プラムフィールズ27番地。

本・映画・美術・仙台89ers・フィギュアスケートについての四方山話。

◆ 大航海時代へ マルコ・ポーロが開いた世界

2024年07月15日 | ◆美しいもの。
仙台市博物館で8月25日まで特別展開催中。

どうかなーと危ぶみながら行った。地味は地味だろうなと。
普段なら行かないかもしれないけど、何しろ宮城県美術館が長期閉館中ですからね。
というわけでハードルは下がっていた。それが良かった。

展示の仕方の勝利だったと思う。
最初にきれいなモノを見せてくれたんだよね。例の夜光杯っぽいのとか唐三彩のらくだとか。
見て楽しめるものを集めてくれたので、眺めて楽しい。入り込める。
これが最初から資料系を持ってこられてたら多分入り込めなかった。

次に古書ですかね。主に「東方見聞録」を数多く並べてくれた。
正直言って並んでいるだけではそこまで楽しくはないのだけれど、
系統を説明してくれていたのが興味深かった。
Wikiによると7系統に分かれるそうだね。そして最初期の系統は
たしか2系統×2代くらいあるらしく、しかもそれらは現物が残ってないらしい。
残ってないものの、系統はまだしも代目なんてどうやって判断するんだと思うが、
地道に研究してくれている人の存在に胸熱。

あと世界地図と。
こないだ読んだ地図の本が面白かった。
……よく考えてみれば、こないだでもなくて2年前だが。

歴史的な世界地図って面白いんですよね。現代の地図も面白いが。
だが、目の悪いわたしにはあの展示物の距離だと細かい文字が見えなくて興味半減。
もう少し手前に展示してくれないかといつも思う。
ガラスケース内の位置を変えてくれるだけでいいんですけどね。まあ多少は面倒だろうが。

「イタリア古写図」ってのがあって、1600年頃の制作となっていたけど、
この地図の正確性のレベルがすごかった。いや、こんなに詳しい?この年代に?
イグナシオ・モレイラ。Wikiによると、この人、ヴァリニャーノ、天正遣欧少年使節とともに
来日して、薩摩から京都まで踏破して地図を作ったらしいよ!
知らなかった!なんて面白い!……と思ったが、今回の弥助騒動でwikiの脆弱性が
目に見えてしまったので、残念ながらテンションが上がらない。

そしてその弥助ですが、展示物の中にも2、3弥助にかするものがあった。
「信長記」もあったから。江戸時代前期の写本だそうが。

わたしは「南蛮図屏風」を丁寧に見た。今回の弥助騒動の派生で。
大型の屏風で六曲一双。詳細は不明。賑わう港町の喧騒と異国船。
南蛮屏風は数々あれど、今回のエキシビのは天理参考館から来ているもの。

描かれた人数は300人超らしい。
その中で黒人と見える人物は30人弱かと見えた。装束は様々ではあるが、
300人のほとんどがきれいな衣装を着ている。その中で黒人のお洋服も普通におしゃれ。
船員は多分全部が黒人。ほかに荷物を持っている人々の割合は半分くらいだろうか。
いいお召し物を着て、商人かと見える黒人も多い。神父の一人が黒人であるように見えた。

この屏風の成立年代は17世紀らしい。場所が架空なのか、どこかの港町の風景なのか。
相当数の黒人が来日していたのは間違いない。それは当然だと思うが、
屏風の中の1割前後が黒人として描かれるのは、日本人と南蛮人の割合がおそらく
半々くらいだと考えると、かなり割合が高い。そこは意外だった。

それが現実を反映しているのか、それとも絵画的に取捨選択があったのかは不明。
多少の取捨選択があったと考える方が自然。
でもそこまで描き手がこだわった部分ではないだろうな。

弥助はここ10年くらいで知って、魅力的な存在だと思ったのに、今回の件で
完全にみそがついた。残念だ。
当該本もいずれ読もうと思っていたが。もう読む気にはならないだろう。
フラットには読めない。



エキシビはけっこう丁寧に見て1時間半くらいだろうか。
後半は説明文を読むのがメインになるから、字を読むのが好きではない人は
少々飽きるかもな。でも説明文は平明に書いてくれているし、実物があった上で
その説明だから説得力があって面白かった。

何にせよ、ハードルを上げすぎないことがエキシビを見る時のコツですね。


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◆ 仙台市博物館、再開後の初訪問。

2024年06月27日 | ◆美しいもの。
改修工事で長期休館後、ようやくの再開。
こういう時は一発目にどどーんと派手な特別展を持ってくるのがお約束……
のはずなのだが、地味ーな企画展でした。
お金ないんだろうねえ……
まあでも、学芸員一押しの一品というのがちょっと面白いかなと思って行ってみた。
偵察(?)を兼ねて。

外観は全然変わりません。当然ながら。
思ったより人が多くて意外だった。もちろん駐車場はすかすか程度だけれど、
意外に途切れなく(徒歩で)人が訪れている。
外国語が耳に入ったので、海外客も来ていそう。
一瞬「YOUは何しに仙台市博物館へ?」と訊きたく思ったが、
変な人だと思われるかもしれないと思って止めた。

中に入ると、ここも一見も変わりませんね。
左手奥の資料コーナー?が明るくなっていて、入りやすくなったように思う。
今まで入ったことないんだけど。そのうち入ってみるかもしれない。

常設展は、前半は変わってなかった気がする。記憶が頼りないが。
江戸時代後半以降、けっこう変えた気がする。前よりも見ごたえが出たと思う。
地図も多めになったかも。地元民は昔の地図を詳しく見ると面白い。
(展示が遠くて、細かい部分まで見えないのはつまらないけど)

