お母さんと読む英語の絵本

読み聞かせにぴったりな英語絵本から、米国の子どもたちの世界をご紹介
子どもをバイリンガルに…とお考えのお母さんに

たかが呼び名 されど呼び名

2009-07-01 | from Silicon Valley
Source: Stanford News Service

アメリカの学校では生徒たちは先生からファーストネームで呼ばれているということは、以前「Matthew A.B.C.」でご紹介しました。

学校のクラスだけでなく、アメリカでは、社会生活全般にわたって大人同士もファーストネームで呼びあうことが多いことはよく知られています。

では、先生はどう呼ばれているのでしょう?

英語には「先生」という言わば"万能"で"便利"な呼称がありません。日本では、学校の「先生」はもとより、医師も、政治家も、弁護士も、税理士も、行政書士も、コンサルタントも、評論家も、作家も、時には音楽家や画家も先生と呼ばれます。アジア諸国の繁華街では、日本人の男を見たら日本語で「先生」か「社長さん」と呼べといわれているくらい。こうした状況を揶揄して「先生と呼ばれるほどの・・・」などと言いますが、やはり、実際、先生と呼ばれるべき人を呼びそこなったら・・・なかなかに大変です、よね?

さてアメリカですが、学校の先生の場合、女性は一般にMissあるいはMrs、稀にMsを冠して姓で、男性はMr.を冠して姓で呼ばれるのが一般的な伝統です。有名な「チップス先生さようなら」の本も原題は "Goodbye, Mr. Chips" です。ですから、Miss Nelsonも日本語に訳すならネルソン先生でしょう。

うちの娘は小中高校では上記の通りでしたが、幼稚園では先生のファーストネームにMsをつけて、Ms. LoriとかMs. Debbieと呼んでいました。

でも、大学はやや事情が違います。大学になると「~先生」と丁寧に呼ぶときには先生の姓にProf. を冠して呼びます。講義をうけもっている教授職の先生は皆Prof. です。研究職の先生方の場合にはProf. ではなく、Dr. を冠して呼ぶ場合もあります。

が、実は大学では、教授と学生がファーストネームで呼び合うことが珍しくありません。私の勤務していたスタンフォード大学でも、人気のある教授ほど親しみをこめてファーストネームで呼ばれていました。

世界的なベストセラー"Tuesday with Morrie"(邦訳:モーリー先生との火曜日)でも大学の恩師をファースト・ネームで呼んでいます。

それにしても、教授を名前でよぶなんて! 数十年前の日本のトレーニングを受けた身にはいささか驚きで、馴染むのに時間がかかりました。そんなある日、知り合いの教授の講義を聞きにロースクール(法学大学院)に行きました。忘れもしない午後一番のクラスでしたが、かたやフランスパンをかじりながら(!)講義する教授に向かって、かたやコーヒーカップを手にした学生が、両足をデスクに載せたまま(!!)、ファーストネームで呼び掛けて質問したときには、ナイーブな私は、驚きのあまり椅子から転げ落ちそうになりました。

でも、考えてみれば、真理の前には何びとも平等。お互いを対等な学徒とみなすことは学問進歩のためにきわめて大切なことです。ファーストネームで呼び合っているのは、単にアメリカ人がカジュアルだからではありません。相手を「先生」と呼んでいると、なかなか対等な議論ができません。大学で教授と学生がファーストネームで呼び合う習慣はコミュニケーションを民主化するうえで、きわめて大きな意義があるのです。これは私の解釈ではなくアメリカのアカデミアの一般通念。たかが呼び名、しかし、されど呼び名、なのです。こういうことを杓子定規なまでにきちんと実行しているところに、アメリカ人の生真面目さがあります。




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