もちろん家計は火の車

読書と映画、クルマにゲーム……いろんなものを愛しつつ、怠惰な日常を送るオッサンのつぶやき。

何かと話題の映画『告白』を観ました……たしかに、これはスゴイ!!

2010年06月30日 | 映画

各方面で話題を呼んでいる映画『告白』を観てきた。
ま、ウワサを聞いてある程度「予想していた」ことではあるが、
想像以上に重たく、ズッシリした映画だった。
(上映が終わった後、劇場から出てくる人たちが全員
黙りこくっている感じだったのが、なんとも印象的だったw)。

まずもって、登場人物の誰にも「感情移入できない」……
こういう作りって、相当な冒険だと思うわけだ。
『告白』という映画の場合、ほぼ全編を通して
「これでもか!」とばかりに、観る側の人間に不快な現実を突きつけてくる。
“イジメ”に“家庭内暴力”、“児童による殺人”に“復讐劇”
……とにかく、負の要素がテンコモリなのだ。

そして、「マイナスとマイナスを掛け合わせたら、
やっぱりマイナスでした(!)」……というような、
どう考えても救いのない、壮絶なドラマを演じている登場人物の誰もが、
実は(映画を観ている)自分たちと「ほんの少ししか違わない」、
ごくごく“当たり前の人間”ばかりである、という矛盾……。
そこが、この『告白』という映画のおそろしさを倍増させている。

たとえばの話。
ホラー映画で大量に人が殺されようと、
観ている側の人間は「笑って見ていられる」のだ。
そこで展開している物語が、あまりに“荒唐無稽”だからである。
『13日の金曜日』シリーズで大暴れしているジェイソンにせよ、
ロブ・ゾンビの怪作『デビルズ・リジェクト』で
素晴らしいキレっぷりを発揮するキャプテン・スポルディング一家にせよ、
その行動原理を理解しようとしたところで、どだい「無理な相談」だ。
要するに、そのテの映画に登場する極端なキャラクターは、
どいつもこいつも「ハナっからワケの分からない、ボクらとは違う世界の人々」なのだ。
だからこそ、安心して観ていられる。
なぜなら、それらは完全に「別の宇宙で展開している物語」だから……。
(ここ最近、ホラー映画の世界で急速に台頭しつつある
POV(一人称視点)を用いたドキュメンタリー・タッチの作品(『REC/レック』など)や、
一連の“拷問ホラー”作品(『HOSTEL(ホステル)』や『SAW(ソウ)』など)は、
従来のホラー映画になかったアプローチによって
独自に“リアリティ”を追求した結果、登場した……と考えられるかもしれない)。

ところが、である。
本作『告白』の登場人物を支配している行動原理ときたら
「わが子は、かわいい」
「親に、みとめられたい」……etc.
1つずつ因数分解していけば、どれもが「当たり前の感情」ばかり。
少なくとも、“それ自体”が罪に問われるような、そんな大それた感情ではない。
要するに、彼らは「ボクらと同じ世界に生きている」、ごくごく普通の人間なのである。
でも、そんな彼らの感情が複雑にもつれ合い、ちょっとした化学反応を起こした結果、
『告白』という物語は、想像を絶するような展開を見せる。
「予想の斜め上を行く」……という言葉があるが、本作の場合、
掛け値なしに「観客の予想の斜め上を行く」展開をたどると考えてもらって、間違いない。
だからこそ、この『告白』という映画は“問題作”なのである。

ご存知の方も多いと思うが、
この『告白』という映画は、昨年に刊行され
“本屋大賞”を受賞したベストセラーを映画化したものだ。
そのため、すでに「原作を読んだことがある」という人も多いかもしれない
(わたしの場合、原作を未読のまま劇場に足を運んだクチである)。
幸運にも「まだ、原作を読んだことがない」という人は、
なるべく予備知識を持たない状態で、映画を観ることをオススメする。

数年に一度の衝撃が、そこで待っているはずである……「な~んて、ね」(笑)。


PS.
最後に書いておくと……。
主役の女教師を演じる松たか子と、
生徒の母親役を演じる木村佳乃の演技は、まさにアカデミー賞ものである。
「鬼気迫る」という言葉すら超越した、
母性のおそろしさと狂気を、とくとご覧いただきたい。
(あと、中盤に登場する“熱血”若手男性教師のウザさは、特筆に価するw。
本人に悪意がないとはいえ、あそこまで無能だと「もはや犯罪」であろう。
「ハートでぶつかれば、きっと生徒たちと分かり合える!」……
な~んて考えてる先生で、この映画を観て真っ青になった人も、少なくないのではないだろうか?)


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