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足りないものと引き換えに手にするもの

2013-09-28 23:05:13 | 野球

とうとう山崎が引退を発表した。 
中日での最後の2年間の成績は芳しいものではなく、 
楽天で選手生命を終えた方がよかったのかも知れない。 

山崎はドラフト2位で名電高から中日に入団する。 
1位指名は近藤真一だった。 
高校時代は捕手であったが入団してすぐにアメリカ留学する。 
その時は主に3塁を守るが、帰国しまた捕手に戻る。 
1年後輩の立浪は高卒で入団し、すぐにレギュラーを与えられたが 
山崎にはなかなかチャンスが廻って来なかった。 
89年1軍に昇格するもあまりの肩の弱さに捕手失格の烙印を押される。 
93年は開幕からしばらくスタメンで起用されるが、 
チャンスに打てず短気な高木監督はスタメンから外してしまう。 
それから数年間スタメンと控えの「行ったり来たり」の状態が続く。 
レギュラーに定着するのが96年で、 
この年松井秀樹とホームラン王争いを演じ、星野監督の温情でタイトルを獲得する。 
中日の投手は松井と勝負しなかったのだ。 

2001年のシーズン・オフにFA権を得て横浜への移籍を考えるが、思い留まり 
名古屋に新居を建てる。 
だがその1年後にオリックスへ電撃トレードされる。 
山田監督と馬が合わなかったからである。 
せっかく新居が完成したと思ったらトレードされるという不運だった。 
これには山崎もかなり腹が立ったらしい。 
「トレードは嫌がらせだと思った」と心境を告白している。 

オリックスでは全くやる気をなくしてしまう。 
実は山井と山崎の1対1のトレードが検討されていたが、何故か水に流れている。 
その後の山井の活躍を見ればトレードが成立しなくてよかったといえるだろう。 
そしてオリックスと近鉄が合併する時、山崎はプロテクトされずに自由契約となる。 
この時山崎はメディアで中日復帰を訴えるが、 
楽天の監督に就任した田尾氏が山崎を招聘し、楽天への入団を決める。 
山崎にバッティングを指導したのは野村氏といわれているけれど、 
実は田尾氏の熱心な指導によって復活したのだ。 
山崎は中日関係者にそのことを話しているし、 
本人も名古屋のテレビ番組に出た時に認めている。 

「ようやく落ち着いて野球をやれる環境を与えられた」と思ったのもつかの間、 
わずか1年で田尾監督は解任される。 
そして野村監督が楽天にやって来る。 
その時山崎は「ああ、もうこれでおしまいだな」と思ったらしい。 
キャンプで初めて野村監督と会話した時にこう言われたという。 
「お前、嫌われ者やろ。俺には分かるぞ、俺も嫌われ者だからな」 
その会話で監督と打ち解けたそうだ。 

「二千本安打も打てず、成績としては一つも二つも足りない男だな」というが 
山崎は1軍に定着する前、火事の現場に遭遇し、 
いても立ってもいられず燃えている家の中に飛び込み子供を救出したことがある。 
これこそ誇りにしていい。 
そんな野球選手は名球界にはいない。 
山崎は二千本のヒットを打った選手より立派なことをしたのである。 
二千本安打より価値がある1833本安打を達成した選手は山崎ただ一人だ。 
記録に執着しない生き方がどんなに素晴らしいものか、 
思ったことを口にすることがいかに苦しいか、 
それは山崎が教えてくれる。 


安っぽい愛で縛られる9人の男

2013-08-26 00:29:20 | 野球

広島カープの松田耕平前オーナーは言った。 
「球団は家族、選手は子供」。 
カープは選手のFA権行使後の残留を認めない。 
資金力のない球団は選手の年棒の高騰を危惧するからだ。 
一部のカープファンの中にはFA権行使後、他球団に移籍した選手を罵倒する者がいる。 
「金の亡者」や「守銭奴」、「金儲けだけの男」、「金に目のない裏切り者」などと選手を 
誹謗、中傷する心無いファンも一部とはいえ存在する。 

プロ野球が金儲けが主たる目的の事業であることは疑いの余地はない。 
金儲けが嫌ならプロ選手にはなっていないだろうし、アマチュア野球で十分満足出来るだろう。 
選手に限らず球団関係者は趣味で野球に携わっているのではない。 
金儲けという目的意識が明白であるからこそ、努力するし頭を使う。 
つまりビジネスがプロ野球の発展に貢献するのである。 

「球団は家族、選手は子供」などと 
戯言をオーナーが発言するような球団に所属する選手が可哀想だ。 
愛で選手を縛るつもりなのだろうが、縛られる選手はたまったものではない。 
「これだけ愛しているのだから金のことは口にするな」と言われたら 
「そんな安っぽい愛などいらない」と言いたくなるだろう。 
そもそもそんな浪花節で球団経営し選手を管理すること自体が時代錯誤だ。 
資金がないということは球団を経営する能力がない、ということだ。 

監督人事を巡っても不可解なことが多い。 
ブラウンが何故監督に就任したのか、未だに謎である。 
選手として実績があるわけでないし、メジャーリーグの監督経験があるわけでもなく、 
ただマイナーリーグの監督としてのささやかな実績があるのみだ。 
報酬だけで決めたとしか思えない。 

金にまつわることで面白い話がある。 
カープはドミニカ共和国でアカデミーを開設し、安価で良質の選手の供給源を求めた。 
だが、せっかく日本に連れて来ても待遇が非常に悪いので球団から離れてしまうのである。 
貧乏国の選手だからといって足元を見ているのだろう。 
現在中日でスペイン語通訳をしているのはカープアカデミー出身者である。 
彼は独学で日本語を覚え、カープを見限り、自分の道を自分で切り開いたのである。 

節約は悪いことではない。 
しかし、安っぽい愛で人の心を縛ることなど出来ない。 
金が全てではないが、愛は長く続かない。 
それが人生というものだ。