お母さんと読む英語の絵本

読み聞かせにぴったりな英語絵本から、米国の子どもたちの世界をご紹介
子どもをバイリンガルに…とお考えのお母さんに

ステイケーションの効用

2009-07-20 | from Silicon Valley


久々にランチタイムにダウンタウンに行ってびっくり!狭い道には車があふれ、駐車場は満杯。メインストリートに面したカフェやレストランから舗道に張り出したパラソル付きのテーブルは家族連れで満席です。スターバックスも満員で、店内のカウンターには長い列。外のテーブルも、犬を連れて座っている人、自転車を横に置いた親子連れなどでいっぱいです。

この町に住んで10年になりますが、ランチタイムに、それも夏休み中のウィークデイの昼間に、こんなに混み合ったダウンタウンを見るのは初めて。

私が住んでいるのはシリコンバレーの中心部に近い小さな町で、ほとんどが住宅です。市の中心部に小さなダウンタウンがあり、道路をはさんで一方には市議会、市役所、図書館、警察署などの行政関係施設のある一角があり、反対側にはレストランやカフェ、銀行、ブティックや子どもの本屋さん、美容院やネイルサロンなどがあり、ダウンタウンの店舗が途切れるあたりに大型スーパーやガソリンスタンド、ペットクリニックなどが並んでいます。こう書くとかなり大仰ですが、どの建物も小さく、ほとんど平屋か二階建て。ぐるっと全部をまわって歩いても、全部で1時間もかかりません。

さて、例年の夏は・・・というと、毎年、学校が夏休みに入る6月のほんの一時期だけ子どもたちで賑わったあった後は、だんだん道行く人の数が減り、6月半ば過ぎから8月半ばまでは町全体が閑散となってしまうのが常でした。いつも混んでいる美容院やレストランも夏だけはいつでも予約が取れるくらい。

みんなどこに行くの?というと・・・親子揃って2か月、3か月まるまる海辺のサマーハウスに行ってしまう家族。子どもの夏休みにあわせて親も長期休暇をとってサバンナでのキャンプやアルプス縦断のトレッキングなどに出かける家族。また、子どもたちは数週間連続で泊まりがけのサマーキャンプや、海外での語学研修や観光旅行などに出発し、一方親たちは、子どもを送りだした留守にのびのびと夫婦だけで長期クルーズに出かける、など。そうして夏の3か月、住民が出かけて留守になった町は閑散として夏枯れするのが常でした。

でも、今年の夏は、まるっきり様相が違います。たとえばスターバックスで交わされていた会話によれば、
「今年はハワイじゃないの?」
「うん、今年は"Staycation"」(両手でカギ型をつくって""マークのしぐさ)
「うちも"Staycation"(両手で同じしぐさ)。うちで夏を過ごすのは12年ぶりよ」
「うちも15年ぶりくらいかな。上の子が来年進学だから大学見学には家族で行こうと思ってるんだけど、せいぜい東海岸までの国内旅行」
「私は"積読"だった本を片端から読んでるの。これが面白くてね・・(と読みかけのミステリーの話になる)」
という次第。

Staycationは最近の流行語。先ごろ2009年版のウェブスター辞書(Merrian-Webster's Collegiate Dictionary)に加えられ、立派な英語としての市民権も勝ち得ました。
長期休暇をとって遠くに出かけるVacationに対して、うちでのんびり過ごす自宅滞在型の休暇のこと。節約してどこにもいかない、とかVacationはとらない/とれない、と言うかわりに、家族そろって自宅でのんびり休暇を楽しむ"Staycation"をむしろ積極的に流行させるアメリカ型発想。どんな状況下でも楽天的でポジティブなアメリカ人です。車に乗れば、ラジオからは「いかにしてお金をかけずに夏休みの子どもと目いっぱい楽しむか」のヒントが絶え間なく流れ、新聞も地元のイベント紹介に力を入れています。

思わぬ漁夫の利を得ているのがレストランなどの地元企業です。シリコンバレーでは、失業率が記録更新を続け、ここ数週間は、急激に商用ビルに空き物件が目立ちはじめ、売り家の値下げ広告が目につくようになりましたが、一方では道路や駐車場はむしろ相変わらず混雑しているし、人気のレストランは押すな押すなの繁盛。地域の活性化だとか、地場産業振興だなんて誰も叫ばないけど、皆が”楽しむために”近場に出て時間を過ごし、節約しながらも使える範囲のお金は使ってしっかり楽しもう!と思うように、上手にムードが盛り上げられています。

アメリカに住んで20年、何度か深刻な不況を経験しましたが、今回が一番ひどいはずなのに、なぜか今回はこれまでのような一挙に「灯が消えた」ような感じがありません。それどころか、今年のシリコンバレーは、例年の夏枯れはどこへやらの不思議な"活況"を呈しています。




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