世相の潮目  潮 観人

世相はうつろい易く、その底流は見極めにくい。世相の潮目を見つけて、その底流を発見したい。

失って安倍外交の真価を初めて知る日本人

2022年07月23日 | 現代

参議院選挙の演説中に安倍元首相は凶弾で倒れました。
国内の大手新聞、テレビは、安倍元首相は日本を戦争に駆り立てる政治家だ、森友・加計・桜と騒いで不誠実な政治家だと、首相を退いてからも安倍批判報道を垂れ流していました。しかし、増上寺で行われた安倍家の葬儀には一般の参列者が長い列を作る有様で、多くの国民は大手メディアの報道を信じていなかったのです。

安倍元首相の祖父、岸信介が首相の時、当時の日米条約では日本が米軍に基地を提供するだけで米国に日本防衛の義務がなかったので、米国に日本防衛義務を持たせるよう改定したとき、日本を戦争に巻き込ませる安保改定だと野党と左翼の人たちは大規模な安保改定反対デモを国会議事堂に仕掛けたのです。

安倍晋三が首相の時、日本を守る米軍が攻撃を受けても日本軍が米軍を守らない現行安保条約を相互に守り合えるよう安全保障関連法を制定したとき、憲法違反だ、日本を常時戦時体制に導く戦争法だ、と反対を主張したのは野党と憲法学者など左翼の人たちでした。

岸信介の日米安保条約の改定のお陰で、その後の長期間、米軍の防衛によって日本の安全が保証され高度成長が達成できたように、安倍氏の安全保障関連法の成立で、ウクライナへのロシア軍の侵攻のような事態が東アジアで生じたとき日米軍事共同作戦が遂行され、日本の安全はより強固なものになったのです。

岸信介、安倍晋三の両者は、日米軍事同盟を平等で確かなものに仕上げた貢献者なのに、いずれの場合も大手新聞やテレビは日本防衛の強化に反対の論陣を張り宣伝しましたが、多くの国民は国防の強化になると理解し同意していたのです。何よりも安倍元首相の国政選挙6連勝がそれを示しています。

安倍元首相の功績は、日本の安全保障だけに限りません。今や「インド太平洋構想」として世界に知られる、アジア全域の安全保障に関わる構想を創案したのは安倍元首相であり、その一つが日米豪印戦略対話協力体制(QUAD)として実現したことです。安倍元首相の死が伝わると、多くの國の首脳からその死を悼む弔意が寄せられたことで、安倍首相の活躍が世界の平和と安全に貢献したことの大きさが分かります。それを知らなかったのは日本の大手メディアと、それを報道しなかった大手メディアから知らされなかった日本人でした。

地球俯瞰的という大局的な視野を持つ安倍元首相は、日本と深い利害関係のある中国とロシアに対しては、現実的な対応を執拗に続けた政治家でした。日露と日中の二国間交渉は不幸にして未だ満足できる状況には至りませんが、その手法は長期的観点から複眼的視野で続けられました。

中国に厳しいとみられていた安倍元首相が、第一次安倍政権誕生後間もなく、電撃訪中し中国と戦略的互恵関係を築き上げたことに、安倍氏が複眼視野のある現実的政治家であることを示しています。また安倍元首相がプーチン大統領と北方領土交渉を粘り強く続けたのは、ロシア敵視の単細胞的接近を避けて長期的国益を求めたからです。岸田政権になって安倍元首相の中露外交は失敗だったと批判する人々がいますが、現実重視の複眼的安倍外交の軌跡を見習うべきでしょう。
(以上)

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米国は今後の中露関係の行方に注目している

2022年06月19日 | 政治

ウクライナ戦争の最中で、欧米側が最も知りたいところは、ロシアと中国の関係がどのように変化していくかでしょう。

北京オリンピック前にプーチン習近平両首脳が会談して、NATOの東欧進出に共に反対して両国は「限りのない」戦略的パートナーシップを維持すると宣言しました。しかし、ロシアが首都キーヴ(キエフ)攻略に失敗し、ウクライナ東部、南部の攻略に手こずって戦争が長引く状況になり、更にロシア軍の残虐行為が国際的に批判されるようになると、果たして中国はロシアへの全面的支持を続けるのは得策か、中国国内でも疑問が出ています。