学芸員さんたちのおすすめコーナーも面白かったが、そこまで印象に残ったものはなかった。
メモをとるほど感銘は受けなかった。今まで見たことがないものも半分くらいあったかな。

仙台藩お抱え絵師のなんだかっていう人を少しまとめて展示していた。
お抱え絵師は何人かいたようだし、前に誰だかのを見て面白かった記憶があるけど、
今回のはそこまででは。もう少しいい品物があると嬉しいが、残ってないんだろうな。

ミュージアムショップが以前よりも充実した。
かわいいもの・魅力的なものが増えた。が、そのせいか単価が全体的に上がっており、
安いものが好きなわたしはちょっと食指が動かない。
お香がまあ7、800円くらいからの品ぞろえなら買うかもしれないが、
1200円とか1680円とかだと手が出ないし、
一筆箋が660円とか800円とかじゃなかったかなあ。
半額とまでは言わないけれど、7割程度じゃないと買えない。

ミュージアムカフェは、モーツァルト系列が入ったようだ。
カフェ飯はコスパが悪いので食べたくない。
たくさんの量は求めてないが、下手にこじゃれるくらいなら、シンプルでいいから
1000円、せめて1200円で出して欲しい。
うーん、でも1200円でただのパスタ、ただのカレーは嫌かな。

あ、長年の懸案だったトイレはちゃんとなりました。
昔の建物だから、そういう部分が遅れがちなのは仕方なかったけど、
何年も前に水回りの工事をするといって何ヶ月か休み、しかしトイレはほとんど
改善されてなかった気がする。今回ようやく。
個室が増えて、混まなさそうですよ。ほぼ洋式だったと思うし。



次に一応「大航海時代」というエキシビが来るらしいが……
天理大学から所蔵品を借りてくるらしいので、そこまでどーんとした
規模の大きいエキシビではなさそう。一応行くかねえ。入場料控えめだし。


派手な企画を立ち上げるほどお金がないのか?
どっか巡回してくれる手ごろなエキシビはないんだろうか。
現時点でのスケジュールに目玉の特別展が登場してないということは、
今年度、少なくとも今年中は特になさそう。
やって欲しいんだよなー。100万超えの政令指定都市の市立博物館だもの。

噂で聞いた話だと、ここには月島蛍が就職するらしい。
ヤツの独特の感性で面白いエキシビを組んで欲しいですけどね。
アイディアということなら、「月島蛍がオーディオガイドで説明する●●」という
エキシビを行なえば、そこそこ数は来そうな気がするけど。
あんまりのっかっちゃうのもちょっと嫌味ですか。

大手門の復元に予算が持っていかれてるというのなら仕方がないとあきらめる。
そうでないんなら、学芸員のみなさんは、もそっと派手な企画を実現してほしい。




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◆ 世界遺産 大シルクロード展

2024年05月11日 | ◆美しいもの。
北歴史博物館で6月9日まで開催中。


よくやった、東北歴史博物館!すごくいいエキシビだったよ!見ごたえあった!
――いやー、正直、東北歴史博物館のエキシビには一抹の不安があるのよ。
一抹の不安というか、もっとはっきりいえば信用していない。
せっかく行っても、いまいち見ごたえがなかったりするんだよなあ。

しかし喜んでください!今回のエキシビはとてもいいエキシビです!
宮城県美術館が長期休業中、仙台市博物館は長期休業がようやく明けたというのに
初っ端が企画展でショボイ、というなか、唯一の希望。

品数もいっぱい来てたし、サイズは比較的小さめだったけれども、全然不満はなかった。
そして歴史系を基本としつつ、美術系の展示もけっこう来ていた。
仏像とかアクセサリーとか金細工とか織物とか。アリガタイ。目の保養が出来た。



印象に残って写真を撮ってきたのは20個くらい。
そのなかで特にすばらしいと思ったものを。

「半人半馬像および武人像壁掛」
これは一目見て驚いたね。この立体感は一体どうしたことだ!?
むしろルネサンス以降の写実性を感じる。いただろうと思うもの、こういう人。
若い頃のヒュー・グラントをお相撲さん体型にしたような。
半人半馬像はつまりはケンタウルスだしねえ。いかにも西域の風貌。
ウイグル自治区、紀元前後2世紀。こういう東と西の間の歴史にはロマンがある。

「耳環 北魏5世紀」
緑のトルコ石とピンクの石がとても細かいアーガイル風な模様にデザインされていて、
これは現代でも十分通用するモチーフだと思う。可愛い。

「水晶の垂飾」
うす青い水晶のペンダントトップ。深い湖の水をそのまま固めたような美しい色。
これも現代で通用するなあ。お値打ち価格で売っていたら欲しいもの。

「吐蕃の金製飾り3点」
一番左の直径5センチくらいのブローチ?の粒金が細かくて!
たしかアイルランドのケルト文化の金製品の粒金が細かくて驚いた記憶があるが、
それよりも細かい。芥子粒みたいなサイズ。芥子粒ってあれですよ、
あんぱんについてたりするあれですよ。
真ん中の四角いブローチも素敵。細かくひし形の色石をつないで、2人の人物像を
マッチ棒人間みたいなデザインにしている。宇宙人みたいで可愛い。

「六花形脚付杯 唐8世紀」
スペインの金の象嵌細工を思わせるデザイン。精緻な狩猟図。
これもくれるものなら欲しい。

「莫高窟第57窟南壁の阿弥陀仏説法図 模写」
現代の画家による模写。これが現代画家のせいか、特に左側の観音が現代的で繊細で美しい。
淡いパステル調の色彩。あまり壁画でこういう色は見たことない気がする。

「菩薩像頭部 北魏6世紀」
飛鳥大仏の遠いこだまを聴くような造型。笑っている波目が可愛いのか怖いのか……



他に、唐三彩の数々の展示品。
レンガのごときセンの数々。
織物系は色彩もデザインも美しいものが多かった。
楽器のミニチュアも良かった。
ソグド文字の文書は、右から左に書かれていると説明されていたが、これって縦書きなの……?


