雨の灯台

ポケモン擬人化を取り扱っています。
参加企画関連の記事メインです。

【SS/TDC】夜の帳に隠れて

2011-07-02 17:54:41 | tdc/SS
深夜。
しんとした宿舎を、足音を潜めて歩く人影があった。
彼――サディアスは、小隊長の忠実な駒。その小隊長に暗殺を命じられた。
標的は別の隊の小隊長。
証拠が残らないよう病死させろとの命令だ。初めてでは、ない。
呪いの魔法でじわじわと死の淵に追い込む。記憶と感情と、この場合に限っては体力を代償にして。
(いくら代償を払ったって、許されることじゃない……それでもまた、俺は人を殺す)
許されないとわかった上で。自国の人間を。
首を横に、小さく一度振る。苦悩している時間はない。
もう、標的の部屋の前だ。
物音はしない。気配を探り、中にいることを確認した。念のためそっと扉に手をかける。
鍵は閉まっていた。
一人で寝ているようだ、それだけわかればいい。
詠唱も魔法陣もいらない。
ただ集中さえすれば。
音も光もなく、呪いは発動する。
「……っ」
膝から力が抜けそうになるのを堪える。
(……これくらい、この人が受ける苦痛に比べれば)
なんてことはない。
殺す側が苦しいなどと、言っていいはずがない。
唇を噛んでその場を立ち去る。
こんな生活が、一体いつまで続くのかわからない。
小隊長がサディアスを用済みだと切り捨てるまでは確実に続くだろう。
その時には、今までにした行為以上のことも罪として被せられるだろうことも想像に難くない。
それでも構わない。構わないから、早く切り捨ててほしかった。
小隊長の駒であるサディアスは、許しがなければ死ぬことも叶わない。
早く、死ぬことを許してほしい。死ねと命令してほしい。
もう汚れていくしか出来ない身なんて、早く滅んでしまえばいい。
暗い思考に沈んだサディアスを、ふいに呼び止めた声があった。
「おい、サディアスじゃねぇか。ちょうどいい。むしゃくしゃしてんだ、付き合えよ」
「……ああ、構わない」
貼りつけたような笑みを浮かべる。
好きにしてくれて構わない、これも罰だから。
内心でそう呟いて、重い足を何とか動かし男についていく。
夜はまだ、終わりそうにない。
――――――――――



サディアスが裏でしていること、されていること。
昼間は昼間で、人に深入りしない・されないような態度をとっています。

【SS/TDC】騒音を殺す

2011-07-01 17:05:33 | tdc/SS
マルさんをお借りしました。
ミリーさんのお名前もお借りしています。
※注意:血の描写あります。



――――――――――
ドサッて、赤くなった人が倒れた。もうこの人はうるさくない。
やっぱり静かな方がいいよ。
……わあ、ミリーがあっちで雪降らせてる。きれーい!
マルにも教えてあげなきゃ。
「ねえねえマルー!」
見て見て。
って言おうとしたのに。ミリーと反対側にいるマルの方を見たら。
あっちの人が、マル、切ろうとしてた。
「死ねクソガキ……!!」
って、言った。
「――ああああああああああああああああああああああッ!!!」
はしる。
バーン、はじける。
あかい、あかい。
マルの斧と、あたしの手が。
うるさいひとを殺す。
あたしもマルも真っ赤。
血がべたべた。
あったかい、気持ち悪い。
「……っ、うぅー……!」
心臓がドクドクする。
さっき弾けたのがまだざわざわしてる。
だめだよ、またバーンてなったらマルに当たっちゃう。
おさまって、ねえおさまってよ。
「あーっ、フェルが俺のおもちゃ壊したぁ!」
マル怒ったの?
あたしのせい?
でも、だって、
「だ、って、うるさかった……っ」
マルにシネって言った。マルに。シネって。
「うるさかった、から、嫌だったんだもん……!」
嫌だったの。
うるさくてうるさくて。
聞きたくなくて。
「ひ、っく……うあああああっ!」
涙が止まらなくなった。
あたしなんで泣いてるのかな、わかんないよ。
わかんない、けど。
もうざわざわがおさえられない。
死んじゃえ死んじゃえ死んじゃえ。
シネなんて言うあっちの人は、みんな。
走ってマルから離れる。
うるさい方に行く、あっちの人達の方に。
殺す。
殺す殺す殺す殺す殺す!!
「うるさいっうるさいうるさいうるさい……!! 死んじゃえええええええッ!!!」
ざわざわが爆発する。
一回だけじゃなくていっぱい、いっぱい。
真っ赤、ぐちゃぐちゃ、真っ赤、ぐちゃぐちゃ。
ほっぺがべたべたするのは涙かな、血かな。
どっちも?
……どっちでもいいや。
疲れちゃった。
あたしいつの間に地面にねっころがってたんだろう。
もうざわざわが爆発する元気ないの。
でも、ほら、静かになったよ。
もうシネなんて言う人いないよ。
うるさいから、死んじゃうんだからね。
うるさいのが悪いんだよ。
だから、あたし、悪くないよね……?
ねえ、マル、怒らないで。
疲れちゃって動けない。
マルどこにいるの?
もうちょっと休んだら、ちゃんとごめんなさいしに行くよ。
そしたら、いいよ、って、言ってくれるかな……。
――――――――――



