毎日モーツァルト!

モーツァルト初心者なので、モーツァルトの曲をたくさん覚えたい♪BS2の番組『毎日モーツァルト』の曲名を毎日?記録します。

【第200回】レクイエムニ短調K.626セクエンツィア(続唱)呪われたもの/ラクリモサ「涙の日」

2006年12月22日 | ウィーン
1791年 モーツァルト35歳の作品。

■呪われたもの
“灰のごとく砕かれた心で祈ります 私の終わりの時を取り計らってください”

■涙の日
“涙の日 その日こそ 罪ある人が裁かれるために 灰からよみがえる”
モーツァルトの筆はこの8小節で途絶えた。

指揮: ペーター・ノイマン
合唱: ケルン室内合唱団
演奏: コレギウム・カルトゥジアヌム
出演:  赤川次郎 (小説家)


 ~ 涙の日 ~

コンスタンツェの妹ゾフィーはモーツァルトの最期をこう書き残している。

“彼の臨終はまるで口でもって「レクイエム」のティンパニを表そうとでもするようで、私には今でもそれが聞こえてきます”(ゾフィーの手紙)

1791年12月5日 モーツァルトは息を引き取った。

モーツァルトの亡骸はシュテファン大聖堂の十字架礼拝堂に運ばれ、家族や旧友が見守る中、最後の祝福を受けた。

「レクイエム」は翌年弟子のジュスマイヤーの手で補筆完成された。

モーツァルトはウィーンの聖マルクス墓地の共同墓穴に葬られた。
その埋葬場所は定かではないが、後に墓碑が作られた。
妻コンスタンツェはモーツァルトが愛用していたノートにこう書き記した。

“いとしい夫よ 忘れることのできないモーツァルト
  8年もの間優しいかぎりの絆が私たちを結びつけていました 
   やがて永遠にあなたと結ばれる日が参りますように”
            悲しみに暮れるあなたの妻 コンスタンツェ・モーツァルト

【第199回】 レクイエム ニ短調 K.626 セクエンツィア(続唱)「思い出したまえ」

2006年12月21日 | ウィーン
1791年 モーツァルト35歳の作品。
チェロやバゼットホルンが奏でる穏やかな旋律にのせて、主に懺悔し赦しを願う祈りが歌われる。

“思い出したまえ 慈悲深きイエスよ
  罪を恥じ 私の顔は赤らむのです 主よ懇願する私を赦したまえ
   私の祈りは聞き入れられる価値のないものですが
    慈悲深い主よ あわれみをもって 永遠の光で 焼き尽くさないで下さい”

ソプラノ: ダイアナ・モンタギュー
カウンターテナー: マイケル・チャンス
テノール: クリストフ・プレガルディエン
バス: フランツ・ヨーゼフ・ゼーリッヒ
指揮: ペーター・ノイマン
演奏: コレギウム・カルトゥジアヌム
出演: 養老孟司 (解剖学者)


 ~ 死の床 ~

1791年12月 モーツァルトは病の床にあった。
当時モーツァルトはこのように心境を語ったと伝えられている。

“心のおもむくままに自由に書くことができるときになって僕の芸術を見捨てなければならないとは” (モーツァルトの伝記より)

12月4日、モーツァルトの容態が急変した。
看病にあたっていたコンスタンツェの妹のゾフィーにモーツァルトはこう語った。

“よかったゾフィー、今夜はここに残って僕が死ぬのを見ていてくれなければ。一体誰が僕の最愛のコンスタンツェの助けになってくれるんだい” (ゾフィーの手紙)

妻コンスタンツェを思いやるモーツァルト。
未完の「レクイエム」を手に取り、枕元に弟子のジュスマイヤーを呼び寄せた。
そして自分の死んだあとの「レクイエム」の完成を頼んだ。

病床に臥して2週間余り。
モーツァルトは最後の時を迎えようとしていた。

【第198回】レクイエムニ短調K.626セクエンツィア(続唱) 怒りの日/霊妙なるラッパ他

2006年12月20日 | ウィーン
1791年 モーツァルト35歳の作品。

■怒りの日
最後の審判を描いた「怒りの日」。猛々しい旋律を奏でる弦と呻くような声部が神の怒りと裁きへの恐れを劇的に表現している。

“何という恐怖でしょう 審判者が訪れて全てを厳しく罰したならば
  何という恐怖でしょう 怒りの日 その日こそ
   何という恐怖でしょう 何という恐怖でしょう 全てを厳しく罰したならば”

