写真1 池袋サンシャイン裏通り
写真2 原宿表参道のよさこい祭り
数年前、アメリカから地中海をめぐる観光客船に乗った時の経験です。船内では、食事をするときも、お茶を飲むときも、サロンで音楽を聴くときも、白人と黒人は、はっきりと分かれて行動していました。気のせいか、船内のエレベーターでも、一緒に乗るのをお互いに避けていたようです。
黒人大統領が選出され、司法長官にも黒人が任命され、アメリカの人種差別は大いに改善されたと思われがちですが、観光客船で見た差別感情は、なかなか拭いきれないようです。
その証拠に、黒人として初代司法長官になったエリック・ホルダー氏は、着任後、次のように語っていました。
「職場では率直な議論が交わされるようになって随分改善されたが、職場以外では50年前と殆ど変わっていない、職場以外でも、もっと人種問題を議論すべきだ。」
戦前、アメリカ社会で日本人移民がしつこい差別待遇を受け、それが第二次大戦の遠因となったも云われています。確かに差別問題は社会に深刻な事態を招くだけでなく、国際的にも悪い影響を与えます。
黒人司法長官の発言内容は誠に真っ当なことですが、職場以外の私的な場で起きている差別感情を、法律で律するのは極めて難しいことです。この種の問題は、思想家や宗教家が文化の融和という形ですすめて初めて実現するものです。
そのプロセスは、相手の文化に対して関心を持ち、理解し評価し、更には尊敬できるようになることです。実現するのに誠に時間のかかることです。その努力なしに政治的に社会に圧力をかけてみても、建前だけの差別解消に終わるでしょう。
写真1は池袋サンシャインの裏通りの黒人たち、写真2は原宿表参道のよさこい祭りに参加している外国人たちです。
(以上)