Penguin - Watch Me Grow
７月。今月の絵本選びはノンフィクションがテーマです。
夏休みを前に、すでに毎日とても暑いので、最初の一冊はペンギンの絵本。氷の上のペンギンの暮らしを思いうかべて、いくぶんかでも涼しくなりましょう。ペンギンを選んだのには特に理由はありませんが、しいて言えば、回りにペンギン好きが多いので。
まずは動物の赤ちゃんの"成長記録"シリーズ「わたしが/ぼくが、大きくなるとこ、見て、見て！」"Watch Me Grow”（邦訳：おおきくなぁれ）から、ペンギン"Penguin"です。
"Watch Me Grow"はいろいろな動物の赤ちゃんが成長する様子を写真で追いながら、生態を解説した絵本シリーズです。絵本の名に恥じず、写真はかわいいのですが、しかしテキストは"絵本"というよりは"図鑑"の趣です。たとえば「僕はペンギン。鳥だから羽があるんだけど、飛べないんだ・・・」という解説とともに、羽の拡大図がでていたり。でも逆に、解説の視点・発想は"絵本"的で、例えば「ぼくのお父さんとお母さん」という項目では、「お父さんとお母さんは一年のほとんどを海の中で別々に暮らしているんだけど、４月になって子育てする季節になると陸に上がってお互いを探すんだ。声を聞けば、お互いにお互いのことがわかるんだよ」というように。
ところでこのペンギンの絵本、実はちょっとtricky(意外な)つくりです。というのも、表紙は皇帝ペンギンの写真なのに、なぜか中はキングペンギンの写真集。ペンギン大好き！というペンギンファンはたいてい皇帝ペンギンが好きなことが多いので、ネットであるいは書店で表紙だけを見て本を買った読者のなかには、予想が外れてがっかり・・・という人が少なくないものと思います。アマゾンのレビューにもそうした読者の率直な声が寄せられていましたが、がっかりしてもレビューの採点は依然として★４つ！ キングペンギンも十分かわいいのです！
さて、ペンギン好きに贈るもう一冊は、これも人気動物シリーズ絵本"Busy～"シリーズから"Busy Penguins"です。
これもきれいな写真絵本ですが、タイトルからも分かるように、お話の焦点は動物の”子ども”ではなく”行動”。「ペンギンは忙しい。いったい何をしているんだろう？Busy Penguins. What are they doing?」の問いで始まり、この問いに答えるように、ペンギンの日常をきりとった写真一枚一枚について、ペンギンが何をしているかをセンスのよい簡潔な文で解説するページ展開です。
この絵本で小さな読者に最も人気があるのは、ペンギンが"ウンチしている"場面。読者レビューのほとんどに「（このウンチの場面が）子どもにバカ受け！」と書かれています。思わず、昨年11月6日にご紹介した五味太郎さんの人気絵本「みんな、うんち」を、改めてご紹介したくなりました。
ところで、忙しい！Busyという単語は、現代人の会話でもっとも頻繁に使われる言葉のひとつではないでしょうか？ 子どもは「おとなは毎日忙しい忙しいって言って、いったい何をしているんだろう？」と思っているに違いありません。ですから、これを動物の行動を素材にしたシリーズ絵本のタイトルにしたところは、なかなかにウィットがあると思います。まさか子どもは言わないと思いますが、「忙しい忙しいって、お父さんもウンチしてて忙しいの？」なんて・・・まったく巧まずして皮肉。そう思って眺めると、このシリーズ、写真もテキストもひねった風刺が効いているようにみえてきて・・・、大人もなかなかに楽しめます。
