杯が乾くまで

鈴木真弓(コピーライター/しずおか地酒研究会)の取材日記

ポートランド紀行(その3)ファーマーズマーケット&ワイナリー

2016-06-26 13:10:59 | 旅行記

 ポートランド紀行のつづきです。

 6月10日は、妹夫婦が住むビーバートンの朝市ファーマーズマーケットでモーニングを楽しみました。ビーバートンは、静岡をポートランドにたとえたら藤枝ぐらいのイメージかな。NIKEの本社があることで有名です。妹の家の近くにあるNIKE Campusは広大な社屋&森を有し、市街地のかなりの面積を占める森には入口にガードがあってNIKE社員しか入れないそう。ここで自前のシューズやらスポーツウエアの履き心地&着心地を試しているんだろうかと想像しました。

 

 ビーバートンのファーマーズマーケットは、中心部の図書館&公園の一角で毎週2回開かれ、規模はさほどではありませんでしたが、朝早くから個人経営の生産者や職人さんたちが軒を並べ、ジャズバンドの演奏やウイスキーの試飲コーナーも。今が旬のベリー類をお好みで詰め合わせできるブースには行列が出来ていました。

 この街では、いわゆる八百屋さんとか果物屋さんを個人で営業する店や商店街らしきものを見かけず、大型ショッピングモールがほとんど。個人はこのようなファーマーズマーケットに出店するようです。ポートランド市街では個人のグロッサリーショップもたくさんあるみたいですが、そういう店も必ずファーマーズマーケットに出店し、生産地ツアーなんかもさかんに行っているようです。生産者と都市生活者が直接つながるムーブメントって世界的な潮流なんだと実感しました。

 

 

 

 個人が自分の名前をかけ、こだわり抜いて生産したものを、真剣に商売する。流通業者が介在しない「作って売る」原始的なスタイルに相違ありませんが、その真剣さが、どこか新しい、と感じました。ふだん生産者の顔がみえない巨大な商品売り場に慣れ過ぎているんでしょうか。生産者名や顔写真等をパッケージに入れた商品はたしかに増えているけれど、中間で介在する流通業者が売りやすい&買われやすいように手を加えているのは間違いない。私も、カット済みとか洗わず食べられる野菜を便利でお得だと思ったりする。・・・こういう原始的な市場の売り方が新鮮に思った自分に驚き、ちょっぴり反省しました。

 原始的といっても、野菜や果物のディスプレイはとてもオシャレで、色の配置やデザインをきちんと考えているように見えます。静岡市内で開催中の朝市&フリマも、既存のスーパーマーケットではできない、素材の魅力をドーンと魅せるオシャレで大胆な売り場づくりに挑戦してほしいと思います。

 

 

 この日はワイナリーを2か所訪ねました。最初に訪ねたLEFT COAST CELLARS(サイトはこちら)は、ビーバートンから南西へ車で40分ほどのウィラメットバレーにあります。丘陵地に一見茶畑にも見える広大なワイン畑が広がり、野生のシカが顔を出すほど。

 

 私自身はワインはド素人で、ウィラメットバレーという産地も初めて耳にしたのですが、改めて調べてみると―冷涼で高湿な気候の特徴からピノ・ノワール(赤ワインの代表的なぶどう品種)の名産地として有名。湿度が高い地域でぶどうを成熟させるのは難しいそうですが、醸造家は手間ひまをかけ、クリーンな酸味と完熟果実の芳香で滑らかな口当たりに仕上げる。総じて優しく上品な味わいが特徴。ワイナリーやぶどう園は大小合わせて200軒以上あり、オレゴン州全体の66%を占めています。全米におけるワインの生産量は第3位―だそうです。

 

 

 次いで訪ねたKEELER ESTATE VINEYARD(サイトはこちら)は、ドイツ人のガブリエル・キーラーさんとご主人クレイグ・キーラーさんが1989年に創業したアットホームなワイナリー。テイスティングルームもキーラ―さんちのリビングって感じでゆったりくつろげました。妹夫婦はオレゴン州の地ワインを定期購入するサークルの会員で、ここのワインのヘビーユーザーだとか。日本酒党にとってはピノ・ブラン(白)がすっきりさわやかに飲めたかな。ショーンが平野さんに熱心にピノ・ノワールのテイスティング方法を伝授していました。

 