■霊妙なるラッパ
全ての死者を眠りから覚ます霊妙なるラッパの響き。
死者のよみがえりと最後の裁きへの畏怖が歌われる。

“霊妙なるラッパの音が響きわたる この世の墳墓の上で
  全ての者は玉座の前に集められるのです
   裁きの時 あわれな私は何と語りましょう 誰を頼ればよいのでしょうか
    立派な人間でも平静でいられぬ時に” 

■恐るべき大王
繰り返される「大王」への呼びかけ。救いへの願いを歌い上げる。

“大王よ 大王よ 大王よ 恐るべき偉大なる大王よ
  あわれみの泉よ 私を救いたまえ”


ソプラノ: ダイアナ・モンタギュー
カウンターテナー: マイケル・チャンス
テノール: クリストフ・プレガルディエン
バス: フランツ・ヨーゼフ・ゼーリッヒ
合唱: ケルン室内合唱団
指揮: ペーター・ノイマン
演奏: コレギウム・カルトゥジアヌム
出演: ニコラウス・アーノンクール (指揮者)


 ~ 死の影 ~

夏以降、モーツァルトは2つの大作オペラを完成させたが、8月末のプラハ旅行の頃から体調を崩し、薬を常用していたと言われる。

10月末から11月にかけてウィーンを寒波が襲った。
長引く雨はモーツァルトの体調を更に悪化させた。

11月17日、モーツァルトは病身を押してフリーメイソンの式典で指揮をとった。
そしてその直後の11月20日頃、ついに病の床に臥す。

【第197回】 レクイエム ニ短調 K.626イントロイトゥス(入祭唱)/キリエ

2006年12月19日 | ウィーン
1791年 モーツァルト35歳の作品。

“主よ 彼らに永遠の安息をお与えください
  主よ あなたに捧げ物を献じます 私の祈りを聞いてください”

ソプラノ: ダイアナ・モンタギュー
合唱: ケルン室内合唱団
指揮: ペーター・ノイマン
演奏: コレギウム・カルトゥジアヌム
出演: 鈴木雅明 (バッハ・コレギウム・ジャパン音楽監督)


 ~ レクイエム ~

1791年秋、体調がすぐれない中モーツァルトは「レクイエム」の作曲に取り組んでいた。
「レクイエム」は死者の安息を神に願うミサ曲。

その年の夏、ある貴族の使いがモーツァルトのもとを訪ねた。
その男は依頼主の名を明かさないまま「レクイエム」の作曲を依頼した。

ウィーンの南西およそ80キロに位置するグログニッツ。「レクイエム」の作曲を依頼したのはこの町に住む音楽好きのヴァルゼック・シュトゥパハ伯爵だった。

1791年2月、シュトゥパハ城に住んでいた伯爵は妻を病のため失う。
伯爵は亡くなった妻を追悼するため匿名で「レクイエム」を依頼し、自分の作品として演奏しようと考えたのだった。

シュテファン大聖堂の副楽長に就任し教会音楽に意欲的だったモーツァルトは、ヴァルゼック伯爵からの依頼に応じた。後に伯爵はノイクロスター教会で思惑通り自ら「レクイエム」を指揮した。

1791年秋「レクイエム」の作曲に取り組むモーツァルト。
その体調は悪化の一途を辿っていった。

【第196回】クラリネット協奏曲 イ長調 K.622 第2楽章

2006年12月18日 | ウィーン
1791年 モーツァルト35歳の作品。
モーツァルトが書き残した唯一のクラリネット協奏曲。
クラリネットの奏でる端麗で陰影に富む旋律。
その清澄な響きでモーツァルトの協奏曲の集大成とも言われる。

クラリネット: ザビーネ・マイヤー
指揮: ハンス・フォンク
演奏: ドレスデン国立歌劇場管弦楽団
出演: 小塩節 (ドイツ文学者)


 ~ 澄みきった魂 ~

1791年10月初旬、モーツァルトはバーデンで療養していた妻に手紙を送る。

“きみが発ったあと僕はシュタードラーのための曲をほぼオーケストレーションし終えたよ。もし仕事がなければすぐにでも発って1週間きみと一緒に過ごしたいよ” (モーツァルトの手紙 1791年10月)

この時旧友のクラリネット奏者シュタードラーのために書いた曲は「クラリネット協奏曲 イ長調」。モーツァルトは完成した楽譜を演奏のためプラハ訪問中のシュタードラーに送った。1ヶ月前に「皇帝ティートの慈悲」が初演されたばかりの国立劇場(現スタボフスケー劇場)で、シュタードラーは「クラリネット協奏曲 イ長調」を初演した。
多忙の中、夏頃から体調を崩し始めていたモーツァルトだが、旧友シュタードラーとの約束を果たすためこの曲を完成させた。