会場は若干混んでいたけど、見られないほどではなく。
いや、いいものを見せてもらいました。満足満足。
願わくば次もこのレベルのエキシビを見せてくれんことを。

ちなみに次のエキシビは「和食」、
次の次のエキシビは「多賀城1300年」。
どうなりますか。

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◆ 伊達政宗と杜の都・仙台 -仙台市博物館の名品-

2023年06月19日 | ◆美しいもの。
いかにも仙台市博物館っぽいチラシのビジュアルだが、宮城県美術館のエキシビ。
でもこれ、うっかり仙台市博物館に行った人、一人くらいいそうですよ。
まあ現在仙台市博物館は改修工事のため長期休業中。
再開は来年4月です。

そして宮城県美術館の今回のエキシビを最後に改修工事のための長期休業に入ります。
再開は平成7年度中予定。というわけで見納めに行ってきました。


まあエキシビの内容自体はね。わりと見たことがあるものも多いしね。
6、7割は何度も見たもの。名品だから当然だね。予想範囲内なのでさくさく見た。

見たことがなくて面白かったのは、仙台城下絵図の類。
見てるのもあるかもしれないけど、多分お初なのが多かった。
黒地が多い絵図はなかなか珍しいんじゃない?

あと、侍屋敷の住人の名前までびっしり書いてあったのが面白かったなあ。
ほんとーに侍が多かったんだね!今まで、現在の商業地は町人が住んでいるところ、
大町から青葉城にかけて侍屋敷が林立、だと思っていたが実は違うようです。
芭蕉の辻や、そこから伸びる道沿いだけが町屋敷で、その裏はびっしり侍屋敷なの。
だから、国分町通りの両側は町屋敷だけど、今の一番町なんかはずっと侍屋敷。

仙台藩は侍の比率が他より高かったという記憶がある。あやふやだけど。
あれだけ侍屋敷ばっかりだと、時代劇のイメージとはだいぶ違うなあ。
江戸の町は町人が元気だったイメージだけど、仙台はだいぶ侍が威張ってたんじゃないか。
仙台商人という言葉もあるのだから、商業が低調だったとは思わないけど。

あとは遠藤速雄という人の「宮城十二景図屏風」。
これは大正期の作品だそうだから、普通に美術品ですな。普通にいい日本画。
十二景、控えてくればよかったな。


そして常設展では「リニューアル直前!宮城県美術館の名品勢ぞろい!」
という企画をやっていました。これも基本的には見たのばっかり。

が、山脇百合子という絵本作家?挿絵画家?の原画がかなりたっぷりあって、
これは初めて見て、すごく面白かった。「ぐりとぐら」って日本人作なんですね!
海外物かと。わたしは絵本のジャンルってかなり弱点なんですよね。ほぼ無知。

でもいい絵だったー。
すごく画力がある気はしない。美術的な訓練はほぼ受けてない人だと思う。
だが、だからこそなのかもしれないが、たどたどしくてそれが味なんだよなー。
線があったかいの。色もきれいだし。楽しく見ました。

わたしは近現代の洋画のジャンルは好きじゃなくて、
宮城県美術館のコレクションはけっこうみんなキライ。
今回出てたので好きなのは……そうねえ、藤田嗣治の「横たわる貴婦人」、
カンディンスキーの「商人たちの到着」くらいだろうか。

本当は川端龍子の「和暖」を見たかったんだよ。
宮城県美術館所蔵で一番好きな絵。出してくれなかった!不満。


そして久しぶりに佐藤忠良館もさらっと見て。
アリスの庭の彫刻たちにも挨拶して。
しばらく会えないけど、ずっと元気でいて下さい。

移転の話がなくなり、改修になったわけだからほとんど変化なく直してくれる
物だと思っているが、唯一北側の庭だけはもう少し何とかしてもいい気がする。
前から思っているんだけど、あそこのデザインはイマイチな気がするのよねー。
動線もちょっと変だし、だから人が行かないんだよ。
奥まっているとはいえ立地的にはすごくいいんだから、
もっと上質な空間を目指してください。

またね。宮城県美術館。




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◆ 東日本大震災復興祈念 悠久の絆 奈良・東北のみほとけ展

2023年05月20日 | ◆美しいもの。
6月11日まで東北歴史博物館にて開催中。

いや、見ごたえのあるエキシビでした。ブツ展もひさしぶりだなあ。
ブツを見るなら奈良へ行くのが一番手っ取り早いが、地元でこういう良質な
ブツを見せてくれるのは大変ありがたい。

全部ではないけど、奈良は唐招提寺の仏像が多め。
鑑真像が来ているからね。鑑真像はホームグラウンドである唐招提寺御影堂だと
特別公開として年に3日しか見られないが、そのわりにあちこちに出張は多く、
わたしも少なくとも仙台市博物館で1回見ているし、
今回も来てるし、ずっと昔にどこかでもう1回見ている気がする。

芸能人のコンサートに行っても本人にはほぼ会えない(こちらが一方的に見るだけ)が
どこかで偶然会うと気軽に口が利ける状況に似ている。
そんなシチュエーションになったことは一度もないが。
まあそんなことはいい。

東北のみほとけ展、というからみちのく仏ががんがん出て来るんだろうと思ったら
メインは勝常寺の薬師三尊でした。岩手県の地仏は全然なし。意外。

あとは仙台市の十八夜観世音堂の観音像、
山形の宝積院の十一面観音像、
宮城・龍宝寺の清凉寺式釈迦如来像、
名取の新宮寺の文殊菩薩五尊像、
福島・新宮熊野神社の文殊菩騎獅像、
他にもうちょっとあったけど、このくらい。