国連総会でのロシアの軍事侵攻非難決議に中国は反対できずに棄権に留めたのは、明らかにウクライナの国家主権を侵害したロシアの軍事行動について、中国にもロシアを支持するに戸惑いがあったからです。それで中国もウクライナ戦争で対露軍事協力に慎重ならざるを得ません。ウクライナ戦争に関わったと欧米が判断すれば、中国もベラルーシのように欧米から経済制裁を受ける可能性もあるのです。

米中外交トップのサリバン・楊潔篪が、ローマで3月、ルクセンブルグで6月に会談を重ねていますが、会談の狙いは、米国としてはウクライナ戦争への中国の関与を牽制し、同時にそれは台湾有事への備えになります。更には、習近平の今秋の主席続投の可能性、プーチン退陣後のロシア体制をも見据えた中露関係の行方を探ることでもあります。
(以上)

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強国は強国なるが故に戦略的判断を屡々忘れる

2022年05月10日 | 現代

プーチン大統領は、ウクライナへ軍事侵攻を開始して初めて迎えたナチ戦勝記念日の演説で、NATOが東方拡大の平和協議に応じないから、やむを得ずこの軍事侵攻を行った、これはネオナチ征伐の自衛の戦争だと自らの正当性を再び主張しました。

ソ連崩壊後、ソ連圏に属していた東欧諸国が次々にEUに参加しNATOに加盟したことは旧ソ連邦の盟主としてのロシアにとって不愉快であり脅威にもなったことは理解できますが、独立国がその国民の意志で他国と連携したり同盟を結ぶ事を否定したり、況して禁止する事は如何なる國と雖もできません。

プーチン大統領がNATO東方拡大に反対する背景には、実は彼の歴史観に大ロシア主義実現の野望があると言われています。それは単にスターリン時代の旧ソ連の領土復活ではなく、「ロシア」と呼ばれた旧キエフ大公国の復活、即ちウクライナ、ベラルーシを含む「完全なるロシア」の復活を夢見ているからだと言われています。それはピョートル大帝、エカテリーナ女帝のように、プーチン自身がロシア皇帝になることを夢見ているからと言われています。

ワルシャワ条約機構が解散すると東欧諸国が競ってNATO加盟に走ったのは、スターリン時代の強権的支配体制から逃がれるためであり、今もロシア皇帝を夢見るプーチン大統領の強権体質を嫌った結果なのです。それをNATO東方拡大はロシアへの攻撃と見做したプーチン大統領の致命的判断ミスでした。ウクライナ侵攻後に中立国のスエーデン、フィンランドがNATO加盟に動いていることがそれを証明しています。

強大国が圧力を掛ければ弱小国は他の強大国に助けを求め結束を強めますが、逆に融和的に接すれば対抗するための結束は緩みます。また、強大国からの強い圧力を受けた時は、その強大国と対峙する強大国に接近すれば強い圧力を緩和することが出来ます。これは国際関係を操作する戦略的方法ですが、プーチン大統領は、この国際関係の仕組みを理解できずに戦略的判断を忘れて軍事力という力で願望を実現しようとして失敗しました。

嘗て米ソ対立時代、米国はソ連の力を削ぐために中国に接近して冷戦を成功裏に終わらせました。来たるべき米中冷戦を有利に進めるためには、実は米国は米露の接近が望ましいのですが、いまウクライナ戦争で米国はその逆の行動をとっています。と言うことは、ウクライナ戦争の激化を密かに喜んでいるのは中国ということになります。強国は強国なるが故に戦略的判断を屡々忘れるようです。
(以上)

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戦後体制の変更を企てる中国はウクライナ侵略で多くを学んだ筈

