雨の灯台

ポケモン擬人化を取り扱っています。
参加企画関連の記事メインです。

【SS】ジャック君お借りしました。【1/2訂正】

2009-12-31 21:06:53 | R.N!/SS
そっと静かに、さようなら。


トリルは微睡んでいた。世界の果てのように静まり返ったその場所に、邪魔は入らない筈だった。
けれど誰かがしきりに呼んでいる。
(……誰?)
聞き覚えのある声だが、酷く遠くて誰なのかよくわからない。そのまま眠りに沈もうとしたけれど、その声がやけに必死な響きを帯びている事に気付く。
「――ル、ト……ル、トリル!」
悲痛にすら聞こえるような声で何度も呼びながら体を揺するものだから、何だか起きなければいけない気がした。
(どうしたの? どうしてそんなに私を呼ぶの……?)
うっすらと目を開ける。ぼやけた視界が、瞬きする度に輪郭を取り戻す。
見えてきたのは褐色の肌。メッシュの入った髪。金色の瞳。
「トリル!!」
(あ。ジャック、だ)
随分久しぶりに会った気がする。
覗き込んでいる彼の上から、ちらちらと白いものが降ってくるのが見えた。
「ジャック……ここで何してるの? 雪降ってるよ?」
寝起きのようなはっきりしない声が出た。事実眠りかけていたのだから仕方がない。
「何してるって、それはこっちの台詞だ! 一週間も行方くらまして、やっと見つけたと思ったらこんなとこで……! 何してるの、死ぬ気!?」
(死ぬ……? ジャックは、私が死ぬと思ってるのかな)
ゆったりとした速度で思考を働かせ、トリルは微かに笑んだ。
「死なないよ。眠るだけ」
その答えも笑みもどこか現実離れしていて、ジャックに不安を覚えさせた。
「私、前怖がってたでしょ? その理由がわかったんだよ。だから眠るの」
至極当然の事を言うように穏やかな口調で語る。
だが状況は明らかに異様だった。雪の降る中、両親の墓前でトリルは横たわっていたのだ。おかしいとしか言いようがない。
「何、言って……」
「あの日、夢を見たの。それから一週間、色んな所に行って探したよ。沢山歩いたし、船にも乗った。でもね、見つかんなかったんだ。最後にここに来たけど、やっぱり駄目だった。だから、もう眠るの」
肝心な所ばかりぼかして喋る。まるではぐらかそうとしているようだ。
「ジャックは帰らなきゃ。風邪ひいちゃうよ……?」
手を伸ばす。ジャックの頬に触れた指先は、ぞっとする程冷たかった。
「おやすみ」
「……っ」
一瞬だけ触れて、すぐに重力に従って離れてゆく。
駄目だ。このままじゃトリルは戻って来ない。
最悪の予感に突き動かされて、とっさにトリルの手首を掴む。
「勝手な事言うな! そんなんではいそうですかなんて言える訳ないだろ!」
「……だって、気付いちゃったから。もう無理だよ」
「気付いたって、何に」
掴んだ手が強張った。
「……」
「言わなきゃわからないよ」
「……」
「トリル」
「…………昔の夢を、見たの」
言い募るジャックに観念したのか、ぽつりと零す。
「夢?」
「そう。……昔の夢自体は、そんなに珍しくないの。あの夜の夢、結構見てたから」
いつしか笑みは消え、声も弱々しくなっていた。
「でも、それしか見てなかったんだよ。悪夢だったの。昔の幸せな夢なんて、あの夜から見てなかったのに。なのに……こないだ、家族の夢を見た。三人で屋敷の庭で話してる。お母さんがまた見栄張って、仲間誘ってバカンス行こうって。私またかってむくれてた。お父さんが見かねて、たまには家族で行こうって。私が行きたがってた場所提案してくれた、嬉しかった。お母さんもそうねって言って、お父さんは頭撫でてくれた。楽しみだった。……私、笑ってた」
トリルの瞳が揺れる。
「それから目が覚めて、どれだけ悲しかったかわかる? 二度とあんな日来ないのに幸せな夢なんか見て、平気でいられる訳ない……っ」
優しい夢は、罪の記憶より残酷だった。もう戻らない日を突きつけられて絶望した。
父を殺したと自分を責めていれば、無理にでも進む力になったのに。結局あの日から動けていないのだと気付かされた。
「……悪あがきで、探しに行ったの。お父さんの面影、家族の記憶がどこかにあるはずって。でもなかった、どこにもそんなもの残ってなかった!!」
もういない。存在しない。
そう、頭ではわかっていたはずだった。理解して、受け入れたつもりでいた。
それでもどこかで繋ぎ止めようと、必死で。
「……何にも、残さないで。突然、呆気なく。人はいなくなる。ほんとは、わかってた。わかってたけど、わかりたくなかった。意識するのが、怖かったの」
意識しそうなのに気付いたから、うっすら感じる恐怖を敏感に察知した。その結果が以前の状態だ。
「もう私、気付いちゃった。気付く前には戻れない。だから眠るの。……ね、いいでしょ」
「トリル、」
「邪魔しないで。何で止めるの? 結局……全部、夢だったみたいに過ぎてくんだよ。“今”だって同じに過ぎてくなら、何の意味があるの……?」
暗い瞳がジャックに向けられる。
だから離して、と訴える視線。
けれどそれが答えを求めているようにも、ジャックには見えて。
「――意味なら、あるよ」
「ない、……そんなの」
「ある」
断言すると、トリルは口を噤んだ。
揺らいでいる。
今なら、引き戻せる。
「俺にとって、トリルが無意味だとでも思うの?」
「……それは」
「まあ、この際百歩譲ってそう思っててもいいよ。じゃあ、トリルにとって、俺は無意味?」
「ジャックがとかじゃ、なくて……」
「今に意味がないって、そういう事でしょ。だったら俺が死のうがいなくなろうが、平気なんだね」
「……っ」
責める口調でもない、ただ淡々とした物言いに小さく首を振る。
「いてもいなくても同じ。そう言ってるんだろ? 俺がその程度の存在なら、俺にとっても無意味だよ。トリルが眠るなら、俺も消えて――」
「いや!」
理解が追いつく前に言葉が出た。
「それ、は……いや」
空いていた方の手で、ジャックの腕を掴んで。
“いかないで”というように。
「それと、同じことだよ」
ジャックはトリルの手を離す。その手を、自分を掴んだ手に重ねた。
「トリルが平気じゃないように、俺だって平気じゃない。いなくなられたら、困る」

