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うな風呂

やる気のない非モテの備忘録

MQ ~時空の覇者~   5点

2009年11月21日 | ゲーム日記
09/7/31発売
PCアダルトゲーム
アドベンチャー
製作・販売はアーベルソフトウェア


かつて、Windws以前の時代、アダルトゲーム業界には二つの雄がいた。
『同級生』『ドラゴンナイト』シリーズを持つ東の王者、エルフ。
『ランス』シリーズを中心とした西の王者、アリスソフト。
二社はエロ要素の充実とともに、コンシューマーにも負けない高いゲーム性を追求し、そして実現させた。それゆえに売上・評判ともに頂点に立つことができた。
その二社が、期せずして1996年12月に、ともに最高傑作の名に恥じぬ作品を輩出した。

一つはエルフの『この世の果てで恋をうたう少女 YU-NO』
基本的には一般的なアドベンチャーゲームのシステムを採用しながら、行動選択によるストーリーの分岐をパラレルワールドと捉え、一定の日数の繰り返しをプレイヤーと主人公がともに自覚し、時間軸に沿ったタイム表を完成させながら幾多のパラレルワールドを踏破し謎を解明していくというSF作品だ。
謎が謎を呼ぶ優れたシナリオに、ゲームでしか実現できないパラレルワールド表現を巧みにとりまぜた、まさにゲームならではの物語は、当時は無論のこと、現在でも越えるはおろか比肩しうるものすら少ないADVの最高峰として君臨している。

いま一つが、アリスソフトの戦略SLG『鬼畜王ランス』
君主固定のファンタジー版『信長の野望』と思ってもらえば大体合っているが、ゲームバランスとボリュームが群を抜いて優れている。複数に分岐するシナリオ、隠された膨大なイベント、武将、アイテム。一見なんでもありのふざけた世界ながら、緻密に設定されつくりこまれた世界観。豊富なエロシーン。徹底したテンポの良さと熱いBGM。
エロがなくても最高に面白いうえに、システムとシナリオにエロが密接にかかわっているため、エロがあったからなお最強に面白いという、エロとゲーム性の融合を自然かつ完璧な状態で仕上げた完全作と呼ぶにふさわしいSLG最高傑作だ。

二作ともが今の自分の採点方式で云うなら「90点∈(゜◎゜)∋」以上がつく、まさに至高の作品、エロゲーの生み出した至宝とも云うべき二作品だ。
しかし皮肉にも『YU-NO』がPC-98最後の大作となり、『鬼畜王ランス』がWindows最初の大作となったのを皮切りに、この後二社ともに長いスランプに陥ることとなる。
エルフはこの後に盗撮ゲーム『臭作』シリーズで最高売上を記録するが、その後は「またリメイクか」と云われるリメイク・移植の自己模倣と劣化の一途をたどり、アリスソフトは同じくSLGの傑作『大悪司』までの数年間、鳴かず飛ばずの状態が続いた。
作品の偉大さが自社をも縛りつけ、傾けてしまったのかもしれない。


ともあれ、エルフ・アリスソフトの二強時代は『YU-NO』『鬼畜王ランス』とともに完成し、完成したがゆえに過ぎ去ってしまった。
この後はLeafのビジュアルのベルシリーズやKeyの泣きゲーが一大ムーブメントとなる、いわゆる葉鍵時代を迎えることになる。
しかしその物語の出来の良し悪しはともあれ、ただの読み物と化してしまった(というより戻ってしまった)エロゲーは、もはやエロ「ゲー」である必要はなく、ついでに「エロ」もいらなくなったみたいで、萌えさえあればいい萌え至高思想が蔓延することとなった。

現在はその状態からもまた脱却し、戦闘描写が中心となるタイプムーンとそのフォロワーの台頭の後は、エロがエロである従来のエロゲーと、萌え中心の萌えゲー・泣きゲーは健在であり、ゲーム性を大事にした系譜はアリスソフトの復活とともにエウシュリー・ソフトハウスキャラ等の優良メーカーも生まれ、またポリゴンでエロ箱庭を作る3Dエロゲーなども定番化し、要するにいろんなタイプのが主流を目指し、混沌としてるいのが今のエロゲー業界といえるだろう。

