フィールドワーク通信

広島を拠点にフィールドワーク。カンボジア、インドネシア、市民まちづくり

スンギギ・ビーチ・ホテル1228

2006-03-07 18:42:58 | インドネシア通信
 マデさんとのお別れ。ロンボクへの出発。結局、チケットがなかなか取れず、28日に船でロンボクに渡り、その日はスンギギ泊。翌日バヤンへ向かい、バヤン泊。31日の朝8時の飛行機しか取れなかったので、前日はチャクラヌガラ泊。結局1泊2日のバヤン滞在となった。どういう状況が展開されるかは、皆目検討がつかない。

 私がバヤンに1ヶ月滞在したのは、93年だったと思う。既に10年も時がたっている。みんな変わったはずだ。あるものは死に、あるものは去った。隣に住んでいた彼は、結婚して既に村を離れた。おばばは生きているだろうか。そもそも滞在のきっかけとなった、シンガトリア村長も生きているのだろうか。頼りの綱は、村長の息子たちだ。次男のジャナからは何度か手紙をもらっている。5年前に一度訪れたと思う。その時はジャナには会えず、兄貴といっしょにすごした。彼はとてもよくしてくれたのだが、何かしら疎外感を感じた。それは私が勝手に抱いていただけかもしれない。一口に10年といっても、その間の変化は大きい。私の存在も忘れられているかもしれない。偶然に偶然が重なり、様々な有意義な出会いがあり、24歳の貴重な1ヶ月がそこにはあった。だが、祭りは終わり、人々は日常に戻り、あの日々は終わった。戻れないことを嘆いていてもしょうがない。明日、新しい一歩を踏み出す。

 船で、バリ・ロンボク間を行き来したのは2度目である。前回は高速艇だったが、今回は普通のフェリーである。4時間から5時間かかる。バリ島の港へ向かうバスの中で、ふとポラロイドカメラのことを思い出した。調査の時にはかならずポラロイドカメラを持参していた。それは第一には、簡易な実測などをする場合、ポラロイドでとって、その写真にそのまま寸法を書き込むためである。持参の第一の目的はそうであるが、おうおうにして現地の人々への御礼に使われた。家を見せてくれた人や泊めてくれた人をカメラでとってお礼にわたすのである。田んぼの真ん中にするおばあさんに渡したときには、歓喜ため叫びだしていた。写真を手にする機会はそれだけ少なく、そのため重宝するのだが、本当に写真を渡すことが正しいことなのか、そのころ疑問を感じていた。写真を渡すという行為は、ただモノをあげるということと同義ではない。自分に対する外からの視線の存在を知らしめるということであり、ある一瞬の自分の姿を記録に残すということである。鏡のない世界に写真を提供するとしたら、それはものすごい認識の変化を強いることであり、自分の手によって、新しい世界への扉を開くことに戸惑いを感じる。記録を残すこと自体は、よいことかもしれないが、これまでの記録と記憶との関係が変わっていくのは明らかで、自らが手を下すことに戸惑いを感じる点では前者と同様である。この議論は、平たく言うと近代化論であるが、地球の近代化は、遅かれ早かれ進展していくだろうし、人類すべてが写真をもつ時代ももうすぐかもしれない。もしかしたら既にそういう状況になっているのかもしれない。単一の世界、平坦な地球へと時代はどんどん流れている。

 スンギギでは、スンギギ・ビーチホテルに泊まった。ホテルへの道すがら、先導を買って出る人がいた。歩いていると、多くの人にホテル紹介するよと声をかけられた。紹介料が入るんだと思う。だからみなこぞって声をかけてくるし、予約してあることを告げると去っていく。ずっとついてきた彼は最後には大麻はどうかと聞いてきた。ドラッグの問題は、ただ禁止されているからだめというわけではなしに、自分なりの線引きをきちんとしないといけないと思っている。なにをもってドラッグとするのか、それぞれの効能や後遺症、国や地域による考え方の違い、などをいつかは整理したいと思っている。今日は、手にするつもりもなく、無下に断った。

 夜はホテルのレストランで食事をとった。はじめての洋食である。インドネシアにしてもフィリピンにしても、なるべく洋食は食べないようにしている。理由は単純で、おいしくないからである。中国料理は世界中どこでも食べられ、味も安定しているが、いわゆる洋食となると別である。ほとんどが食えた代物ではない。日本の洋食自体すでに日本化していて、例えばイタリアやフランス人からすると食べれるものでないかもしれない。とはいえ、ある程度の水準にはいっていると思う。しかし東南アジアで食べるピザやスパゲッティなどは、なんでこんなものを食べるのだろうかと疑問になるほどまずい。そんなに苦労してまずいものをつくる必要はないだろうに、と思う。だが、ここリンジャニレストランはおいしかった。まず最初に出てきたパンにうなった。あとドリアやピザやサラダを食べたがいずれもおいしかった。

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