清凉寺式って字面だけはよく見ていたけど、実際に見たのは初めてかもしれん。
うーん、これは特徴的だねえ。異端的にまで見えるという意味では
あれに似ている。あれ。……あ、あのアマルナ美術。
そしてガンダーラ美術も思い出した。ガンダーラ美術はギリシャ的なとても端正な作風なので、
清凉寺式の定型化とは全然似ていないと思うけれども。

それにしても勝常寺の薬師三尊はいいですねえ。これも三度目くらいな気がする。
一度目は現地で。他にみちのく仏のエキシビで見たな。
これは一体どんな来歴の仏なのか……。

感じる部分でいえば、絶対中央の造型だと感じる。
だが、書いてあったところによると使用材はケヤキ。ケヤキは東北で使われることの
多い材だという。中央にはまったく使用例がないのかは知らない。
もし中央で使われない材だとすれば、地元で作ったことになるが……

徳一法師の創建だという寺伝に従えば、個人的な関係で中央出身の仏師を
現地まで来させて作らせることは不可能ではないと思う。
9世紀の段階で会津地方に都ぶりを覚えた腕のいい仏師が大勢いたとは思えないし、
会津から人を遣って中央で修行させ、戻って来て彫らせるというのも
あり得ないことではないけど、一人二人では難しい気がするし、
4年5年でも難しい気がする。
最低5人を10年とか修行に出すのは、たとえ勝常寺(とか慧日寺)所属の仏師など
だとしてもけっこうな物入りではなかろうか。

が、勝常寺が相当にオカネモチだったらあり得ないことではないのかも。
徳一が藤原仲麻呂の息子だという説は今のところは伝説の類だろうが、
有力者の一族、あるいは東大寺、興福寺の関係者だとしたら、
宮古の仏師を呼び寄せる(移住させる)という可能性もなくはない。
今後何十年も続く寺、他にも寺を作っていくという意識があれば、
仏像はいくらでも必要になってくるわけだし。
やはり供給は自力で出来るようにしておきたい。

この辺の経緯が――まあ明確になることはおそらくないと思うが、
詳細がわかったら面白いのにな。

文殊菩薩もいくつもあってその違いが面白かったな。
安部文珠院で快慶作の文殊菩薩騎獅像を見たが。あの5人組はどこでもセットなんだね。
唐招提寺の文殊菩薩五尊像は獅子がどうみてもデカすぎて、笑ってしまったよ。
獅子の顏が菩薩の顏の10倍くらいあるんだもの。サイズ感は象ですな。

笑うといえば、忍性の彫像→肖像画の流れで見て、肖像を見た瞬間笑ってしまった。
彫像を見る限り、かなり人の良さそうな顔をしているのよ。
丸顔というか、おにぎり顔で鼻が丸くてでかい。
そしたら肖像画でも変わりなくデカい。彫像と肖像画はよく似てたから、
まさにああいう顔だったんだろうなあ。


というわけで、面白うございました。
他にもいろいろあって、見ごたえがあったなー。
東北歴史博物館のエキシビには期待できないという先入観があったが、
今回のこれはなかなか。今後も期待したい。
宮城県美術館も仙台市博物館も改修閉館で、頼みの綱はここしか……!

それにしても今回は今までになく混んでいた。
駐車場がほとんど埋まってるなんて初めての経験。
やはりブツは強いのか。鑑真像が強いのか。



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◆ カメイ美術館 花の絵画展

2023年05月14日 | ◆美しいもの。


10年ぶりくらいにカメイ美術館に行ってきました。人生2度目。
場所は行きやすいんですけどね。でも車で行くところじゃないと、結局足が遠のく。
まあ車で行くところも、行かないところは行かないんですけど。
特別展が「花の絵画展」というのに惹かれて行って来た。
まあそれほど規模は大きくないだろうとは思ったけど。

カメイ美術館は常設展が蝶の標本メインで、こけしがサブというカメイの創業者の
趣味全開の美術館。それに小さい特別展を合わせて展示していることが多いよう。

まあ「花の特別展」は想像通りの規模感。大作はないね。
スペース的にも大きめの展示室1室だけだから、ん-、何枚くらいかなあ、
50枚くらいあったかなあ。
展示作家が32人。だいたい1人1枚が基本で、何人かが3枚くらいあった気がするから、
40枚くらいなのかな。

小さい美術館の特別展でよくあることなんだけど、作品リストを作ってくれないのよね。
エクセルでいいから、作家と作品名と制作年くらい表にしてくれるといいんだけどね。

でも全体的にみんな好きな方の絵だったので眺めて楽しかった。

三岸節子の「花(ヴェロンにて)」はこってり厚塗りの黄色い花。好き。
千住博の夜の桜の絵。サイズ的にも売り絵だろうが、細かく丁寧に描いてて、
どんな筆を使ったらこういう表現が出来るんだろうなあ。買って飾りたいような絵。
ヴラマンクが3枚あって、かなり普通の花。3枚とも良かったな。赤の色が印象的。
李エン(エンの字は火が3つ)という人のハスの花の絵2枚と、
にじみを利用した木の絵が良かった。

いいですね。花の絵はね。難しいこと考えなくてもきれいだしね。

最近実作を始めたので(というほどのことはない。すぐに飽きると思う。
なにせわたしは驚くべき画伯だから)絵の見方ががらりと変わった。
どんな描き方をしているか、どんな色を使っているか、それを参考に出来るか、
という観点から見るようになって、なんか邪道な気がする。
前は絵の全体と向き合えたのに。部分をしか見れなくなっている。


あ、そうそう。忘れる所だったが、この美術館のメインは何といっても蝶の標本。
何しろ数がすごいからね!標本箱がいくつあるか、概算で数えてみようとして
それがめんどくさくなるほどたくさんあるからね!