さて、話が無駄に業界話になってしまったが、要するにそのくだんの最高ADV『YU-NO』の製作者だ。
『YYU-NO』の製作者作でありゲームデザイナーでもある管野ひろゆきは、以前にも『EVE burst error』や『DESIRE ~背徳の螺旋~』という名作をものしていた。97年にこの三作が立て続けにセガサターンに移植され、プレイした自分は、ほとんどエロゲーをしたことがなかったのもあって「エロゲーのストーリーはコンシューマーよりも進んでる!」とすっかりイカれてしまった。
実際は、文体自体は当時のエロゲー的でよくあるものであったが(というか、当時最大手のエルフ社長、蛭田氏の『同級生』シリーズの影響が強すぎた)ストーリーはこの作者独自のものであり、当時も今もこういう人はあまりいない。
この管野ひろゆきがエルフに引き抜かれて作ったのが『YU-NO』なわけだが、どのような事情があったのか、この一作でエルフを退社、独立してアーベルソフトウェアを立ち上げることになる。

以後、コンシューマーでADVを出してそれにエロを入れてPCで出しなおしたり、PCでエロゲーを出してエロシーンを抜いてコンシューマーに移植したり、挙句はエロを抜いて移植したものにエロを足してまた再移植したりして、一言でいうとなんかぐだぐだとした会社経営を続けることになる。
作品自体もまた『エクソダスギルティー』『不確定世界の探偵紳士』『ミステリート』『サイファー 蒼き月の水底』などを出していたのだが、いずれも出世作であった『EVE』の自己模倣の域を脱しておらず、つまらなくはないのだが物足りない、というのが事実であった。
そんな事情もあり、開発が遅く、経営がぐだぐだなのも相まって、自分にとって次第にどうでもよくなってきつつあった菅野ひろゆき氏。
しかし97年にプレイした三本があまりにも鮮烈であったため、どうしても忘れられず、特に『YU-NO』のシステムのシナリオの融合は自分の求めるADVの理想形とすらいえるものだったため、初恋の人を忘れられないように、いつまでも管野ひろゆきに対する期待がなくならなかった。なくならないくせに、なんとなく「もう才能が枯渇してるんだろうな」とも思っていた。思いながらも、なぜか動向を追いつづけていた。

前置きが長くなった。やっと本題に入る。
そんな状況の中で数年前から設定とタイトルのみが公開されていたのが今作『MQ ~時空の覇者~』なのだ。
その設定とは「現代の若者がパラレルワールドを踏破していく」といったもので、製作者の前歴を考えると、どうやっても『YU-NO』を思い出してしまい、期待せずにはいられなかった。いられなかったが、まったく開発している様子もなかった。はっきり云って出ないんだろうと思っていた。
なので、今年になって唐突に「そろそろ出します」というアナウンスがあったときは耳を疑った。んなバカな、と思った。でも、延期したとはいえ、本当にちゃんと発売された。

正直、また自己模倣の劣化作品なんだろうな、と思った。やっぱり枯れてると思うし。
しかし縮小再生産でも『YU-NO』が元ならば、あのシステムが元ならばそれなりに面白いのではないか? という期待がどうしても消えない。もしつまらなかったとしたら、ちょうどいい、これを契機に管野ひろゆきのことはすっぱり忘れよう。枯れた作家についていくのはもうこりごりだ。