ほぼフェルの独白ですみません……!orz
何か死亡フラグっぽくなっちゃったけと違いますよ大丈夫ですよ。魔力使いすぎて一時的に倒れた状態です。
マルさんへの気持ちを自覚するより大分前の出来事。
しかし読み返してみるとうるさいのフェルの方ですよねわかりまs

【SS/TDC】見届ける未来、そのために

2011-04-17 22:54:27 | tdc/SS
磐城さんと火輪さんをお借りしました。
ほぼ名前だけですが……!><
再会する前のお話。

――――――――――

久しく見ていなかった親友と自分の騎獣の姿に、息を呑んだ。
火輪の背に乗って戦場を駆ける磐城。それはいいんだ、むしろ不自由なく動けているのを見て一瞬安堵したのも事実だから。
でも……磐城。そんな風に戦うお前を、今まで見たことがない。
なあ、人殺しのために修行しているんじゃないと、毅然と言ったのはお前じゃないか。
そう思う一方で、何となくわかってもいた。磐城があんな風に薙刀を振るうのは、恐らく俺が原因。
きっとお前は、俺があの国に殺されたと思っているんだろう。
俺が死んだら、磐城はああなるのか。ああなって、しまうのか。
まざまざと未来を見せつけられて、ろくに動けもしない。
ただ頭だけは働いていた。
俺はどこかで、磐城を縛りつけていたのかもしれない。二人で旅したことを否定するつもりはない、それでも、最善ではなかったのかもしれないと。
今の磐城を見て考えさせられる。
もしも立場が逆だったらどうだった、俺だってあの国の勝手さに怒りを覚えた。俺だって、ああなるかもしれないんだ。
あんな風に、沢山いる仲間の誰より先陣を切って。“一人”で、戦って。
それは、俺にとっても、お前にとっても最善ではないはずだ。
そうだろう?
そうだと、信じる。
「……火宴」
すぐにでも主の元に駆け付けたいだろうに、待ってくれと呼びかけたきり止まっていてくれる火宴からやっと降りる。
火宴。あの時俺を庇ってくれた、磐城の騎獣。
その体躯を撫でながら、決意の言葉を紡ぐ。
「俺は、磐城に会うよ」
磐城、俺は大丈夫だ。生きている。
だから憎しみに突き動かされて戦うのはやめてくれ。
「お前もきちんと磐城に返す。……ただ、貴嶺として会うことはしない。俺はデュランタと名乗る。わかってくれるか、ジニア」
俺が記憶を取り戻すまで呼ばれていた名前、呼んでいた名前。
火宴、いや、ジニアが俺をじっと見る。凪いだその瞳は、全てを察しているようで。
「“貴嶺”は、磐城を縛ってしまう。俺は、デュランタはそんなことしたくない。……だから、忘れたことにする。あのまま思い出せなかった、そういうことにしてくれ。俺達の関係が変わらなければ、未来は変わらないと思うから」
俺が磐城の唯一であってはいけない。磐城の世界を、俺に限ってはいけない。
だからお前の知っている“貴嶺”はもういない、そういうことにしてくれ。
磐城、お前を裏切るような真似をしてすまない。
申し訳ないとは思う、それでも俺は見届けたい。お前が居場所を得ることを、そこで心から笑ってくれることを。
お前の居場所が俺の隣だけだなんて、もったいないだろう?
俺一人がいなくなっただけでお前の居場所が失われるなんて、嫌なんだ。
なあ、互いに強くなろう。こんな未来が来るのなら、俺は死んでも死にきれない。
見届けるまで死ぬものか。
そして同じように、俺も居場所を得たのだと磐城に見届けられるまで死ぬものか。
「俺は貴嶺という名を捨てよう、何よりも互いの未来のために」
ここに、誓う。
ジニアが小さく喉を鳴らし、体勢を低くした。
乗れ、と言ってくれている。
「……感謝する。さあ、お前の主の元へ、連れていってくれ」
再びジニアにまたがってそう頼んだ。
戦いはいつの間にか終わり、ほとんどが撤退している。
閑散とした戦場で果たす再会まで、もう間もない。

――――――――――

以上、です……!
磐城さんと対面する前にデュランタがした決意。
デュランタ、ジニアという仮名は、流された後助けてくれた親切な人につけられたものです。

【SS/TDC】もういいの?

