50のひとり言~「りぷる」から~

言葉の刺激が欲しい方へ。亡き父が書きためた「りぷる」(さざ波)を中心に公開します。きっと日常とは違った世界へ。

「今日、わがままは許されないとつくづく知らされたわ」

2016-03-21 18:48:55 | 小説
「今日、わがままは許されないとつくづく知らされたわ」
「ぼくはシリアスな痛みの部分がよく観察できた。それが宇礼市での収穫でした」
夏子さんにその部分を汲んであげなくてはと、理恵は考えさせられる。宇礼市の日常に演技を摘み採ってきている。
「誘ってきて、その甲斐があったわけなのね。敏彦」
軽い寝息がきている。理恵には深い夜、ふるさとを知らせる音もなく、それを刻む時計の音もなくて、眠りに入るばかりになっている。明日のために・・・・・・と思いながら天井の闇を朗らかな闇を妙に感じながら眠りかけている。理恵は首を思いだしたように曲げて、
「さようなら、ふるさとさんと言いたい気分かな」
と声にでない呟きを敏彦に放った。そうして眠る間際に半ば無意識のうちに、
「ありがとう幸男さん。夏子さん。皆でいつかまた仲よくお会いしましょうね」いつの日にか・・・・・・。理恵は夢の中で満開の桜が一片の花も散らさないでいる。つと理恵は桜の木に変身、幸男や夏子や雄造たちがいっせいに踊り舞っている。早くもその眠る彼女には今、岬の黎明がしのび足で迫ってきている。

<了>


※長きに渡りご愛読いただきましてありがとうございました。
「おしのび」の連載が完結いたしました。
ご感想などございましたらコメントいただければ幸いです。

しばらくお休みをいただきまして、次回、4月から「南幻想曲」を連載する予定です。
お楽しみに。

なお、「おしのび」は、Amazonから「木々 遥」のペンネームで電子書籍として4月中に、出版させていただく予定です。
もしよろしければ、ご購入いただければ幸いです。

目が冴える理恵は、・・・

2016-03-19 18:21:23 | 小説
目が冴える理恵は、一いち感心を放ちながらいる。仄明かりのベッドルームでの対話。
「そう言っていただけると嬉しいわ。でも、予定を一日繰りあげていいかしら? わがまま言っていられないと思う・・・・・・だってテレビで一週間の空白は長すぎると思うの。忘れられてしまうみたい」

(「おしのび」つづく)

夏子は夏子で今は歴然とした差のようなもののみに戸惑い、・・・

2016-03-17 19:56:17 | 小説
夏子は夏子で今は歴然とした差のようなもののみに戸惑い、訪ねてきたことをしきりに悔いいる。互いになつかしさや親しみが保てる、その時間の短さを知っているのだった。今の歳で私だって・・・・・・非常識な真似はいたしませんと、夏子がむしろ強烈に思っているものであった。・・・・・・私夢を見たのね。と理恵は高鳴る鼓動を宇礼の海原に投げた。

(「おしのび」つづく)