プラムフィールズ27番地。

本・映画・美術・仙台89ers・フィギュアスケートについての四方山話。

◆ 東日本大震災復興祈念 悠久の絆 奈良・東北のみほとけ展

2023年05月20日 | ◆美しいもの。
6月11日まで東北歴史博物館にて開催中。

いや、見ごたえのあるエキシビでした。ブツ展もひさしぶりだなあ。
ブツを見るなら奈良へ行くのが一番手っ取り早いが、地元でこういう良質な
ブツを見せてくれるのは大変ありがたい。

全部ではないけど、奈良は唐招提寺の仏像が多め。
鑑真像が来ているからね。鑑真像はホームグラウンドである唐招提寺御影堂だと
特別公開として年に3日しか見られないが、そのわりにあちこちに出張は多く、
わたしも少なくとも仙台市博物館で1回見ているし、
今回も来てるし、ずっと昔にどこかでもう1回見ている気がする。

芸能人のコンサートに行っても本人にはほぼ会えない(こちらが一方的に見るだけ)が
どこかで偶然会うと気軽に口が利ける状況に似ている。
そんなシチュエーションになったことは一度もないが。
まあそんなことはいい。

東北のみほとけ展、というからみちのく仏ががんがん出て来るんだろうと思ったら
メインは勝常寺の薬師三尊でした。岩手県の地仏は全然なし。意外。

あとは仙台市の十八夜観世音堂の観音像、
山形の宝積院の十一面観音像、
宮城・龍宝寺の清凉寺式釈迦如来像、
名取の新宮寺の文殊菩薩五尊像、
福島・新宮熊野神社の文殊菩騎獅像、
他にもうちょっとあったけど、このくらい。

清凉寺式って字面だけはよく見ていたけど、実際に見たのは初めてかもしれん。
うーん、これは特徴的だねえ。異端的にまで見えるという意味では
あれに似ている。あれ。……あ、あのアマルナ美術。
そしてガンダーラ美術も思い出した。ガンダーラ美術はギリシャ的なとても端正な作風なので、
清凉寺式の定型化とは全然似ていないと思うけれども。

それにしても勝常寺の薬師三尊はいいですねえ。これも三度目くらいな気がする。
一度目は現地で。他にみちのく仏のエキシビで見たな。
これは一体どんな来歴の仏なのか……。

感じる部分でいえば、絶対中央の造型だと感じる。
だが、書いてあったところによると使用材はケヤキ。ケヤキは東北で使われることの
多い材だという。中央にはまったく使用例がないのかは知らない。
もし中央で使われない材だとすれば、地元で作ったことになるが……

徳一法師の創建だという寺伝に従えば、個人的な関係で中央出身の仏師を
現地まで来させて作らせることは不可能ではないと思う。
9世紀の段階で会津地方に都ぶりを覚えた腕のいい仏師が大勢いたとは思えないし、
会津から人を遣って中央で修行させ、戻って来て彫らせるというのも
あり得ないことではないけど、一人二人では難しい気がするし、
4年5年でも難しい気がする。
最低5人を10年とか修行に出すのは、たとえ勝常寺(とか慧日寺)所属の仏師など
だとしてもけっこうな物入りではなかろうか。

が、勝常寺が相当にオカネモチだったらあり得ないことではないのかも。
徳一が藤原仲麻呂の息子だという説は今のところは伝説の類だろうが、
有力者の一族、あるいは東大寺、興福寺の関係者だとしたら、
宮古の仏師を呼び寄せる(移住させる)という可能性もなくはない。
今後何十年も続く寺、他にも寺を作っていくという意識があれば、
仏像はいくらでも必要になってくるわけだし。
やはり供給は自力で出来るようにしておきたい。

この辺の経緯が――まあ明確になることはおそらくないと思うが、
詳細がわかったら面白いのにな。

文殊菩薩もいくつもあってその違いが面白かったな。
安部文珠院で快慶作の文殊菩薩騎獅像を見たが。あの5人組はどこでもセットなんだね。
唐招提寺の文殊菩薩五尊像は獅子がどうみてもデカすぎて、笑ってしまったよ。
獅子の顏が菩薩の顏の10倍くらいあるんだもの。サイズ感は象ですな。

笑うといえば、忍性の彫像→肖像画の流れで見て、肖像を見た瞬間笑ってしまった。
彫像を見る限り、かなり人の良さそうな顔をしているのよ。
丸顔というか、おにぎり顔で鼻が丸くてでかい。
そしたら肖像画でも変わりなくデカい。彫像と肖像画はよく似てたから、
まさにああいう顔だったんだろうなあ。


というわけで、面白うございました。
他にもいろいろあって、見ごたえがあったなー。
東北歴史博物館のエキシビには期待できないという先入観があったが、
今回のこれはなかなか。今後も期待したい。
宮城県美術館も仙台市博物館も改修閉館で、頼みの綱はここしか……!

それにしても今回は今までになく混んでいた。
駐車場がほとんど埋まってるなんて初めての経験。
やはりブツは強いのか。鑑真像が強いのか。



コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« ◇ 門前典之「屍の命題(シノ... | トップ |  ◇ 辻由美「炎の女 シャト... »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿

◆美しいもの。」カテゴリの最新記事