2022年04月03日 | 現代

中国はアジアで台湾の獲得を目論み、ロシアは東欧での失地回復を狙い、欧米が支配する戦後体制に変更を加えようとしている2大専制国家です。今回は先ずロシアが現状変更の口火を切りました。このロシアの行動が次の中国の行動にどのような影響を与えるか、大変興味ある問題です。その場合、次の4点に注目すると良いでしょう。

1.軍事力でウクライナを短期間に属国化することを狙ったプーチン大統領の目論見は失敗しました。首都キーウは陥落せず、ウクライナ軍は各地で善戦しており、ゼリンスキー大統領は意気軒昂です。

2.逆に、欧州諸国のロシアに対する経済制裁は予想を上回る厳しいものとなり、特に欧米が一致協力した金融制裁はプーチン大統領の想定を越えた厳しいものとなりました。加えて西側からの軍事装備品と戦争技術援助、作戦上の情報提供などは質量共に充実しており、ロシア軍の侵攻を食い止めるのに大いに貢献しています。

3.他方、ウクライナ政府の情報戦略は優れていて、ロシア軍の非人道的な攻撃の惨状を世界に広く報道して世論を喚起し、ゼリンスキー大統領自らが世界の主要国の議会でリモート演説を試みて、ロシアは自由主義の敵だと訴えました。情報戦でもウクライナはロシアを圧倒しています。

4.プーチン大統領は、ウクライナ侵攻に備えて冬期北京オリンピック前に中露首脳会談を行い、天然ガスや小麦の購入と金融面の協力体制を合意し、両国の友好関係は無制限で協力に禁じられた領域はないと準備を誇示しましたが、ロシアのあからさまな軍事侵略への世界の批判は激しく、国連のロシア非難決議では反対できずに棄権に留まりました。中国の対露支援の態度にたじろぎが見えます。

さて、中国が台湾を武力侵略したとき、上記4点をどう評価したらよいでしょうか?

先ず、台湾はウクライナのような独立国家ではないから併合しても良いとの意見がありますが、台湾は戦後70年余り民主主義政治を実現して、実質的に国家として自立しています。中国と台湾は同一民族だからと言う理由で一体とならねばならぬ理屈はありません。それを言うなら、英米人は同一民族だから米国は英国から独立すべきでなかったと言うことになります。

中台は互いに一つの中国論を主張していますが、米国の立場は台湾を中国の所有物と認めた訳ではありませんし、また中国本土を台湾の所有物と認めた訳でもありません。双方の主張を平等に認めて平和裏に解決しなさいと言っているのです。

それでは上記4点について、ウクライナを台湾に、プーチン大統領を習近平主席に、ゼリンスキー大統領を蔡総統に置き換えて見て下さい。中国はロシアが良い先例を見せてくれたと理解して、軍事力での併合を見合わせるのが得策だと考えるでしょう。

しかし軍事専門家の見解は必ずしもそうではありません。歴代米インド太平洋司令官達の間では、ウクライナ侵攻をめぐる米国の対応は「中国の台湾に対する行動を促進させ得るし、その逆もある」との意見があり、更には「戦略的曖昧さは辞めて中国が台湾を攻撃したら、米国は何をするかを中国に対して明確にすることが重要だ」との意見もあります。
(以上)

 

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ウクライナ危機は台湾そして日本に何を語る

2022年02月21日 | 政治

ウクライナ危機は軍事力で他国の主権と領土を犯す戦争という意味で第二次世界大戦後の初めてのケースになります。戦後に内戦とかテロ退治とか世界各地で戦闘行為は多々ありましたが、領土支配の目的で他国の領土に正規軍が軍事侵攻する戦争は、ウクライナ危機が初めてです。

ゴルバチョフのペレストロイカ改革でソ連邦が崩壊すると、旧ソ連圏だった中欧諸国は二度とソ連の圧政を受けないため一斉にNATO加盟に走りました。しかしスラブ系の東欧のベラルーシ、ウクライナなどはNATOに加盟しなかったので、西欧圏との間に緩衝地帯を設けて置きたいロシアとしては懸念する状態ではありませんでした。

