世相の潮目  潮 観人

世相はうつろい易く、その底流は見極めにくい。世相の潮目を見つけて、その底流を発見したい。

消費税を上げないと国債が暴落するという脅しに屈してはいけない

2013年08月18日 | 政治
安倍首相はこの秋に景気の動向を見て消費税の引き上げの決断すると言います。最近4~6月の成長率が2.6%と発表されると、俄に消費税の議論が賑やかになってきました。

この成長率の数値を見て、財務省は当然のこととして金融界は一致して三党合意通り来年4月に3%の引き上げを行うよう主張しています。異次元の金融緩和政策でアベノミクスの好発進に貢献した黒田日銀総裁は、権限外の国の税制にまで口を出して、消費税の引き上げ実施を促しました。

しかし、デフレ脱却を至上命令とするアベノミクス派は、過去の失敗の経験から慎重にならざるを得ないようです。雇用状況は非正規雇用が増えただけであり、新規投資の動きも鈍い、予定通り来年4月に実施すると駆け込み需要の反動で成長率はマイナスになる可能性もあるというのです。そうなれなば、折角の異次元の金融緩和政策も振り出しに戻ります。

ここで消費税引上げ慎重論に対する強力な反対論が出てきました。それは消費税を上げないと国債が暴落する、国債が暴落すれば国債の金利が上がり、元利を合わせた国の債務は膨張する悪循環に陥り、日本経済は破産すると言うのです。

しかし国債暴落を防止するため消費税引上げるという議論は、二つの点で間違いを犯しています。

一つは、消費税引き上げの目的と手段を取り違えていることです。消費税引上げの本来の目的は、直間比率の歪みを正して社会保障の安定財源を得ることにあります。消費税引き上げが、結果として国債の価値を維持することに貢献するかも知れませんが、それが目的ではないのです。

もう一つは、或る国の国債(債務)が過大か否かを判断するとき、国民総生産(GDP)に対する国の債務残高比率で国際比較していますが、これは曖昧な基準で適切ではありません。企業の債務の返済能力は、企業の収益力と所有資産価額で評価されますが、国も同じでして国の徴税力と国有の資産価額で評価されるのです。

国債価格の変動について、日本国債は殆ど日本人が所有しているから大丈夫だとか、いや外国人の空売りを浴びせられると大丈夫でない等の議論が国債市場関係者の間で出ていますが、これは市場取引の技術論に過ぎず、国債の価格水準は最終的に国の徴税力と国有資産価額で決まるのです。

国の債務が1000兆円を超してGDPの2倍に達して日本は世界一債務の多い国と言われ、国民一人当たりの借金は792万円だと報道されると、とんでもないことが起きているかと不安になりますが、他方で国が所有する資産価額も世界一であり、それで国の負債を相殺すると、国民一人当たりの借金は300万円位だと聞いて安心しました。

昨年、社会保障と税の一体改革に関する三党合意で消費税引き上げが決まったとき、国民が示した税金に対する理解を見れば、そして日本の租税負担のレベルは先進国の中で最低である事実を見れば、国の徴税力についても基本的な不安はないのです。

ですから、国際公約だから消費税を引き上げなければいけないとか、引き上げないと国債が暴落する等という、本質から離れた議論に惑わされることなく、消費税を何時、如何程引き上げたらデフレ脱却のアベノミクスが阻害されないかを見極めて決断すべきです。
(以上)
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