だから、帰っておいで。

「……いつかは、いなくなるのに?」
「今いなくなる必要はないだろ。無意味な相手に、執着なんかしないよ」
「……こんな、でも?」
「どんなでも。したいようにすればいい。帰ってきたいなら俺が連れて行くから」
「でも、……今更だよ。私、お父さんとお母さんを……」
「そんなにきっかけがほしいなら、俺が強引に引っ張ってく」
「――……、」
トリルは答えなかった。けれど手を取っても抵抗はない。
「行くよ」
その声に、静かに瞬く。
流れた涙をジャックの指が拭ってくれた。



翌日、トリルは体調を崩して寝込んでいた。
看病しながら、熱が下がったらお墓参りに行こうと約束したジャックに頷き返す。
その瞳は、もう揺らいでいなかった。


fin...


――――――――――
トリルシリアスシリーズ第二弾でした。
年の瀬にシリアスとか自重してない!
何としてでも年内に上げたかった。今日ちらりと雪が降ったので、余計に。
しかし大分間が空いてしまっ……間が空いたどころの騒ぎじゃないな!(爆)
去年の冬からあったネタです。
当初はこれで落ち着くはずだったんですが、徐々にトリルの内面が掴めてきたのでシリアスシリーズはまだ続きます。

表の明るさと裏腹に、トリルは結構揺らぎます。
今回と、ゲームネタと。そしてまだ失踪します、それが第三弾←
第四弾までで落ち着きます(え)
でもその辺も成長に必要な過程です。
ジャック君に苦労と心配をかけながら(……)
危なっかしい娘ですがよろしくお願いします←

【1/2訂正追記】
一度上げたものを直すのはどうかと思いますが、やはりどうしても納得いかなかった部分を訂正しました。
以降このような事がないようにします。
新年早々すみませんでした。

Do you enjoy playing cards?

2009-11-14 12:16:08 | R.N!/SS
四人が囲むテーブルの中央に、裏になったトランプカードが置かれていく。
「8」
「9」
10、と言ってネーロは三枚カードを出す。
「ダウト」
と、前の番の男からコールがかかった。
「ふふ、残念だったわね」
出したばかりのカードをめくると、確かに10が三枚。
男は溜息をついて場のカードを手札に加えた。
してやったりと笑いながら、ネーロはちらりと次の番の相手に視線を飛ばす。賭け事初心者のトリルは順調に手札を減らしていた。
(全然引っかからないのねぇ)
四人の中では一番経歴も浅く、長くやると身につくような勘も皆無のはずだ。
そのトリルが、現時点で最も上がりに近い。
「行くぞ、Aだ」
先程負けた男がAから始めた。ネーロが2、次にトリルが3……と続き、その後三巡目。
「J」
トリルがさりげなく出したカードは四枚。手札には残り一枚。
「ダウト!」
いくら何でもこれはダウトだろうと、男が声を上げた。
ネーロはすっと目を細める。
出された左端のカードの下に、もう一枚重ねられているのを目ざとく見つけたのだ。
上手く隠されてはいるが、ほんの僅かにずれがあった。
(この場面でわざわざ出すってことは、コールかけられるのも計算の内ね)
単純に状況を見てのコールか、あるいはわざと五枚目のカードを気付かせてのコールか……どちらにせよ、かけた男の負けだろう。
「はい」
トリルがカードを裏返す。
出てきたのはJが四枚、そして――
「もう一枚、ジョーカーね」


五枚のカードを相手に明かす。
ネーロがフラッシュ、トリルがツーペア。
「やっぱり強いです、敵いません」
苦笑しながら言うと、ネーロも笑ってカードをきり始めた。
その手つきは素早く、思わず見入ってしまう程だ。
「でも、さっきトップだったじゃない」
「コールかけたのがもう一人の人だったら無理でしたよ。運がよかったんです」
「ストレート勝ちしておいてよく言うわ」
実際、トリルは一度もコールを誤っていない。
はったりをかけるゲームに関しては正直イカサマに入るのではと思わなくもないが、相手のコールでカードを引かされる事もあるのでよしとした。
「私が勝てるのはダウトくらいですよ」
「ポーカーもなかなかいい線いってると思うけどね。楽しいでしょう?」
「はい! ネーロさんのおかげです。ありがとうございます」
ポーカーだけでなく、色々なカードゲームを教えてくれた。
ルールはもちろん、勝つコツやちょっとしたイカサマなども。前回は簡単なカードマジックを教えてくれた。
そうでなければずっと縁のないものだっただろう。
「どういたしまして。私も楽しいからいいのよ。そうそう、この前のマジックはどう?」
「あ、えーと、あの隠すところが不自然になっちゃって……」
「そう、ちょっとやってみて。見てあげるから」
「いいですか?」
「いいわよ。見せたい人がいるんでしょ?」
いたずらっぽくウインクするネーロに、トリルの頬が赤らむ。
「……はい」
小さく頷くと、お見通しよと微笑まれた。
渡されたトランプの束を、まだぎこちなさが残る手つきでテーブルに広げる。頭の中で手順を確認して一旦深呼吸。
「じゃあ……始めます」
視線を感じながら、タネの第一段階に取りかかった。