パンフレットには亀井文蔵のコレクションの中から選んだ4000種・14000頭
(蝶は「頭」で数えるんですよ。知ってましたか?わたしは忘れていつも
「匹」といってしまうが)を展示していると書いてある。

40センチ内外の長方形の標本箱が、およそ400……くらいあるんじゃないですかねえ。
1箱5秒で見るとしても、30分かかる計算になります。

蝶に興味がある人は少ないと思う――特に標本には。
しかしそういう人が行っても楽しめます。
わたしもね。前に行った時には「蝶の標本なんか見てもしょうがないよなあ……」と
思っていたの。そりゃきれいだろうけど。でもいくら見ても蝶は単に蝶でしょ?

でも思っていたのと違った。わたしは蝶というより、手仕事の――自然の手仕事の
美ととらえた。丹念に作られた職人の手仕事の精緻さがある。
神の手がちまちまと作る自然の美。これをたくさん、手軽に一ヶ所で眺められる。

不思議に飽きませんよ。最終場所で分類されているとはいえ、
蝶はけっこうあちこちで似たような模様が発達するらしく、
たくさん見てもそこまでバリエーションが豊かではない。
それでも見てて飽きない。ここは不思議なところ。見て欲しい。

10年前に行った時はこんな感じ。https://blog.goo.ne.jp/uraraka-umeko/e/1325f56adf3d290217cfa2dd4020c108


蝶にしてもこけしにしても、自分の趣味を公開する場所を作れたんだから
亀井文蔵という人は幸せな人だね。
地元じゃない人のために付言しておくと、この人は地元の有力企業の創業者で、
まあ社長さんが作った道楽の美術館。
でもそれをわたしたちにも楽しめるようにしてくれたことにはやはり感謝したい。

――というわけで、島川美術館ももう少し力を入れて公開してくれないかね。
コロナ禍下の閉館は仕方ないと思うけど、この春のタイミングで今年度の営業は
見送るなんて言われると、結局公開はどうでも良くて、単に節税対策でしか
ないんじゃないかとがっかりする。

まあ絵画蒐集は趣味としても、その公開にはお金がかかり、会社の利益の話なので
クレクレもずうずうしい話かもしれないが、せっかく街なかに立派な美術館も
作ったんじゃないですか。
仙台市博物館も宮城県美術館も閉館するタイミングで島川美術館あたりに
がんばってもらわないと困る。
がんばって営業してください。いい絵がたくさんあるんだから。見たいんです。
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◆ 美をつくし 大阪市立美術館コレクション

2023年05月05日 | ◆美しいもの。
これは初見で読める人と読めない人がいると思うが、「みをつくし」です。
みおつくし=本来は「澪標」で、海の浅瀬に設置された目印。水路標識。多くの場合杭。
大阪にだけあるわけではないけど、主に難波の縁語で、
昔の和歌には「身を尽くし」との掛詞で多用される。
大阪市立美術館のエキシビ名としてかなりこじゃれていると感じる。


わびぬれば今はた同じ 難波なるみをつくしても逢わむとぞ思ふ 

                          元良親王・百人一首

――と、学を披露したのはいいのだが、原義は「澪つ串」であることは初耳だった。
串だったのか。ううむ。ちなみに「澪」は浅瀬のなかで船の航行が可能な
比較的深い部分のこと。


県美のコーヒーショップがある方、本館と佐藤忠良館を結ぶ通路に、
各所の美術館の特別展ポスターが貼ってあるコーナーがある。
近くの場合もあるけど、九州など遠方の美術館のポスターもあり、
実用の情報かというとそうでもない。見て、あ、このエキシビいいなと思っても
遠くの美術館まで出かけていけるかというとそうはいかないですからね。

今回のポスターも、大阪市立美術館かあ……遠いなあ……と思いながら
通り過ぎようとしたら、福島県立美術館と書いてあることに気づいた。
おや。福島県立美術館でやるの?行けるじゃん。
とはいえ、今までわざわざ行ったことは1度しかないのだが(多分ワイエス展)、
ちょうど福島へ行きたいと思っていたこともあり、出かけてみることにした。


実は今回、写真撮影可だったんですよねー。
そしてけっこういい作品が多かったから、半分以上が撮りたい作品になってしまって。
そうすると絵を見るのではなく、絵を撮る方に気持ちがいって集中出来ない。
第一展示室の半分くらいでそれに気づいて、まず良さそうなのをある程度まとめて
撮ってから最初に戻って見るようにした。


日本画のいいのが見られるのは久しぶり。
約1年半前の「宮内庁三の丸尚蔵館所蔵 皇室の名品展 皇室の美-東北ゆかりの品々」
以来だ。これはランス美術館展の併設のエキシビだったが、ランス美術館展より
はるかに見応えがあった。


みんな良かったんだよなー。
撮った作品が18。いずれも佳品でいくつかに絞り切れない。
18も並べるのは大変だが、……並べてみようか。

佐伯祐三「教会」――ブラマンクから怒られて凹んでいた時期の作らしい。
村山槐多「自画像」――結核性肺炎と診断された後の自画像。「血の色」と名付けた
      ガランス色の多用。22歳で死んだのか……。名前はよく聞く作家だったが。
今村紫紅「業平東下り」――馬の顔が気に入った。少し情けないの。

橋本関雪「唐犬」――これは有名ですね。きれいな犬。頭を下げた犬が気になる。
児玉希望「枯野」――わさわさと描き込んでいるがぜんぜんうるさくない。秋の草花が美しい。
小野竹喬「秋陽(しゅうよう)」――グラデーションの美。真似したくなる。