というわけで、私は発売日、ソフマップに走ったのであった。
そして三時間後、またソフマップに走ったのであった。

うん、ひどい。
まず純粋に、三時間でクリアできるというのがひどい。
短くてもまとまっているならまだいいが、完全に投げっぱなしのエンドで、箱に描いてあるキャラクターたちが何人も出てこないというつくりかけっぷりがひどい。
そしてあからさまに『YU-NO』を連想させるPVを出しておきながら、普通のサウンドのベル形式というのもひどい。いや、普通のサウンドノベルどころか、完全な一本道で読むだけなのがひどすぎる。これがかつて常にゲームらしさをゲームデザインに盛り込んでいた人間のやることか? 序盤に云われたとおりの単語をそのまま打つシーンが二回だけあったが、あれがなんだったのか、まるで意味がわからない。ゲーム性を付加しようとして諦めた名残か?
ストーリー自体も、ひどいとしかいいようのない出来で、まず唐突にあらわれた相手に「あなたがパラレルワールドにいかないと世界が崩壊して云々」というのをあっさりと信じるのもひどいし、オチの部分で「それ嘘だったんだけどね」というのも二重の意味でひどい。
渡り歩く別時空も、実にありがちかついい加減な世界で、いい加減に女キャラとの出会いが用意され、適当なバトルをし、適当にエロシーンがはいって、適当な理由で女キャラが死ぬという、その繰り返し。大きな話としてつながっている感じはまるでなく、一話完結の場当たり的なストーリーが垂れ流されているだけ。
文章もうわっすべりしてひどいし、キャラクターの性格設定もころころ変わって杜撰。特にクールでシリアスな主人公が単なるエロ親父になってるシーンが多すぎて失笑ものだ氏、キャラに合っていないのに意味もなく2ch用語とかも混ざってきて、実に統一感のないいいかげんな文章。
おそらく企画の時期からして『Fate』のヒットを見て「おれもバトルもの描けるもん」とでも思って企画したのだろうが、そのバトルはひどいの一言。まず主人公の流派「斬撃十次元流」という言葉を聞いた瞬間に「死ねばいいのに」と反射的に思ったし、その流派の特徴が「別次元から斬るから避けられない。具体的なやり方とか斬り方は説明しない」という、バトルものとしてあまりにもいいかげんで杜撰な設定。厨二的な必殺技の応酬すらもなく、バトルシーンのつまらなさは異常事態だ。
CG枚数も少ないので状況はわかりづらく、個人的にはいらないとはいえボイスなしでエロCG少ないとあってはエロ需要も満たすこともない。

エロゲーに求められるおよそすべてのもの(ストーリー、ギャグ、萌え、エロ、バトル、現実逃避、プレイ時間、etcetc……)が欠落した、まさにだれも得をしないうえにつくりりかけで投げっぱなしな、まさに空気のように作品に仕上がっていた。税込み定価10290円の空気があるのならば、だが。
あまりにもひどいので管野ひろゆきではなく部下につくらせたんじゃないかとも思いたかったが、エロオヤジ思考や義母萌えなど、細部にちりばめられた手癖がどう考えても管野ひろゆき本人のものであり、こんなダメな部分を模倣できる人がいたら逆に感心してしまうくらいに趣味嗜好自体は管野本人なのだ。
しかしこの会社はその辺を突っ込まれるのが嫌なのか、なぜかシナリオライターをなかなか公開せず、あげくスタッフロールを入れなかったりするのでだれがつくっているのかまるでわからない。つうか、スタッフロールをはじめとしたエンディング演出がなにもなく、唐突に「完」と出て速攻でタイトルに戻る手抜きっぷりは潔すぎて悪い夢を見ているようだった。

要するに、手抜きでエロゲーをつくるということの見本のような作品だった。
速攻で売ったが損害は2500円にもなったし、本当にもう踏んだり蹴ったりだった。
凍結していた企画をやっつけで適当に仕上げたのだろうが、どのような事情があろうと、ここまで手を抜いたひどい作品を作る人間が、この先まともな作品を作ることはないだろう。おかげで完全に管野ひろゆきに見切りをつけることはできたので、当初の目的は達したとも云える。ああよかったよかった!

ごめん、良かったとかいいながら、やっぱりショックはショックなんだ。
ショックすぎてこの記事を書くのに三ヶ月以上かかったし。
おれはもう二度と、エロゲーライターを信じない! 信じないんだからね!



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2 コメント(10/1 コメント投稿終了予定)

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同じ気持ちです (くーま)
2010-09-07 11:33:50
うぅーー、同じ気持ちです(涙)

初恋の気持ちを忘れれず、いまさらプレイを終わったんですが、

『えっまさか?二回目プレイで新ルートがあるんですよね?』

と言う気持ちで、検索をかけてここにたどり着きました。 

自分の気持ちを代弁してくれるようです(汗)
返信する
Unknown (うなぎ)
2010-09-12 01:38:39
コメントのせいですっかり忘れていたこのゲームの存在を思い出して深刻に嫌な気持ちになったぜ……謝罪と賠償を要ky……
ほんとにEVEとYU-NOは神がかってたのになあ……
返信する

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