ネーロさんお借りしました!
やっと完成です……遅いorz
色々教えて頂いてますというネタです。
どう考えてもカジノにダウトがない事には目をつぶって下さい←
トリルがネーロさんに勝ってますが、ネーロさんが様子見だったので勝てたって感じです。いくら嘘を見抜けても、イコール自分の嘘が見抜かれないって訳ではない。
マジックはネーロさんにもう一度教えて頂いたおかげで、無事彼に披露出来ました^^

以上、何か変な時間に目が覚めちゃったので空腹に耐えつつ書き上げました。
もっかい寝よ。
タイトルの英語は何となくの雰囲気でつけたんですが、ぱっと見よく来る迷惑メールみたいになった(笑)

携帯で誤字見つけたので一旦削除して投稿し直し。
二度寝したせいで起きたの十一時半だったww
遅刻寸前ww(笑うとこじゃない)
ギッリギリで間に合いはしますが……三日連続とかたるみ過ぎにも程がある。

命の天秤、君の想い

2009-07-31 09:27:36 | R.N!/SS
ふと、会話が途切れた。
クロチェがよく知る裏道をクラウに案内していた途中の事だ。
沈黙は特に気にならない。けれど急に心細くなって、クラウは繋いだ手に力をこめた。
最近、時々不安に襲われる。ひょっとしたら自分よりも先に、クロチェがいなくなるのではないかと。
人を助ける為であれば、何の躊躇いもなく身を危険にさらすから。
今隣にいても、次の瞬間には誰かを救う為に駆け出していなくなってしまうかもしれない。そんな思いに駆られて、気付けば口を開いていた。
「クロチェは、怖くないノ?」
人を助ける事で、自分が死んでしまうかもしれない事。そう問うと、クロチェは足を止めて少し言葉を探しながら答えた。
「……それは、怖いよ。死にかけた事があるから、すごく怖い。でも……死なれる怖さを感じる事の方が多いから。これ以上、死なせたくない」
だから、と続いた声にクラウは凍りついた。
「もし誰かを助けて、オレが死ぬとしても。その人が死なずに済むなら助ける。オレはそういう風にありたいと、思ってる」
他人の命が尽きるのを避けられるなら、引き替えに死ぬのも恐れないようにと。
「そんなの……っ」
「……ごめんね」
色をなくしたクラウにぽつりと謝る。
「ごめん、クラウ。でも……間に合わなくて、助けられなかった人がいるから。怖くて躊躇ったせいで、死なせてしまった人がいるから。……見殺しにした人が、いるから。自分を優先して助けないなんて事、出来ない。もう嫌なんだ、」
何かを押し殺したような声をこれ以上聞いていられないと、クラウがクロチェを遮ろうとした時。クロチェがそれより早く言葉を切り、ハッと視線を上げた。
突然の鋭い反応に驚いたクラウに体ごとぶつかって、華奢な体躯を突き飛ばす。
「!?」
何の構えもしていなかったクラウはその力をまともに受けて、すぐそばの枝分かれした道に倒れ込んだ。その瞬間、

パァン!

――銃声が響いた。
その音にクラウが飛び起きる間にも、更に連続する射撃音。
「クロチェ!!」
「来ちゃだめだ……っ!」
慌てて駆け寄ろうとするクラウを制止する。
クロチェはふらつきながら腹部を押さえていた。手を染めながらぱたぱたと地に落ちる、赤い液体。左腕は力なく降ろされ、肩からも同じものが伝っていた。足にも掠ったらしく滲むそれは、血。
飛び出してこようとするクラウに、クロチェは血相を変える。ほんの一瞬だけ背後に意識をやり、腹から手を離してクラウを路地に押しこんだ。今し方流れたばかりの血が触れた箇所に付着した。
同時に、自分の体で細い入り口を塞ぐようにする。
最後の銃声を、クラウは尻餅をつきながら聞いた。
「……っ!」
クロチェが表情を歪め、そのまま前に倒れこむ。
発砲はやんだようだが、クラウにそれを意識する余裕はない。
「クロチェ、クロチェ……!」
何度も呼びながら、倒れたままのクロチェを仰向けにさせる。胸に、撃ち抜かれた痕。
「……、……っ」
何かを言おうとして開いた口から出たのは言葉ではなく、血だった。
痛い。熱い。
けれどクロチェにとってそんな事はどうでもよくて。
(クラウ)
声が出ないのがもどかしい。
(そんな顔、しないで。どうしよう、伝え……ないと……)
次第に視界が霞んでいく。力の入らない手を懸命に持ち上げたが、クラウに届くより早く地に落ちてしまう。
せめて少しでも安心させようと微笑んだのを最後に、クロチェは意識を失った。