しかし2014年、ロシアがウクライナからクリミヤ半島を実力で奪取したことでウクライナ国民は将来の安全のためにNATO加盟を望むようになったのです。ウクライナの領土保全については、ソ連時代にウクライナに残置された核兵器をロシアに移転するとき、米英露三国で交わしたウクライナ領土不可侵のブタペスト覚書(1994年)がありますが、これをロシアが一方的に破ったわけですから、今日のウクライナ危機はプーチン大統領自らが招いた危機なのです。

翻ってみると第二次大戦で確定した領土、領海を変更する国際紛争は最近まで絶えてなかったのですが、目をアジアに転ずると、今敢えてその禁を犯そうとしている國に中国があります。中国は領海については既に東・南シナ海で領海侵犯を繰り返し、日本を含む東南アジア周辺国から警戒されていますが、更に台湾を軍事的に侵攻すると公言しているのです。

ですからウクライナ危機の解決ないし決着の行方は、次に起こるであろう中国による台湾危機への対応に大変参考になります。

ウクライナはNATO加盟する前にロシアの攻撃を受けて窮地に陥りましから、台湾は早く米国からの安全保障を確実にしておくことが肝要です。米国は前の民主党政権の時までは台湾防衛を曖昧戦略としていましたが、トランプ政権以後は台湾支持を明白にして、準大使館を置いたり、兵器援助を強化しています。しかし更に一歩進めて、戦後70年余りもの間、民主主義政治を実現している台湾政府には国際法上の権利として民族自決権を認めて、その安全保障を確かなものにしなければいけないでしょう。

但し、台湾危機がウクライナ危機と大きく違うところは地理的条件です。台湾海峡で隔てられた台湾の制圧は、陸続きのウクライナとは軍事状況は大分違います。中国は台湾海峡の制空権、制海権を確実にしなければ大部隊の上陸作戦は困難であり、軍事的に台湾を制圧することは極めて難しいでしょう。

そこで中国はロシアがクリミヤ半島奪取で仕掛けた情報戦や内乱戦を交えたハイブリッド作戦を企てるつもりです。戦わずして勝つ孫子の兵法を三戦と称して、台湾の輿論を動かしたり、最新兵器を見せびらかして心理的に脅したり、上陸作戦を映像化して宣伝したりしています。

台湾政府は自前の抑止力を強化し、国民は自信を以て対抗する意志を固める事です。台湾に言える事は日本にもそのまま当てはまります。
(以上)

 

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ウクライナ巡る東西対決はヤルタ秘密協定の是正の精神で解決を

2022年01月24日 | 政治

ソ連がレーガン政権との軍拡冷戦に敗れて、ゴルバチョフがペレストロイカ改革で経済力を回復しようとし、その結果ソ連邦が崩壊したのが丁度30年前です。その後は、西欧が旧ソ連圏だった東欧諸国にEU加盟国を拡大し、強大だったソ連はロシア一国となりました。

その当時、プーチンはソ連国家保安委員会(KGB)の諜報活動のため東ドイツのドレスデンに駐在していて、ソ連崩壊の姿を痛恨の思いで見ていたと言います。その後、ロシアは軍事力と経済力を回復強化して、失地回復の機会を狙っていました。その手始めに旧ロシア領のクリミヤ半島を奪還し、次に隣国ウクライナの抱き込みを謀っているのです。プーチンは強大化した中国が米国と事を構えている今が失地回復の好機と見たのです。

昨年12月23日プーチンは年次記者会見でNATOが現在以上東方に進出しなければウクライナで西欧との衝突を避けたいと意向を示し、米国もロシアが示した懸念に留意して2022年1月にロシアと協議する用意ありと返答して、現在両国は交渉中です。

その交渉でロシアは1.NATOは東方に現在以上拡大しないこと、2.NATOの軍備を東欧とバルト三国が加盟する前の状態に戻すこと、3.ロシア領に近づけて攻撃兵器を配備しないこと、と言う三条件を西側に要求しています。他方ではロシア領内には大規模なロシア軍を集結配置して情報戦を展開していますが、それはクリミヤ奪取したときの状況に似てきました。