クラリネットの名手シュタードラーはウィーンのヴィルヘルミーネンベルク宮殿の主ガリツィンに仕えていた。
ウィーンの宮廷楽団員だったシュタードラーとの交友を通じてモーツァルトはクラリネットの魅力を知った。
2年前のクラリネット五重奏曲そしてこのクラリネット協奏曲と、2つのクラリネットの名曲はいずれもシュタードラーに捧げられた。

10月中旬、バーデンまで妻を迎えに行ったモーツァルト。
ウィーンに戻ったあと生涯最後の作品に取りかかる。

【第195回】オペラ「魔笛」 K.620 第2幕 アリア「恋人か女房が欲しい」より 他

2006年12月15日 | ウィーン
1791年 モーツァルト35歳の作品。

■第2幕 アリア「恋人か女房が欲しい」より

バリトン: アンドレアス・シュミット
指揮: ロジャー・ノリントン
演奏: ザ・ロンドン・クラシカル・プレイヤーズ
出演: 江守徹 (俳優)

■第2幕 二重唱「パ・パ・パ・パ」

バリトン: アンドレアス・シュミット
ソプラノ: キャサリン・ピエラード

■第2幕 フィナーレ「太陽の光が夜を追い払った」

バス: コーネリアス・ハウプトマン
合唱: ロンドン・シュッツ合唱団


 ~ 栄光のオペラ ~

王子タミーノと共に賢者ザラストロの試練を受けていた鳥刺しパパゲーノ。
しかしパパゲーノは「沈黙の試練」を破り勝手気ままにひとりで歌う。

“恋人か女房が欲しいよ パパゲーノは
 飲むのも食うのも皆うまく 王様にも負けやしない
 賢者さながら世を楽しみ まるで天国にいる気分
 かわいい娘の誰ひとり おいらを好いちゃくれぬのか
 せめてひとりは憐れんでくれ さもなきゃおいらはもだえ死に”

寂しさを嘆くパパゲーノの前にかわいいパパゲーナが現れる。

パパゲーノ “お前はすっかりおいらのものかい?”
パパゲーナ “私はすっかりあんたのものだよ”
パパゲーノ “おいらのかわいい女房になっておくれ”
パパゲーナ “私の大事な小鳩になってね”
パパゲーノ “なんと嬉しいことだろう”
パパゲーナ “なんと嬉しいことでしょう”
パパゲーノ “神様がおいらたちを祝福して”
パパゲーナ “神様が私たちを祝福して”
2人   “かわいい小さな赤ちゃんを たくさん授けてくれるなら”
パパゲーノ “はじめは小さなパパゲーノ”
パパゲーナ “次は小さなパパゲーナ”
パパゲーノ “それからもう一度パパゲーノ”
パパゲーナ “それからもう一度パパゲーナ  数え切れないパパゲーノ”
パパゲーノ “数え切れないパパゲーナ”
パパゲーナ “あの子もこの子も幸せいっぱい”
2人   “あの子もこの子も幸せいっぱい”

パパゲーノとパパゲーナは出会ってたちまち意気投合し将来を誓い合う。
鳥刺しパパゲーノにも春が訪れ、物語はフィナーレへ向かう。

王子タミーノたちはとうとう試練を乗り越える。

“栄光あれ 選ばれし者たちよ あなたたちは夜を打ち破った”

賢者ザラストロと僧侶らはタミーノたちを賛える。
闇を支配する夜の女王は去り、「魔笛」は大団円を迎える。

“勇気ある者が勝利を収め 永遠の美と叡智の冠を授かる”

こうしてモーツァルト最後のオペラは光に包まれて幕を閉じる。

【第194回】オペラ「魔笛」K.620第2幕合唱つきアリア「おおイシスとオシリスよ」他

2006年12月14日 | ウィーン
1791年 モーツァルト35歳の作品。

■第2幕 合唱つきアリア「おお イシスとオシリスよ」
バス: コーネリアス・ハウプトマン
合唱: ロンドン・シュッツ合唱団
指揮: ロジャー・ノリントン
演奏: ザ・ロンドン・クラシカル・プレイヤーズ
出演: 中鉢聡 (テノール歌手)

■第2幕 3重唱「私たちは再びあなた方を」
ソプラノ: テッサ・ボンナー  イヴリン・タブ
メゾ・ソプラノ: キャロリン・トレヴァー

■第2幕 アリア「地獄の復讐の思いが私の胸でたぎり立つ」
ソプラノ: ビヴァリー・ホッホ


 ~ 光と闇 ~

第2幕の冒頭で厳かに歌うザラストロ。実は悪人ではなく徳の高い賢者だった。
ザラストロはタミーノとパパゲーノに真の愛を得るための3つの試練を課す。
ザラストロは僧侶達と共に2人の成功を祈る。

