松永和紀blog

科学情報の提供、時々私事

市民が科学者を見分ける法ー追加

2008-12-23 01:47:47 | Weblog
 市民は、どのようにして科学者を見分けたらよいか? で、次のように書いた。「科学者が同業者である科学者をきちんと批判するとか、市民団体がおかしな科学者の問題点を指摘する、というような動きがもっと活発になってよいのでは。現実には、日本の科学者は同業者を批判してもなんの得にもならないので、しない場合がほとんど……」。ちょっとどぎつい書き方だったかもしれない。金銭的な損得の話と誤解されている部分もあるようなので、ちょっと追加します。

 もちろん、科学者の使命として、同業者批判をきちんとしている人はいる。「食の安全」の分野なら、長村洋一・鈴鹿医療科学大教授、高橋久仁子・群馬大教授。ニセ科学批判は、天羽優子・山形大准教授、田崎晴明・学習院大教授ら。ほかにも、中西準子先生や安井至先生などいらっしゃるし、ネットでは、Natromさん食品安全情報blogの活動が光る。思い浮かぶ人は、ほかにも何人もいる。

 が、彼らが真摯な批判をすればするほど、誹謗中傷も増えるように私には思える。彼らが、その活動に対して向けられる感情的な反発や軋轢への対応に時間をとられている実態もある。中西先生が、京都大学教授から名誉毀損で訴えられ、一審で棄却され判決確定したのが典型例だ。そして、彼らの社会的な役割は極めて大きいにもかかわらず、同業者からの評価は不十分だ。

 問題のある科学者を批判するということはある意味、その科学者に自らかかわるということでもある。「そんなことに時間を費やすよりも、無視し黙殺して、自分の研究を進めて論文をたくさん書く方がはるかにマシ。はるかに有意義」と考える科学者がいる。私は、こちらのタイプの方が数は圧倒的に多い、と思う。

 こういう現象を、「なんの得にもならないので、批判しない場合がほとんど」というふうに書いた。決して、「金にならないから批判しない」という意味ではありません。
 私は、「すべての科学者が社会的な活動をすべきだ。問題のある同業者を批判すべきだ」などとは言わない。だけど、同業者批判も厭わず「科学的に適正なこと」を一般市民に伝えようと努力している科学者たちは、学術界でもっと尊重されるべきだし業績として評価されるべきだし、社会からも尊敬されていい、と思います。

(注:天羽優子准教授を、助教授と書いてしまいました。これはとても恥ずかしい間違いですね。すみません。訂正しました。2008,12,24)