 この日、朝は肌寒い曇り空で、途中、何度か通り雨があり、ワイナリー滞在中は爽快な青空。でも途中で急に薄暗くなってパラパラまとまった雨。一日のうちで天気がコロコロ変わるのも不思議じゃないそうです。ちなみに夜は9時を過ぎないと暗くなりません。

 

 ウィラメットバレーの解説文によると、この一帯は年間を通して大きな温度差がなく、春季後半から秋季前半には少雨で乾燥しがちだが温暖で柔らかい日照が長く続く。秋季後半から春季前半には雨が多いが氷点下まで冷え込むことはほとんどない。年間では全体的に冷涼で高湿度という環境だそうです。土壌は、PHが高く低酸のジョリー土壌(赤土)と、PHが低く排水性が高いウィラケンジー土壌(灰土)、位置や標高で保水性やPHが異なるローレルウッド土壌(茶土)とさまざま。素人ながら、これだけ多種多様な土壌で日照時間が長く温暖で高湿度ならば、どんな農作物でも育つだろうと想像しました。

 

 妹がファーマーズマーケットで購入した旬のいちごは、びっくりするぐらい美味でした。最近の日本の果物は、どうも糖度に走り過ぎているきらいがするのだけど、こちらの農作物は酸味をバランスよく生かしており、それが本来の、気候や土壌由来の自然の優しい味わいだと思える。ワインを通してそのことを実感しました。

 

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ポートランド紀行(その2)地酒&ファクトリーツアー

2016-06-24 14:21:17 | 旅行記

 ポートランド紀行のつづきです。

 6月8日夕方、ポートランド国際空港に着いて、迎えに来てくれた妹Kaoriに連れられたのが、空港からほど近い郊外のマイクロブルワリー『ECLIPTIC』。レストラン併設の地ビール工房です。Kaori曰く、この店は本格的なフレンチシェフがいるから料理も◎。ビールは12~13種類。リストにはアルコール度数に加え、IBU(ホップの量=苦味の目安)が添えられています。

 ビールを選ぶときは、IPA(India Pale Ale)タイプか、各ビールのIBU数値を基準にします。試してみたいビール5~6種類を少量ずつ頼めるきき酒セットがあって、気に入ったものを次に定量オーダーするというスタイル。

 IPAはかつてイギリスが植民地インドに運ぶ際、腐敗防止のために造ったストロングタイプで、ホップ感が強くアルコール度数も高い。北米のマイクロブルワリーではカスケードというフローラルな香りのホップを使うことが多く、独特の香りが楽しめるというわけです。日本酒にたとえると、カプロン酸系酵母を使った超辛口の山廃or生もとって感じ? 一緒に旅した平野斗紀子さんはビールのヘビードリンカーなので、どんなタイプもウエルカム。私は(ふだんビールは日本酒の合間にチェイサー替わりに飲んでいるので)やっぱりあんまり重辛いタイプは苦手かなー。複雑な素材の個性を生かすか、バランスよく醸すか、醸造家の考え方や腕のみせどころですね。

 

 

 

 翌9日は午前中、ポートランドの南東部にあるオレゴン州ミルウォーキーにある全米有数の製粉メーカー『Bob's Red Mill(ボブ爺さんの赤い製粉工場)』のファクトリーツアーに参加しました。ボブさんが1960年代、カリフォルニアで石臼機械で製粉事業を興し、鉄の臼が主流になる中でも石臼にこだわり続け、オレゴンに移転。1988年に工場を焼失するも、奥様と二人三脚で一から再建し、オーガニックの小麦粉やシリアルを作り続けています。見学コースには創業当時に使っていた石臼機械類が展示されていました。日本の蕎麦や抹茶づくりに使う石臼と構造的には同じですから、どことなく親しみを感じます。

 

 ケンタッキーフライドチキンのカーネル・サンダースみたいに、ブランドの顔になっているボブ爺さん。てっきり伝説の故人かと思ったら、ご本人登場でビックリ!私たち一般ツアー客ではなく、カナダからやってきたVIP客を直接お出迎えしていた場面に運よく出くわしました。

 

 

 午後はアメリカを代表する伝統的なウールアパレル・ブランケットメーカー『PENDLETON』の工場を見学しました。1863年創業という老舗。オーソドックスなデザインで“アメリカの良心”として知られるブランドだそうです。

