雨の灯台

ポケモン擬人化を取り扱っています。
参加企画関連の記事メインです。

そういえば

2008-09-26 00:50:53 | R.N!/SS
昨日のSS書いてて思ったんですが、神出鬼没な人が夜の街歩いてるって怖くないですか(笑)
あの街に怪談があったら、一つ位クロチェが原因かもしれません←
以下、クロチェとトリルのお話。


彼の力は何を救う

トリルがその力を知ったのは、実際にクロチェに助けられた時の事だ。
それがきっかけで今も付き合いを続けている。
「ねぇ、クロチェ。あの時助けてくれて、ほんとにありがと」
「ううん。大した事じゃないよ。オレは引き止めただけ」
確かにクロチェがしたのはそれだけかもしれないが、そうしなければトリルは今ここに存在していなかった。
あの時の事はよく覚えている。

あれは、夕暮れ時に裏路地を歩いていた時の事。
「止まって!」
他に人はいないと思っていたのに声をかけられ、驚いて指示通りに足を止めた。
声の主は、今まさに塀を乗り越えて来た所だ。
「え?」
危なげなく着地した彼は、素早く駆け寄ってトリルの腕を掴み、ぐいぐいと引っ張る。
「ちょ、ちょっと、何?」
「行っちゃ駄目だ」
どうして、と問う声が形になる前に。
ドスッという鈍い音と共に、古びた看板が地面に突き刺さっていた。
そこは、止まらなければちょうどトリルがいた辺り。
「……よかった」
目を丸くするトリルから手を離し、クロチェは安堵の息を吐いた。

「あの時はほんとにびっくりしたよ。……クロチェの力は、人を救えていいよね」
もし――もしも、自分も同じ力を持っていたなら。
(私は、二人の死を止められたかな)
あの時包丁を奪えれば。
あの時銃を手にしなければ。
消えない後悔を背負う事もなかっただろうか。
「羨ましいよ」
ぽつりと落とした言葉を、しかしクロチェは否定する。
「そんな事、ないよ」
「……え?」
「オレは人を救える訳じゃない。あの時だって、多分頭に看板が落ちる未来だったから避けられたんだ」
「どういう意味……?」
「オレが感じられるのは、死の匂いだけだから。もしあの時の未来が、トリルさんの肩に看板が直撃するとかだったら、オレは何も出来なかった。例えそれでトリルさんが腕を失ってしまうような未来でも、死にさえしなければ、オレにはそれが現実になるまでわからない」
――死にさえしなければ。
どんな大怪我が起こり得る未来でも、そこに死がないのならクロチェに察する事は出来ない。
「オレは、無力だよ」
「無力なんかじゃない。現に私を助けてくれたでしょ。私だけじゃなくて、他の人だって……」
「助けられなかった人、たくさんいるよ」
そう言ったクロチェの声は沈んでいて、トリルには謝るしか出来なかった。
クロチェもまた、消せない傷を持っている。
「……ごめん」
「ううん」
しばらくの沈黙の後、クロチェが口を開く。
「オレ、トリルさん好きだよ。銃もナイフも持ってるけど、匂いがした事一回もないから」
「私、人殺さないって決めてるんだ」
「そうなんだ。じゃあ、安心出来る」
少し笑ったクロチェは、トリルを信じきっていて。
胸がちくりと痛んだ。
誓いはもちろん本当だ。
けれどこの銃が、死の原因になった事がある。
あの時していたであろう、死の匂いとはどんなものだろうか。
トリルには、決してわからない。
「私は絶対、自分の意思で命を奪わない。奪いたくない。だから、もし私から匂いがしたら、止めて。お願い」
「うん」
たった一言の返事だが、欠片も嘘の響きがない。
「……ありがとう」
やっぱり。
「クロチェは、救えるよ」
怪我は防げなくても、死から誰かを守りきれなくても。
それでも、守るのを止めようとしないから。
何かを必ず、救っている。


うう……詰め込み過ぎた感がorz
欲張りすぎたな、反省しよう。

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