2011-01-21 13:19:32 | tdc/SS
スエさんとフィデルさん、名前だけコハクさんお借りしました。
コハクさんが大怪我をされた後の話です。
半分便乗……?←



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「ねえ、ルラ、ルー。二人はどう思う?」
ルラによっかかって、ルーを抱っこしながら聞いてみた。
「あたしの勘違いじゃないよね?」
二人とも、うん、みたいに鳴いてくれたから安心する。
スエが、前みたいな目でコハクを見なくなった。
前みたいな声でコハクを「やつ」って呼ばなくなった。
最初は気のせいかなあって思ったけど、そんなことないよね。
だってあたし、ちゃんと見てたし聞いてたもん。
こないだも、その前も、今日も。
いつからかも覚えてる、コハクが死んじゃいそうになってからだよね。
コハクが真っ赤で静かになってたの、あたしも見た。
「ルラとルーも初めて見たよね? あんなコハク」
ルーが首ぐいって上げてあたしの顔を見る。
あたしも真似してルラを見上げる。
ルラが笑ってくれたからあたしも笑って、目を閉じてみた。
あの時のことを思い出す。
何かみんなざわざわして、コハク運んだりしてた。
それにスエが戦ってた、あたしの初めて見る顔で。
何であんな顔してたのかわかんないけど、まだ聞いてないんだ。
何かね、聞いていいのかなあって思うの。
あたしは前より今のがいいと思う。
前よりは、スエの目も声も痛そうじゃないから。
でも、何でそうなったのかあたしにはわかんない。
それにまだ平気そうじゃないの。
スエはコハクが静かにならなくても大丈夫なのかな?
スエが大丈夫なら、いいのにな。
スエが大丈夫で、コハクがスエにひどいことしないならあたしはそれでいいの。
……ルーがあたしのそでをきゅって引っ張った。
ばさって羽の音がする。
目を開けたら、スエとフィデルが下りてきた。
「スエ! フィデル!」
ルーを抱っこしたまま立って走っていく。
ルラとルーが一緒にフィデルに鳴いて、フィデルも一回鳴いてくれた。
三人の挨拶なんだと思う。
スエは笑ってくれた。
あたしの好きな笑顔。
あたしもにこってして、でもさっき考えてたことを思い出してルラを振りかえる。
ルラは静かな目であたしを見てた。
ちっちゃくうなずいて、もう一回スエを見る。
いつもはなでてほしくてじーっと見るんだけど、今は真剣に。
スエの目が痛そうになったらすぐわかるように。
「スエ、えっとね……コハクもういいの?」
「……っ」
あ、だめ、かも。
スエが少し口を開けて、でもすぐ閉じて。
目が痛そうになる。
「ごめん、なさい……違うの、何でもないの、あのね……」
どうしよう、言っちゃいけなかったんだ。
スエを痛くしたかったんじゃないのに。
どうしよう、どうしよう。
ルラもルーもフィデルも何も言ってくれない。
お願い、何か言って、静かなの、こわい。
「あた、し……違うの、フェルは」
「……フェル」
スエの声は優しかった。
いつの間にか下向いてたあたしの頭を、なでてくれる。
「スエ、怒って、ない?」
「怒っていないよ」
頑張って、もう一回スエの目を見た。
「スエ、……痛くない?」
「……痛くないよ」
そう言ったスエの目は、ほんとに痛くはなさそうだった。
でも何か不思議な感じで、あたしは何も言えなくなった。
けど、痛くないって言ってくれたし、笑ってまたなでてくれたから。
あたしも笑って、みんなで一緒に戻ることにした。
ルラを呼んで、ルーをルラのおなかに戻して、四人で歩く。
フィデルはちょっと上を飛んでたよ。
あたしがまんなかで、右にスエ、上にフィデル、左にルラとルー。
みんな何にも言わなかったけど、歩く音とか羽の音とかがしたから、静かじゃなくて平気だった。
もし静かでも平気だったと思う。
スエが手つないでくれてたから。
あたし、スエに手つないでもらうのとか頭なでてもらうの、大好きなの。
それから、スエとフィデルにばいばいして、自分の部屋に戻った。
言いたかったことあったけど、何かよくわかんなくて何にも言えなかった。
だからいっぱい考えたんだ。
スエ、あのね、あたしスエが痛いのやだよ。
スエが痛くないなら、うれしいの。
ねえ、スエ、大丈夫?
あたしスエがいてくれるから大丈夫だよ。
だからスエも、大丈夫になってくれるとうれしいな。
……うん、ちゃんと言える。
明日スエに言うんだ。
そしていつか、コハクのこともういいんだよって、大丈夫だよって、笑ってほしいな。
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ほとんどフェルの独白ですみません……orz
あと聡い子設定どこいった。
勘はいいんですが、語彙が足りない感じがすごく表現しづらいです;
とりあえずフェルの思考はこんな感じ。
結論、フェルはスエさんが大好きかつ第一です^^