上村松園「晩秋」――鏑木清方の「築地明石町」を思い出した。
          描かれた行為そのものからして日本の美だなあ。
北野恒富「星」――今一つ顔が上手くない画家に見えたが、雰囲気はいい。
島成園「伽羅の薫」――怪しくていいねえ。赤と白。孔雀。

堂本印象「如意輪観音」――こってりとした印象のあった堂本印象。ピンク色が美しい。
狩野派「四季花鳥図屏風」――かなり出来のいい花鳥図。こういうのをはべらかしたい。
関蓑洲「象図屏風」――象はほとんど見てない。表装の更紗模様が気に入った。

原在中「百鬼夜行図」――すっごくマンガ。鳥獣戯画を超えて面白い。
「十大弟子像頭部」――奈良時代。これ、佐藤忠良展とかにあっても全然違和感ないな。
「銅製湯瓶(とうびょう)」――鎌倉時代の水差し。工業製品のような安定の線。

「銀鍍金透彫 宝相華文経箱」――すっごい透かし彫り。南北朝時代。
それから根付のいいヤツいくつか。

……だが写真を撮って来るとそれで安心してしまって、全然作品に対する言葉が浮かばない。
やはり写真なしでじっくりと見た方が正しいんだろうな。
まあこの時は時間もなかったし。

混雑を避けようとして15時を狙って行って、遅れて15時半に着いたらほんと人が少なくて
ゆっくりと見られた。が、常設展も見なきゃいけないから、エキシビは1時間強。
思ったよりも作品数も多かったので、けっこう駆け足。
常設展は15分くらいで文字通り駆け足。ほとんど見たとは言えない。
14時半頃着ければベストだったかな。


まあとにかく粒ぞろいで良かった。大作がどーん!とまでではなかったけど、
佳品がたくさん来ていた。いいと思わない作品がほとんどなかった。
いいものを見せてもらった。大阪からわざわざ来てくれてありがとう。


福島県美術館も改修で長期休業に入るとどこかで見たような気がしたが、
その情報が見当たらない……。何も宮城県美術館、仙台市立博物館が長期休業中の
この時期に合わせることもなかろうと思ったが、自治体が違うんだから仕方ない。
仙台市と宮城県でさえ合わせられないんだから。





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◆ フェルメールと17世紀オランダ絵画展

2022年11月20日 | ◆美しいもの。
うーん。期待値よりかなり下だったなあ。

とにかく初めのパートに迫力がないよね。
とにかくね。こういうありがちな、曇り空の森みたいなのばっかり見てても
愉しくないんじゃ!この類は美術館の保管庫の奥深くにしまい込んで
外に出さないでいただきたい!

……などと乱暴なことを言ってますが、この類は全欧的に数がありすぎる。
せっかくお高い運賃と手間と保険料をかけて貸し出してくれるなら、
もう少し点数を少なくしてもいいから、似たようなのばっかりは止めて欲しい。
まあこういうの好きな人もいるかもしれないけど。

ありがちといえばありがちなんだよねー。
これは数合わせのために相手方から押し付けられたバーターなのではないかと思う。
根拠は全くないけれども。


正直、鑑賞時間は30分でいいかなという感じだった。
だが1000円以上も出して30分しか見ないというのももったいないという
貧乏性が発動して、ちょっと良かった絵を何回も見た。
そしたら1時間を大幅に越した。この時間感覚は謎だった。

とにかく見た甲斐があったのは2枚のみ!



ミヒール・ファン・ミーレフェルト「女の肖像」
自慢じゃないけど知らない画家だ。だがとてもきれいな肖像画。
三十前後の貴族の女。円形の大仰なレース襟とオランダ貴族の制服ともいうべき黒い服。
そのレースと布地の模様が達者。
いいと思うのはその眼差し。聡明そうな、まっすぐに見つめる瞳に惚れる。
目の清々しさ。

フェルメール「窓辺で手紙を読む女」
窓辺の柔らかい光を浴びる女をフェルメールは数多く描いている。
その中で、中の上くらいの作品だろうか。
とにかくわたしが惜しいと思ったのは、服のデザインですね。
この袖の黒部分が白いデザインだったら、その拡散された光が、
白を柔らかく輝かせたろうに。

フェルメールは見たままをしか描けない画家だったのだと思う。
絵の効果を計算して服のデザインを適宜変える、という技は使えなかっただろう。
そうでなければ何度も何度も同じ服を描くとは思わない。例の白テンのガウン。

この絵の最大の見どころは赤いベッドカバー。いかにもぽってりと厚く温かそうで、
質感が見事に出ている。その上にこぼれている果実が、なぜここにあるかは不明だが。
手紙の緊急性(心理的な)を表しているのか?

ガラスへの顏の映り込みは本物を見たからこそ目に留まった部分かと思う。
画集では気づけなかっただろう。
なお、フェルメールのこの作品をかなりの精度で模写している
ベントフェルトなる人の作品もあって、こちらにもちゃんと映り込みは
再現されていました。


あとは……ちょっと目に留まったのは、
レオナールト・ブラーメル「神殿で祈るソロモン王」
(切り絵的に盛り上がったマチエール)
アーレント・デ・ヘルデル「槍を持つ男」
(顔部分はぼやけているのに、槍の装飾部分のみ精密。
ピントが合っていると感じたので、カメラ・オブスクラを利用している?と思った)
レンブラントの「若きサスキアの肖像」も来てたけど、
これはそんなんでもないレンブラント。魔女的な笑いを浮かべる。


まあとにかくミーレフェルトとフェルメールのみでした。
でもこの2枚を見ることが出来たのは嬉しいので、行って良かった。
混んでましたね。近年になく。
もう少し空いているところで見られたらもう少し印象が良かったかも。


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◆ ランス美術館コレクション 風景画のはじまり コローから印象派へ

2021年10月09日 | ◆美しいもの。
宮城県美術館で11月7日まで開催中。

……うーん。期待値はそれほど高くはなかった。まあ予想通りだったとは思う。
しかしせっかくはるばるフランスから借りて来るのなら、
もう少しラインナップを工夫した方がいいんじゃないかね?

