認、譲渡不可判定なので人に対する様子から服従心の程度を確認する為、
による即席の訓練が始まりました。
お座り・伏せ・待てを立て続けに教えます、驚いたのは飲み込みの速さと再現性、人に対する穏やかな感情と表現。
「これが譲渡不可の犬なのか?、殺処分対象犬なのか?」鉄肝家全員が感動と安堵と、やり場のない怒りの涙でグチャグチャになったのですが、
めぐだけニコニコと不思議そうに、メソメソしている初めて見る人間の顔を見ていました。

動画↓は当日、訓練して間もない様子です、殺処分対象犬なのですが、どのようにお感じになられますか?
保護犬めぐ001


保護犬めぐ002






でございます。
めぐには驚かされました、こんなに性格が良く頭が良い子が、殺処分て、、、判定の根本を見直してほしい、そう感じております。
めぐって名前ですが、「幸せに恵まれる」って他にも理由?があります、おっさんの話であまり面白くありませんので、
パスして頂く事を推奨します、、、えっ?読んで下さる?!良い方だなぁ、、、では遠慮なく。

甲斐犬のルーツは御存じの通り山梨(甲斐)です、当方の住んでおります静岡(駿河)のお隣です。
甲斐の名将、武田信玄公は皆さんよくご存じ、その信玄公にはお姉さんがおられました。

お名前は定恵院(じょうけいいん)様です、この姫様は駿河の今川義元公に嫁ぎます、政略結婚ですがしっかりと駿河の地に根を下ろし、
義元公との間に、今川家滅亡後も逞しく生き続けた今川氏真公をもうけます。

甲斐の国にルーツを持ち、駿河の国で確固たる居場所を持った姫様。
その姫様のお名前から一字頂戴したってのが、「めぐ(恵)メグ」の名の、もう一つの理由です、お後がよろしい様で、、、。







   
希望を胸にみんなで艱難辛苦を乗り越えよう。

3カ月の間に全てを失ってしまった子

2019-09-16 16:16:16 | 保護犬めぐ
保護犬めぐの里親様募集は事情により中止しております、ご理解を賜りますようお願い申し上げます。


その子の情報は8/9に静岡県東部で活躍されておられる動物愛護団体「どっぐふぁみりーきゅーぴっと」さんからもたらされました。

高齢の飼い主の元で飼われていたが、飼い主が死亡、行き場を失っている甲斐犬(雌)が保健所に収容中、今すぐに殺処分は無いかもしれないが、
保護出来る余裕が他団体にも相談したが、どこも目一杯。しだはいワンニャンの会甲斐犬繁殖場崩壊に関っている、
収容中の甲斐犬を保護し、保護犬として里親探しは出来ないか?といった内容だったそうです。

以前に書かせて頂いた通り、現在も当家の縁者が甲斐犬繁殖場崩壊へボランティアで入らせて頂いており、当家にも情報が入って来ました。

「実際に顔を見てみよう」という事で、8/13に、どっぐふぁみりーきゅーぴっとさん・しだはいワンニャンの会の両代表、当家の縁者とで、
保健所へ出向き、件の甲斐犬を見に行きました。

の印象としては、「すごく小さく見えた、一瞬、甲斐犬では無いのではと思ったほど」だったそうです。

保健所へ行って詳しい情報が出て来ました。
実は多頭飼いであった事、高齢の飼い主に小型犬2頭と暮らしていたそうです(この2頭は、この日にどっぐふぁみりーきゅーぴっとさんが保護)、
今年5月ぐらいに飼い主が入院、2カ月間は飼い主の御親戚が3頭の家に通い世話をしていた、7月に飼い主死亡、世話をしてくれていた御親戚にも、
犬が飼えない事情があったのか、保健所へ相談→収容となったのだそうです。

話をから聞いた鉄肝家は、甲斐犬目線で想像してみました、5月ぐらいまでは、その子なりの喜びや楽しさのある家庭(群)だったと思います、
他の2頭の様子から群の中でも最下層のポジションに居た事が想像出来ました、リーダー(飼い主)に頼り、先輩(小型犬2頭)に叱られたりしながら、
日々を過ごしていただろうと。

それが、ある日からリーダーが忽然と姿を消す、先輩犬たちも何が起こったか理解出来ず、緊張感のある空間になったかも知れない、
見た事も無い人が家に出入りし始める、身の回りの世話はしてくれるが、「あなたは誰?リーダーは何処?」の犬達の問いに答えは返って来なかった。

リーダー不在の生活が2カ月になり、犬達もその状況を受け入れつつあったある日、作業服姿の見た事の無い人間が数名、突然テリトリーに侵入、
手に持ったスリップリードを使い、先輩犬を次々に捕えて行く、必死に抵抗し「怖いよぉ、やめてやめて、助けて」叫びもむなしく、自分よりも
上位の先輩犬は連れ去られてゆく、恐怖しか無かったと思います。

保健所職員に悪気など無いのですが、スリップリードには使い方にコツがあります、ある意味、修羅場の収容現場で時間を掛け、苦しみや恐怖を、
極力少なく収容作業するのは、難しいのかも知れませんが、是非、努力して頂きたいと兼ねてから感じておりました。
使い方次第ではスリップリードは気道を締める窒息ツールになってしまいます。

「苦しい、息が出来ない、ごめんなさい、ごめんなさい、許して、助けて」甲斐犬の女の子は、必死でした、恐怖から出たのは唸り声と暴れでした。

大切な思い出や、リーダーの帰りを待たなければならない家から、収容所へと3頭は連れて来られました。
いくつか区切られている収容スペースに甲斐犬は入れられ、知らない音、知らない匂いに囲まれ、たった一頭で時間を過ごす事になります、
姿は見えませんが、鳴き声や匂いで先輩犬が、近くに居る事だけは分かります、恐らくそれだけが心の拠り所だったのではと思います。

その唯一の拠り所が…


収容され約1カ月すぎた8/13また見知らぬ人間が数名やってきました、その中の体の大きなオジサンは、大嫌いなカメラを近づけて来ます、
「誰だろう、知らない人、怖そうだな、静かにしていよう」

  

その人達が居なくなって、大変な事に気が付きます、先輩犬の気配が無いのです、数日間をたった一人で過ごします、どんなに心細かったか、
誰にも頼れない、群れの最下層の犬の心がどういう状態なのか、想像も出来ません、恐怖・絶望、ネガティブな感情しかなかった事でしょう。

人間だって孤独な甲斐犬の女の子を、その数日間ただ放置していたわけではありません、しだはいワンニャンの会、、そして鉄肝家だって、、、。






   
希望を胸にみんなで艱難辛苦を乗り越えよう。