ギリシャの債務危機問題は最終段階に入ったと言われます。ギリシャの債務支払期限はIMFは6月末、ECBは7~8月であり、ギリシャが最終改善案を提出し、EU 側が検討中とのことです。
これまでの交渉経過を見ると、世界のメディアの多くは、借金を返さないギリシャが悪いと報じていて、ギリシャの行動を批判する傾向が強いのです。酷い報道になると、蟻とキリギリスの童話のように、働かないで高い報酬を求めるギリシャ人が悪いのだとまで言います。
しかし、果たしてギリシャ債務危機はギリシャ人だけの責任で生じたものでしょうか?
最大の原因は、そして責任も EU の経済システムの欠陥にあるのです。ドイツ人が勤勉でギリシャ人が怠惰だから生じた問題ではないのです。
欧州の経済統合が関税などの貿易面で単一市場を求めていた間は、産業の興廃、失業の発生などの摩擦が生じても、市場効率が高まるので EU 圏内の国家間の対立には至りませんでした。
しかし、通貨をユーロに統一してからは、EU 圏内の国家間の摩擦は激しくなってきました。
先ず最初に発生した問題は、財政規律を守れない国が出現したことです。EU が単一通貨ユーロを導入したとき、通貨価値を維持するため加盟国の財政支出を抑制することを求めましたが、国内政治の要求で財政規律を守れない国が出てきたのです。ドイツまでが規律違反をした時期があったのです。
次に発生したのが貿易赤字と財政赤字で借金が返済できない、今回のギリシャ問題です。最初に発生した財政規律違反の問題も、今回のギリシャ債務危機も、原因は同じものです。複数の国の通貨を統一しておいて、国内政治を動かす財政を各国に任せる EU の経済システムでは、一つの国の経済なら解決できたことも、解決出来ない事態に発展するのです。
通貨は国家主権の一部ですが、これをEU に預けるなら財政権も EU が預かり、EU 統一国家を構成すれば、ギリシャ問題は一国の地方政府の問題となり、統一国家は当然その支援に乗り出しますし、そうする義務があります。
現在の EU は統一国家ではありませんから法制上の支援の義務はありませんが、通貨を統合した以上、経済的には EU 構成国を支援する責任があるのです。
最近、ドイツのメルケル首相は、どんな手段を使ってでもギリシャを EU に残留させると言いました。これだけでは彼女が何を意図しているのか分かりませんが、ギリシャ債務危機を生み出し責任の多くはドイツにあると気づいたのかもしれません。
推測でその論理を追ってみましょう。
ユーロ圏内には経済的に最強のドイツと共に最弱のギリシャをおよに弱い南欧諸国が入っています。弱小国の存在のお陰でユーロの為替レートは、ドイツの輸出競争力を高めます。割安のユーロ通貨でドイツが世界市場で稼いだ外貨は、ドイツだけのものではないと理解できます。
更に深読みすれば、もしギリシャをユーロ圏外に追放すれば、それに続いて南欧諸国が脱落するとなれば、ドイツが支配している単一 EU 市場を失うことになり、それだけでなく、ユーロ通貨は割高の為替レートとなり、今までのドイツの国際競争力はかなり力を失うでしょう。
ギリシャ債務危機がギリシャだけの責任で発生したわけではないと理解すれば、IMF返済遅延、ECBの支援停止、銀行システム崩壊(預金引出規制)、政府支払用新紙幣の発行(新ドラクマ発行)、ギリシャのEU離脱のシナリオの道は避けなければなりません。
過去にも債務不履行危機は存在し、国際協力で解決されました。しかし、過去に生じた債務不履行は、短期の手元不如意だったのですが、今回のギリシャ危機は長期的にも支払不能に陥る可能性が高いのです。最終的には IMF も ECB も借金棒引きを視野に入れねばならないでしょう。
しかしギリシャの EU 加盟はソ連に対する政治的・軍事的意味合いが強かったのです。時恰もウクライナ問題で対露経済制裁の最中です。ギリシャ危機で西欧の結束が乱れることを米国は恐れていますから、IMF の支援も期待できます。 (以上)
これまでの交渉経過を見ると、世界のメディアの多くは、借金を返さないギリシャが悪いと報じていて、ギリシャの行動を批判する傾向が強いのです。酷い報道になると、蟻とキリギリスの童話のように、働かないで高い報酬を求めるギリシャ人が悪いのだとまで言います。
しかし、果たしてギリシャ債務危機はギリシャ人だけの責任で生じたものでしょうか?
