ジイちゃんと別れてから、両手に荷物を持っているアタシの気持ちも知らないで、臨時駐車場までの道沿いにあるお堀のサカナを覗き込んでみる娘たち。落ちるかもしれない不安をよそに、走ってアタシを追い抜いてはお堀の柵によじ登って覗き、アタシがそれを横目に追い越していくと、また走って追い抜いてよじ登って覗く…を繰り返していた。
そういえばこのあたりは、ジイちゃんの通った高校のある地域。卒業から50ウン年経っていてもジイちゃんには懐かしさがあるのかもしれない。
栃木市は他の都市と比べて、古い街並みが残っている。役場もお堀もそしてジイちゃんの通った高校もその頃の面影がいっぱいあるはずだ。
とはいえ、古い街並みを残すことが発展を妨げるのもまた事実。お祭り会場周辺は、蔵の町として建物を残したり、新しい建造物の制約をしたりするゆえに、細い道や一方通行が多くて車を運転する人は街中を避け、開発もしづらいが故に空洞化現象を起こしている。今年度で市のど真ん中にある歴史ある福田屋百貨店も採算が合わないという理由で撤退するほどだ。
情緒を残すか、暮らしやすさを選ぶかというのはなかなか判断に困る選択なのである。
臨時駐車場としてアタシが車を停めたのも、市役所前の小学校跡地。中心部の子供が少なくなって小学校は合併したのだ。そこにはもう校舎は無く、鉄棒やうんていや滑り台といった遊具と校門だけが学校の名残りを残していた。
さんざん歩いたのに、まだまだ元気なわが娘たちは、滑り台を見つけると『やる~』といってせがんだ。一応、駐車場の係員に遊んでもいいのか確認をしてから、滑りにいく。
見るからに年季の入った滑り台。滑るレーンは片方に2列、真後ろにも2列あって、4人一度に遊べる。おまけに登り階段も左右に2本づつあって、これだけで1クラスの児童が"登っては滑り"を繰り返しても渋滞にならないほどだ。
珍しいのは滑る部分はコンクリートで出来ていること。アタシが入学した小学校(後に児童が増えすぎて新設した小学校に分離した)にも石で出来ている古い滑り台があったが、ザラザラしていてちっともお尻が滑らなかった。でもここの滑り台の滑る面にはコーティングが施されていて、コンクリートであってもそこそこ滑りは良かった。
「ひいちゃん」と「ふうちゃん」は競うようにあっちで滑り、こっちで滑り、並んで滑り…と繰り返す。この滑り台もまだ小学校があった頃には、さんざん子供と触れ合っていたのだろうに、今や取り壊されるのを待っているかのようで、なんだか寂しそうであった。
時の流れといえばそれまでなのだが、歴史ある蔵の町並みを守り、お祭りを継続している土地柄、こんな滑り台でも残して欲しいような気がした。
今の滑り台にはない味わいがあるのだから。
(おしまい)
※コメント投稿者のブログIDはブログ作成者のみに通知されます