プラムフィールズ27番地。

本・映画・美術・仙台89ers・フィギュアスケートについての四方山話。

◆ 美をつくし 大阪市立美術館コレクション

2023年05月05日 | ◆美しいもの。
これは初見で読める人と読めない人がいると思うが、「みをつくし」です。
みおつくし=本来は「澪標」で、海の浅瀬に設置された目印。水路標識。多くの場合杭。
大阪にだけあるわけではないけど、主に難波の縁語で、
昔の和歌には「身を尽くし」との掛詞で多用される。
大阪市立美術館のエキシビ名としてかなりこじゃれていると感じる。


わびぬれば今はた同じ 難波なるみをつくしても逢わむとぞ思ふ 

                          元良親王・百人一首

――と、学を披露したのはいいのだが、原義は「澪つ串」であることは初耳だった。
串だったのか。ううむ。ちなみに「澪」は浅瀬のなかで船の航行が可能な
比較的深い部分のこと。


県美のコーヒーショップがある方、本館と佐藤忠良館を結ぶ通路に、
各所の美術館の特別展ポスターが貼ってあるコーナーがある。
近くの場合もあるけど、九州など遠方の美術館のポスターもあり、
実用の情報かというとそうでもない。見て、あ、このエキシビいいなと思っても
遠くの美術館まで出かけていけるかというとそうはいかないですからね。

今回のポスターも、大阪市立美術館かあ……遠いなあ……と思いながら
通り過ぎようとしたら、福島県立美術館と書いてあることに気づいた。
おや。福島県立美術館でやるの?行けるじゃん。
とはいえ、今までわざわざ行ったことは1度しかないのだが(多分ワイエス展)、
ちょうど福島へ行きたいと思っていたこともあり、出かけてみることにした。


実は今回、写真撮影可だったんですよねー。
そしてけっこういい作品が多かったから、半分以上が撮りたい作品になってしまって。
そうすると絵を見るのではなく、絵を撮る方に気持ちがいって集中出来ない。
第一展示室の半分くらいでそれに気づいて、まず良さそうなのをある程度まとめて
撮ってから最初に戻って見るようにした。


日本画のいいのが見られるのは久しぶり。
約1年半前の「宮内庁三の丸尚蔵館所蔵 皇室の名品展 皇室の美-東北ゆかりの品々」
以来だ。これはランス美術館展の併設のエキシビだったが、ランス美術館展より
はるかに見応えがあった。


みんな良かったんだよなー。
撮った作品が18。いずれも佳品でいくつかに絞り切れない。
18も並べるのは大変だが、……並べてみようか。

佐伯祐三「教会」――ブラマンクから怒られて凹んでいた時期の作らしい。
村山槐多「自画像」――結核性肺炎と診断された後の自画像。「血の色」と名付けた
      ガランス色の多用。22歳で死んだのか……。名前はよく聞く作家だったが。
今村紫紅「業平東下り」――馬の顔が気に入った。少し情けないの。

橋本関雪「唐犬」――これは有名ですね。きれいな犬。頭を下げた犬が気になる。
児玉希望「枯野」――わさわさと描き込んでいるがぜんぜんうるさくない。秋の草花が美しい。
小野竹喬「秋陽(しゅうよう)」――グラデーションの美。真似したくなる。

上村松園「晩秋」――鏑木清方の「築地明石町」を思い出した。
          描かれた行為そのものからして日本の美だなあ。
北野恒富「星」――今一つ顔が上手くない画家に見えたが、雰囲気はいい。
島成園「伽羅の薫」――怪しくていいねえ。赤と白。孔雀。

堂本印象「如意輪観音」――こってりとした印象のあった堂本印象。ピンク色が美しい。
狩野派「四季花鳥図屏風」――かなり出来のいい花鳥図。こういうのをはべらかしたい。
関蓑洲「象図屏風」――象はほとんど見てない。表装の更紗模様が気に入った。

原在中「百鬼夜行図」――すっごくマンガ。鳥獣戯画を超えて面白い。
「十大弟子像頭部」――奈良時代。これ、佐藤忠良展とかにあっても全然違和感ないな。
「銅製湯瓶(とうびょう)」――鎌倉時代の水差し。工業製品のような安定の線。

「銀鍍金透彫 宝相華文経箱」――すっごい透かし彫り。南北朝時代。
それから根付のいいヤツいくつか。

……だが写真を撮って来るとそれで安心してしまって、全然作品に対する言葉が浮かばない。
やはり写真なしでじっくりと見た方が正しいんだろうな。
まあこの時は時間もなかったし。

混雑を避けようとして15時を狙って行って、遅れて15時半に着いたらほんと人が少なくて
ゆっくりと見られた。が、常設展も見なきゃいけないから、エキシビは1時間強。
思ったよりも作品数も多かったので、けっこう駆け足。
常設展は15分くらいで文字通り駆け足。ほとんど見たとは言えない。
14時半頃着ければベストだったかな。


まあとにかく粒ぞろいで良かった。大作がどーん!とまでではなかったけど、
佳品がたくさん来ていた。いいと思わない作品がほとんどなかった。
いいものを見せてもらった。大阪からわざわざ来てくれてありがとう。


福島県美術館も改修で長期休業に入るとどこかで見たような気がしたが、
その情報が見当たらない……。何も宮城県美術館、仙台市立博物館が長期休業中の
この時期に合わせることもなかろうと思ったが、自治体が違うんだから仕方ない。
仙台市と宮城県でさえ合わせられないんだから。





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