プラムフィールズ27番地。

本・映画・美術・仙台89ers・フィギュアスケートについての四方山話。

◆ 足立美術館展 横山大観、竹内栖鳳、華やかなる名品たち

2021年05月23日 | ◆美しいもの。
宮城県美術館にて、6月6日まで開催中。

数年前にようやく島根へ、足立美術館へ行ってきた。
その時は庭を見るのに集中してしまったので、
日本画をもっとちゃんと見れば良かったなという思いがあった。
見ようとしたけど体力が追い付かなかったんですよね。
(でも人が見過ごしがちな陶器はがんばって見てきたよ)

今回、足立美術館の日本画が来るというので、その後悔を取り戻せるかと
楽しみにしていた。


……が、ちょっと期待値が高すぎたかもね。
これは一線級とはいえない。二線級に、ちょこちょこ1.2線級、一級品がいくつか。
そんな感じでしょうか。

第一室が横山大観だったんだけど、この大観の質がいまいちでしたねえ……。
第一室が良くないとがっかりしてしまう。ここは配置が間違ったのではないか、
宮城県美術館。

大観は手垢がついてヤになってしまうほどの大家ですが、いくら大家でも
たいしたことのない作品はある。
特に大観はたくさん描いて、玉石混交な画家。それの石の方が来ている。

足立美術館にこの程度の作品しかないとは思えないから、
(さすがに現地でもっといいものを見たはず)
本宅を留守にするわけにはいかなかったということでしょうね。

うーん、今、作品リストを見てみても、大観の作品で思い出せるのは半分くらい。
かろうじて「十六羅漢」の、羅漢の顔を至近距離で見るとちょっと面白い。その程度。
あと、下村観山と描いたペアの掛け軸「巖上之両雄」(虎と鷹)の、
観山の方の岩の描き方が面白かったくらい……


来ている名前はスゴイんですよ。
菱田春草、川合玉堂、鏑木清方(これは佳品)、小林古径、前田青邨、
上村松園(これも佳品)、土田麦僊。
まあでもこの辺はおおむね二線級のものが来ていた。

それでもわたしが面白かったもの、好きだったものは、ないわけでもなくて。
とりあえず、見られて良かった!と思うA級は、

川端龍子「春雪譜」
大きくはない二曲一双の屏風で、デザインがなかなかにモダン。
全体の7割が雪の白で、その他は左上に雪解けから覗く土。
下部4分の1に雪が溶けた茶色い土の穴が5つ丸く描いてあって、そこから
ふきのとう・わらび・よもぎ・たんぽぽ……あ、5つめは植物じゃなくて鳥でした。
この5つが覗いている。土の部分が若干、扇面に見えて面白みがある。

植物はもう少し細かくというか繊細に描いた方が良かったように思えるけど。
ふきのとうだけは繊細だった。が、その他はぽてっとした描き方。
こういう描き方もありだけど、ふきのとうくらいに繊細な方が良かった。


安田靭彦「王昭君」
序盤で唯一、一線級だと思ったのがこれ。きちんと描かれている。
オレンジ色の頭巾の形が謎だったが。これはどういう頭巾かと思った。
松葉や植物がささってたしね。画家が想像で描いた頭巾のように思った。
考証はしてないだろうと予想。


竹内栖鳳「潮沙和暖」
小品ながら妙に気に入った一枚。さらっと描いたように見えるけど、
左上の小舟と漁師は極まってるし、海の色がきれいだしね。
右下の松をもう少し細かく描いた方が良かった気が……


山元春挙「瑞祥」
大きめの二曲一双の屏風。中国の架空の風景。画題は蓬莱山。
見ていて清々する。
わりとゴツゴツした風景だが、細かさとゴツゴツさがちょうどいい気がする。
何を表しているのか、何を表そうとしているのか、青い粒々が全面に散りばめられて
きれい。

すごく近づくと山中に豆粒のように描かれた人々に気づけて楽しい。
松の細かく描かれた姿が美しい。中景のかすんだ岩山も。

初耳の人だが、この作品が今回一番良かったかなー。
竹内栖鳳と並ぶ京都画壇の重鎮だったそうだ……。知らんなー。聞いたことなかった。
この人はきっと好きだわ。覚えておきたい。


他にちょっといいなと思ったのは、
川合玉堂「鵜養」……夜の雰囲気は出てないが、かがり火の煙の表現がすごい。
小茂田青樹「朝露」……朝顔とほおずき。水彩っぽい。いい意味で子どもっぽい。
前田青邨「山路之秋」……桜が可愛い。と思ったが、タイトルからして紅葉ですか?
竹内栖鳳「獅子」……代表作の「獅子」の掛け軸版。獅子のアップ。
          こういうアップで描いたのは珍しいのではないか。
伊藤小坡「一聲」……タイトルはホトトギスから。これも鼻先30センチで見て面白い絵。
橋本関雪「唐犬図」……これは代表作といってもいい出来。ボルゾイ。
           すごくきれいな絵なんだけど、出会いとまでは思えなかった。


でもまあ、久しぶりだったのでそれなりに熱心に見られたことは良かった。
会場に一歩足を踏み入れた時には「うぎゃあっ」と思い、
15分で見終わってしまうのではないかと恐れたが。

次は9月の「ランス美術館展」ですね。
早いとこ前売りを買っとかないと。そしてその前売りを無駄にしないように
ちゃんと行かないと。
中宮寺展、前売り無駄にしてしまったからなあ。


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