白く清潔なシーツに横たわるクロチェが目を覚ましたのは三日後の事だった。
「……、ん……」
まだはっきりしない視界に、クラウが飛びこんでくる。
「クロチェ! よかった……よかったぁ……」
安堵のあまり涙を零し始めたクラウを見て、一気に意識が引き戻された。
「クラウ、……ごめん」
「……タ」
「え?」
「……死んじゃうかと、思っタ……ッ」
ぼろぼろと泣きながら、クラウは今まで堪えていたものを吐き出していく。
「だってズット目覚ましてくれないし、あんな話した後だし……! このまま起きてくれなかったらって、すごく怖かったんダヨ!? ボクが助かっても、クロチェが死んじゃったら意味ないヨ……!!」
涙を拭おうともせずにしゃくりあげるクラウに、クロチェはおろおろと言葉をかけた。
「ご、ごめん……。最後、死なないってわかってたんだけど声が出なくて……」
「そういう問題じゃナイ!」
張りつめていた糸が切れ、段々と怒りに変わってきたらしい。
「何で何にも言わないで盾になったりしたのサ! 庇ってくれるのは嬉しいけど、一言言ってくれればボクだって何か出来たかもしれないノニ! 何で、いつも一人デ……っ」
声が詰まる。
いつもクロチェは匂いがすると一人でどうにかしようとする。今回だって、クラウには「来ちゃだめだ」と言っただけ。
クラウは転んだ時の擦り傷程度で済んだが、クロチェは四発の銃弾を受けた。足は掠めただけだったが、あとの三ヶ所は撃ち抜かれていた。
不幸中の幸いで致命傷ではなかったものの、あと少し弾道が逸れていれば死んでいてもおかしくなかった。
泣きながら怒られ、クロチェは自分のした事を省みる。
「……ごめん、クラウ」
(オレ、わかってなかったね)
自分の言動が、どれほど不安を与えるものだったかを。
「考えなしだった。ちゃんと想ってくれる人がいるのに」
ベッドに置かれていたクラウの手に、そっと手を重ねる。温かい、血の通っている手。
生きている人間の体温。
そうだ、ちゃんと知っている。

『匂いを感じられるのは、確かにクロチェしかいない。でもそれを伝えれば手を貸す人間が、ここにもう二人いるでしょう?』
『だから、一人で全て背負いこもうとするな』

一人じゃないと、そばにいると伝えてくれる人達を。知っている。
知っていたのに、いつしか頭の片隅に追いやってしまった。
もう助けてくれる両親はいないのだから、一人でやり通さなければいけない。
そう思いこんだ結果、クラウを傷付けた。
「ごめんね。もう一人で突っ走らない。匂いを感じたら伝えるから……手を、貸してね」
「……! ウン!」
大きく頷くクラウ。
(ああ、やっと)
笑ってくれた。
泣かせたり、怒らせたり、心配させたりしてばかりだったけど。
「ありがとう」
涙の跡が残ってはいても、それはクロチェが大好きな明るい笑顔。
クラウを遺して死ぬなんて、出来るはずもなかった。
「クラウが、オレの生きる理由だよ」


――――――――――
SS一つに一ヶ月って一体どういう事。
おはようございます、日月です←
クロクラシリアス上げました。
状況がきりん。さんのSSと似てしまってすみませんでした;

クロチェは「死を予知出来る以上、それを避けるのは知っている自分の責任」と思っています。
その責任を果たそうとするあまり、自分の身を省みない傾向が強いです。罪悪感や負い目がそれに拍車をかけたりもして。
自分をどうでもいいと思ってる訳ではないんですが、その場になると頭から吹っ飛んでしまうというか。
今回はそれを自覚する話でした。

タイトルは、一応どっち視点にも取れるようにしたつもりです。
天秤も想いも、命があるから存在するもの。

クロクラほのぼの+私信

2009-06-26 00:42:36 | R.N!/SS
「クロチェ?」
呼ばれた事に驚いて目を開けると、すぐ近くでオレを覗き込む顔があった。
「……クラウ」
全然気付かなかった。
かなり頭の中に意識が集中してたらしい。
「寝てたノ?」
「ううん、ちょっと考え事してた。座る?」
隣を指すと、クラウはウンと頷いて腰掛けた。
街の隅の方にあるベンチだからあんまり人通りもないし、静かだ。
「何考えてたノ?」
首を傾げて聞いてくるクラウに笑いかけてみせる。
「さっき、思い出した事があったんだ」
ふと目に留まった知らない二人が、何となく父さんと母さんに似た雰囲気を持っていたから。
「ちょっと昔話になるよ」
いつだったか、和やかに話していた両親に向かってぽつりと零した事がある。
『……父さんはいいね』
『ん?』
『どうして?』
『母さんみたいな人に会えたから』
純粋な羨望だった。
オレには無理だろうなっていう諦めからではあったけど。
『いつかきっとクロチェも会えるよ』
そう言われてから年月が過ぎても、会えるとは思ってなかった。
でもそれは、クラウと会うまでの話。
「オレ、自分が誰かを好きになる事はないって思ってた。きっと命だけで精一杯だから、恋愛する余裕はないだろうって。……でも違った。余裕とか、そんなの関係なかった」
きっかけは瓶を拾った事。
それだけならただの偶然で終わったかもしれないけど、そうはならなかった。
「クラウの明るさとか、一生懸命生きてる事を知る度に、どんどん惹かれていったんだ。――ありがとう、オレと出会ってくれて」
心からの言葉を伝えると、クラウが抱きついてきた。
「クロチェ!」
嬉しそうに笑いながら、名前を呼んで。
「ボクこそありがとう! 大好きダヨ!!」
大切な人。
抱きしめ返して、その温かさを感じる。
オレは今、とても幸せだよ。
クラウも同じくらい幸せだったら嬉しいな。


クラウちゃんお借りしました!
ほのぼのやっと上げられました……。
時間かかった割に短いorz
年中プチスランプらしいです←
完全なスランプになると何も書けなくなる(爆)
さて、クロチェにとってクラウちゃんが初めて好きになった人です。
初恋が叶うなんて幸せな事。
そんな風に好きになれる相手に出会えるのも幸せな事。
その幸せを噛みしめるという話でした。

最近パソコンあんまり開けない、メールもなかなか打てないのコンボにやられています。
メールがかなり溜まっている……いつか友達なくしても文句言えないぞ私……。
心情的に疲れが溜まりやすくなっているのかもしれない。
何かちょっと頭も痛いし。
近々叱られる事も確定したし、今日のところは大人しく寝ます。
いい加減メール完成させて送らないとなぁ。
いつまで書きかけにしておくつもりだ。

以下、きりん。さんへ私信です。
紙粘土の人形すごいですね!
クラウちゃん可愛かったです^^
立体を作れるなんてほんとにすごいです。
反応遅くて申し訳ないんですが、クロチェとトリルもお願いしていいでしょうか……!