 沿革をみると、イギリス生まれの若い織工トーマス・ケイがアメリカンドリームを求め、羊の飼育とウールの生産に最適な、穏やかな気候と豊富な水に恵まれたオレゴンにやってきて、毛織物工場に就職。ナンバー2にまで出世した後、独立起業。ケイの娘ファニーが小売商ビショップと結婚してから製造&小売一貫で発展し、ワシントン州ペンドルトンをベースに高級ウールメーカーとしてブランディングに成功したようです。地名がそのままブランド名になったんですね。

 工場の建物自体は古かったものの、イタリア製の1台数億円という最新式織機がズラッと並んでいました(写真撮影NGでした)。工場併設のアウトレットでは70%OFFの激安や、1枚買うともう1枚サービス、なんて嬉しいサービスも。日本でも取扱店があるみたいです。こちらをご参照ください。

 

 PENDLETONで買い物を済ませた後、ワシントン州ワシューガルにあるマイクロブルワリー『Amnesia Brewing』に立ち寄りました。午後の3時ぐらいでしたが、夕方まで“Happy Hour”でお得に飲めるとあって、ご近所のお年寄りや若い観光客が楽しそうに飲んでいました。ここでもIPAをはじめ、個性的なラインナップがズラリ。

 ポートランドの地ビール文化については、こちらのサイトがとても参考になりました。

 

 9日夜は、妹が店主を紹介したいからといって、ポートランドのダウンタウンから少し離れたところにある居酒屋『Tanuki』に連れて行ってくれました。休業日だったにもかかわらず、妹の卒業祝いのために開けてくれたのだとか。

 女性店主のジャニス・マーティンさんはもともとフレンチの料理人で、日本のサブカルチャーにぞっこん惚れ込み、たった一人でこういうお店を作ったそうです。和食の店ではなく、日本のアニメやB級映画や赤ちょうちん文化を愛するジャニス自身が自分の好みで創り上げたって感じ。いつも予約で満席らしく、この日はほかに予約待ちしてくれている常連客何組かに声をかけたそうで、気が付いたら満席。全員地元の白人さんでした。

 

 料理は沖縄料理のテイストを活かした創作料理。お通しに韓国海苔と、ポップコーンに醤油をかけて炒ったものが出てきて、これがなかなかGOOD。日本酒も、日本でもかなりの地酒通の店クラスの純米吟醸や純米大吟醸がズラッとそろい、ジャニスおすすめの富久長(広島)のほか、伝心(福井)、雪の茅舎(秋田)をチョイスしました。どうしてこういう店を創ったのか聞いてみたかったのですが、一人で忙しそうに切り盛りしていて、声をかけるタイミングを逸してしまいました。

 

 

 妹から、静岡の地酒を持ってきて、とリクエストされていたので、彼女の卒業祝いに乾杯するつもりで持ってきた『喜久醉純米大吟醸松下米40』。妹はそれを開封せずにジャニスにプレゼントしちゃいました。妹曰く「おんな一人で頑張っているジャニスに、最高の日本酒を飲ませてあげたいから」。

 平野さんが指をくわえて名残惜しそうにしていましたが(笑)、この酒がジャニスの手に渡った意味がきっとあるに違いない、と思いました。

 

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ポートランド紀行(その1)オレゴン健康科学大学の卒業式

2016-06-21 11:59:44 | 旅行記

 6月8日から14日まで、アメリカ西海岸のオレゴン州ポートランドへ行ってきました。現地在住の妹Kaoriがオレゴン健康科学大学の大学院博士課程を無事終了し、6月13日に執り行われた卒業式に参列したのです。約30年前、彼女が都内の短大受験のときに泊まりで付き添ったときのことを思い出し、まさか30年後にアメリカの大学院の卒業式に呼ばれるなんて・・・と、本当に感激ひとしおでした。

 

 オレゴン健康科学大学(Oregon Health & Science University; OHSU)はオレゴン州の公立大学で、ポートランドのホームステッド地区南西部にあるマーカムヒル(通称ピルヒル)という静岡でいえば日本平のような小高い丘に、3つの病院とメインキャンパス、ポートランド市郊外のヒルズボロに小規模なキャンパスがあります。オレゴン州内における歯学教育、医学教育、看護学教育の総合大学として1974年に開学。2001年にオレゴン科学技術大学院大学を吸収して現在の名称となったようです。やがてサウス・ウォーターフロント地区にキャンパスが拡張され、2006年にはキャンパス同士を結ぶロープウエイ「ポートランド・エアリアル・トラム」が建設されました。大学のためにロープウエイを作るってスゴイですよね。