“彼らは試練を乗り越えるはずだ
  もし彼らが命を落としたとしても 徳を求めるその志を賛えて
   神のもとに彼らを迎えたまえ”

王子タミーノは鳥刺しパパゲーノと共に3つの試練に挑むことになる。

試練に挑むタミーノとパパゲーノの前に3人の謎の童子が現れる。
3人の童子は悩むふたりを励まし助けの手を差し伸べてくれる。
童子たちの美しい歌声は初演の頃から聴衆の心を魅了した。

“勇気を出してタミーノ 目標は間近です
          パパゲーノは口を慎みなさい”

3人の童子の助けによってふたりは試練を乗り越えていく。


ザラストロがタミーノを懐柔したと知った夜の女王は復讐の鬼と化す。
娘パミーナのもとに現れザラストロを殺すように命じる。
しかしパミーナは母の命令を拒み、夜の女王は怒り狂う。

“お黙り! お前はもう私の娘ではない 
  永遠に勘当され 永遠に見捨てられ 親子の一切の絆は断ち切られる
   絆は断ち切られる お前の手でザラストロが息絶えぬ限りは
    聞きたまえ 聞きたまえ 聞きたまえ 復讐の神々よ
     聞きたまえ 母親の誓いを”

高度な技巧を駆使した夜の女王のアリアは音楽史に輝く傑作と言われている。

【第193回】オペラ「魔笛」K.620第1幕アリア「この絵姿のこころ奪う美しさは」/二重唱

2006年12月13日 | ウィーン
1791年 モーツァルト35歳の作品。

■第1幕 アリア「この絵姿のこころ奪う美しさは」
テノール: アンソニー・ロルフ・ジョンソン
指揮: ロジャー・ノリントン
演奏: ザ・ロンドン・クラシカル・プレイヤーズ
出演: 林望 (作家)

■第1幕 二重唱「恋を知るほどのお方なら」
ソプラノ: ドーン・アップショウ
バリトン: アンドレアス・シュミット


 ~ 恋の歌 ~

王子タミーノは夜の女王の娘パミーナの肖像画を見せられ、一目で恋に落ちる。
パミーナは悪者ザラストロに誘拐され神殿に囚われている。
タミーノはパミーナへの想いを美しい旋律に乗せて歌う。

“この気持は名づけようもないが炎のように僕の心は燃えさかる
 この気持が恋というものなのか そうだ これこそ恋というものだ
 おおこの人を見つけ出せたら おおこの人が僕の前に立ったら
 僕は温かく清らかになり そして・・・
 そう僕は光に満たされて熱い胸にこの人を抱きしめるだろう
 そして彼女は永遠に僕のものになるだろう”

パミーナの美しさにすっかり心を奪われたタミーノは、鳥刺しパパゲーノを連れザラストロの神殿へ向かう。

神殿に幽閉されたパミーナはパパゲーノによって発見される。
そして王子タミーノが助けに来ていると聞かされる。
パミーナは喜び愛の素晴らしさをパパゲーノと歌う。

“恋の高貴な目的は明らかです 男女の絆より貴いものはありません
 男と女 女と男 男女が結ばれることによって人生は光に満ち溢れるのです”

タミーノとパミーナは出会いを果たすが大きな試練が2人を待ち構えていた。

【第192回】オペラ「魔笛」K.620第1幕アリア「さてもおいらは鳥刺し稼業」他

2006年12月12日 | ウィーン
1791年 モーツァルト35歳の作品。

■ 第1幕 アリア「さてもおいらは鳥刺し稼業」
バリトン: アンドレアス・シュミット
指揮: ロジャー・ノリントン
演奏: ザ・ロンドン・クラシカル・プレイヤーズ
出演: 甲斐正人 (作曲家)


■ 第1幕 レチタティーボとアリア 「おお 慄くことはない 愛する若者よ」
ソプラノ: ビヴァリー・ホッホ


 ~ 盟友 ~

大蛇に襲われ気を失っていたタミーノ。目が覚めると鳥刺しパパゲーノが現れる。
個性的な登場人物が多い「魔笛」の中でもパパゲーノは最も人気のキャラクター。

“さてもおいらは鳥刺し稼業 いつも朗らかホイサッサ
 老いも若きもこの国中で知らぬものなき鳥刺し男
 罠のことならまかしておくれ 笛を吹くのもかなりの腕前
 鳥は残らずおいらの獲物 されば朗らかよい機嫌”