クロチェ過去SS

2009-05-23 19:43:43 | R.N!/SS
ようやく上げる事が出来ました……ほんと遅くてすみません;
これからご飯なので絵茶開始には間に合わなそうですorz


……。
…………。
………………あ。
匂い。
……。
…………。
………………。
……………………消えた。
死んだんだ。
誰か、死んだ。

気付くと、いつの間にか暗くなってた。
声がする。
オレを呼んでる。
近所のお姉さんだ。
見つからない内に逃げようと思って立ち上がったら、足に力が入らなかった。
立てなくて、落ちた。
痛い。
そのまま倒れてたら、見つかった。
駆け寄って来る。
何回も心配そうに聞くから大丈夫って言おうとしたら、声が出なかった。
そういえば喉がカラカラな事に気付いた。

お姉さんの家に連れていかれた。
水を飲まされた。
手当てをされた。
ご飯を食べさせられた。
されるがままになってる間に、叱られた。
「倉庫の上に乗ったりしないで、危ないでしょう?」
ああ、あそこ、倉庫だったんだ。
ぼーっとしてたら、泊まるように勧められた。
首を横に振る。
「……帰ります」
今度は声が出た。
「でも……」
「家がいいんです」
本当は、一人がいいだけなんだけど。

真っ暗な部屋で床に仰向けになる。
眠くはなかったから、ひたすら寝転がってた。
……。
…………。
………………。
……………………。
周りが騒がしい。
匂いだ。
結構近い。
火事だ、って声が聞こえた。
……。
…………。
近付いてくる。
段々明るくなってきた。
気温が上がってる。
音も聞こえる。
燃え移ったんだ。
じゃあこの匂いはオレの。
オレ、死ぬんだ。
それがわかってて動かないのは、緩やかな自殺みたいだ。
そんな事をふと思った。
しばらくすると火の方を見るのにも飽きて、ただ天井を見上げる。
黒い煙が充満してきた。
……。
あれ。
誰かが呼んでる。
「ク……チェく……、クロチェ君!」
さっきの人だ。
声が近いと思ったら、部屋に入ってきてた。
この家燃えてるのに入ってきたのかな。
「逃げるわよ!」
手を引っ張ってくる。
でも女の人だし、オレに動く気がないからあんまり意味がない。
「早く!!」
オレは行かない。
そう言うのも面倒で首を振った。
「どうして! 逃げなきゃ死ぬのよ!?」
そんな事知ってる。
匂いがするし、この状況は誰が見ても死ぬだろうってわかる。
「……だから?」
ああ、思わず言っちゃった。
喋るの面倒なのにな。
「オレは別にいいです。放っといて下さい」
「いい訳ないでしょう!? お父さんとお母さんが亡くなってショックなのはわかるけど、死んじゃだめよ!」
「……そんなの、誰が決めたんですか」
命が大切だなんて、そんなきれい事誰が言い出したんだ。
「オレが助けたって助けなくたって人は死ぬのに。早いか遅いかの違いだけ。結局死んでいくなら、それがいつだって変わらない」
例えば誰かを助けたって、その人が死ななくなる訳じゃないんだ。
少し時間が伸びただけ。
必死になって助けたところでどうせ死ぬなら、もういいじゃないか。
誰がいつどこで死のうが勝手じゃないか。
「生きる事になんて何の意味もない。もう、全部、どうでもいい……」
何でオレ、今まで生きてたんだろう。
さっさと諦めればよかったのに。

パンッ

……え?
頬が痛い。
お姉さんが震えてる。
泣いてる……?
「……そんな風に投げ出す事を、誰が望んだの」
何で、お姉さんが泣いてるんだろう。
「あなたのお母さんは、命なんてどうでもいいって思ってあなたを産んだの? あなたのお父さんは、どうでもいいものを救うあなたを誇りに思ってたの!? 違うでしょうっ!?」
……母さん。
父さん。
もう、死んじゃった。
もういないんだ。
……ああ、でも。