 

 そんなキャンパスで、彼女がどんな研究をしたのかはさておき、アメリカの大学の卒業式ってアカデミックドレス(クラシックなガウンみたいなの)を着て、トレンチャーキャップ(角ばった帽子)をかぶり、式が終わったらみんなで帽子を放り投げるってイメージだったので、そんな映画みたいなシーンが見られるのかとワクワク気分。

 会場はポートランド市のコンベンションセンター。周辺に大劇場やアリーナが集積していて、ほかの大学の卒業式も開かれていたため、会場探しに大慌て。アカデミックドレスをまとった卒業生軍団とその家族の晴れやかな姿を目の当たりにし、日本の大学の羽織袴姿の卒業式とは一味違う雰囲気を感じました。クラッシックかつインテリジェンスな卒業生を、普段着、いやバカンスにでも来たようなラフな格好で取り囲む家族や友人たち。卒業式はクリスマスのような、大盛り上がりのファミリーイベントなんですね。妹には夫のショーンしか家族がいないので、日本から私と私の友人の平野斗紀子さんが加わったことで多少のにぎやかしにはなったかなと思いました。一応ちゃんとしたスーツを持参していったのですが、妹から「礼服姿の家族なんていない、恥ずかしい」と却下され、普段着&スニーカーで参列しました。

 

 

 13時から始まった卒業式は、まず全学部合同の式典から。偉い方々の祝辞が続いたあと、来賓のサンジャイ・グプタ博士(Dr.Sanjay Gupta)が記念スピーチを行いました。CNNの医療時事リポーター&コメンテーターとして有名なインド系アメリカ人脳外科医で、オバマ政権で公衆衛生局長官候補にも挙がった方だそうです。スピーチの内容は(もちろん英語なので)理解できませんでしたが、ところどころで会場の聴衆が爆笑し、ウィットにあふれた楽しいスピーチだったようです。

 

 15時からは妹が所属する看護学部(School of Nursing)の卒業式。エルガーの「威風堂々」が流れる中、拍手の渦の中を、博士課程修了者を筆頭に卒業生たちが入場したときは目頭が熱くなりました。「威風堂々」って日本では焼き肉のたれや缶ビールのCMソングにも使われるけど(もとは英国女王の戴冠式のために作曲されたものだし)こういう席にこそふさわしい音楽だと実感しました。

 

 教授陣代表や卒業生代表のスピーチが続いた後、大学院博士課程修了者から順番に名前と研究名を呼ばれて登壇。証書を授与された後、担当教授からストールのようなものを掛けてもらいます。今回、Docter of Philosophy-nursing(Ph.D.=直訳すると『哲学博士』ですがアメリカでは広く学術一般を指すようです)を授与されたのは10人。Kaori以外は全員白人でした。ショーンと平野さんが立ち上がって懸命に拍手する隣で、私は写真を撮るのに必死。席がステージからかなり遠い端っこだったので、寄りのカットはスクリーンに映し出されたものでガマンです。あっという間に終わってしまいましたが、唯一の日本人・アジア人として壇上に立った彼女の姿を、「威風堂々」のBGMとともに日本国中にオンエアしたい!と思わずにはいられませんでした。

 

 

 その後、大学院修士課程、そして大学卒業生の学位授与が17時ぐらいまで続きます。登壇し終わった卒業生たちは楽屋で同級生たちと記念写真を撮ったりした後、ロビーに用意されたケーキパーティー会場で教授や家族と改めてお祝い。家族や友人から花束をもらって記念写真におさまる卒業生たちにまじって、私は日本から島田市金谷の染色画家松井妙子先生の新作『花影』をお祝いに持ってきました。生花の華やかさには負けるけど、一生モノの記念になるはずです。

 ちなみに帽子を放り投げるようなパフォーマンスはなく(ちょっと残念(笑))、とても落ち着いたアットホームな卒業式でした。

 

