松永和紀blog

科学情報の提供、時々私事

厚労省のいい仕事ぶり~加工食品の表示に関する共通Q&A改訂

2008-12-04 12:38:47 | Weblog
 加工食品の表示に関する共通Q&A(第2集:消費期限又は賞味期限について)が11月、改訂された。
 「赤福」や「白い恋人」など、期限表示を巡る問題で大騒ぎになったのは2007年。安全性、品質共に問題がないと思われる食品が、大量に回収され捨てられたのはご承知の通りだ。その混乱の再発を防ぐために、Q&Aは踏み込んだ内容になっている。厚労省基準審査課が、相当に頑張ったのだろう。
 加工食品を扱う関係者は、ぜひ目を通してください。厚労省:食品の表示に関する情報提供のページ

 私が重要だと思う変更点は次の通りだ。
(1)一般消費者向けと事業者向けに整理された。

(2)消費期限と賞味期限を分ける目安になっていた「おおむね5日」が消滅した。
 5日という一律の目安ではなく、食品の特性、条件等に応じた科学的、合理的な判断を、個々の事業者の責任でやりなさい、ということのようだ。

(3)消費者向けに、「保存中に期限が切れた場合には、どのようにすれば~」というQ9が設けられた。Aでは、消費期限と賞味期限の区別を説明した後に、賞味期限については「すぐに捨てるのではなく、その見た目や臭い等の五感で個別に食べられるかどうかを判断するとともに、調理法を工夫するなどにより、食品の無駄な廃棄を減らしていくことも重要です」と説明している。

(4)事業者向けのQ12のAで、賞味期限を設定する場合の安全係数として、「必要以上に短い期限とならないように、0.8以上を目安に設定することが望ましい」と説明している。
 通常、実験などで確認された期限に1以下の安全係数をかけて賞味期限を設定する。従来、極端な場合には0.3程度の数字をかけて短い賞味期限を設定していた業者もあった。そういうことは止めなさい、ということだろう。

(5)Q14で、賞味期限におけるいわゆる「1/3ルール」に法令上の根拠がないことを明確にした

(6)Q31で、「加工の段階で、期限切れの原材料を使用することは可能か」という質問を新設。消費期限切れの原材料使用については「厳に慎むべき」。賞味期限切れについては、「必ずしも禁止されてはいません。当該原材料の特徴を踏まえ、または、保存温度の変更や加熱加工などを行った場合に、最終製品の品質に問題がないことを科学的、合理的な方法で確認できているのであれば、問題はありません」と回答。

(7)Q32で、一度出荷した後に返品された商品の再包装と出荷についての質問を新設。「再包装して再出荷する場合には、食品衛生上問題がないことを確認した上で、客観的な指標に基づいて、再度賞味期限を設定し直すことが必要」と回答。つまりは、条件付きながら再出荷していい場合もあるよ、ということ。

 Q&A全体を通じて、「科学的、合理的な判断が重要」ということと、「無駄な廃棄は減らすべき」という力強いメッセージが打ち出されている。厚労省、いい仕事してます。
 あとは、事業者の自覚と責任、実行力が問われる。もちろん、消費者の判断力も。