『クロチェ』

声が。
蘇る。

『あなたを産んで、本当によかった』
『お前は自慢の息子だよ』

やめて。

『クロチェ……泣かないで』
『お前はよくやった。……自分のせいだなんて、思うな』

違う。
だって。
「だって……助け、られ……なかっ……」
視界が滲む。
目頭が熱い。
涙なんて、もう流れないと思ってたのに。
「二人共助けられなかったっ、死んじゃったんだ……! もう、嫌だ……っ」
助けても助けても、死んでしまう。
それでも何とかやってきたのは、父さんと母さんがいてくれたからなのに。
一人でなんて頑張れない。
そして結局はオレも死んでいく。
「どうせ死ぬのに、……生きてくのなんて、もう嫌だ……!! もう……嫌だよ……っ」
どうしたって死を避けられないなら、何もかも投げ出してしまえば悲しくない。
だからもう全部どうでもいいって思った筈なのに。
何でこんなにぼろぼろ泣いてるのかわからない。
「クロチェ君!!」
お姉さんの声が、轟音にかき消された。
……今、何が起こったんだろう。
元から熱かったのが更に熱くなって、お姉さんがオレに被さって。
お姉さんが苦しそうな声を上げてる。
天井が崩れた?
それをお姉さんが、庇ってくれた……?
「お姉さ……」
「だ、大丈夫……少し掠めただけ、だから……。クロチェ君は、大丈夫だった……?」
上体を起こしながら聞いてくる。
オレは別に何ともない。
とりあえず頷くと、よかったって言われた。
「……ねえ、クロチェ君。私には、あなたを慰める事しか出来ない。人は確かに死ぬわ、それは誰にも変えられない。でもこれだけはわかって。生きてるって、それだけで素晴らしい事なのよ! 体を張って人を助けて、それを私に、皆に教えてくれたのはあなたでしょう!? 死んでしまったら、もう二度と取り返しはつかないのよ!! それでいいの!?」
……オレは。
「オレは、……!」
匂いが急に強まった。
今まで漂っていたのとは段違いに濃い。
数秒先の死を告げる匂いの出所は――オレ達の、真上だ。
オレの上にはお姉さんがいる。
「危ない!!」
何か考える余裕なんてなかった。
とっさにお姉さんを抱き込んで横に転がる。
熱い塊が、すぐそばに落ちた。
激しく咳き込む。
……どうしよう、このままじゃ。
辺り一面死の匂いだ。
逃げないと。
少しでも匂いの薄い方に!
「こっち……!」
立ち上がって、手を取って走り出す。
くらくらする。
かなり煙を吸ってたんだと今更気付く。
足も痛い。
そういえば落ちた時に痛めてたんだ。
突然、引いてた手が重くなった。
振り向くとお姉さんが倒れてた。
「お姉さん!」
「……ごめん、足……に、力が……」
だめだ、意識が飛びかけてる。
どうしよう……どうしようっていったって、進むしかない。
ほとんど引きずるようにしながら背負って、燃え盛る火の中を何とか進んでいく。
さっきまで冷静だったのに、いつの間にか必死になってる。
『もう、全部、どうでもいい』
確かにそう思ってた。
でも、でも違うんだ。
死なせたくない、死にたくない。
どうでもよくなんかないんだ。
そうだ、オレは、どうしようもない死の現実が――悲しかった。
認めたくなくて、全力で抗いたくて。
だから今まで、必死で人を助けてきたんじゃないか。
それなのに投げだそうとしたなんて、馬鹿だ。
お姉さんは絶対に死なせない。
死なせちゃいけない。
目の前が霞む、けど、今は倒れられない。
どうにかして安全な所まで行かないと。
多分、オレも半分意識がない。
どれ位かかったのかわからないけど、やっとの事で家を出られた。
駆けつけてた救急隊員の人にお姉さんを預けようとしたら、オレも一緒に連れて行かれた。
同じ車に乗せられて、匂いは完全になくなった。
よかった……。
同乗した旦那さんと子供達がお姉さんに声をかけてる。
まだ少し朦朧としてるみたいだけど、ちゃんと受け答えしてる。
その様子を見て、また涙が出てきた。
オレはこの人を巻き込んで死なせてしまう所だったんだと、今更ながらに強く実感して。
「……ごめんなさい」
それだけじゃない、今まで麻痺していた感情が一度に押し寄せてきてもう訳がわからない位ぐちゃぐちゃだ。
「ごめ……なさ……っ」
泣いてるせいで余計に息が苦しいけど、止まらない。
止められない。
ひたすら謝りながら泣きじゃくるオレの頭を、優しい手がそっと撫でる。
周りの声が少しずつ遠のいていく中で、その温かさだけが最後まで残っていた。


以上、クロチェの過去SSでした。
改めて見ると凶悪な長さだ……。
両親を亡くした後、抜け殻のようになってた頃の話。
この時何もかも投げ出しかけた事、特に人を助けなかった事は、クロチェにとって生涯消えない後悔になっています。
ちなみに、出てきた女性は以前クロチェに子供を救われた人でした。
なのでクロチェに感謝していますが、クロチェの方も彼女を命の恩人だと思っています。
生きててよかったね、クロチェ。
しかしこれ、見守ってた両親は辛いなんてもんじゃないな……。

執筆追いつかない

2009-04-23 09:59:22 | R.N!/SS
筆の遅さが嫌になりますorz
小説も含め、近頃メールを打つのに使う労力が半端なくて。
ちまちまとしか進まなくて滞りがやばいです。
未送信メール182通ってどういう事。
学校の方は……文学怖い、人間怖い。
ぞっとする。
怖い事は嫌だ、苦手だ。
でも文学部は楽しい(何それ)
文学と人間が嫌いな訳じゃないんだ。
綺麗な面ばっか見るって訳には、いかないんだよなぁ。
まあ、元気にやってます。
授業の疲れは皆さんの所を回ると吹っ飛びますしね!