 日本の大学だと、この後、謝恩会とかゼミ仲間での卒業パーティーとかがあるんでしょうけど、アメリカでは「家族の支えがあって無事卒業できた」ということが第一義。卒業式の夜は家族で過ごすのが定番のようです。私たちもこの日の夜は、予約が取れない人気レストランで有名らしいフレンチ『BEAST』で乾杯しました。

 

 

 実はKaoriにとって大学院の卒業式は2回目。日本でごく普通のOLだった彼女は、ショーンと結婚して彼の勤務地であるイギリスに転居し、現地での保険事務のアルバイトからセカンドキャリアをスタートさせました。

 もともと世話好きだった彼女は事務職よりも実際に体を動かすサービス業のほうが性に合っていると思い、リスクの高い仕事(米国空軍)に就く夫のサポートになればと、一念発起し、アメリカの大学の通信教育等を活用して看護師資格を取得。ショーンの転勤でイギリスからアラスカに移り住むと、アラスカの公立病院に就職し、ハードなICU夜勤業務等を必死にこなしました。努力が認められ、首都ワシントンの国防省系列大学院に推薦をされ、上級実践看護師/advance practice nurses(APNs)の資格を取得しました。

 

 APNsは通常4年の大学教育を受けRN(Registered Nurse)になり,さらに修士課程の約2年を終えて認定試験を通った人たち。CNS(クリニカルナーススペシャリスト)=看護学・麻酔学・産科学(助産師とほぼ同義)の専門知識やARNP(プライマリケア=日本の保健師以上の権限を持つ)についての専門知識をもちます。全米で16~17万人程度の資格者がいるようです。

 詳しいことはよくわかりませんが、アメリカでは看護師という仕事について、本人たちの職業意識はもちろん、医療従事者すべてが、看護師はスペシャリストであるという認識が徹底しているよう。やっぱり大学や大学院を卒業した資格者が多いためだと思われます。

 

 自他ともにスペシャリストであるという認識があるから、結婚や出産で辞めてしまうような人も少ない。努力すれば妹のような外国出身者にもチャンスは与えられる。日本も、そう簡単にはいかないかもしれませんが、看護師や介護士という仕事が専門性の高いプロの仕事であるという認識を徹底させるためにも、高等教育機関やそれに伴う資格制度の整備・充実を図るべきだろうと、素人ながら感じました。

 

 ちなみに大学のサイト(こちら)にも紹介されていますが、彼女の博士論文のテーマは、

「Daily Hassles,Mental Health Outcomes,and Dispositional Mindfulness in Student Registered Nurse Anesthetists」。

 直訳すると「麻酔看護師における日常の不安とその対策のためのマインドフルネス」ということでしょうか。以前、このブログ(こちら)でも妹がマインドフルネスについて研究していると紹介し、その後、坐禅や白隠禅師についての英語本を送ったりして「私を仏教徒にするつもり?」と笑われてしまったこともありましたが(苦笑)、4年ぶりに再会した妹は、どこか穏やかで気分のムラもなく、仏教については学ぶべきことの多い哲学・心理学だとしみじみ語っていました。このような研究テーマはこちらの大学院でも例がないということで(そうでしょうね)、高く評価されたようです。

 

 いつか彼女が日本のナースの卵たちや、修行中の禅僧の前で、命と対峙する職業人にとってのメンタルヘルスについて語る日が来るんじゃないか・・・なんてひそかに夢見てしまいます。

 身内ですが、彼女は今、私が最も尊敬する女性だと言わせてください。

 

 

 

 

 

 

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しずおか地酒研究会アニバーサリー第4弾&朝日テレビカルチャー藤枝スクールご案内

2016-06-04 23:05:26 | しずおか地酒研究会

 この春からはしずおか地酒研究会20周年アニバーサリーがスタートし、4月からは毎月、京都の花園大学国際禅学研究所の古文書講座に通い始めたりしてあっという間に6月になってしまいました。実になる仕事が枯渇していて暮らしに全く余裕がないにもかかわらず、動きたくなる或いは動かざるを得なくなる状況に、必死に身の丈を合わせながらも、今というこの瞬間の、一つ一つの出来事やご縁を大事にしようと、あくせく生活しています。「日々是好日」とか「而今(にこん)」という禅語がしっくりくる毎日でしょうか。

 

