劉少奇が現実路線を採ろうとして毛沢東の文化大革命で撃破され、その後も現実派は走資派との批判を受けて紆余曲折を経ましたが、トウ小平が実権を握ってようやく改革開放の政策が実施されて、中国共産党は国家資本主義への道を走り出しました。
トウ小平の指名を受けて国家主席になった江沢民は、その資本主義的手法を活用して国富を私物化する道を広げました。その後、同じくトウ小平の指名で国家主席になった胡錦濤は、資本主義的手法で生じた社会的歪みを是正するため、政権の後半で和諧を唱えたましたが、江沢民の上海閥の抵抗に遭って成果を挙げないまま政権を降りました。
胡錦濤の後を受けて国家主席になった習近平は、汚職退治を旗印に中華民族の夢を語って政権基盤の強化に乗り出しましたが、江沢民の強い後押しで国家主席になった習近平が、資本主義的手法で獲得した共産党幹部の権益を広く国民に再分配する政策は採りにくいでしょう。
政権幹部の間では「腐敗を止めなければ国家は崩壊するが、腐敗しなければ幹部は生きていけない」と自嘲的に語られているそうですから、分かっているけれど止められないということです。
トウ小平は経済格差が生じるのは覚悟の上で改革開放を始めたのですが、今生じている格差は余りに大きく、中国共産党が正統性を維持するのは極めて難しくなっています。しかし、正統性が失われただけで独裁政権は倒れません。そのような事例は数多くあります。1990年代の東欧諸国の革命も2010年以降のアラブの春も、独裁政治との長い戦いの後に起きたのです。
民衆が時の政権に反対して蜂起しても、軍が民衆の蜂起を支持しなければ、独裁政権は倒れません。独裁政権が倒されたとしても、その後の政権を維持する政治勢力が結集しなければ、混乱が残るだけです。
ある外誌は、最近のエジプトの混乱を見て、歴史家タキトゥスは次のように書き残したと伝えていました。「悪い皇帝を倒した後の最善の日は、彼を倒したその日だった」と。
独裁政権を樹てるのも潰すのも武力が物を言います。毛沢東は政権は銃口から生まれると言いましたが、毛沢東の後裔である共産党政権の指導者たちは、軍部の動向に気を遣います。共産党創設に参加し軍歴もあるトウ小平の時代までは、党は軍に影響力を持っていましたが、江沢民以降の国家指導者は、軍人の処遇と軍事費の増加で軍部と妥協してきたのです。
しかし、最近は中国軍も国家企業を所有し、資本主義的権益に参加しています。共産党も軍部も国家資本主義の恩恵に浴しているので、両者の間に大きな利害の不一致が生じない限り、国家による資本主義体制の運営は続き、民衆の不満は抑圧されれ続けるでしょう。
中国経済の破綻が引き金となって中国政権は崩壊すると期待する論調もありますが、経済的危機だけでは政治的危機に至らないのが独裁政権国家なのです。況して資本主義経済を国家独占でマネージする技術を身につけた共産党政権は、自由なグローバル経済の変動に翻弄される民主主義国家より強靱かも知れません。
(以上)
トウ小平の指名を受けて国家主席になった江沢民は、その資本主義的手法を活用して国富を私物化する道を広げました。その後、同じくトウ小平の指名で国家主席になった胡錦濤は、資本主義的手法で生じた社会的歪みを是正するため、政権の後半で和諧を唱えたましたが、江沢民の上海閥の抵抗に遭って成果を挙げないまま政権を降りました。
胡錦濤の後を受けて国家主席になった習近平は、汚職退治を旗印に中華民族の夢を語って政権基盤の強化に乗り出しましたが、江沢民の強い後押しで国家主席になった習近平が、資本主義的手法で獲得した共産党幹部の権益を広く国民に再分配する政策は採りにくいでしょう。
政権幹部の間では「腐敗を止めなければ国家は崩壊するが、腐敗しなければ幹部は生きていけない」と自嘲的に語られているそうですから、分かっているけれど止められないということです。
トウ小平は経済格差が生じるのは覚悟の上で改革開放を始めたのですが、今生じている格差は余りに大きく、中国共産党が正統性を維持するのは極めて難しくなっています。しかし、正統性が失われただけで独裁政権は倒れません。そのような事例は数多くあります。1990年代の東欧諸国の革命も2010年以降のアラブの春も、独裁政治との長い戦いの後に起きたのです。
民衆が時の政権に反対して蜂起しても、軍が民衆の蜂起を支持しなければ、独裁政権は倒れません。独裁政権が倒されたとしても、その後の政権を維持する政治勢力が結集しなければ、混乱が残るだけです。
ある外誌は、最近のエジプトの混乱を見て、歴史家タキトゥスは次のように書き残したと伝えていました。「悪い皇帝を倒した後の最善の日は、彼を倒したその日だった」と。
独裁政権を樹てるのも潰すのも武力が物を言います。毛沢東は政権は銃口から生まれると言いましたが、毛沢東の後裔である共産党政権の指導者たちは、軍部の動向に気を遣います。共産党創設に参加し軍歴もあるトウ小平の時代までは、党は軍に影響力を持っていましたが、江沢民以降の国家指導者は、軍人の処遇と軍事費の増加で軍部と妥協してきたのです。
しかし、最近は中国軍も国家企業を所有し、資本主義的権益に参加しています。共産党も軍部も国家資本主義の恩恵に浴しているので、両者の間に大きな利害の不一致が生じない限り、国家による資本主義体制の運営は続き、民衆の不満は抑圧されれ続けるでしょう。
中国経済の破綻が引き金となって中国政権は崩壊すると期待する論調もありますが、経済的危機だけでは政治的危機に至らないのが独裁政権国家なのです。況して資本主義経済を国家独占でマネージする技術を身につけた共産党政権は、自由なグローバル経済の変動に翻弄される民主主義国家より強靱かも知れません。
(以上)