最大の原因は、そして責任も EU の経済システムの欠陥にあるのです。ドイツ人が勤勉でギリシャ人が怠惰だから生じた問題ではないのです。
欧州の経済統合が関税などの貿易面で単一市場を求めていた間は、産業の興廃、失業の発生などの摩擦が生じても、市場効率が高まるので EU 圏内の国家間の対立には至りませんでした。
しかし、通貨をユーロに統一してからは、EU 圏内の国家間の摩擦は激しくなってきました。
先ず最初に発生した問題は、財政規律を守れない国が出現したことです。EU が単一通貨ユーロを導入したとき、通貨価値を維持するため加盟国の財政支出を抑制することを求めましたが、国内政治の要求で財政規律を守れない国が出てきたのです。ドイツまでが規律違反をした時期があったのです。
次に発生したのが貿易赤字と財政赤字で借金が返済できない、今回のギリシャ問題です。最初に発生した財政規律違反の問題も、今回のギリシャ債務危機も、原因は同じものです。複数の国の通貨を統一しておいて、国内政治を動かす財政を各国に任せる EU の経済システムでは、一つの国の経済なら解決できたことも、解決出来ない事態に発展するのです。
通貨は国家主権の一部ですが、これをEU に預けるなら財政権も EU が預かり、EU 統一国家を構成すれば、ギリシャ問題は一国の地方政府の問題となり、統一国家は当然その支援に乗り出しますし、そうする義務があります。
現在の EU は統一国家ではありませんから法制上の支援の義務はありませんが、通貨を統合した以上、経済的には EU 構成国を支援する責任があるのです。
最近、ドイツのメルケル首相は、どんな手段を使ってでもギリシャを EU に残留させると言いました。これだけでは彼女が何を意図しているのか分かりませんが、ギリシャ債務危機を生み出し責任の多くはドイツにあると気づいたのかもしれません。
推測でその論理を追ってみましょう。
ユーロ圏内には経済的に最強のドイツと共に最弱のギリシャをおよに弱い南欧諸国が入っています。弱小国の存在のお陰でユーロの為替レートは、ドイツの輸出競争力を高めます。割安のユーロ通貨でドイツが世界市場で稼いだ外貨は、ドイツだけのものではないと理解できます。
更に深読みすれば、もしギリシャをユーロ圏外に追放すれば、それに続いて南欧諸国が脱落するとなれば、ドイツが支配している単一 EU 市場を失うことになり、それだけでなく、ユーロ通貨は割高の為替レートとなり、今までのドイツの国際競争力はかなり力を失うでしょう。
ギリシャ債務危機がギリシャだけの責任で発生したわけではないと理解すれば、IMF返済遅延、ECBの支援停止、銀行システム崩壊(預金引出規制)、政府支払用新紙幣の発行(新ドラクマ発行)、ギリシャのEU離脱のシナリオの道は避けなければなりません。
過去にも債務不履行危機は存在し、国際協力で解決されました。しかし、過去に生じた債務不履行は、短期の手元不如意だったのですが、今回のギリシャ危機は長期的にも支払不能に陥る可能性が高いのです。最終的には IMF も ECB も借金棒引きを視野に入れねばならないでしょう。
しかしギリシャの EU 加盟はソ連に対する政治的・軍事的意味合いが強かったのです。時恰もウクライナ問題で対露経済制裁の最中です。ギリシャ危機で西欧の結束が乱れることを米国は恐れていますから、IMF の支援も期待できます。 (以上)