コローが16枚来ている。これがメイン。
まあコローも有名といえる画家だし、それが16枚来てるのならそれなりに……
とは思ったのだが、あんなに似たような絵ばっかり持ってきても仕方なかろう。

フォンテーヌブローの森。
木と野原と時々川、という描いてあるものは変わらないし、
光はほぼ曇りの夕方の薄暗い光だし、色調が変わらない。
一枚一枚は小品ながら佳品やそれに準ずるものだが、
それを16枚並べられてもねえ……

全部の絵が、まあこれなら壁に飾れるかなと思う出来なのだが、
壁に飾れる程度ということは一枚で鑑賞するインパクトはないわけです。
これで展示会は退屈。


ブーダンは多少良かった。7枚。
しかし個別認識が出来るほどの一枚はなく。

ルノワールやモネも1枚2枚来てるんだけど、当然ザ・モネというクラスではなく。
ピサロが若干ピサロだった以外は、モネを見た!という気もしない。

会場を通り過ぎるだけでいいかなというレベルだった。30分。
まあ元を取ろうという貧乏性な意識も働いて、それでも1時間弱かな。

そんななかで、スタニスラス・レピーヌという画家の2枚は良かった。
くれるというならこの人の絵を貰って帰る。多分くれるとはいわないだろうけど。
色合いが地味な来展絵画の中で、珍しく光あふれる絵だったということが
目を惹いたのかもしれないが、絵に優しみがあるんだよなー。
わたしはモネとピサロとシスレーを兄弟として扱っているが(←謎)、
この人は彼らの大叔父様という感じだ。覚えておきたい。

そしてレオ・ドルーアンという人のエッチング。
版画はそんなに興味がないのだが、この人は白黒で、光を感じる絵だった。
タイトルは「ジロンド、ラカノー沼」。
画家の版画はラフスケッチみたいな作品も多い気がするが、丁寧だった。


――が、ランス美術館は前座だ!


※※※※※※※※※※※※


今回のエキシビはむしろ、同時開催の

◆ 宮内庁三の丸尚蔵館所蔵 皇室の名品展 皇室の美-東北ゆかりの品々

こっちの方が見応えがあるのではないか。
前売チケットを買った時はこっちに期待をしていたはずだが、忘れていた。

点数はそこまで来ていないんだけどね。
いつも常設展をしている部屋を2つ分使ったくらい。
でもいいものを数点――10点くらい見られたので満足感が高かった。

なによりもまず、最初に渡されたパンフレットに大変お得な気分になった。

カタログというのは大げさだが、フルカラー24ページは見たことのない充実ぶり。
全点――むしろ入れ替えする絵も載っているから、実際見られる絵以上――掲載。
うれしいわあ~。きれいですもん。



〇皇室ボンボニエール

ちらっとしか見たことがなかったから、10個まとめて見られたのは重畳。
前から見たいと思っていた。
全体的に思ったよりも地味。もっと華やかなものを想像していた。
おおむね銀細工、そこに菊の御紋を金で象嵌するというデザインが多かった。

10個のうち、貝桶型が可愛かったな。鉾型はボンボニエールという名称からは
かけ離れている気が……
「砂糖菓子入れ」というイメージからくるふわふわしたものじゃなくて、
もっとごつい。むしろ文房具の何かみたいな感じ。


〇円山応挙「群獣図屏風」

かなり大きな屏風。最初から宮中からの依頼で描いたそうだから、力が入ったろう。
右隻の、こっちを見ている犬の目が可愛くてねえ。優しいの。

カタログでは気にならないんだけど、実際に見ると松や杉を描きこまない方が
良かったんじゃないかなと感じた。
木が描いてあると「木」と「動物」という風に捉えてしまって、
動物が塊になってしまう。
木がなければ動物をもっと個々の意識をもって見られたんじゃないかな。

しかしよく見ると木にも栗鼠とか猿とか描いてあって、まあこれはしょうがないのか。
応挙は上手いですよね。動物も。


〇瀧 和亭(たき かてい)「花鳥之図」

かなり大きい三幅一組の掛け軸。掛け軸としては最大サイズかも。
花は良かった。鳥がサイズに対してわずかに迫力に欠けるかと感じた。
でも良かったですよ。ザ・花鳥画ですな。


〇土田麦僊「罌粟」

これも大きめの軸。日本画だけど、リトグラフのようなグラデーションの色合い。
茎と葉の線が細いのは狙っているのだろうけど、花だけが浮き上がることに
なるので、それを画家はどう考えているのだろうかと思った。
すごくきれいな絵。


〇前田青邨「唐獅子」

なんかスゴイ。という第一印象。
こんなデカイ屏風でこんなマンガ的な絵柄というのは珍しい。
前田青邨ってこんな画風の画家でしたっけ?

