在イタリア、ソムリエワインノートとイタリア映画評論、他つれづれ appunti di degustazione

ソムリエ 20年、イタリアワインのテイスティングノートと、なぜか突然のイタリア映画評論、日本酒、日本茶、突然アートも

イタリア映画の紹介 Mia madre 私の母

2015-05-07 17:27:44 | 何故か突然イタリア映画
イタリア映画の紹介 Mia madre 私の母



素敵な映画だった。
モレッティの新作ということで、今回はいつもより多くの人が集まった。
こういう場になかなか顔を出さないモレッティ氏自身を間近で見れる期待もある。
なにせ内輪の会なので、嬉しいことに目の前。
映画は、これが映画、と言うとオーバーだが、こういうのを映画と言うんだ、と、観ていて思った。
ある映画評論家が「奥深く、真面目な映画、映画の映画、現実と虚構、今の時代がいかに複雑で多くの問題を抱えているかが見えて来る」というようなタイトルで評論を書いているが、まさにその通り。

女性映画監督のマルゲリータが新作映画を撮影している。
閉鎖を免れた工場。新しいオーナーはアメリカ人。ただし、3分の1をリストラするという。従業員たちは、絶対反対の横断幕をもって行進。オーナーとは衝突する。
この映画の中の映画の役者たちが面白い。特に、アメリカ人のオーナー役が、バリバリ英語訛りのイタリア語を話したり、発音が違ったり、セリフを思いっきり忘れてくれたり、かなり笑わせてくれる。
と、映画の撮影の合間に、もう命わずかになった母親の見舞いに頻繁に病院を訪れる。
仕事を休業して、やはり看護に当たっている兄の役は監督のモレッティ自身。
男から見る母親像、女から見る母親像の違い、離婚して、高校生の子供(女の子)がいるが、その母娘関係、祖母と孫の関係、そして、フィクションではあるが、工場で働く人たち、海を越えてやってきた新しいオーナーとの関係など、何かが起こるわけではなくとも、どれもが解決しがたい問題を抱え、心にしっとり響いてくる。
最後は、母親が亡くなり、回想、エンディング。。。(のはずだが、なんと、機械の調子が悪く、最後の1分半は監督自身に語ってもらった次第)

映画監督役のマルゲリータ・ブイ(自身の名前で演じている)は好きな女優だが、実にうまい。こだわりのある(モレッティ氏もそう)女性監督役を見事に演じている。はまり役。
なお、この映画の撮影中にモレッティ氏のお母様は本当に亡くなったらしい。

ジーンと、というよりシンシン、じわじわ心の中に入ってくる映画。
ぜひ日本での配給を期待したい。

ポスターの男性が監督のモレッティ。