プラムフィールズ27番地。

本・映画・美術・仙台89ers・フィギュアスケートについての四方山話。

< おおかみこどもの雨と雪 >

2021年12月21日 | テレビで見た映画。
――リアリティのなさが乗り越えられないんじゃあああ!


封切り時に知人にすっごく薦められた映画なのだが、
多分興味ないテーマだろうなと思って見なかった。
家族愛が前面に出ている映画は興味ないんです。
で、テレビ放送を録画で見た、と。

序盤で15分ほどテレビの電波が悪く、何も映っていなかった。
なので、おおかみおとことは出会ったところまでで、次に映った時は
おおかみおとこはいなくなっており、子育てをしていた。
(死んだのは終盤になってようやく知った)
そこを見ないでその後の話に思い入れが生じるわけがなく、粗だけが目についた次第。

1人暮らしの女子大生の部屋に親子4人?3人?が住んでいたら、
不動産屋なり大家さんなりからチェックが入るんじゃないかねえ。
特に乳幼児や幼児がドタバタ走り回る状況なら。
どう見ても壁が薄そうな部屋だし。

学費は奨学金、生活費はアルバイトで賄っていた天涯孤独の人に、
親子3人の生活を支えることが出来るかどうか……
貯金がどうこうと言っていたけど、花の貯金とおおかみおとこの貯金が
そんなにあるとは思えないのだが。
休学しててもある程度のお金かかるんじゃなかったっけ?
子育てが1、2年で終わるとは思えないし。

金もなく、手のかかる2人の子を役所の力も借りずに社会に出さずに育てる
20歳そこそこの子。
無理だと思う。世間は放っておいてほしい時は放っておいてくれないものだし。
児童相談所の担当者も、まともに仕事しているじゃないですか。
あそこまで問題アリで、児童相談の人を拒絶しても諦めるとは思えない。
というか、仕事的に諦めちゃいけない案件。
だって外から見ればほとんど虐待ですよね?一度も病院に連れて行かない、
外部の人と接触させずに過ごすんだよ?

そこから田舎に引っ越すのも解せぬ。
むしろ関係性の希薄な都会であればスキマに隠れて過ごすこともできるかもしれないが。
田舎の人間関係は濃密だろう。お互いに関わり合って、助け合って過ごすからこそ
関心のまとになるはずだし、都会みたいな距離の取り方はしないはず。
早い話、見通しが良すぎるあんな家じゃ、絶対誰かが遠くから
狼形態を目撃してますよね。

役場の人も、あんな女の子によくあんな家を紹介する気になるなあ。
あれは廃屋だと思う。建て替えるお金もなさそうな女の子に……
歩いただけで床が抜けるような家。

それを女の子が一人で修理する……。絶対無理でしょう。しかも2人も
子どもを育てながら。
屋根に上るそのはしごはどうしたのかと。新しい材木はどうしたのかと。
材料や道具をどうやって運んだのかと。
材料や道具、揃えたら何十万もかかりますよ。
畳の入れ替えもけっこうかかりますよ。
時間だって1ヶ月や2ヶ月じゃ無理。
それまでの生活は一体どうした。
ついでにいえば畳の大きさと人間の比率がおかしい。

実際はどんなにいい人だって、あんな風に乱暴な口を利かれたら
わたしは付き合わない。挨拶も返さないような人と付き合う気になる?
種イモをくれる前に人として最低限の礼儀をもって対応して欲しい。
それが出来ないってどうなの?

娘の獣くさい匂いは、それまで誰も指摘しなかったんだろうか。
清潔が異常に重んじられている現代において、
変な臭いがするということは人付き合いの中で致命的だと思うんだが。

体育館にカバンが置いてあるのに探さない先生方はおらんだろうと思われるし、
あの状況で大人から隠れる少年少女は、判断能力が年齢よりもはるかに
低いといわざるを得ない。学校に泊まる冒険をしてみたいという気持ちはわかるが、
それはあのタイミングじゃない。
母が再婚した少年はまあいいとしても、娘は母のことが心配じゃないのか。

10歳の少年がいなくなったことを一体母はどうやっていいわけをするのだろう。
絶対警察案件だと思うのだが。虐待死を疑われると思う。
そんなめでたしめでたしになるわけないよね。

あんな田舎で子供一人の教育費を別にしても、自分一人の生計を立てるだけで大変。
「それからは幸せに暮らしました」とは絶対にならないと思う。



……とか考えていると、全然ノレませんな。
絵はさすがに素敵でいいんだけれども、「人間があの勢いで
雪山を転がり落ちたら全身骨折だろうなあ」とか考えながら見てたら
全然感情移入出来ない。

もっとファンタジー、民話に寄せたら行けたのかもしれないが、
おおかみこどもの部分はファンタジーで、周辺状況は現代社会で、
しかしその間を繋ぐ設定はガバガバで、となると乗り越えられない。

マジメな部分をいうと、檻の中のオオカミの存在が全然活きてないところが……
オオカミ飼うのなんて大変だけど、そういう人手&人件費を過疎の自治体が
かけられるか……それは置いといても、
とにかくオオカミがあそこで出て来てあんな扱いでは、
話として活きているとは言えない。
そのくせ「師匠」はキツネ?

こういう細部を適当に作る作風は嫌いだ。
思いついたシーンを恣意的に繋げただけの話に見えたなあ。
母と子が一所懸命生きていくという大テーマは書けてたと思うが、
そしてエピソード自体がそこまでひどいとは思わないが、
何しろ細部とリアリティがね。

別にもう少し無理のない家、不愛想じゃない農業おじさん、でもいいのになあ。
必要以上に主人公に対してハードルを上げて、それを上手く回収できずに
「リアリティがない!」と思わせるなら、要所以外に試練は要らんのだよ。

奇跡的にお借り得な家:
「いやー、この家がこの借り賃は掘り出し物だと思いますよ。
場所は不便ですが、家はそれほど手入れをしなくても使えます」
親切な農業おじさん:
「……ほれ。ちょっと貸してみい。この土はこれじゃいかん。
土づくりが必要だな。わしが教えてやるからやってみるか」

これでいいのにねえ。めでたしめでたしにしたいなら、
主人公に山ほどの試練を与える必要はないのに。ファンタジーなんだから。


わたしが昨今のアニメを見始めたのはここ3年くらいかと思うが、
そして絶対数が少ないのに括っていいのかと思うが、
昨今のアニメは押しなべて絵はきれいでレベルが高いんだけど、
話は全然練れていないと感じる。
新海誠にしても。
その他の深夜アニメにしても。

アニメ界全体が多作すぎるんだろうな。
ひと頃のドラマにも思ったことだが、数打ちゃ当たるがヒドすぎて……
せっかく金をかけて作るんだったらもっと話を詰めた上で作って欲しいのだが。


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