50のひとり言~「りぷる」から~

言葉の刺激が欲しい方へ。亡き父が書きためた「りぷる」(さざ波)を中心に公開します。きっと日常とは違った世界へ。

幸男の手を握ってやればいいのだろうが、・・・

2015-07-03 20:24:57 | 小説
幸男の手を握ってやればいいのだろうが、理恵は両手を行儀よく膝上に揃えたままだ。手を握るのは朝飯前だろうが、握られるなどはむろんありえない。十年ぶりと言われてみて、本人を側に意外といえば意外に冷静でいられる。
「あなたにだけは是非お会いして帰りたかった」

(つづく)