 しずおか地酒研究会20周年アニバーサリー企画では、第3弾として5月10日に藤枝のダイドコバルで「実験&挑戦!日本酒ブラインドテイスティング」を開催しました。フリーアナウンサーで地酒チアニスタの神田えり子さん&ダイドコバルの平井武さんが、銘柄を伏せた地酒7種に凝りに凝った酒肴を用意し、フリーハンドで自分の好みを再認識してもらうという楽しいプログラム。私はすっかりお客さん気分でどっかり座って楽させてもらいました。

 

 

 第4弾は7月3日に以下を予定しています。

お酒の原点・お米の不思議2016&県産米の地酒と蕎麦で乾杯

 1996年の発足年に開催した「お酒の原点・お米の不思議」復活企画。当時は山田錦の研究家で知られる故・永谷正治氏(元国税庁醸造試験所鑑定官室長)をお招きし、静岡県内で山田錦栽培に取り組む生産者の圃場を見学。袋井市の可睡斎講堂に90名を超える酒徒が集まり、永谷先生の講話をお聞きし、可睡斎の精進料理を味わいました。

 

 それから20年。静岡県では山田錦の突然変異から育種に成功し、待望の県独自の酒米「誉富士」が誕生。各蔵で商品化され、地米で醸した正真正銘の地酒として不動の人気を確立しました。山田錦に試行錯誤をしていた20年前のことを思うと感無量です。

 今回は誉富士の育種を手掛けた静岡県農林技術研究所の宮田祐二先生の実験圃場(磐田市)をお訪ねし、コメの新品種をモノにするまでの長い道のり、育種の面白さ、試験栽培中の「新型誉富士」についてじっくりうかがい、田植えから1か月弱のみずみずしい圃場の様子を見学します。

 圃場視察後は「蕎麦をもう一枚」著者として知られるそば通ライター山口雅子さんのコーディネートで、菊川駅近くの人気蕎麦処「だいだい」にて、宮田先生おススメの県産米地酒と打ち立てそばを味わいます。静岡県の酒米づくりの20年に思いをはせ、コメとソバ―日本食に欠かせない大地の糧の価値をじっくり味わってみようと思います。興味のある方はふるってお申し込みください! 

 

■日時 7月3日(日)13時30分 JR袋井駅集合

 袋井駅よりタクシー分乗 ⇒ 14時~16時/県農林技術研究所三ケ野圃場 ⇒ JR袋井駅 ⇒ JR菊川駅 ⇒ 徒歩にて移動 17時~蕎麦処「だいだい」にて交流会

 

■会費 5000円(交流会費)*移動タクシー代は別途割り勘でお願いします。

 参加者のお名前と連絡先電話(携帯)番号を鈴木のメールまでお知らせください。

*圃場見学のみの参加もOKです(参加費無料・交通費実費)。

 mayusuzu1011@gmail.com

 

 

 また7月からは朝日テレビカルチャー藤枝スクールにて全3回の地酒講座を担当することになりました。

 昨年10月から今年3月までは静岡スクールにて酒蔵見学をメインプログラムにした講座をやらせてもらったのですが、今回は座学のみで、地酒本『杯が満ちるまで』の取材秘話をお聞きいただき、世界に誇る志太美酒の魅力をじっくり味わっていただこうと考えています。

 きき酒師や日本酒学講師といった専門資格を持つ酒販プロの皆さんと比べたら役不足なのは重々自覚していますが、人に教えるということは自分の勉強になるということも深く実感し、今まで自分に酒を指導してくれた多くの先達から受けたバトンを次に受け渡す使命があるんだと自らを奮い立たせているところです。

 6月から募集がスタートしましたので、藤枝在住の方もそうでない方も、3日間だけですが、ぜひご一緒に志太の美味しいお酒について語り合いましょう!

 

 詳しくは朝日テレビカルチャー藤枝スクールのサイト(こちら)をご覧ください。

 

 

 最後に、ブログ読者のかたに先行告知。年内の地酒研アニバーサリー開催予定(決定分)です。関心のある方はぜひスケジュールを空けておいてくださいね!