確かに、ロシアは米ソ冷戦に敗れた結果、第二次大戦で獲得した東欧諸国を失ったわけですが、プーチンが取り戻したい東欧圏の権益と言うのは第二次大集結直前のヤルタ秘密協定で獲得したものであり、その秘密協定の実態は、終戦直前の混乱の中でルーズベルトとチャーチルが全体主義のヒットラーから独裁主義のスターリンに自由な国々を売り渡した不当な闇取引だとの立場を自由主義陣営はとっているのです。

嘗て2006年にブッシュ・ジュニア大統領は、このことをラトビアの首都リガでヤルタ協定を次のように批判しています。「ヤルタ秘密協定は、戦後の安定のために自由とデモクラシーを犠牲にした邪悪な協定である」と。ですからEUの東欧拡大は邪悪な秘密協定の歴史を是正した行動とも言えるのです。

ロシアの論調に、欧米の仕打ちはロシアの「生存圏」を脅かすとものとの主張がありましたが、「生存圏」という言葉はナチスドイツが使った地政学的言葉で、はしなくもヤルタ秘密協定の地金が出たのです。従って現在米露間で交渉中のウクライナ問題は、ウクライナ国民が自由な國にとどまれるか、権威主義の國に組み込まれるかという観点から解決すべきなのです。
(以上)

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中国経済は既に崩壊しているが、共産党という宗族国家は変わらない

2021年12月25日 | 政治

恒大集団のデフォルトに見るように、無謀な拡大政策の結果、資本主義経済としての中国経済は既に破綻していますが、その破綻を専制政治手段で誤魔化して未だ暫く続けるつもりでしょうが、間もなく対外経済関係では繕えない破綻が露わになる筈です。

国内の経済混乱は暴力的手段で鎮圧しても、海外との経済関係は金融恐慌となって世界中に波紋を広げるでしょう。その規模はリーマンショックの10倍は越えると言われます。その原因は主として中国にありますが、世界の資本主義諸国にも責任の一端があるので、覚悟せざるを得ません。

鄧小平が改革開放を唱えたとき、先進国は中国経済が発展し豊かになれば共産党国独裁体制は変化して自由主義体制の国家になると誤解してWTO など国際機関への加入を取りはからい、途上国として支援をつづけたからです。 その誤解もやむを得なかった面もありました。後発の途上国が資本主義経済に発展するとき、例えは韓国、台湾、シンガポールのように、当初は政治的独裁であっても、経済成長に成功すると、やがて政治体制は民主主義政治に移行し、自由な資本主義国に発展した実例があったからです。

しかし、中国だけは違いました。中国は高度成長を果たして世界第二位の経済大国になっても政治の独裁体制を変えず、国有企業による不公正な経済行動で市場を席巻していきました。何故中国だけが他の発展途上国と異なった行動に走って行ったかを知る事は、今後の対中政策を検討する上で重要です。

どこが中国と他の発展途上国と違うのでしょうか。それを知るには中国2000年の政治の歴史と哲学を知る必要があります。中国大陸では紀元前から中央集権的な王朝の興亡が繰り広げられた歴史があります。

その政治秩序は、王朝内では皇帝の権力は絶対ですから王朝内では民主主義は無縁であり、王朝の外に対しては覇権国と従属国の関係しかありませんでした。ヨーロッパの中世の封建主義や近世の国家の対等主義を経験したことのない中国は、国家主権は平等という観念が乏しいのです。力を持てば太平洋を米国と二分割しよう、南シナ海は自分のものだと言うわけです。

冒頭言いましたように中国経済は既に崩壊状態にあるのですが、近代国家の意識がないので、今後も国際的に自己中心的行動を慎まないと見なければなりません。況して共産党政権は現代の王朝ですから外部からの圧力では崩壊しないでしょう。