きりん。さん、クロクラのまとめありがとうございました!
それからSSも切なくて……!;;
ほんとに素敵な恋人さん頂いて嬉しい限りです。
これからもよろしくお願いしますね!
SSに便乗させて頂きました。


眠るクラウは少し眉を寄せて苦しそうに息をしている。
触るのに躊躇ったけど、頬に残る涙の跡をそっと拭った。
好きになってごめんねと泣いた、その声が耳から離れない。
「……クラウが謝る事なんてないよ」
だって何も悪くないんだから。
辛いのはクラウなんだから。
むしろ、謝るのはオレの方だ。
死が前もってわかるだけ。
進む先に匂いがあるなら呼び止められる、銃弾が原因なら盾になれる。
でも病や寿命は、どうにも出来ない。
オレといると、きっと余計に死を突きつける事になる。
「ごめん」
オレがいなければ考えなくてよかった事まで考えさせてしまって。
気に病ませてごめん。
あんな風に泣かせたい訳じゃないのに。
「でも」
それでも、そばにいたいんだ。
「好きなんだ」
この感情が君を傷付けていても。
その一方で笑っていてほしいなんて、勝手だ。
「……ごめん」
今こんな事を言ったってどうにもならないのに。
言わずにいられないのはどうしてだろう。
「ごめん、クラウ」
結局いつまで経っても無力なまま。
クラウの苦しさを和らげる事も出来ない。
せめて、早く治るようにと祈るように念じた。

「自重」……じじゅう?←

2009-04-09 21:44:53 | R.N!/SS
そんなの持ってないよ^^
という事で(え?)、絵茶の余韻に浸っていたら浮かんだネタを上げます。
クラウディアちゃんをお借りしまして、クロチェとのカップリング設定な話です←←←
直接的(?)な描写はありませんが、結構深い仲というつもりで書きました。
大丈夫な方はこのまま読み進めて下さい。
例の如くシリアスですよ!←


生死をたゆたう

「――……」
驚いて出そうになった声は喉に詰まった。
ぎゅっと力をこめられた腕がまるで縋るようで、密着した体は震えていたからだ。
応える代わりにそっと背に手を回すと、微かな声が名を呼んだ。
「クラウ……」
頼りなさげに響いたその声に、今度は口に出して返事をする。
「どうしたノ?」
「……怖かったんだ」
ぽつりぽつりとクロチェが語り、クラウディアは静かにそれを聞く。
「夢を、見て。別に珍しくない夢なのに、今日はだめで……どうしても、一人じゃいられなくて……」
「……どんな夢か、聞いてもイイ?」
少し間を置いて、小さく頷いたのが肩越しにわかった。
「街中が、死の匂いに包まれる夢。オレは誰も助けられなくて、みんな……死んでいって、最後には……匂いが全部、オレを取り巻いてて、」
「ゴメンッ」
掠れたクロチェの声を遮る。
「ゴメンネ、思い出したくなかったヨネ」
そんな夢を見ていたなんて知らなかった。
いつもクロチェは多くを語らないから。
その裏で一人で抱え込んで――けれど今、それを自分に打ち明けてくれて。
「……でも、話してくれて、ありがとう」
背に置いていた片手をそっと頭に持っていく。
そういえば、抱き締める事はあっても髪にはあまり触れないかもしれないとふと思った。
指を埋めながら、大丈夫だと伝える。
「大丈夫だヨ。ボクもクロチェも死んでない。ちゃんと生きてる」
そう言われ、クロチェの震えが少し治まった。
(……あったかい)
抱き締めてくれる腕。
生きていると教えてくれる声。
そして、伝わってくる彼女の心音。
とくん、とくん。
規則正しいそのリズムが、クロチェを落ち着かせてくれた。
そしてクラウディアもまた、クロチェの鼓動を感じ取る。
大丈夫。
ちゃんと生きている。
ここにいる。
もう言葉はいらなかった。
抱き締め合ったまま、ただ互いの存在に安堵する。
沢山の死を見て身近に感じているからこそ、生きている今がこんなにも愛おしい。

未来ネタ

2009-03-13 00:11:41 | R.N!/SS
結局丸一日後とか遅筆過ぎだわ……。
クラウちゃんお借りして、未来ネタです。

その匂いに気付いた瞬間、動けなかった。
普段ならほとんど反射に近い反応が起こるのに。
体に染み付いた行動が起こらなかったのは、ショックだったから。
クラウディアの「体から」匂いがしたのが、悲しかった。
まだほんの微かな、だがひっそりとではあっても間違えようのない死の匂い。
――伝えないと。
そう思ったのに、
「……さん」
呟くような声しか出なかった。
息を吸い直し、もう一度呼ぶ。
「……クラウディアさん!」
「ん、ナーニ? あ、クロチェ、どうしたノ?」
屈託なく振り返り、歩み寄って来る。
その仕草は出会った頃と変わらず無邪気だ。
言葉にするのが躊躇われたけれど、意を決して重い口を開く。
「少しだけ……死の匂いがする」
「……そう」
二、三度瞬いた後、クラウディアは静かに呟いた。
沈黙に耐えかねてクロチェが言葉を重ねる。
「でも、まだほんの少しだから……すぐにって訳じゃ、ないから」
だから?
だから、なんだというのか。
「……体には、気を付けて……」
こんな無力な言葉はない。
それでもクラウディアは笑って頷いた。
「うん、ありがとネ」
「……」
やるせない。
こういう時、自分は無力だと思い知らされる。
そんなクロチェを見かねたのか、クラウディアは殊更明るい口調で言う。
「もーっ、クロチェがそんな顔する事ないノニ。だってボク、幸せだヨ? とーっても、幸せなんだカラ!」
「……そう、だね」
彼女の言葉に嘘はない。
クラウディアが「幸せ」と口にする時、声は弾み、満面の笑みで。
その言葉が輝いているように思えた。
でも、だから。
「ずっと、そういう風に幸せでいてほしいよ……」
クロチェが願う事。
生きている人には幸せでいてほしい。
そして出来るだけ長く生きてほしい。
誰だっていつかは死ぬとわかっているけれど、沢山の死を見てきたからこそ願わずにはいられない。
命が少しでも長く続くようにと。

