ヴァイオリン: フランク・ペーター・ツィンマーマン
ピアノ: アレクサンダー・ロンクヴィヒ
出演: 徳永二男 (ヴァイオリニスト)
~ 涙の手紙 ~
ライン川とマイン川が合流する街マインツ。
モーツァルトはフランクフルト演奏旅行の帰途、1790年10月16日マインツに立ち寄る。
モーツァルトは1週間滞在し、この「ヴァイオリン・ソナタイ長調」を演奏したといわれる。10月20日の晩にはこの選帝侯の館で演奏会を開く。
しかしその収入はモーツァルトが満足できるものではなかった。
“選帝侯のところで演奏したんだけど、たったの15カロリーンもらっただけだ” (コンスタンツェへの手紙 1790年10月23日)
モーツァルトはマインツを発ってミュンヘンに向かう。
バイエルン州の州都ミュンヘン。ミュンヘンはモーツァルトが幼い頃から何度も訪れた街だった。このときも中心街にある定番の「黒鷲館」に宿泊した。
モーツァルトの滞在を聞きつけたミュンヘン選帝侯からは演奏依頼が来る。
ちょうどナポリ王がミュンヘン訪問中で、モーツァルトは歓迎音楽会に出演した。
“ナポリの王様が異国で僕の演奏を聴くはめになろうとは、ウィーンの宮廷にとって素晴らしい名誉だ” (コンスタンツェへの手紙 1790年11月4日頃)
だがモーツァルトの心はすでにウィーンで待つ妻のもとへ飛んでいた。
“君に再会出来るのが嬉しい。話したいことが山ほどあるからだ。来年の終わりには君と一緒に旅するつもりだ。そうすれば君の気晴らしにも僕の健康にも効き目があるだろう。ごきげんよう 可愛い人 数百万回のキスをするよ”
ミュンヘンを発ったモーツァルト。
旅の成果は乏しかったが、愛する妻に会える喜びをかみしめていた。