 

■第5弾 喜久醉松下米の20年 (青島酒造&松下圃場見学) 9月22日午後

 

■第6弾 サールナートホール共催特別企画 日本酒ドキュメンタリー「KANPAI!世界が恋する日本酒」先行上映&トークセッション「あなたと地酒の素敵なカンケイ」 10月1日午後

 

■第7弾 杉錦の生もと造り体験! 10月2日時間未定

 

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駿河茶禅の会京都禅寺ツアー(その2)

2016-05-12 16:55:07 | 茶道研究会

 GWの駿河茶禅の会京都禅寺ツアーレポートの続きです。

 7日夜は大徳寺や船岡山に近い【紫野しおん庵】という京町家を1棟借りし、歩いてすぐの船岡温泉(国有形文化財の銭湯)で汗を流し、向かいの酒場でビールを飲み、しおん庵に戻ってまた飲んで、いい年齢のおっさんおばさんが修学旅行のようにはしゃぎ尽しました(笑)。しおん庵は銭湯&居酒屋は目の前だし、朝は7時から開いているパン屋さんがすぐ近くだし、家族やグループで泊まるのにもってこいでした!

 

 8日は9時15分から見学予約をしていた大徳寺聚光院を訪問しました。ご存知・千利休の菩提寺で、会で訪問するのは2回目。表千家7代如心斎が、千利休150回忌の際に寄進したと伝わる三畳の茶室「閑隠席」(重要文化財)を改めて鑑賞し、如心斎が利休の目指した禅の厳しい教えを大切に再現したことを実感。茶庭の井戸に織部焼の滑車が付けられていたのも発見でした。

 今回は、今年創建450年を迎えることから、寺宝の国宝・狩野永徳の障壁画が特別公開中ということで、ガイド付きでじっくり見学しました。ホンモノは京都国立博物館に寄託され、いつもは複製画の展示である狩野永徳と父・松栄の本堂障壁画46面(全て国宝)が9年ぶりに里帰りし、‟お寺の襖絵”という本来あるべき姿で鑑賞できたのです。描かれた花鳥が中央のご本尊のほうに向いているとか、ち密に大画面効果を考えた奥行きある作風だったことは、博物館の平面展示ではピンと来ないし、複製画とホンモノの違いは素人にもわかる。この障壁画は、昭和54年(1979)にパリのルーブル美術館からモナリザを借りたとき、そのお返しにフランスで展示されたそう。モナリザと同等の価値、というわけです。

 

  2013年に落慶した新しい書院には、現代日本画のトップランナー千住博画伯の障壁画『滝』が奉納され、初公開されました。「時の流れを象徴するモチーフ」を表現した鮮やかな青&白い滝の見事なコントラスト。青の襖の前に黒の着物姿の男性が、白の襖の前に色鮮やかな着物姿の女性が座ると抜群のカラーセッションになる、というわけです。千住画伯は、狩野永徳の国宝障壁画に並べて観られるこの作品を生み出すのに16年格闘したそう。「この青は宇宙から見た地球をイメージしたもの。さすがの永徳でも見たことのない色だろう」と構想したとか。トップアーティスト同士の450年越しのバトルを垣間見た思いでした!

 院内は撮影不可でしたので、こちらのサイトを参照してください。

 

 

 七条まで移動し、智積院会館「桔梗」で湯葉料理のランチ。その後、京都国立博物館で開催中の特別展【禅ー心とかたち】を鑑賞しました。実は13時30分から地下講堂で始まる相国寺僧侶の「声明ー禅の祈り」を聴くつもりで、私一人、整理券を人数分取りに行ったら、券は一人につき1枚しか渡せないと言われてしまい、大慌て。しかも190席のうち残り40枚ぐらいしかなく、目の前で次から次へ来館した人に渡っていく。静岡から来た禅の勉強会のツアーだと話したところ、担当の女性スタッフが上に掛け合ってくれたのですがやはりNG。食事中の参加者にSOS電話をし、食事が済んだ人から駆けつけてもらったんですが、結果的に2人が取れずじまい。完全に事前確認し忘れた自分のミスで、2人には申し訳ない気持ちでいっぱいでした。

 その女性スタッフが整理券の残りが少なくなるにつれ、「私までドキドキしてきちゃいました…」と一言。お名前はうかがいませんでしたが、何気ないその一言に救われた思いでした。ほんとに感謝です。

 

 肝心の展覧会は、整理券のことであたふたして集合時間や場所を伝え忘れたりして、落ち着いて観ることができなかったものの、パンフレットの表紙にもなっている国宝の雪舟筆「慧可断臂図」(洞窟で坐禅中の達磨に、弟子入りを乞うため、自分の臂を切って差し出す慧可)だけはしっかり凝視。

