世相の潮目  潮 観人

世相はうつろい易く、その底流は見極めにくい。世相の潮目を見つけて、その底流を発見したい。

世界システム変換の兆しが戦後初めて現れたと言うけれど

2024年03月02日 | Weblog

コロナ禍で世界の社会経済体制が大きく揺さぶられた後、ロシアがウクライナに戦争を仕掛け、それが長引いているとき中東でガザ紛争が勃発し、今、中国が台湾獲得に動くことか危惧されています。

この状況は、第二次世界大戦後に初めて世界システムを変える兆しが現れていると見るべきなのでしょうか。世界システムの変化とは、言うまでも無く世界覇権の変更です。具体的に言えば、中国・ロシアの専制国家が欧米の民主主義国家の造った世界秩序を変更することです。両陣営が覇権を争う場所を具体的に指摘すれば、それは金融での基軸通貨の支配競争であり、エネルギー資源の市場支配競争です。

確かに基軸通貨ドルを弱体化させる攻撃は既に始まっています。ウクライナ侵攻で西側は経済制裁を加えると、中国は石油・ガスを安値で買い増して決済は人民元でした。そのため中露貿易は95%がドル依存から離れました。

今のところ、SWIFT(国際金融送金する世界的な決済ネットワーク)から外されたロシアはCIPS(人民元決済システム)に依存してて事なきを得ています。しかし当面は凌いでも人民元の国際決済での利用増加は見込めないので長続きはしないでしょう。何故なら中国は社会主義の国ですから資本取引規制の壁は外せないので、人民元が広く普及することは困難だからです。

他方中国はサウジなど中東産油国に接近して石油取引を人民元での決済するよう働きかけています。米国とサウジの間で成立しているペトロダラー取引の切り崩し作戦ですが、どこまで進展するかは不明です。サウジが人民元で購入する物資が世界市場に十分あるとは思えないからです。

むしろ逆に石油を巡る資源戦争は、長期的には米国のシェルガス開発が再開となると、原油価格の下落になり、劣勢になるのは中東、ロシアの石油輸出国側です。エネルギー資源の市場支配競争でも、世界システム変換を狙う中国・ロシアの専制国家が既存の世界体制を覆すことは難しいでしょう。

基軸通貨、エネルギー資源の支配競争を離れて、経済情勢の現実に目を向ければ、世界システム変換などと論じるまでも無く明瞭な現象が現れています。

コロナ後のインフレ抑制の高金利政策にも拘わらず米国経済は絶好調です。米国の金融引締の煽りで途上国経済の中には困難が発生していますが、日本経済はドル高円安の恩恵を受けて、長年の停滞から脱出する兆しです。ドル高で米国は輸入品は安くなり輸出品は高くなるので一石二鳥のメリットがあるのです。これが基軸通貨国の強みであり、ドル高は米国の経常収支も改善し、更にドル高は進む好循環が進むのです。

逆に中国は、一帯一路で海外に莫大な不良債権を積み上げたあげく、国内にも不要不動産投資の不良債権を蓄積し、そこへが米国の高金利政策で金利上昇が襲いますから益々解決困難に陥っています。更に中国はドル高による輸出価格の低下を余儀なくされ、中国の外貨準備は減少して人民元は下落に向かってます。米中両国の経済の好調・不調の対照的な現象は、中国経済の将来にボディブローのように効いてくるのは間違いありません。

ウクライナ戦争に端を発するエネルギー危機、食料危機、そして続けて始まったイスラエル・ハマス戦争は、確かに不幸で悲惨です。センセイショナルな話題を好み、地味だが重大な経済現象を報道しないのは大手メディアの通弊ですが、今、世界で進展している経済変動の大きい波は、世界システムの動向に決定的な影響を与えますので注目したいものです。
以上

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