初演では座長のシカネーダーが自らパパゲーノ役を演じた。
パパゲーノは王子タミーノに連れられ危険な冒険のお供をするはめになる。
誘惑に弱く茶目っ気溢れるパパゲーノはモーツァルト自身の投影とも言われる。

“娘のこらずおいらのものにするために 砂糖の山ととっかえこ
 なかでもおいらの一番好きな娘に砂糖をみなやろう
 そしてやさしく口づけして女房と亭主の約束を
 おいらの側でおねんねすれば 赤子のようにゆすってやろう”


“お出ましです! お出ましです! お出ましです!”

王子タミーノと3人の侍女の前に夜の女王が現れる。
「魔笛」の中でひときわ存在感のある夜の女王は闇の世界の支配者。
夜の女王は誘拐された娘パミーナの救出をタミーノに頼む。

“おお慄くことはない 愛する若者よ
 あなたのような若者こそ 悲しみに沈む母親の心を最も慰めることが出来るのです
 娘がいなくなり 私は悲しみに明け暮れています
 すべての幸福が失われました 悪者が娘を連れ去ったのです

 娘が奪い去られるのを私は見ているしかなかったのです
 ああ助けて!娘はそう叫んだきりでした 娘の嘆願は役に立ちませんでした
 私には娘を救う力がなかったのです”

夜の女王の悲しみに心を打たれ王子タミーノはパミーナの救出を誓う。

“あなたは娘を救って下さるでしょう あなたこそ娘の救世主となるでしょう
 あなたが娘を救ってくれれば娘は永遠にあなたのものです”

初演ではこの難曲を妻コンスタンツェの姉ヨゼーファが歌った。
不思議な力を持つ魔法の笛を夜の女王はタミーノに託す。
タミーノはパパゲーノを連れて勇んでパミーナを助けに向かう。

【第191回】オペラ「魔笛」K.620序曲より /第1幕導入曲「助けてくれ!助けてくれ!」より

2006年12月11日 | ウィーン
1791年 モーツァルト35歳の作品。
魔法の世界を舞台にした愛の冒険物語。
王子タミーノが数々の試練を乗り越え、王女との幸せを勝ち取る。
シカネーダーが台本を書き、モーツァルトも構想に関わったと言われる。

■ 序曲より
指揮: ロジャー・ノリントン
演奏: ザ・ロンドン・クラシカル・プレイヤーズ
出演: 小林康夫 (東京大学大学院教授)

■ 第1幕 導入曲「助けてくれ!助けてくれ!」より
テノール: アンソニー・ロルフ・ジョンソン
ソプラノ: ナンシー・アジャンタ   エーリアン・ジェイムズ
メゾ・ソプラノ: キャサリン・デンレイ


 ~ 奇想のオペラ ~

オペラ「魔笛」はウィーンを囲む城壁の外にあった大衆劇場のために書かれた。
今は市場として賑わうこの辺りには庶民的な街並みが連なっていた。

18世紀末、ドイツ語による大衆向けオペラが人気を集めていた。
そんな大衆劇場の支配人シカネーダーがモーツァルトに「魔笛」を依頼した。
シカネーダーはかつて旅回り一座の座長としてザルツブルクを訪れ、その頃からモーツァルトの友人だった。1791年春から手掛けていた「魔笛」は初演の2日前にようやく完成する。

「魔笛」はアン・デア・ウィーン劇場の前身ヴィーデン劇場で初演された。
9月30日、モーツァルトの指揮で幕が開く。

オペラの冒頭は王子タミーノが大蛇に襲われる場面。

“助けて!助けて!さもなきゃおしまいだ 悪賢い大蛇の餌食になってしまう”

そこに3人の侍女が現れ王子タミーノの危機を救う。

“怪物め!私たちの力で死んでおしまい
  やったわ!私たちの勇気が怪物を倒したわ
   この若者は私たちの恐れを知らぬ力によって救われた
    なんて優しそうな若者でしょう こんな美しい若者見たことないわ
     そうね 本当に絵のような美しさだわ”

3人の侍女は闇の世界を支配する夜の女王に仕えていた。
王子を夜の女王に引き合わせようとするが、その前に美しい王子を巡って内輪もめ。

“みんなこの人を独り占めしたいのだわ
 だめよだめよ そんなことってあるものですか
 この若者と暮らせるなら どんなものでもくれてあげるわ
 この人をひとり占めに出来るなら”

こうして王子タミーノの魔法の世界での冒険の旅が始まる。