 

 また、4年前の渋谷Bunkamuraの白隠展以来、ひさしぶりに白隠禅師「富士大名行列図」(解説はこちらを)に再会できて大感激でした。

 

 芳澤勝弘先生が、白隠画の最高傑作とおっしゃるこの絵、白隠さんの意図が分からなければ、ただの富士山風景画でしょう。先生がなぜ最高傑作とおっしゃったのかが多少なりとも咀嚼できるまでになったこの4年ほどの白隠勉強を振り返り、私自身は胸一杯になりました。ほかのインパクトある白隠画に比べ、足を止めて観入る人の数は多くはなかったけれど、当会の参加者も「こういう大きな展覧会で見ると、白隠さんや富士山を見慣れた我々が、いかにすごいお宝のそばに暮らしているかがわかるね」と目を輝かせていました。

 

 出入り口で皆を待っていたら、見たことのないゆるキャラのフォトセッションが始まりました。左側のトラは京都国立博物館の公式キャラクター「虎形琳ノ丞(通称トラりん)」、右の埴輪みたいなのは東京国立博物館の公式キャラクター「東 博(あずまひろし:通称トーハクくん)」だそうです。白隠さんの達磨像の前だと達磨像までゆるキャラに見えちゃいます(笑)。

 

  禅展は京都では5月22日まで、東京では10月18日から11月27日まで開催されますので、ぜひお運びください。公式サイトはこちらです。

 

 全員そろって博物館を出たのが15時40分ころ。最後に東福寺で特別公開されている法堂&禅堂を訪ねる予定だったのが、拝観受付が16時までと気づき、またまた大慌てでタクシーに分乗して移動し、ギリギリセーフ。

 紅葉の名所で知られる東福寺。静岡市民にとっては地元出身の聖一国師が建立した禅宗大本山としておなじみですが、今回特別公開された法堂は、高さ25.5メートル、間口41.4メートルの堂々たる仏殿。創建当初は15メートルの釈迦仏像が安置され、脇侍の観音・弥勒両菩薩像は7.5メートルもあり、新しい大仏さんのお寺として喧伝されたそうです。造営したのは鎌倉時代の摂政関白・九条道家。現在の建物は昭和9年に再建された、昭和の木造建築としては最大級の建造物です。

 天井には京都画壇の巨匠・堂本印象がたった17日間で書き上げたという蒼龍図があります。龍は仏教を守護する八部衆で、「龍神」ともいわれ、本山の多くでは法堂(はっとう)の天井に龍が描かれています。法堂は仏法を大衆に説く場所であり、龍が法の雨(仏法の教え)を降らすといわれ、火災から寺を守るという意味も込められているんですね。

 法堂の柱のひとつに、日蓮柱という刻印がありました。禅宗の寺に日蓮宗の寄贈柱?と不思議でしたが、なんでも日蓮上人が他宗から迫害を受けたときに聖一国師に助けてもらったそうで、国師が東福寺建立の際、柱を一本寄贈されたそうな。昭和の再建時にも日蓮宗の門徒が寄付されたとのこと。宗教戦争が止まない国ではあり得ないエピソードですね。閉門時間16時30分とあって、30分足らずの拝観ながら、無理して駆けつけてよかったです。特別拝観は5月22日まで。詳しくはこちらを。

 

 東福寺駅で解散し、残った9人で伏見まで移動し、今年3月にオープンした地酒屋台村【伏水酒蔵小路】で打ち上げ。ビールと焼き鳥で胃袋を落ち着かせた後、京都伏見の17蔵を一挙に試飲できる世界初の17蔵試飲セットを一気飲みしました。飲む前にソルマックをサービスで出してくれるところが粋でした(笑)。

 

 茶禅をテーマに、ふだんはなかなか観られない国宝や特別名勝を巡った2日間。私が単純に、自分で観たいところに皆さんを巻き込んだだけかもしれませんが、同じ視線で楽しみを共有してくれた仲間の存在を、改めて心強く感じます。

 禅語の、

 三人同行、必有一智

(この世界に朋友ほど善きものがあるだろうか。修行の道を歩む修行者同士は「道友」として互いに切磋琢磨する仲間。そういうときお互いは友であるとともに、お互いにとっての師でさえある)

が身に沁みた2日間でした。

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