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◇ 宮本百合子「伸子」(集英社日本文学全集35巻)

2023年04月29日 | ◇読んだ本の感想。
亡くなった叔父の蔵書であった日本文学全集を引き継ぎ、何十年もかけてちまちま
読んでいる。全88巻。
現在35巻目で、死ぬまで読み終わらないんじゃないかという観測が出て来つつ、
35巻目にして初めて、「これは面白い!」と思った作家に巡り合った。
(それまでの作家は感想さえ書く気にならなかったんだから推して知るべし)

宮本百合子。初作品。

「貧しき人々の群れ」「伸子」「風知草」が収録されていて、
最初の「貧しき人々の群れ」は、なんというか、地主のお嬢さんぶりが
鼻につきまくって好きになれなかったが。施しなんだよね、結局。
でも施しを滑稽に思えるように書いているんだから、本人はわかって書いているんだろう。

次の「伸子」で「新しい!」と思った。
1927年刊。宮本百合子20代後半。昭和2年。
わたしは明治から昭和初期までの日本文学はほとんど区別がつかないが、
宮本百合子は今までの34巻と違うと思った。清新。

日本文学の系譜は辛気臭い私小説が延々と続くので辟易するが、
これは他と違って登場人物が愚かではなく、そこまでベタベタすることもなく、
若いお嬢さんの生き生きした心情が描き出されている。

清新といっても離婚の話だから、夫婦は葛藤しているのだが、
それまでずーっと日本文学は、男が女にだらしない男を書き続けていたから、
この小説で初めて考え方に共感出来るものに出会った。
(そして次の36巻の滝井孝作←初耳。を読んで、先祖返りしたような辛気臭い私小説
だったので、本をぶん投げたくなった)

「伸子」の夫の佃が、今見ている「ア・ターブル~歴史のレシピを作ってたべる~」
というドラマに出ている中島渉で脳内再生されてたわー。
変に優しそうなところも。責任逃れをしそうなところも。こだわりが強そうなところも。
ものすごいハマると思う。実写にするとしたら。ならんだろうけど。

宮本百合子は思想が強い作家というイメージがあったから腰が引けていたが、
わりと後期に書かれている「風知草」も、特に思想小説なにおいはなく。
こういうのなら読めるなー。いずれもう少し読んでみる。


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