唐獅子、ユーモラスで愛らしいですね。
線が太いんだけど、線自体に濃淡をつけてあまり印象が強くなりすぎないように
工夫をしている。


〇東山魁夷「萬緑新」

ザ・東山魁夷。白馬は出て来ないけれども。
昭和天皇夫妻が新婚時代に訪れた猪苗代湖の風景だそうだ。
心が落ち着く絵。


他に洋画とか小彫刻なんかもあったけど、わたしの嗜好が日本画なので
日本画ばっかり並びました。久々にいい日本画が見られて幸せ。
めでたし。


パンフレットに載っている絵で、

平福百穂「玉柏」
寺崎廣業「秋景山水」
西村五雲「秋茄子」

も見たかったなあ。入れ替えするんだろう。
しかしこの3枚のために1500円出してもう1回行く気にはならない。



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◆ 足立美術館展 横山大観、竹内栖鳳、華やかなる名品たち

2021年05月23日 | ◆美しいもの。
宮城県美術館にて、6月6日まで開催中。

数年前にようやく島根へ、足立美術館へ行ってきた。
その時は庭を見るのに集中してしまったので、
日本画をもっとちゃんと見れば良かったなという思いがあった。
見ようとしたけど体力が追い付かなかったんですよね。
(でも人が見過ごしがちな陶器はがんばって見てきたよ)

今回、足立美術館の日本画が来るというので、その後悔を取り戻せるかと
楽しみにしていた。


……が、ちょっと期待値が高すぎたかもね。
これは一線級とはいえない。二線級に、ちょこちょこ1.2線級、一級品がいくつか。
そんな感じでしょうか。

第一室が横山大観だったんだけど、この大観の質がいまいちでしたねえ……。
第一室が良くないとがっかりしてしまう。ここは配置が間違ったのではないか、
宮城県美術館。

大観は手垢がついてヤになってしまうほどの大家ですが、いくら大家でも
たいしたことのない作品はある。
特に大観はたくさん描いて、玉石混交な画家。それの石の方が来ている。

足立美術館にこの程度の作品しかないとは思えないから、
(さすがに現地でもっといいものを見たはず)
本宅を留守にするわけにはいかなかったということでしょうね。

うーん、今、作品リストを見てみても、大観の作品で思い出せるのは半分くらい。
かろうじて「十六羅漢」の、羅漢の顔を至近距離で見るとちょっと面白い。その程度。
あと、下村観山と描いたペアの掛け軸「巖上之両雄」(虎と鷹)の、
観山の方の岩の描き方が面白かったくらい……


来ている名前はスゴイんですよ。
菱田春草、川合玉堂、鏑木清方(これは佳品)、小林古径、前田青邨、
上村松園(これも佳品)、土田麦僊。
まあでもこの辺はおおむね二線級のものが来ていた。

それでもわたしが面白かったもの、好きだったものは、ないわけでもなくて。
とりあえず、見られて良かった!と思うA級は、

川端龍子「春雪譜」
大きくはない二曲一双の屏風で、デザインがなかなかにモダン。
全体の7割が雪の白で、その他は左上に雪解けから覗く土。
下部4分の1に雪が溶けた茶色い土の穴が5つ丸く描いてあって、そこから
ふきのとう・わらび・よもぎ・たんぽぽ……あ、5つめは植物じゃなくて鳥でした。
この5つが覗いている。土の部分が若干、扇面に見えて面白みがある。

植物はもう少し細かくというか繊細に描いた方が良かったように思えるけど。
ふきのとうだけは繊細だった。が、その他はぽてっとした描き方。
こういう描き方もありだけど、ふきのとうくらいに繊細な方が良かった。


安田靭彦「王昭君」
序盤で唯一、一線級だと思ったのがこれ。きちんと描かれている。
オレンジ色の頭巾の形が謎だったが。これはどういう頭巾かと思った。
松葉や植物がささってたしね。画家が想像で描いた頭巾のように思った。
考証はしてないだろうと予想。


竹内栖鳳「潮沙和暖」
小品ながら妙に気に入った一枚。さらっと描いたように見えるけど、
左上の小舟と漁師は極まってるし、海の色がきれいだしね。
右下の松をもう少し細かく描いた方が良かった気が……


山元春挙「瑞祥」
大きめの二曲一双の屏風。中国の架空の風景。画題は蓬莱山。
見ていて清々する。
わりとゴツゴツした風景だが、細かさとゴツゴツさがちょうどいい気がする。
何を表しているのか、何を表そうとしているのか、青い粒々が全面に散りばめられて
きれい。

すごく近づくと山中に豆粒のように描かれた人々に気づけて楽しい。
松の細かく描かれた姿が美しい。中景のかすんだ岩山も。

初耳の人だが、この作品が今回一番良かったかなー。
竹内栖鳳と並ぶ京都画壇の重鎮だったそうだ……。知らんなー。聞いたことなかった。
この人はきっと好きだわ。覚えておきたい。


他にちょっといいなと思ったのは、
川合玉堂「鵜養」……夜の雰囲気は出てないが、かがり火の煙の表現がすごい。
小茂田青樹「朝露」……朝顔とほおずき。水彩っぽい。いい意味で子どもっぽい。
前田青邨「山路之秋」……桜が可愛い。と思ったが、タイトルからして紅葉ですか?
竹内栖鳳「獅子」……代表作の「獅子」の掛け軸版。獅子のアップ。
          こういうアップで描いたのは珍しいのではないか。
伊藤小坡「一聲」……タイトルはホトトギスから。これも鼻先30センチで見て面白い絵。
橋本関雪「唐犬図」……これは代表作といってもいい出来。ボルゾイ。
           すごくきれいな絵なんだけど、出会いとまでは思えなかった。


でもまあ、久しぶりだったのでそれなりに熱心に見られたことは良かった。
会場に一歩足を踏み入れた時には「うぎゃあっ」と思い、
15分で見終わってしまうのではないかと恐れたが。

次は9月の「ランス美術館展」ですね。
早いとこ前売りを買っとかないと。そしてその前売りを無駄にしないように
ちゃんと行かないと。
中宮寺展、前売り無駄にしてしまったからなあ。

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