米国が共産党政権が敵で中国人民は味方などと言って攻撃しても、中国共産党政権は崩壊しないでしょう。中東諸国にアラブの春の嵐が吹いたとき旧政権が倒れて民主主義化が進展したと思いましたが、嵐が過ぎれば元の部族国家に戻ったように、宗族国家の中国は、共産党という宗族で固めた共産党独裁政権のままで変わらないでしょう。 

(以上)

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米国は中国との対決は避けられないと覚悟して動き出した

2021年11月22日 | Weblog

改革開放を続けていた時代、鄧小平は韜光養晦(能ある鷹は爪を隠す)という平和を装う戦略でしたが、習近平政権になって経済力をつけ、軍事力も強くなったので公然と台湾への武力侵攻を唱えるようになりました。

党の核心と位置づけられた習総書記が現在までの実績を総括した今月の六中全会議では「歴史決議」が承認され、党を誕生「発足」させた毛沢東、及び経済的に「豊か」にした鄧小平が「歴史決議」で承認されたと同じように、党を軍事的に「強く」した習近平と承認されたのです。

事実、習近平時代の中国軍の戦力充実は目覚ましく、日本列島、台湾、フィリッピンを結ぶ第一列島線の西側では、今や米軍は中国軍に対して劣勢になりつつあり、米中軍事力が逆転して南シナ海、東シナ海に米軍が入れなくなる時期が迫っていると米軍関係者は判断しています。そうなると、第一列島線は米国から見て本土防衛ラインの最前線となり、日本は米ソ冷戦時代の西ドイツに似た安全保障の最前線に立たされることになります。

前の米インド太平洋軍司令官デービッドソンが6年以内に中国の台湾侵攻が始まると述べたのは、習近平は総書記第三期内に台湾併合に動くという意味でした。最近行われた米中オンライン首脳会談で台湾について習近平はレッドライン設定を言い、バイデンはのガードレール設置を言ったのは台湾危機が迫っている証拠であり、今年4月に日米首脳共同声明で「台湾海峡の平和と安定」を明記したのは、日本も台湾有事に対応する覚悟を初めて明言したのです。

今年になって世界各国から台湾訪問者が相次いでいます。チェコ上院議長、オーストラリア元首相、フランスの元国防相のリシャール上院議員ら超党派の仏上院議員4人、EU議会議員団、米国の上・下院の議員6人など続々と台湾を訪問しています。また、英仏独などの欧州の艦艇が南シナ海に来て共同演習を行っています。これらのことは、欧米先進国がアジアの安全保障最前線が予断を許さない危険な時代に入った考えていることを示しています。

毛沢東がやり残した台湾併合を成し遂げたいという習近平の野心と、そのための軍備が整いつつあるという現実に加えて、危機の切迫を告げるもう一つの要因として国力が今ピークに達していることへの中国の焦りがあります。近年の中国経済の成長率は鈍化していますが、非民主主義国では一人当たり国民所得が一万ドルを超えられない壁があるからです。それを中国首脳は感じている筈で、その前に台湾奪取を実行しようとしているのです。

米国の狙いは、一つの中国政策を曖昧戦略で引き延ばしている間に、強権中国経済の衰退と民主政治台湾の成功により、結果として平和裏に台湾独立を達成させることにあるのです。その前に米中軍事力のバランスが崩れて軍事衝突が起きるか、或いは中国経済が停滞して軍事侵攻を諦めることになるか、その鬩ぎ合いが続くことになります。
(以上)

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米中冷戦は米ソ冷戦と性格が違う。どの位長続きするだろうか?