それからしばらくして再び会った時には、幸いにも匂いは消えていて。
その事を伝えた際、クロチェはもしかしたら本人よりも安堵していたかもしれない。


以上、未来ネタでした。
一度はしていた匂いが消えたのは、トパーズさんのおかげというつもりで書きました。
便乗すみません。
死の匂いを感じ取る為にどうしても思考がそっちに寄りがちなクロチェにとって、幸せだと笑って生きるクラウちゃんのような存在は救いなんだろうなぁと思いました。
余談ですが、十年後のクロチェは今より表情豊かになってます。
でもその代わりほとんど泣かなくなりました。

いつの間にか日付変わってる!
眠いので寝ますー。
明日(もう今日か)は卒業式の予行だっ

有言不実行orz

2009-03-13 00:11:29 | R.N!/SS
自分の執筆の遅さを考えずに発言するもんじゃないですね←
すみません!;
ショッピングネタでマリアちゃんお借りしました。

「ありがとうございました。またお越し下さい」
女性店員の声を背に受けて店を出る。
手には小さな紙の袋。
時計を見ると、そろそろタイムリミットだ。
「マリア、もう待ってるかな」
今日のショッピングは趣向を変えようという事で、時間を決めてお互いに似合うアクセサリーを探して贈り合おうという訳だ。
色々考えながら選ぶ時間はとても楽しかった。
こうして待ち合わせ場所に向かう間も、喜んでくれるだろうか、マリアが選んだのはどんなものだろうと考えると自然と歩みは速くなる。
「あっ、トリルー!」
一足先に待っていたマリアが手を振った。
それに応えて合流する。
「お待たせ!」
「ううん、私もついさっき来たとこよっ」
二人共、前回のショッピングで買った服を着ている。
「じゃあ、早速!」
「うん、はいこれ!」
「ありがとう! これ、どうぞ!」
紙袋を交換し、一瞬目配せして開け始める。
「わあ、きれい……!」
トリルが開けた袋から出てきたのは青を基調としたブレスレット。
細身のチェーンが二重になっていて、等間隔についている青い飾りはまるで透き通るかのよう。
「きゃーっ、可愛い!」
偶然にも、選んだのは二人共ブレスレットだったようだ。
マリアに贈られたのはピンクの天然石があしらわれたもの。
光があたる角度によって色の濃淡が変わって見える。
一回り大きな天然石に、アクセントとして小さなクロスが繋いである。
つけてみるとサイズも問題ない。
トリルも手首につけ、日の光にかざしたりしている。
「ありがとう、大切にするね!」
「私こそ! これすごく素敵!」
お互いに気に入ったようで、この後はそれぞれのブレスレットを買った店に行く事になった。
満足し、次の約束をしてから別れたのはそれから三時間後だったとか。


アクセサリーって……センスって何ですか……orz

バトンの回答から浮かんだネタ

2009-03-11 13:04:15 | R.N!/SS
雨が窓を叩く音を聞きながら、ナイフをホルスターに収め銃をそっと撫でる。
背後でカタリと音がして、手を止めた。
存在を知らせるようにわざと物音を立てたのが誰か、振り返らずともわかる。
「どこ行くつもり、オネーサン」
「ジャックに関係ない」
「俺の口から言わせたいの?」
「……知ってるなら聞かないで」
トリルの口調はかなり硬い。
視線も銃に落としたままだ。
ジャックは溜息をついた。
「単独任務。行かせないよ」
「仕事だから」
「別に緊急性があるなら俺だって止めない。止められる理由自分でわかってるでしょ」
「……」
「急ぎじゃない、次の日でもいいような任務をわざわざ雨の日に決行してる。しかも単独任務に限って」
「だから、何。雨の方が向こうだって戦いづらい」
「オネーサンが雨での戦い得意なら好きにしたらいい」
「……」
「でも最近増えてる怪我はどう説明するの」
「……軽傷しかない。命に関わるような怪我はしてない」
「トリル」
ジャックの声に怒気が含まれ、トリルはほんの少し身を震わせた。
「無理するなって言ってるんだけど」
「して、ない、よ」
嘘だ。
自分の声を聞くまでもなくトリルだってわかっている。
雨の日に敵と戦うなんて、自分を痛めつけにいっているようなものだ。
「……ごめん。でも少し位平気だから。お願い、行かせて」
「行かせない」
「ジャック!」
焦れたように振り返る。
表情に色濃く表れていたのは、焦り。
「行かなきゃいけないの!」
「……理由は?」
「わかんないっ、わかんないけどじっとしてられない! いてもたってもいられないの、雨だからって動かないのは嫌!」
駄々っ子のように叫びながら、何を言っているのか自分でもわからなくなってくる。
「限界を見たくない、自分に負けたくない、じっとしてたら駄目になりそうで怖い……!!」
「何が、そんなに怖いの」
「……わかんない」
力なく首を振る。
以前はこんな事はなかった。
雨の日はむしろじっとしているのが常だったのに。
何かが崩れてきている気がしてならない。
「もういいでしょ、行かせてよ……」
「そんな状態で行っても危ないだけってわかる?」
「……わかってる、でも」
「わからず屋」
つかつかと歩み寄ってトリルの腕を掴む。
「怖いなら一緒にいる。だから、行くな」
低い真剣な声が、高ぶった精神を少し静めてくれた。
真っ直ぐに見つめられて力が抜ける。
銃をそっと机に置いた。
「……ねぇ、抱き締めて」
呟くような声が望んだ通りに抱き締めると、トリルの体は小さく震えていた。


ジャック君お借りしましたっ
何だこれ終始不穏!
トリルが散々怖がっているのには訳があるのですが、そこも含めると凶悪な長さになるので別に書きます。
トリルシリアスシリーズ第一弾という事で(爆)
瑠璃色ちゃんごめんね、自重は今ちょっと家出中なんだ←