2021年10月31日 | 現代

21世紀に始まった米中冷戦は、20世紀の米ソ冷戦とは対立の質が根本的に異なります。冷戦とは戦争に至らぬ覇権争奪戦のことですが、前世紀の米ソ対立は政治体制の違い、則ち民主主義と共産主義の対立でしたが、今世紀の米中対立は、前回申し上げたように近代の民主主義と中国古来の覇道主義との対立です。

覇道主義では天命による易姓革命で天下を取ったのだから、国内は勿論のこと、周辺諸国も皇帝に恭順の意を表すべきだというのが覇道主義の主張でしたから、近世まで中国はアジアの覇権国のつもりでいましたが、欧米諸国がアジアに進出してきて欧米流の国家主権は平等と認めざるを得なくなりました。しかし、アジアの近隣諸国とは対等の関係をいまだに認めていないので、中国の脅威はアジアでは単なる軍事的脅威よりも遙かに恐ろしいもののままです。

それに加えて、米中冷戦が米ソ冷戦と根本的に違うところは、共産国中国の経済体制が資本主義経済圏と深く結びついている点です。米ソ冷戦下では計画経済のソ連邦と資本主義経済圏では資源と食料を除けば密接な関係ではありませんでしたが、改革開放後の中国経済は、投資・貿易を通じて資本主義諸国と密接に結びついており、政治的冷戦に決着を付ける妨げになっています。

しかるに共産中国政府は、国有企業を通じて資本主義市場に参入し、私企業経営で運営されているWTOの自由貿易体制の市場秩序を乱して自らの利益を得ています。中国政府は、政治的圧力を加えるため輸出入規制を乱発し、私的財産権の盗用を頻繁に行い、国有企業は過剰生産を解消するため世界市場でダンピング輸出しています。

ですから米中冷戦を平和裏に早期に終わらせるためには、中国経済を資本主義経済圏から隔離するデカプリング政策は必要不可欠な手段です。そうすることによって、経済的余力で軍事力を強化して周辺諸国へ脅威を与える行動を抑制することも可能になるのです。にも拘わらず、中国経済との取引で利益を得ている欧州一部諸国や米国金融界は、相変わらず中国市場への接近をやめようとしていないのは甚だ遺憾です。

米ソ冷戦でも1945年から1989年までの半世紀弱は続きましたから、今回の米中冷戦は今世紀後半まで続くと覚悟しなければならないでしょう。米ソ冷戦はソ連共産党政権の崩壊により終結しましたから、米中冷戦も中国共産党政権が崩壊するまで続くでしょう。ソ連共産党政権は前世紀に80年弱続きましたが、第二次大戦後発足した中国共産党政権は、既に70年余り経過しています。果たして今世紀末まで保つでしょうか。中国共産党政権が平和裏に崩壊することを願っています。
(以上)

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時代錯誤の危険思想 覇道主義の中国

2021年10月15日 | 政治

シナ大陸の歴史は、大陸を制した王朝が自らを中華と称し、中華にだけ文化があり、それ以外の国々を東夷、北狄、西戎、南蛮と呼んで、文化の外にある地(化外の地)として蔑視し、対等の国交は行いませんでした。ですから中国王宮を訪れる外国人は夷狭であり、貢ぎ物を持参する冊封国の扱いを受けました。これは中国古来からの覇道主義というもので、その伝統は近世まで続き、訪中する外国要人は皇帝に対する三跪九叩頭の礼を要求され、拒む諸外国との間で屡々紛争が起きました。

驚いたことに、このような中国の覇道主義の国際感覚は現代でも引き継がれているようです。2016年南シナ海領有権裁判でハーグ仲裁裁判判決を中国政府が直ちに紙屑として否定したのは、周辺国の国家主権を認めない古代以来の覇道主義の表れです。第二次大戦前までは中華思想の覇道主義は専ら内陸に向かっていましたが、改革開放以来の中国は、海洋に向けての覇道主義を露骨に打ち出しています。南シナ海の九段線、西太平洋での第一列島線、第二列島線、米中太平洋二分割案の提案など海洋に対する中国の覇道主義は、国際協定の公海条約とは相容れないものです。

西欧諸国では、中国の膨張政策を20世紀の植民地主義への反撥、或いは第二次大戦後のブレトンウッズ体制への反撥と捉える見方が強いですが、中華思想の膨張主義はもっと根が深いもので、17世紀以来西欧で確立した国家主権を対等とするウェストファリア体制をも否定するもので、近代的な意味での国家主権ではないのです。中国は古代からの覇道主義を現代の世界に持ち出す危険な国なのです。
(以上)

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